元暗殺者の七転人生 作:京谷ぜんきまるpixiv
あの日の闇闘技場は、汗と血と劣情の匂いが充満していた。
観客席で試合を観戦していたアルパイスは、リングを見下ろす。
金髪碧眼の怜悧な瞳が、リング中央の女を捉えた。
ラーシャ。
褐色の肌に炎のような赤髪、筋肉質の肢体を白い蛇皮衣装が締め上げている。
布面積は下着並みで、豊かな乳房と引き締まった臀部が強調され、鍛え抜かれた筋肉美が惜しげもなく晒されている。
高い戦闘スキルと人間の限界を超えた膂力。
戦場では敵を震え上がらせてきた女だ。
個人的には
(……暗殺対象なんだがな)
アルパイスは静かに息を吐いた。
南大陸最高の諜報組織の長アルパイスはレイラという偽名を名乗り、ザフラール王国のジャビル王から影の仕事を一手に引き受けている。
だが、今回の依頼主は王ではない。ジャビルの息子である第一王子レジャスからの依頼だ。
依頼内容は明確だった。
「ラーシャを闇闘技場で始末しろ。あの女からは手ひどい損害を受けている」
“手ひどい損害”とはラーシャが過去にレジャス麾下の兵団を壊滅させたことである。
ともかく報酬は破格。悪くない仕事ではあった。
もちろん引き受けた以上、失敗は許されない。
× × ×
ラーシャの試合が始まった。
相手は敏捷なエルフの女剣士、ディナ。
細身の体躯に美しい髪をなびかせ、革鎧が形の良い乳房と尻を強調する。
華麗な剣技で観客を魅了する存在だ。
「ふん、こんな筋肉バカに負けないわよ!」
ディナの挑発に、ラーシャは笑ってみせる。
「おいおい、そんな細い剣であたしを傷つけられると思ってんのかよ!」
大柄な身体が回転し、稲妻のような手技で剣を弾き飛ばす。
さらに流れるような動作でディナの腕を掴み、地面に叩きつける。
脚で腹を踏みつけ、動きを封じる。
勝敗はあっけないほど早く決した。
だが大半の観客にとってはここからが本番だった。
観客の歓声が爆発する中、ラーシャはディナの革鎧をその怪力で引き裂いていく。
× × ×
陵辱ショーに興味は無いアルパイスだったが、試合の決着が付いた後も食い入るようにラーシャを見つめていた。
(あの圧倒的なパワーを、
既にアルパイスの頭脳はラーシャとの戦いに備えて目まぐるしく働いていた。
× × ×
ラーシャはディナの腕を掴んで強引に半身を起こさせると、その背中を抱きすくめながら、観客達によく見えるように上着を下着ごと引き裂いた。
汗に濡れた白い肌が露わになり、乳房が揺れる。
エルフのなめらかな白い肢体と、ラーシャの戦女神の如く逞しいも美しい褐色の肉体が重なる。
ラーシャはほぼ無抵抗になった敗者の体をまさぐり始めた。
ディナの乳首が硬く尖り、ラーシャの指で摘まれると、
「うっ……」
声が漏れ出た。ビクンと体が震え、汗が飛び散る。
褐色の指がついにディナの股間を覆う股布を脱がした。
これは破らない。半分だけ脱がせて、ディナの片足に引っかけておいた。
そして、ラーシャの指責めが始まった。
「へぇ。さすがエルフ。薄毛だな」
「いや……あ!」
「ちんまりとした体の割りにはよく鍛えられているじゃないか……」
「あっ、あっあっ……」
「
「あうっ!!」
ラーシャの愛撫にディナの肉体は打てば響く楽器のように応えだした。
指の動きは始めは繊細だったが、徐々に激しくなっていく。
やがて観客席までグチュグチュとした淫らな音が届くかも知れない……と思わせるほどの指の
唐突に指責めをしていないラーシャのもう片方の手が、ディナの下腹を一瞬だけグッと押した。
「そこぉッ、押さないでぇ――――――イッッッ」
ディナの腹直筋が激しく収縮したのと、ラーシャが両手をパッと離すのは同時だった。
「イクッ――またイク!」
ディナの股間は間欠的に白濁した秘蜜を噴き出した。
ラーシャはディナを抱きかかえ、幼児に放尿させるときの格好にして立ち上がると、
そのままの状態で指責めを再開されてディナはついに哀願しはじめた。
「もう、もうやめてっ! 許して――んおぁ!!」
指責めで何度もディナを快楽の極みへ導いてやった。
もう声も出ないほど疲弊したディナは、なおも惑乱しながら激しく腰を揺すり、すすり泣きを漏らしていたが――。
直後に、その体を弓なりにして頭を仰け反らせた。
「アァ――――――――――!!!!!!」
最後の痛切な、しかし甘い悲鳴が闘技場に響いた。
オオオオ――。
観客の劣情が頂点に達した。
「これが勝者の権利だ!」
ラーシャはぐったりとしたディナを肩に担ぎ、拳を掲げて勝利を宣言する。
× × ×
「巧いじゃないか」
ぽつりと、アルパイスは感想をもらした。
その視線は他の観客が釘付けになっているディナではなく、ずっとラーシャを常に捉えていた。
闘技場に轟く歓声と鳴り響く指笛を聞き流しながら、アルパイスは唇を軽く歪めた。
(……ますます、殺すには惜しい)
暗殺の依頼など、どうでもよくなった。
この女の戦闘力。野性味のある美しさ。観客を支配するカリスマ。
すべてが、アルパイスの掌中に収めたい「素材」だった。
そんな彼女が今は闇闘技場という
半分本気、半分見世物の試合で大金を稼ぎながら、己の恥を晒す日々。
それでも、彼女が金を稼ぐ理由をアルパイスは調べ上げていた。
(使える……いや、欲しい)
アルパイスは立ち上がり、静かにリングを見下ろした。
今夜、この女を完全に自分のものにする。
それが、彼女の流儀だった。
使えると思ったもの。
欲しいと思ったもの。
物であろうと人であろうと、掌中に収められると思ったものは必ず手に入れたい……アルパイスはそういう女だった。
× × ×
拳を掲げ、勝利を宣言したラーシャは華々しい笑顔を向けながらアリーナを退場した。
だが内心は虚しかった。
見世物半分の行為に、戦士としての誇りが削られるのを感じていた。
(いつまでこんな生活を……)
試合後、ラーシャは汗を流し、私服に着替えて夜の街へ出た。
皮製の部分鎧と拳布だけが、彼女の最低限の武装だ。
武器は質流れで失っている。
闇闘技場のある街アイザートリアは南大陸の北端にあり、港もあって北の大陸との貿易も盛んだ。
地底に存在する魔界とも繋がっていて、様々な非合法な取引が横行する無法都市だった。
ラーシャは闘技場を運営している組織の息がかかった酒場に入り、連れの輪から距離を置いて酒を飲む。
孤独を噛み締めていると、一人の女が横に立った。
背丈はラーシャと同じくらい……百八十五センチはある。
マントの下に隠密装束を着込み、大剣を肩に担いでいた。
服の下に浮かぶ筋肉の線は鍛え抜かれた強靭さを物語っている。
白い肌、金髪碧眼の整った顔立ちに、怜悧な凄みが加わっている。
(相当な手練れだな……)
「何か用かい?」
「今日の試合、素晴らしい戦いだったよラーシャ」
「あの、見世物半分の試合がかい?」
ラーシャは笑った。
「それでも、お前の戦士としてのレベルの高さは伝わった。私の名前はアルパイス。隣に座ってもいいか?」
「お断りだよ。他にも席はあるだろ」
アルパイスは苦笑した。
蒼い瞳に賞賛のまなざしを浮かべ、ラーシャの肢体をほれぼれと見つめた。
「なら単刀直入に言おう。私と立ち合ってみないか?」
ラーシャは冷ややかに首を振る。
「アリーナ以外じゃ試合しない。それがルールだ」
席を立とうとするが、アルパイスは追う。
「試合ではない。《立ち合いだ》。私が負けたらこれを支払う。私が勝ったら……一晩つき合え」
そう言ってアルパイスは懐から金貨と宝石が入った袋を見せた。
二年間は豪遊して暮らせる価値はある代物だった。
(裏があるのか? それとも……あたしを簡単に倒せるとでも?)
ラーシャは赤毛を掻き上げ、口角を上げて笑顔になった。
だが、目は笑っていなかった。
「……わかった。ついてきな」
ラーシャは付き人に顎をしゃくると立ち上がった。
「そうこなくては。受けてくれて、感謝する」
アルパイスはそう言いながら、ラーシャが内心ブチ切れていることを察し、会心の笑みを浮かべた。
身の内に闘争本能をかき立てる闘気と