貞操逆転開拓村の種付け司祭 作:ユリイカ
日も暮れて篝火が点々と灯るなか、ハロモ村で歓迎の宴の幕が上がった。
主役はやはり、今日この村にやってきた星光教の司祭ソラである。
大釜亭の正面に位置する広場には大きな火が焚かれ、その周囲に村人たちが集まっている。中には既に赤ら顔で身体を揺らしている不届者もいながら、彼女たちはゲストの言葉に耳を傾けていた。
「そして星光歴という新たな時代が始まり、人々は女神ポラリスの導きを支えに歩み始めたのです。それはまさに冒険の時代、勇気の舞台と言えるでしょう。彼女たちこそが御伽話に現れる勇者そのものと言って間違いはありません。先人たちの切り開いた歴史という道に、我々も歩みを進めているのです。そして今、この瞬間、このハロモ村もまた勇者たちが集結しています。北方に輝く不屈の光をその胸に宿して未知へと挑む。これを偉業と呼ばずしてなんとしましょうか。私にできることは、その歩みを支えるわずかな力添えだけ。真に重要なのは皆様の熱い気持ち。星々のように燦然と輝く決意そのもの」
宴の開幕が代表のフェルネによって宣言され、景気付けにとソラが壇上に上がり、かれこれ半刻が過ぎ去ろうとしていた。立板に水の、星光教の聖典になぞらえた語りに村人たちも当初は頷きを伴いながら聞き入っていた。しかし、10分を超えたあたりで違和感を覚える者が現れはじめ、20分を過ぎれば座り込んで酒を煽り出す者も続出しはじめた。
ソラはキラキラと輝く瞳で、なおも流暢に舌を回す。もはやその終着点がどこにあるのかさえ、誰にも分からない。
「いくらなんでも長すぎる……」
「流石は司祭さまねえ」
「そんなレベルを超えてるだろ」
素知らぬ顔で宿の三階の一室から出てきたディーダは、長すぎる説法に眉を寄せる。聖職者の説教は無駄に長ったらしいイメージがあったものの、まさかこれほどまえとは。
「ところでディーダ。司祭さまとはどうだったの?」
「ん〜? そうだなぁ。……ま、多少はヤっるんじゃないか」
フェルネさえもソラの声から意識を離し、人の悪い笑みでディーダの脇腹を突く。
手コキで適当に射精させて男女の力の差を見せつけた上で性奴隷にしようかと思ったら、予想外の絶倫っぷりでむしろ逆転して降参宣言させられました。などと正直に話せば、村の女たちにどんな目で見られるか。少なくともS級冒険者としての尊敬の眼差しだけではなくなるだろう。
「男のわりには結構やるよ。ま、あれならまたお願いしたいね」
ディーダはあえて詳細をぼかしながら、余裕のある口調で語る。
ソラ本人から事後の話題のひとつで尋ねたところ、まだフェルネとも本番はやっていないという。ならば自分が初物を得たという事実は揺るがない。ソラ自身、この村にやってくるまで女と身を重ねたことはないと言っていた。
それにしては、不可解な点もある。
ディーダはフェルネに悟られぬように顎に手を添える。
鬼人族は人間の男とは比較にならないほどに強靭でタフな身体の作りをしている。体力も無尽蔵で、肉弾戦のスペシャリストと言ってもいい。そのうえ、S級冒険者とて活躍するディーダならばなおのこと。
そんな彼女を、ソラは一方的に攻め抜いたのだ。いくらディーダが普段からオナニー狂いの素人処女だったとて、あの小柄な少年にいいようにやられるとは思いもよらない。
彼の性技は卓越していて、的確にディーダの敏感な部分をいじらしく責め続け、あっという間に追い詰めていった。あれは本当に童貞の技なのだろうか。
「なあ、フェルネ。あいつ、本当にただの司祭なのか?」
「そのはずよ? 星光教も、開拓村に妙な人物は送り込まないでしょう」
開拓を進め、人類の版図を押し広げる役目を担う開拓団は、環境や魔獣などに晒されストレスも溜めやすい。そんな激戦区で疲弊する彼女たちを癒すため、星光教からはセックス係が使命されるのだ。
開拓村の活動は、そのまま人類の安寧に直結する。そんな重要な役目を担う開拓村の女たちに、適当な男をあてがうわけでにはいかないのである。ソラの身元は星光教の総本山である聖都の大聖堂が保証しているのだから。
「なに? もしかして調子に乗って司祭さまに無様な姿晒して降参しちゃった?」
「なっ、そ、そんなわけないだろ!」
「司祭さまのオチンチン、可愛いお顔に見合わない凶悪さだもの。恥ずかしいことじゃないわ。毎晩宿中に響いてるオホ声オナニーと比べたら」
「……は?」
フェルネはすっと目を細め、尻尾を揺らしながら壇上のソラの元へ向かう。
「司祭さま♡ 申し訳ないけど鍋の方も煮詰まってしまうわ。そろそろ……」
「ちょっ、フェルネ!? どういうことだ。あ、あたしの声って訳じゃない、と思うぞ! そんなの知らない!」
顔を真っ青にして叫ぶディーダはその場に置いて、フェルネは焚き火の周りで途方に暮れている村人たちをソラに示す。そろそろ立って話を聞くのも辛くなってくる頃だ。
「す、すみませんっ! つい夢中になってしまって……」
ソラもはっと我に返って周囲の様子にようやく気付く。手にした杯も、すっかり緩くなってしまった。
「と、とにかく今後ともよろしくお願いいたします! ――乾杯ッ!」
強引な幕引きで、葡萄酒が掲げられる。
待ちくたびれていた村人たちも一斉にそれに続き、華々しい声が村中に響き渡った。
「さあ、司祭さま。どんどん食べてね♡」
腕によりをかけて作ったんだから、と宿の女将が少年を手招きする。大釜亭のキッチンから次々と大皿に盛られた料理が運ばれてきて、村人たちがわっととりついていく。亡者のような大喰らいたちを尻尾で叩き落としながら、フェルネはソラに取り皿を渡す。
「ありがとうございます! こんなに沢山……。どれも美味しそうで迷っちゃいますね」
「うふふ。そう言ってくれると作った甲斐があったわ」
ソラがディーダと初めての交わりに精を出している間にも、フェルネたちは宴の準備を進めていた。品目のなかには、ディーダが狩ったと言っていた猪を使ったものもある。
森の恵みをまっすぐに感じるような料理の数々に、ソラも舌鼓を打つ。
「聖都のものと比べたら、少し田舎臭いかしら?」
「そんなことはありませんよ! って、僕はずっと教会のなかにいたのであまり普通の料理を知らないんですけどね」
「あら、そうだったの?」
口いっぱいに頬張りながら、苦笑するソラ。
「ずっと司祭になるための修行をしていたんです。聖典を読んだり、祈祷したり……。食事も自分で作って、素食に努めていましたから」
「えらいわねえ」
「そ、そんなことは。むぅうっ!?」
こともなげに言い放つソラの半生を思い、フェルネはつい感極まる。気が付けば、彼女は思い切り少年を抱きしめていた。
突然柔肉の温かな感触に包まれた少年は、窒息しそうになりながら慌てて身を捩るのだった。