貞操逆転開拓村の種付け司祭 作:ユリイカ
薄暗い部屋のなかに、ぬるい獣臭が立ち込めていた。女性特有の甘く熟れた果実のような香気と混ざり、淫靡な美香が少年の鼻先をくすぐる。
「んっ。はぁ……」
木の軋む音がして、寝台の上に白く柔らかな大尻が乗る。なめらかな曲線を帯び、赤く火照った臀肉は重量感たっぷりに形を歪めていた。
ささやかな衣擦れの音が、荒い吐息に隠れている。シーツの上で仰向けになった少年は、生唾を飲み込んで喉を鳴らす。
「緊張してるの? 大丈夫、優しくしてあげるから」
彼の些細な動きを敏感に感じ取って、ふくよかな女は艶めいた微笑を浮かべた。麦藁色の豊かな髪をふわりと揺らし、頭頂部からピンと立ち上がった三角の耳を細かく震わせる。
素朴な麻布の衣服はするりと床に落ちて、むっちりとした豊満があらわになる。胸元を締め付ける細い帯は頼りなく、今にも溢れんばかりの乳房は甘い母性の香りを放っていた。その先端で膨らむ薄桃色の蕾が、女の情欲の熱を滲ませている。
「ほら、司祭さま。一緒に裸になりましょう」
「は、はいっ」
女性の細長い指が、少年の薄い胸板を撫でる。たったそれだけの刺激で、彼は感電したように微かに震えた。その様を見た女は笑みを深め、腰から伸びたフサフサの尻尾をゆるく揺らす。
「ごめんなさいね。村で最初の相手が、獣人だなんて。毛深くて嫌でしょう?」
「そんなことは……。と、とってもエッチだと、思います」
横たわる少年の足に跨り見下ろす美女は、獣の耳と尻尾を有していた。むっちりとした肉感溢れる下腹の、少し垂れた肉の下に濃い茂みがある。とろりと粘性のある液体を垂らす女性の象徴が、そこにあるのだ。
「ふふっ、かわいい子。なのにこんなにエッチな匂い……」
狐獣人の女は下着姿のまま、少年の下肢にのし掛かる。ずっしりとした重量感で、彼は力で抗えない存在であることを理解させられた。獣人族は、人間族をはるかに超える膂力を持つ。本気を出せば、ただの宿屋の主人である彼女でも少年をねじ伏せることは容易だろう。
だが、女の手つきは優しい。それでいて吸い付くような欲望もあった。鼻先を少年の膨らんだ股間に押し当て、深く呼吸をする。獣人の敏感な嗅覚に、彼の匂いを注ぎ込むように。熱い吐息と共に、彼女は発情しきった表情へと変わる。
「さあ、司祭さま。村のために……女神の導きのまま……」
狐獣人の美熟女の筋の通った鼻先が、少年の肌を擦りながら耳元へと向かう。小さな男の身体にずっしりと豊満な肉体を押し付けながら、彼女は艶然と笑みを浮かべて囁く。
「私に種付け、してくださいね♡」
†
がたんっ、と下から突き上げられるような衝撃でソラの眠気は吹き飛んだ。御者台の方から声がして、彼は目を擦りながら起き上がる。幌の隙間から差し込む光は強く、まだ昼前といったところか。動きを止めた竜車の荷台から飛び降りて前方に回り込むと、轡を着けた地竜が四肢を投げ出して地面に腹を付けていた。
「ええい、このっ。さっさと起きないか!」
「大丈夫ですか?」
御者が手綱を引っ張っても、地竜が起き上がる気配はない。少年が思わず声をかけると、御者台の女はぎょっとして振り返った。
「司祭様。申し訳ねえです。道端の石に乗り上げちまって、なんとか引っ張らせようと思ったんですが、諦めちまったみてえで」
頭に手をやりながら肩を落とす中年の女は、どこか怯えているようにも見える。なんとか竜車を動かそうと悪戦苦闘していたが、どうにも地竜の反応が鈍い。
「聖都から一月以上、ずっと働いてくれましたからね。疲労困憊なんでしょう」
ソラは乱れていた礼衣の襟元を正しながら、倒れて舌を出したままの地竜の頭の側に歩み寄る。分厚い鱗に覆われた、トカゲのようにも見える魔獣。大空の覇者とも称される龍の血を引く、頑強な存在である。それでも、この長旅は身に堪えたらしい。
なにせ道は進むほどに細く頼りないものになっていき、今やほとんど獣道に毛が生えた程度のものでしかない。ゴロゴロと大きな岩も転がり、しょっちゅう車輪が引っかかる。
「やっぱり、この馬車は止めるべきだったのでは」
「いけねぇですよ。星光教の司祭様をお送りするのに、これでも質素すぎるくらいです」
ずっしりと重たい堅木を組み、丁寧に磨き上げて作られた荷台に、分厚い幌がかかっている。ソラの祈る道であり、大陸全土で広く信仰されている星光教の象徴たる黄金の星が、屋根から真っ直ぐに伸びた柱の先端で燦然と輝いている。
周囲は人の手が入っていない原野である。そんな荒涼とした地に、これほど場違いな存在はない。
ブンブンと首を左右に振って強い主張を突き上げる御者に苦笑しながら、ソラはへたり込んでいる地竜の頭をそっと撫でる。
「ありがとう、地を駆ける偉大なる龍の末裔よ。君の献身を、北の塔の女神もしかと見届けたはずだ。――村まではあとどのくらいですか?」
「へえ。順調にいけば、今日の夕暮れには辿り着ける予定でさ」
長い旅の終わりは、もう見えている。
あとほんの僅かな距離があるだけだ。
ソラが優しい手つきで竜の頭を撫でる。その手のひらから、淡い燐光が溢れ出した。無数の光の粒がふわふわと風に流れながら、竜の分厚い濃緑色の鱗に染み込んでいく。
「司祭様の奇跡! おお、ありがたやぁ」
「僕はそんなに大層なものではないですよ。これは女神様による祝福。主の慈愛の賜物です」
胸に手を当てて拝み始める御者に答えつつ、ソラは優しく撫で続ける。そのうちに、地竜の脚に力が漲り、短い尻尾の先端までぴんと伸び始めた。竜はおもむろに立ち上がると、勇ましく喉の奥で唸る。
御者が手綱を揺らすと、竜は力強く地面を踏みしめ、軽々と岩の隙間に嵌まり込んだ車輪を引き抜いた。
「おおっ! 流石は司祭様。ありがてえです!」
「お礼なら彼――じゃなくて彼女に言ってください」
ふすん、と誇らしげに鼻を鳴らす地竜。それを見て眉を寄せる御者。どちらも、ソラとは異なる性別だ。彼女たちは星光教の主神たる女神の寵愛を受けた存在であり、男とは比較にならないほどの力を宿す。
司祭であるソラにできるのは、その信仰心を通じて女神の祝福を与えることだけ。対してこの世の女性たちは、女神の力そのもの――すなわち魔法を扱うことができる。圧倒的な力の格差、これによってそれぞれの立ち位置は確定していた。
すなわち、女こそが男を守るべし。男は身を尽くして女を支えるべし。
「さあ、乗ってくだせえ、司祭様! ハロモ村はもうすぐでさぁ!」
御者の女はぽん、と胸を叩く。その拍子にたゆんと豊かな胸が揺れて、ソラは思わず目を逸らす。彼の初心な童子のような反応に、女はけらけらと笑い出した。
「しっかりしてくださいよ、司祭様。あっしの胸なんかでまごついてたら、村でやっていけません」
「ええ、それは……。司祭としての務めは、十分に理解していますよ」
竜車は丘を越えて、景色は広がる。
眼下に鬱蒼と茂る黒々とした森が見えた。波が押し寄せるようにこちらへと迫るあの森のそばに、ソラの向かう地がある。魔の森と呼ばれる前人未到の秘境を切り拓くために置かれた開拓村だ。
ソラはそこに作られた教会の司祭として赴任する。
辛く険しい開拓の日々で疲弊する村人たちに、星光教の教えを説くために。そしてもう一つ、同じくらい重要な別の役割のために。
「見えてきましたよ、司祭様!」
御者が叫ぶ。
丘を下る竜車の目指す先に、数軒の建物が寄り添うようにして作られた小村が現れた。向こうからも丘を下るソラたちの姿はよく見えるのだろう。簡素な木の柵と共に設けられた門の袂に、村民らしき人影がいくつか集まっている。
竜車が近づくほど、村の輪郭も人々の姿もはっきりしてくる。
やがて張り上げた声が届きそうな距離にまで迫ると、集団のなかから一人の女性が歩み出てきた。
「彼女が村の代表のようですね。恰幅のいい獣人だなぁ」
ソラと同じく人間族である御者は、羨望の眼差しを向ける。彼女でさえ、男であるソラは到底かなわない存在だが、獣人はそれをも凌駕する力の持ち主だ。
彼女は鮮やかな小麦のような髪色で、細い目に優しげな微笑を湛えていた。エプロンと麻服という簡素な服装ながら、たっぷりとした豊満な肉付きと、迫り出すような胸が、鮮烈な印象を与える。
ふさふさの柔らかな尻尾を揺らし、三角の耳をピクピクと震わせながら、彼女はソラを出迎える。
「ようこそ、司祭さま。ハロモ村一同、首を長くしてお待ちしておりました」
しっとりとした、耳に残る声だ。薄く開いた目の奥の光に、思わず呑まれそうになる。
はっと気を取り直したソラは竜車から降りて、彼女と対面する。そうするとよりいっそう、男女の差、種族の差というものが歴然と示される。ソラの顔はちょうど、溢れそうなほどの胸の谷間に埋まる高さにありつい圧倒されてしまう。
「私はフェルネ。村で宿を営んでおります」
たぷん、と盛大に胸が揺れる。果実の柔らかさを体現しながらかがみ込んだフェルネは、子供にそうするようにソラと視線を合わせて微笑んだ。
「どうかこの村のため、よろしくお願いいたします」
「は、はいっ」
緊張で声を上擦らせながら、ソラも応える。
「がんばって――皆さんに種付させていただきますっ」
彼は星光教の司祭。
星の導きによって開拓村の女たちの心を支え、そして開拓村の未来のために子を孕ませる。そのためにやってきた。