対魔忍の、淫闘禄 作:ごきまる
熱い肉幹が、再び根元まで沈んだ。
あさつきは腰を沈めたまま、一度だけ息を整える。
膝は笑っている。内壁は、さっきの発勁の残熱でひくひくと波打っていた。
それでも彼女は、浅層を輪に締め、中層の襞を螺旋に絡ませた。
アナルの括約筋まで連動させる。二重の締め。
対魔粒子が秘部の粘膜を赤く熱くする。
「……今度こそだ」
「よい顔だ。まだ坐っておるな」
ゴルガンの言葉の意味は、すぐには届かなかった。
あさつきは答えず、腰を前後に滑らせる。
たんっ、たんっ、たんっ。
肉のぶつかる音に、濡れた水音が混じる。
自分の陰精が、結合部から糸を引いて太腿を伝っていた。
(出せ。偏らせろ。先端に集めろ)
収精化気。
相手の精を先端へ偏らせ、回路で収めて気に変える。それが房術の本義だ。
深層はまだ温存する。さっき開いて発勁を食らった。同じ轍は踏まない。
だが、偏りが来ない。
ゴルガンの肉幹は熱く、硬く、脈打っている。
なのに精気は下腹部に留まったままで、先端へ流れない。
あさつきが締めるほど、自分の内壁のほうが先に痺れた。
「んっ……くっ、なぜ……出ない」
「出さぬだけだ」
「馬鹿を言うな。そんなに我慢できるものか」
「我慢、ではない。観ておる」
ゴルガンは両手を頭の後ろに組んだまま、あさつきの腰の揺れを下から見上げていた。
牙の隙間から、熱い息が漏れる。それ以外、乱れがない。
あさつきのほうは、すでに次の波が来ていた。
軽い絶頂が、また内側を撫で上げる。
歯を食いしばって受け流す。脳識は残っている。名前も残っている。
だが座が、小さく揺れた。
(また……イきそうになってる。出してもいない相手に)
怒りが先に立った。
洞窟であれほどの痴態を見られた。排便まで見られた。
その男が、今も一滴も渡さない。
「出さないなら……出させる」
あさつきは自分の尻を両手で割り、腰を落とす深さを一段上げた。
子宮口が亀頭を包む。深層を解禁する。
対魔粒子が奔流のように下り、霊絡が一気に開いた。
──開いた瞬間、熱が逆流した。
「あッ──ッッ」
自分で開いた門から、ゴルガンの気が流れ込む。
収めるつもりが、受信する。
粘膜の血流が跳ね、潤滑が増し、感度が吊り上がる。
あさつきの腰が、意図せず深く沈んだ。
「回路を開けたな。広い。だが栓がない」
「閉じてる……閉じてるわ……!」
「閉じておらぬ。開いたまま、俺の気を飲んでおる」
たんっ、たんっ、たんっ。
上に乗っているのはあさつきだ。
なのに腰の主導は、下からの微細な突き上げに奪われていく。
ゴルガンはまだ本気の発勁を使わない。ただ、開いた霊絡に気を乗せるだけだ。
それだけで、あさつきの三層締は自分をしゃぶる波形に変わった。
「ふ、んうッ……出るなら……出ればいい……っ」
「まだ早い。お前の座が、先に揺れておる」
「座、だと……?」
その言葉の途中で、また果てた。
短い、しかし深い絶頂。
視界の端が白く欠け、銀のバイザーの裏で瞳が泳ぐ。
あさつきは「志賀あさつき」という名を、歯の裏側で噛みしめて座を繋いだ。
還神。無意識の。不完全な。
落ちきりはしなかった。だが、耐えることしかできていなかった。
「十数回、では済んでおらぬな。今ので、また一つ」
「か、数え……るな」
「数える。観精とは、そういうことだ」
ゴルガンの巨手が、下からあさつきの腰を掴んだ。
指が下腹の柔らかい肉に沈む。卵巣のあたりを、外側から圧する。
「おらっ」
「ひッ──!」
下からの打ち上げが、騎乗位の形を壊した。
あさつきの胸が跳ね、長い青黒の髪が背に張り付く。
尻が、掴まれたまま叩き上げられる。
アクションのように、肉の衝突が室内に散った。
「おらっ、おらっ!」
「あ、あぐぅ……っ、深……ッ」
上にいるのに、突かれている。
房術で締めた内壁が、締めのたびに自分の子宮口を彼の先端へ引き寄せる。
収精の回路が、自慰の回路に短絡していた。
(出ない。なぜ出ない。私ばかりが──)
怒りが、次の理解に変わったのは、その直後だった。
あさつきは、自分の霊絡を内側から見た。
限界突破で広くなった門が、いまも閉じずに開いている。
対魔粒子は確かに多い。出力は確かに上がった。
なのに栓がない。開いたまま、相手の熱を飲んでいる。
(開いているのは……私のほうだ)
その気づきが、恥より先に怖かった。
痴態を見せようとして乗ったのに、見せているのは今も自分だった。
「気づいたか」
「……ッ」
「門は広くなった。気の通りもよい。だが閉門が追いついておらぬ。だから締めるほど、お前が先にイく」
「だまれ……まだ、勝負は──」
「勝負は、もう精の層ではついておる。気の層も、いま開いた。残るは神だ」
ゴルガンは上体を起こした。
巨大な口が、あさつきの右胸を含み、乳首を舌で潰す。
牙は立てない。それだけで、脳識が濁る。
あさつきの腰がまた落ち、深層が彼を咥え直した。
「んふっ……や、めて、今は房術を──」
「房術は続いておる。お前が自分を絞っておるだけだ」
チャッ、ピチャッ、ぬちゃっ。
結合部から溢れる陰精が、ゴルガンの下腹部を濡らす。
あさつきの腹は、まだ精を受け取っていないのに、熱でふくらむ錯覚を起こしていた。
彼女は両手をゴルガンの胸に突き、一度だけ腰を浮かそうとした。
抜けない。掴まれている。
霊絡も、閉じきれない。
「放して……一度、閉じて──」
「閉じられるなら、閉じればよい」
閉じられなかった。
あさつきの奥が、また痙攣する。
絶頂が、区切りなく重なった。
舌が前に出る。涎がバイザーの縁を伝う。
脳識は「負けるな」と叫んでいる。霊識は開いたまま熱を飲んでいる。神識は、歯の裏側の名前だけで座に爪を立てていた。
「ぁいいィ……ッ、イク……また……ッ」
「イけ。坐ったままイけ。翔ぶな」
「翔ばねえ……っ、私が……お前を……」
言葉の途中で、腰がとろけた。
上に乗ったまま、あさつきの力が抜ける。
それでも子宮は彼を離さず、浅い痙攣で精をせがんでいた。
せがんでも、精は来ない。
ゴルガンは、ようやく腰の動きを止めた。
まだ中にいる。まだ硬い。まだ出していない。
「精の勝負は、ここまでだ。お前は何度も漏らし、俺は一滴も渡していない」
「……くっ」
「気の勝負も、見えた。門を開けたのはお前だ。閉じられなかったのもお前だ」
あさつきは、肩で息をしていた。
汗が光沢の上を流れ、胸から臍へ落ちる。
窓の外の喧騒が、遠い太鼓のまま響いている。
「残るは神識だ、志賀あさつき。忘我しても坐れ。坐れぬなら、次は霊手を出す」
「……出すなら、出してみろ」
掠れた声だった。だが、座はまだあった。
望んで翔ぼうとはしていない。名前も、対魔忍の核も、残っていた。
ゴルガンの牙が、短く笑いに割れる。
「よい答えだ。では、上はここまでとする」
次の瞬間、世界が回転した。
あさつきは引き抜かれ、仰向けに叩きつけられる。
ベッドが悲鳴を上げ、天井が近づく。
両脚を開かれたまま、熱い肉槍が、今度は一度に二つの門を狙う気配を見せた。
気の色が、結合部の手前で緑に濁る。
「待──」
「待たぬ。淫闘だ。耐えるな、還せ」
緑の半透明が、ゴルガンの肉幹に重なって分かれる。
一本は膣へ。もう一本は、まだひくつくアナルの蕾へ。
あさつきの背が、ベッドに弓なりへ反った。