元暗殺者の七転人生 作:京谷ぜんきまるpixiv
ラーシャとアルパイスは闇に溶け込む路地へと移動した。
付き人は路地の入り口で見張りに立った。
薄暗い路地の奥は壁に阻まれて行き止まりになっていた。
湿った空気に満ち、遠くから酒場や賭場の喧騒が微かに聞こえてくる。
「ここでやろうか。立ち合い……真剣勝負と言ったのはあんただぜ? 死んでも恨むなよ」
「もちろん」
そういって、アルパイスは肩に担いでいた大剣を路地の端に置き、軽装アーマーも脱いで革の下着姿になる。
ラーシャは目を瞠った。
「素手であたしと闘るつもりか? 防具も着けずに」
「そちらも無手だろう? ならばそれに合わせるまで」
「……フン!」
路地裏で対峙した二人は、互いに構えを取る。
拳打の応酬で闘いは始まった。
アルパイスは互いの体が密着するほどの接近戦をしかけてくる。ラーシャは後方に下がると見せかけて強烈な蹴りを放った。
足技は闘技場の試合では一度も見せたことがなかった。
しかし……アルパイスはマントを脱ぎ払い、その布地でラーシャの蹴り足を絡め取った。
そのままアルパイスは突進しラーシャを押し倒した。
二つの女体が絡み合った。
アルパイスは馬乗りになり、手打ちの拳打を振り下ろす。
大したダメージは無い。
……しかし、ラーシャはアルパイスの攻撃を受ける度に次第に強烈な違和感を覚え始めた。
アルパイスの拳を受けた箇所が熱い。
(こいつと密着するのは……マズい!)
ラーシャの戦闘本能がそう告げていた。
なんとか馬乗りになっているアルパイスをはね返すか、拘束からすり抜けようとするが、できない。
背丈の違いは無いが、筋肉量でいえばラーシャの方が上だ。
いつの間にか互いの両手を掴み合う形となった。
いわゆる『手四つ』の状態になって実感する。
やはり膂力は自分の方が上だ――と、ラーシャは感じる。
それなのに、自分の脇腹を締め付けるアルパイスの脚の動き、胸部に己の肉体の圧をかけてくるアルパイスの技倆に、
「う、うぐ」
ついにラーシャが、うめき声を発し始めた。
アルパイスの体と接している箇所、触れられるところが、疼く。
戦いの最中に優しく撫でられているかのような……否、まるで戦いながら愛撫を受けているかのような……。
それは、歴戦のラーシャでさえ、全く未体験の戦闘スタイルだった。
「こ、これはッ!?」
「少しは、気づいたか」
(戦う相手へ燃やす闘志と欲望を融合させたかのようなスキルだ!)
通常のこの世界の高い
肉体が闘気を纏うことで、膂力、体力、スピードなどの身体能力が大幅に向上する。装備した武器に纏わせることもでき、威力を高めることができる。
当然ながらラーシャもアルパイスも闘気を発し、操っている。
だが……アルパイスの身体操作と技には闘気とは別のものが混ざっているのだ。
なにか、熱くて蠱惑的なものが……。
突然、アルパイスが
はね起きてラーシャは飛び退った。
「今私が使っている技は
「い、淫気?」
「そうだ。闘気は身体能力を高め、肉体を鋼のように硬く、稲妻のように速くし、防御力と攻撃力を爆発的に高めるが、そこに淫の気を混ぜることで、触れた相手の体を内側から発情させ、感覚を乱す。強靭な戦士すら、戦いの熱さと快楽の渦に飲み込ませる」
「……」
ラーシャは絶句した。
夢魔や淫魔と呼ばれる魔族が、夢に侵入して精気を吸ったり、精神に干渉する魔法や幻惑魔法で敵を魅了したり発情させたりするのは知っている。
だが戦闘での攻撃や防御にそれを?
現実に今その技を受けている今も、どこか信じがたい気持ちがある。
「お前にとって、先程まで名前すら知らなかったアーツだ。無論、対処法も受け技も耐え方も、体内に注入された淫気の静め方も、何も知るまい。素手での組み打ちはあまりにお前に不利だ。だから、さっきの条件を出した……降参するか?」
アルパイスは、ラーシャの戦意を探るような目をして言った。
ラーシャは唇を噛んだ。
まだ、息が荒い。マウントをとられて体力を消耗したせいでもあるが、理由がそれだけではないのは彼女自身が一番よく分かっていた。
ラーシャの豊満な胸が息づかいと共に微かに揺れ、汗が首筋を伝う。
「ぷふ~~~っ」
大きく息をつき、呼気を止めると同時に、思い切り自分の頬をラーシャは手で叩いた。
全身の筋肉をたわめ、カッと目を見開く。
このまま降参わけにはいかない。それは戦士としての誇りが許さなかった。
ラーシャは呪文を呟き、秘められた力を解放した。
『
全身の肌に青いエネルギーラインが輝き始め、複雑な文様が浮かび上がる。
――普段は見えない、霊体に刻まれた魔法の文様の刺青だった。
刺青に溜め込まれていた強大な魔力が体を駆け巡り、筋肉がさらに膨張し、目が紫の光を帯びる。
眼が血走り、血液が沸騰しているかのような錯覚を起こさせるほどに闘気をみなぎらせた。体の妙な疼きが、消え去った。
「続行だよ……これでも、くらいやがれ!」
強化された彼女の拳の連撃を受け、アルパイスの体が後退する。
「ぐっ……いいぞ! さすがだ。淫気への対処法を編み出したか」
「行くぞ変態女」
ラーシャは上段蹴りを放った。
風鳴りがするほどのスピードと威力がルパイスの顔面を狙う。
アルパイスは腕で防御した。が、ラーシャは闘気を全開にして連続蹴りを放ち、突き蹴りがついにアルパイスを捉えた。
「ぐッ」
アルパイスが初めて顔を歪めた。
(勝機!)
ラーシャはアルパイスの腕を掴む。その腕に両足で飛びつき、腕ひしぎ十字固めに捕らえた。
足を絡めたまま、ラーシャが体を反らせばそのまま腕の関節と骨を破壊できる。
アルパイスは――
関節を極められてない方の手でラーシャの足を撫で上げた。
指先に研ぎ澄まされた淫気が込められていた。触れた処から足の付け根へと淫の気が蛇のように伝っていく……同時にもう片方のアルパイスの腕が、燃え上がるかのように発熱した。
ラーシャが狙いを定めた肘と接しているラーシャの、足の付け根に強烈な淫気が送り込まれた。
ラーシャに注入された淫気は針の穴に糸を通すかの如く正確に、彼女の芯の部分に染み込み、敏感な処にとてつもなく甘い痛痒をもたらした。
「腕ひしぎは……判断ミスだったな。そしてルストアーツ対策がなされていないその魔法の刺青。改良の余地があると思うぞ」
「うう!?」
霊紋刺青の紫の文様が、淫の気と反応し、輝きが乱れ始めた。
文様が熱く疼き、力の増幅が快楽の増幅に変わっていく。
腹筋が痙攣し激しく収縮を繰り返す。
ラーシャは、声を上げるのを必死にこらえた。
「~~~~~ッッッ」
淫の気が刺青を通じて増幅され全身に広がるのを感じて、ラーシャは呪文を唱えて霊紋刺青の体から消し去った。
大技の使用とその効果が消え去り、全身から、力が抜けるが、それでも必死に上体を起こしたラーシャの背後にアルパイスは回った。
ラーシャの全身は汗で濡れていた。その褐色の肌になおもアルパイスは指を這わせた。
「お前の闘志は素晴らしい。だが、実戦離れで勘が鈍っているようだ……今は私の技を、感じろ」
部分鎧の留め具を外され、露出したラーシャの胸の谷間にアルパイスの指が触れる。
淫の気が乳房に流れ込み、乳首が即座に、硬く勃起した。その尖りを摘まれた。
「あっ、ああっ、あ――――――」
ラーシャの喘ぎ声が路地裏に響いた。
アルパイスは彼女の脇腹に掌底を叩き込みながら、もう片方の手で尻を掴んだ。
「ぐあ! ひいッ」
闘気の衝撃で痛みが走るが、淫の気が尻肉を熱くし、秘部を濡らす。
生粋の戦士であるラーシャは尚もアルパイスの闘気に反応しようとするが、同時に淫気にかんじさせられてしまう。
「そろそろ降参したらどうだ?」
「……」
× × ×
……闘いは継続した。
だが消耗しきり、闘気の萎えたラーシャの攻撃ではアルパイスの防御を突破することはできなかった。
ラーシャは目潰しなどの闘気を纏っても脆い急所を狙うが、ことごとくかわされ、反撃を受け――その度に、快楽を刻まれた。
× × ×
「くそっ……ふざけんじゃねえ! こんな、屈辱ッ」
「お前も試合で負かした相手を辱めていたではないか」
「あ、あれは見世物で――」
「違う。そういうことではない。闘い、倒した後で犯す……闘りながら、犯る……それほどのちがいがあるかと、聞いているのだっ!」
鳩尾に強烈な振り下ろしの拳打を食らい、痛みと奇妙な快感が混じり、ラーシャの動きがいよいよ鈍る。
尻肉が強く揉まれ、秘部に響く振動が蜜を滲み出させる。
ラーシャの動きが、止まった。
アルパイスは彼女を抱き起こし、壁に押し付けた。
フラフラの状態になっても尚ラーシャは自律した。
そんな彼女の首筋を舐めながら軽く唇を噛んだ。
ラーシャの口端に血がプツリと滲んだ。
「いい加減に降参しろ。まだ続けるというのなら……敬意を込めて――お前を
耳元でそう囁かれ、ラーシャは大きく息を喘がせた。
――負けたくない。
――まだ、闘いたい。
そういう想いがあった。なのに、“お前を抱く”という言葉にラーシャの肉体は背筋に電流をはしらせてしまっていた。
思っていたような闘いでは無かったが、アルパイスは――強い。自分よりもはるかに。
彼女がその気なら、すでに腕を足をへし折られていたことだろう。
付け入る隙は何度もあったはず。何度も致命的な攻撃を叩き込む機会があったはずだ。
それなのに、なぜこのようにまだ自分を弄ぶのか。
屈辱だった。しかし、経験したことのない胸の高鳴りに困惑してもいた。
「な、なんでこんなことを――」
「気にするな。今は」
アルパイスの声は低く響き、立ったまま、ラーシャの汗だくの脚の付け根に指を滑り込ませる。
アルパイスも発汗していた。
闘気とともに淫の気が全身から立ち上る、それに触れられ、匂いを嗅がされ、味あわされるラーシャの息が荒くなる。
「どうした。戦士らしく耐えてみせろ」
下着をずらし、直接触れる感触がラーシャを震わせた。
指が濡れた茂みを掻き分け、そこを撫でる。
「あっ……そこ……やめろ……!」
すでに熱く湿ったそこを乱暴に掻き回し、敏感な箇所を摘まんで優しく捏ねられる。
「ここおに、直に食らうと…………効くぞ?」
淫の気が直接注入され、発情が加速する。ラーシャの体がビクンと跳ね、声が漏れた。
「ひああ!? く、くそがぁ!」
肉体がラーシャの心を裏切り、蜜が溢れ出す。アルパイスの指の摩擦が電撃のような快感を絶え間なく生み出していく。
アルパイスは困ったような笑みを浮かべ、一旦ラーシャを解放した。
壁により掛かり、必死に気息を整えようとする彼女を尻目に、自身の装備を解除し、隠密服も脱いで全裸になった。
アルパイスの露わになった肢体は女の美しさと戦士のたくましさを完璧に両立した肉体だった。
ラーシャは肩をすくめて、もろ手で我が身をかき抱きながらアルパイスの裸身を見つめていた。
「お前のような負けず嫌いは初めてだ……いまからお前の相手をする。それを持って立ち合いの終了とする」
まるで今までは前座だったと言いたげなアルパイスの言い様にラーシャは戦慄し、身震いした。
(怯えている? このあたしが!?)
アルパイスはラーシャの片足を肩に掛け、彼女の身体を悠々と持ち上げた。
そして彼女の股間に自らのそれを押し当て、戦いの続きでもするかのように腰を揺する。
「受け止めろ、ラーシャ――いや、ラセツ族の戦士よ!」
「な、なぜそれを――」
問い質そうとした声が詰まった。
見えざる何かがラーシャの内壁を押し広げ、侵入した。
「あ――あああああああ!」
アルパイスの肩にかかっていたラーシャの柔軟な足が天に向かってピンと張りつめた。
それは闘気と淫気で形成された陽根だった。
もはや物質的な圧さえも持った淫の気そのものがラーシャの中を熱く刺激する。
痛みと満ち足りた感覚が混じり、ラーシャの息が荒くなる。
「す、すごい……ッ」
彼女の筋肉質の体躯が、侵入者の圧倒的な存在感に震え、仰け反る。巨乳の輪郭が強調される。 再び壁に押し付けられた体が、アルパイスの恵体に密着し、熱気が二人の間を満たす。
奥深くまで埋まり、実際に内壁を擦る感触がする! 彼女の体を溶かす。
「まだ気を失うなよ……」
ラーシャは歯を食いしばり、アルパイスの気が深く侵入する痛みと快感に耐えていた。
淫気の侵入がより深く、はっきり感じられるようになっていた。
アルパイスは彼女の体を捻り、角度を変えながら深く突き上げる。
内壁の敏感な点を正確に狙い、激しい摩擦を生む。
突き込みによって淫の気が絶え間なく注入され、ラーシャは身も心もさらに上り詰めていく。
「あぁっ……深い……!」
ラーシャの声は甘く蕩けきっていた。
巨乳が激しく揺れる。
淫気に貫かれる度、物質的な力を持った圧に最奥のとば口が叩かれ、甘い痺れが全身に広がる。
アルパイスは片手で彼女の尻を叩き、もう片手で首を軽く締め上げる。
「ァ……」
息苦しさと快楽の狭間で、ラーシャの視界がぼやけ始める。
「お前は強い。いずれは、この愉悦にも負けないようになるだろう」
そう囁き、なおもアルパイスはラーシャに強烈な愛撫を与えた……。
× × ×
立ち合いは、終わった。
アルパイスは脱ぎ捨てた隠密服と部分鎧を着込み、崩れ落ちたラーシャの裸体を見下ろした。
彼女の筋肉質の褐色の体は汗と体液にまみれている。抱き起こしてみるが、起きる気配はない。 大きな呼吸で乳房が揺れている。
「さて……出てこい付き人」
「ヒッ」
路地の入り口で見張りをしていたはずのラーシャの付き人の男がいた。
付き人はズボンと下着を下ろしていた。
アルパイスは冷めた目で見つめ金貨や宝石の入った袋を渡した。
「他のものには立ち合いはラーシャの勝ちだったと伝えろ」
「え?」
「
付き人の頭頂部をグッと両手で包み、アルパイスは指先に力を込めながら妙にやさしい声音で言った。
付き人の目は金貨袋を持ったままうつろな目で「はい」と頷いた。
「明日の夕方にはラーシャは戻ってくる。組織の連中にはそう伝えろ」
「はい……」
肩にかけていた大剣を腰に携え、ラーシャの裸体を悠々と担ぎ上げると、アルパイスは路地裏を後にした。
付き人の持つ金貨と宝石が詰まった袋は、闇闘技場のチャンプ・ラーシャの敗北の証として残された。
それを知るのは、アルパイスとラーシャだけ――。
月明かりが照らすその場所には、激しく淫らな闘いの痕跡――大量の汗と少量の血、その他の体液が飛び散った静かな路地――が、不気味な余韻を漂わせていた。