アインズ視点。
※R18シーン
焦って視線を巡らせていると
ふと、彼の白い首に目が止まった。
たぷたぷの、お肉だ。なんて可愛いんだ。噛みついてやりたい。左親指で彼の頬をスリスリと擦る。
「ンう…………?」
ザナックはずる…と鼻水をすすった。そして俺を僅かに見上げる。薄く涙の膜を張った綺麗な目。
(泣かせてしまった……可哀想だなぁ……)
「ザナック、触るぞ」
そう言うと、彼の眉がハの字になった。左耳の後ろに鼻先をつけ、ゆっくりと下りていく。首筋にキスをするように歯を軽く押し込むと、震えた手が俺の袖を掴んだ。
「んは、あ……っ」
いやいや、と左右に首を振るザナックを無視し、口を開け、生温かいそこへ噛み付いた。俺のものと比べれば、非常に脆く柔い肌だ。だから傷にはしない。ただ、痕が残れば。可愛いらし過ぎて食べてしまいたいという衝動と、目に見えて分かり易い俺の所有印をつけたいという征服欲が満たされる。きっと。ぐ、ぐ……。噛む、というより、俺の証を、歯を押し込む意識だ。強く噛む……というのも違う。ただ、まっさらな紙へ、印鑑を押すように。
「くあ、っ……ひ……い゛っ」
「……痛いか」
離れた。上下の歯形が赤く、内出血として白い肌に痛々しくそれは映えていた。
「ごめんな、ザナック」
思わず口から出た言葉。
痛みに震えている彼の姿と、その痕があまりにも不憫に見えたから。
「……申し訳、ありませんでした」
指を噛んだザナックが呟く。
「君は勘違いしているようだが──」
「俺が怒っているのは君にじゃない。君が隠し事を話してくれるなら、コレをやめることを検討しよう」
淡々と、子供に優しく本を読み聞かせるように言った。
「お……俺は、」
はく、と彼の唇が動く。俺は手を止め、耳を傾ける。
「……あなたに、捨てられ……たく、ない……」
そう言うと、ザナックはぼろぼろと泣き出してしまった。俺はそれを見て彼のシャツのボタンを全て開けて、少し酷いがひん剥いた。
「………っっ!?」
それに、ザナックはさらに目を潤ませて、大粒の涙をこぼす。ひっく、と何度も息を吸い込んでしゃくりあげていた。
「や、あ、うっ……ヒッ、うぐ……」
とても可哀想な泣き顔だった。不安に支配されて、彼本人の言ったように俺に「捨てられる」のではと怯えて。抵抗することも出来ずにただただ悲しみにのまれたような。
「嫌ならいやと言うんだぞ? まぁ……今の俺は止まらないが」
そんなふうに忠告しつつ、彼の右胸を揉み掴む。先程つけた首筋の噛み痕をつぅ……っと舐め上げた。
「ふぁぁ……っ! ア……ん、」
甘い声を出し、ビクビクッと反応したザナック。痕をなぞり、ぐりぐりと舌を押し付けながら舐めていく。舌全体でゆっくり舐め、吸い付いた。じゅっ……と音が鳴る。
「ひ、アぁ……あ、あ! アインズ様ぁ……!」
「ん? どうした」
「ぞわぞわ、しますぅ……」
ザナックの必死な報告。
「うん、そうか」
俺はそれだけ答えて、背を伏せて彼の胸に吸い付いた。
「ん、ンあぁ……っ」
硬く尖るそれを口内に含み、舌の上で転がすと切なげにザナックが喘ぐ。ちゅうちゅうと吸ってやると、耐えきれずザナックは俺の身体に雪崩込むようにして縋る。肩と胸元が掴まれる。おそらく彼の全力で。ザナックはとにかく逃げ出そうともがいていた。
「あ、ア……ふあ、んっっ」
右手の指の背でくりくりと弄りながら反対の乳首をまた口に含みなおす。猫が毛繕いをするように舐めると、ザナックの目にじわじわと涙が滲み出す。
「やん、あ、あぅ……ッ」
左手で柔らかく包み込んだザナックのモノを指で摘んで擦り上げた。
「い、んーーーっ……!」
ビクビクッと大きくザナックの身体が仰け反る。押し付けられた胸元を吸う。
「あ゛ッ、いっしょッ、しひゃ……ダメッッ! ……あいんずさま! ……ごめんなひゃいいっ」
崩れ落ちそうな小さい身体。乱れる金色の髪。指を差し入れて後頭部に添えた。抱き寄せたのか、俺が近付いたのか分からない程一瞬だった。
「……いっその事壊されてもいいと、心の奥底では思っているんだろう」
触れた耳朶が赤く染まり、ぴくんと震えた。
「…………っ、はへ?」
「でも壊しはしない、俺の目的をすり替えられたら困る」
俺の無機質な舌がザナックの耳介を押すように舐る。彼の耳は可愛い。外側が丸くて、内側も綺麗な形をしている。耳朶もそのまま食べてしまいたくなるほど柔らかい。
「───誰の前でだけ崩れていいのか、教えてあげよう」
俺が囁くと、いっそう彼の瞳が潤んだ。
「ごめんらさい……アインズさま……浮気、して……もうし…わけ…っ」
今にも決壊しそうな涙顔が見上げて来る。
「浮気じゃない。……そんなこと微塵も疑っていないよ。君は悪くないんだ、謝ることは無い。」
しゃくりあげるザナックの頬をぷに、と指で撫でる。
「こちらこそ、泣かせてしまって申し訳ない。ザナック……本当にごめん。悪いのは俺だ。」
目前の小さな耳に、グリ、と舌を捩じ込んだ。
「ヒッ、あっ……ああ、やっ」
空気を含ませて、舌に唾液を絡めると、ぐちゅぐちゅと音がこもって聞こえる。それに合わせるようにザナックのか細い声が漏れる。
「俺が我慢ならないんだ。だから、まだ付き合ってもらえるか」
「ふあああっ」
軟骨を甘噛みするとザナックが悶えながら腰を押し付けてきた。時折分からないほどに歯を当て、コリコリした食感を楽しむ。
「ひゃめ、ひあ……あ、はあぁ……っ」
首筋から香る匂いにつられて、獣のように血管を舐めた。ここに命がある。これは俺のものだ。ふと、止まる。舌の上で脈動を味わう。どくどくどくどくっ。まるで小動物のような激しい心拍。愛おしくて離したくない。思わず胸の中にしまい込むように彼を抱き締めた。潰してしまわないように、細心の注意を払う。だが、絶対に離してやるものか。
「アインズさま…………」
困惑したザナックの掠れた声。もう抵抗しようともしないふわふわした小柄な身体を持ち上げ、
「君はいつもいい匂いがするな」
ゆっくりと立たせて、庭園と屋敷内を隔てる壁の方を向かせて手をつかせる。コツ、コツ……とぎこちないヒール音がのどかな昼下がりの庭園に落ちる。
「同じ石鹸を使ってるはずなのに」
「そ、ですか……? とくに、香水などは……つかって、ないのですが……」
ザナックが何故か真剣に悩み始めたあたりで、ふーっと項に息を吹きかけた。
「ひうぉあっ……!?」
間抜けな声が上がり、俺は気分が良くなった。
「アインズさま……なにを…………」
振り返ろうとするザナックの項を追い討ちで舐める。脚が震え出した。
「本当に……なにをぉ?」
「君の匂いの正体は、魔力かもな」
柔らかいそこを再び口に含み、チロチロと舌を動かした。
「フルーツか、花の蜜のような匂いがする……」
「なぜそんな、変な、ことを言っ……ぁあッ、首、やめ……」
緑と花に囲まれて、上裸で小さくビクビクと震えるザナックがおかしくて、可愛い。彼の後ろからズボンに手を入れる。
「ひあ!?」
前の方の愛液が垂れて来ていて、下着の中はもうぐちょぐちょだった。
「これなら潤滑剤はいらないか……」
「……え?」
息も絶え絶えなザナックの混乱が聞こえた気がしたが、無視して続行した。押し開くようにナカに侵入し、傷つけるつもりはないので数ミリ単位で動かす。焦らしてしまうことにはなるが。
「あ、あいんずさま……こんな、とこで」
「今更だろう」
「ですが、だ、だれかとおりますよねッ……」
膝の上だったらまだ言い訳出来る可能性はあったかもな。そうだな、この体制は不審すぎる。
「ま、ま、まってくださいっ……もしみられたらっ……」
「その時は転移して逃げればいいだろう」
「そんな……適当なッ…………」
「そんなに嫌なら今から俺の部屋に戻るか? そうしたら君の話をちゃんと聞いてあげようか」
「俺は……その、話したく……ないんです」
(君も頑なだな。ザナック)
「それは、俺よりクライムの方が信頼出来る関係だと言っているようなものだぞ?」
「く、クライムは無関係です、アインズ様!! アイツはただの……妹の騎士だったってだけで…………むしろ俺は向こうに苦手意識を持たれてる方で……」
「俺は…………ただの男に負けたのか」
「いえ!? そうではなくてっ…………幼少期から城に一緒に居たので…………ただ、何となく仲良く見えるかもしれませんが…………本当に何も無くて」
幼なじみってやつか。
「ああ、君の幼少期か……可愛いだろうな」
小さな体躯、ふにふにの手足、ほんのり染まったぷくぷくのほっぺた。じんわり染みる、子供体温。金色の柔らかな髪を揺らして、エメラルド色の瞳が無垢に俺を見上げる。完璧に想像出来るな。
「あ、あいんずさまっ……だから、弄るの、やめ……てくださ……」
ぐちぐち、と前立腺を指の腹で押す。ザナックの脚が震えて落ちそうだ。
「余計妬いてしまうようなことを言われたんだが。……どう責任取ってくれるんだ」
荒い息を押さえて囁いた。何もかも爆発しそうだ。だから少しだけ彼に密着した。
「ひっ、ち、近いです……あの、当たってます…………」
「なにが」
「や、あっ……いじりながら、押し付けないでください…………」
押し付けているのはそっちだ。腰を揺らしてお尻をこちらにくっ付けて。
「君は俺を煽る天才だろ」
俺は怒りを滲ませて凄んだ。
「ええっ…………何かお気に障りましたか……?」
ザナックは項垂れた。皮肉は通じるのに本心は届かない。
「君の全部が俺の気に触れる」
「うっ、すみません…………」
さらに項垂れた。やめろ。君が視界に映るだけでもう限界寸前なのに、そんな可愛い仕草をするな。
「あまり可愛いことをしていると犯すぞ」
「ひいッ……なぜ急に!? スイッチはどこですか……!?」
君が庭園への呼び出しに応じる前から。ずっとエンジンかかりっぱなしだっての。
「大丈夫、合意はとるつもりだ。」
「犯す、の問題はそこじゃありません!!」
ぽん、と頭に手を置くと、涙目のザナックが振り返った。
「嫌か?」
「いやでは、ないです……ですが、常識的に考えて…………」
「庭園でこんなことされておいて、抵抗しないくせに、君が常識を説くのか。というかそろそろ限界だ」
「怒りが……?」
「ふう……今ので少しイラッと来たが違う。強いて言うなら欲情が、だ。」
「あ、あの……流石に冗談か何かですよね……? こんな所で……するなんて、」
ぐっ、ともう一度。熱く膨れ上がったものを布を隔てて擦り付けた。
「コレが冗談に思えるならいい。夢か何かだと思ってそこでそのままで居ろ。」
勢いで命令口調になってしまった。
「はい……っ!」
が、ザナックも反射か、よく通った声で返事をした。
(これで合意を得たな)
壁に手をつくザナックの後ろから俺のローブで覆い隠すようにした。
「ほら、脚開いてザナック」
「は、ふぁい……っ」
従順に脚を開く様子が気に入らない。俺は、自分から脚を開いて、君に俺を切望してほしいのに。ガッと力強く彼の腰を両手で掴んだ。
「君は犯されたいのか」
「違い、ます…………貴方が望むなら、それも良いと……」
震えて、彼は壁に額をつけた。
「酷いぞ、それは」
(傷付くな……)
「まるで、自分は真には望んでいないけど、と俺に丸投げするような言い方じゃないか」
掠れきった言い訳が細く耳に届く
「すみません……そのようなつもりは」
「本当に無いと言い切れるのか」
右手をぐっとマッサージするように力を入れた。ザナックの身体を滑り押し上がっていく。ふにゅりとした胸が手の中に収まり、揉むたびに指にフィットして形を変える。
「っ……は、あ」
「俺が言えばなんでもするのか? 君は。なら、死ねと言われたら、自ら命を絶つのか? 俺がこんなに頼んでも自分の事は一切話そうとしないくせにな。」
「あ、いんず……さま……ふぁ、」
「黙れ」
左の方もやんわりと包み込んで、両胸同時に揉みしだく。
「ずっと俺の所に居ろ。自分が従順な犬だとでも言いたいのなら、閉じ込めても構わないよな。他人の手を舐めないように、しっぽ振って愛想ふりまく事が無いように」
ザナックの啜り泣く身体が震えている。
「俺が毎日世話をしてやろう。婚約指輪なんかじゃ足りないか? 首輪も着けてみるか」
「ひっ、あ…………!」
小さな左手を掴み、赤い宝石とリングを、薬指ごと口に含む。じゅぷ、チュッ……。しゃぶって、離すと、糸を引いた唾液が銀色に光った。
「……聞いているんだよ。君は本当に犬になったつもりか」
「アインズ、さま…………ごめんらさい……ゆるひて…………ごめ、なさ……」
ザナックの喉は震えていた。怯えきって縮こまる。突然、我に返った。
「……俺は酷い男だな。約束は破るし、君を突き放してしまったし、怖がらせるしで…………最低だ」
本当は分かっているんだ。君が少なからず俺に好意があることも、俺を君の特別にしてもらえてることも。だけど、だからこそ知りたいじゃないか。
「好きだよ、ザナック」
短いズボンを太ももまでずり下ろして、俺の為にだけ履かれた黒いショーツの形をなぞった。リボンとレースの刺繍が美しい造形だった。人差し指を入れ、徐々に脱がせていく。引き離すと、透明の粘液が糸を引いていた。
「や、あ……んッ」
柔らかいそれを開き、潤んだアナルに押し入る。もはやザナックを壁に押し付けて腰を密着させていた。
「ひうっ……あんっ」
先端が入るとぐぷぐぷと音を立てて飲み込まれていく。
「あんあん鳴いてないで抵抗のひとつでもしたらどうだ……っ」
締め付けられて、どんどん奥に誘い込まれる。小動物のような弱々しい抵抗をするザナックの両手首を掴んで壁に縫いつけ、脚で太ももを固定した。
「ほら、考えてみるといい。どうしたら解放されるか。……奥に入ってしまうぞ」
右の耳の穴を舐めながら囁くと、彼はふるふると左右に首を振った。
「何も考えられなくなるほどぐちゃぐちゃにされる前に……早くした方がいい。俺は君を虐めたい訳じゃない。話をしたいだけだ。どうして俺は信頼されていないのか、どうしてクライムが選ばれたのか。」
「くらいむを、え、らんで……ない、です…………」
ザナックは話そうとしない。ただ否定しただけで。
「君は頭が良いよな。だが、たまにポンコツになる。」
「……へ?」
「俺と行為の最中なのに他の男の名前を出すな。君の口からその名前をそれ以上聞きたくない。もう許せない」
ずぷっ! 鈍い水音が庭園に鳴り響き、ヒィッとザナックからも悲鳴が上がった。快感を求める動きはせず、ザナックのイイところだけを擦り、突いた。
「やっ、あんっ、あ、ぁあんッ……」
「本当は監禁でもしてやりたい気分だ。だけど…………それをしたら、もう戻れない気がするんだ」
「アぁッ……あん、はふぅ……アインズっ、さまぁっ……ん、はぁっ…………」
「気持ちが良くて仕方ないんだろう? 良い、俺の事だけ考えていてくれ……」
ザナックの好きな突き方、好きなペース、好きな言葉。
「……可愛い。ここ気持ちいいか、ザナック?」
彼は、「可愛い」と言われるのが好きだ。彼は、名前を呼ばれるのが好きだ。言うたびにナカを締め付ける。耳を赤くする。一瞬だけ目を逸らす。恥ずかしげに口がもにょもにょと動く。世界一愛らしくはにかむ。
「んッ、んうーっ……はぁあうっ……!」
ザナックの鈴口が、弾けた白濁液で塗れた。ぐったりしたザナックを半ば抱きかかえるように支える。
「俺の知らない君があるのが許せない。クライムの上着を借りた? 俺があげた小遣いで買えばいいものを……彼が君に気があったらどうしたんだ。もし、こんなふうに犯されて……俺には見せない顔で、声で…………そうしたら俺は……」
俺の上着を羽織るザナックを想像した。いじらしくて、愛おしくて。すぐにでも抱き締めて、キスしてやりたくなる。それが当たり前だろう。当然の反応だ。クライムもそうなっていたかもしれない。クライムに触れられるザナックが頭によぎった。やめろ。俺の宝物に触れるな。俺から取らないでくれ。頭が割れそうだ。目の前が真っ暗になる。
「俺だけに見せて。俺だけに聞かせて。俺だけが君に触れる。俺だけが君の秘密を知りたい。俺だけだと言って。俺が一番だと……」
「んー……っ、ふ、」
いつの間にか俺はザナックの口を塞いでいた。
「……君の本心を聞くのが怖い。でも、知らないままで居ても……俺は壊れてしまいそうだ」
手をゆっくりと離すと、ザナックが胸に倒れ込んで来る。
「アインズ、さま……お部屋…………もどりませんか?」
「俺の部屋に…………来てくださいませんか」
不安が混じった瞳が、揺れていた。次の瞬間、俺はザナックの私室に転移した。
「……アインズさま」
体をだるそうにしながらも、ザナックはベッドにふんわりと腰掛けた。腕を広げ、俺を呼んだ。翠玉の瞳が生理的な涙に濡れて、揺れている。俺もそれに応えた。彼の体はやはりふわふわで甘い匂いがして小さくて、愛らしい。
「…………俺がその、アイツに……」
ザナックは咳払いをして続ける。
「クライムに対して……口が悪いのは…………昔からの癖なんです……。ラナーにも……悪態をついてしまって…………本当は……普通に接したいんです」
「何故、そんな癖があるんだ?」
ふ、とザナックが目を伏せた。まつ毛が震えているようにも見えた。
「それは、俺は次男でしたので第二王子で……昔から第一王子と競合関係にありました。……問題は兄上の性分でした。一言で言えば傲慢な、そのまま即位すれば貴族達の傀儡になりかねないような王子でしたので、俺はそれを刺激しないように王位に相応しくない人物として振る舞っていた時の……名残りです」
それを聞いた瞬間、俺はザナックの腕の中で崩れ落ちそうになった。後悔が押し寄せる。どれだけ自分が的外れな嫉妬をしていたか。
「…………疑ってすまなかった。君がそんな苦しい思いを抱えていたのに、俺は君に勝手な事を言った……それでさらに君を傷付けていたかもしれない……本当にっ……すまない」
「え……? ど、うして突然アインズ様が謝るんですか!? どちらかと言うと、手間をかけさせられた兄上に謝って貰いたいところですよ」
ザナックが片眉を下げて笑った。
「ずっと……辛くなかったのか」
こつん、と。彼の肩に額をくっつけた。
「え? ……まあ、辛かったでしょうね。記憶力には自信がある方なのですが……何故か、昔のことはあまり思い出せません……せいぜい食べたお菓子くらいしか……」
首を傾げて微笑む様子も痛々しく見えてしょうがない。
「──ザナック。俺が君の過去を知ることはもう、許してくれるんだろう?」
「ふっ、良いですが……俺は思い出すのは難しいですよ……? もちろん……全力は尽くしますが……」
「記憶をどんなに昔でも遡って詳細に見れる魔法がある」
「……なるほど?」
分かってなさそうなザナックが頷く。
ぱち、と瞬きして。
「だが条件がいくつかある。ひとつ、詠唱者と対象者が直前に同じ風呂で温まる事。ふたつ、詠唱者と対象者が心からの口付けをすること。みっつ、対象者が安心して眠りについた状態である事。」
「……ひとつ質問なのですが」
ザナックが控えめに、恭しく挙手した。
「あぁ。」
「その条件ってアインズ様の願望が入ってたり……」
「しない。一切ありえない。」
断じてない。
「きっと信頼している者同士でやる想定の魔法なんだろう。精度が落ちるが他の似たような魔法も……いや、こっちの方がより詳細な記憶を探れるし、俺達にはなんて事ない条件だろ?」
「少しだけ……なんて事あるんですが」
風呂に入るのはこれからなのに、
ザナックは、ぽっ、と頬を桃色に火照らせていた。
「大丈夫だ。俺も今、無いはずの鼓動が止まらなくなってるから」
俺が胸骨を軽く叩くと、ザナックは苦笑いした。
「いつも思うんですが……その、スケルトンジョークは笑っていいんですか?」