忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
第10話 オーク討伐依頼
秋が深くなり、冬の足音も聞こえそう。
森も赤や黄色に染まりきり、枯れ葉が足裏でぱり、と乾いた音を立てた。
天気もよく、空の青さがどこまでも抜ける。
山歩きは好きだけれど、この後の用事を思うと気が重い。
「私も本当に行くの? 足手まといよ?」
日々の訓練の結果か、少しだけ左手が動くようになってきた。本当に少しなので、握るなどの動作はできない。ちょっと動くかな、と言う程度。
「もちろん。夜べつべつに寝るとか無理」
そんな理由で同伴させられる身にもなってほしい。
今回珍しくギルドから風精が遣わされて召集をかけられた。
詳しくは冒険者ギルドで説明するそうだけど、北の森の奥でオークが群れで発見されたみたい。
Dランクのラウにまで声をかけるなんて、相当数見つかったのかしら?
森の小屋からバンドラガルへは北西にあたる。そのさらに北となると隣国との国境付近かな。
丸腰もあれかなと思い、小屋にあったナイフだけ携帯したきた。
森を突き抜け街道に出ると、道沿いに進んだ。
町へは夏以降二度ほど足を運んでいる。
ラウの要請を突っぱねられず、町に同伴させられるようになったためだ。
門番の衛兵からも身分証を作ったらどうかと打診され、仕方なしに私も冒険者カードを作らされた。
ミルシアさんに釘を刺したのはその時。生温かい目で見てくるので、担当者変えてもらいますよ?と脅したのに、
「ラウラリーエさんにとっては良かったでしょ?」
とラウを味方に引き込まれた。
「はい!もちろんです。ミルシアさんのお陰でいろいろわかりました!お話聞いてもらえなかったらまだすれ違っていたかもしれません!」
「べつにすれ違っていたわけじゃ…」
ラウの好きが思った以上に重かったというだけで。
「フェリさんのお話も聞かせてくださいね?」
「……」
顔は可愛いし、愛想もいいし、機転も効く。普通だったらこのまま懐いてしまうのかも。
私は無条件に親身になってくれる人は好きじゃない。
それにラウが懐いてるのも気に入らない。
「いやです」
「ふふ。ガードが堅いですね」
「そういうところも好きじゃないです」
相手はラウに任せて、私は近づかないようにしよう。
そうして前回来た時はラウに相手をさせたのに、飴で私を懐柔しようとしてきた。
要りませんと断った時の悲しげな表情。あれはずるいと思う。
断れないじゃない。
頂いた飴はやっぱり甘くて、ちょっと悲しくなった。
今回は冒険者ギルドにはこんなに人がいたのかと思うほど待合席がごった返し、壁際に佇んでいた私たちにミルシアさんが気づいて手を振ってくれた。
ラウが元気に振りかえしてる。
ざわつく室内に大きな声が響いた。
「ギルド長のガイゼルだ!今からポーリンガム森林の討伐作戦の説明を行う!出発は明日日の出の時刻とするので、今日の話を聞いて準備してもらいたい!まずはーーー」
ギルド長と名乗る男は中年で体格がいい。パーティでいえば前衛タイプ。熱血っぽい激励を含んだ説明をかい摘むとこうなる。
バンドラガル北部に広がるポーリンガム森林の縁部に位置するいくつかの村が襲撃され、偵察を放ったところ100体ほどのオークとオーガキングを確認したとのこと。
私にはどうしてオークキングではなく、オーガキングなのかが気になったが説明はなかった。
バンドラガルにはBランクの冒険者が2組、Cランクが15組いるけど、到底数が足りずDランクにも招集をかけた。
CランクにそれぞれDランクを割り当て、1チーム5人から7人のチームを編成。Cランクには既に担当区域を説明済みなので、この後はチームごとに分かれて準備をするようにとのことだった。
なおBランクの2組は遊撃とのことで、手薄な箇所からオーガキング討伐を目指すらしい。
壁際にいた私たちのところに、背の高い剣士の女性と、私より幾分高いくらいの弓を背負った女性が手を振りながら近づいてきた。
前に夕飯を一緒に食べたことがある。ケイナさんとサニクレアさんだ。
「お二人とチームですか?」
ラウが聞いてくれる。
私も頭数に入ってるとしても4人なので、ほかにDランクのチームも合流するのかしら?
キョロキョロと見渡していると、ケイナさんに頭を撫でられた。
「このチームだけは4人なんだ。戦力的に問題ないだろうって。詳しくは座って話そっか」
ケイナさんたち御用達のムシムシ亭に場所を移す。
よく分からないけど、私はケイナさんに膝抱っこされ、サニクレアさんはラウの膝に収まってる。
「ケイナさんもサニクレアさんもジャンケン強すぎません? おかしいです!」
ラウが訴えても負けたヤツがわるい、と取り合ってもらえない。
「夜またジャンケンしよ?」
「いいですよ! 次は勝ちますから!」
サニクレアさんの挑発に乗っちゃうとこも悪いんでしょうね。
私はケイナさんになでりなでりされる。
ラウと違って粘着質な触り方ではないので、それほど嫌な感じはしないけど、サニクレアさんがラウの太ももを撫でてるのが不快。
でも言って、言い負かされたり、からかわれるのがいやで我慢する。
お昼には早いので、飲み物だけ注文して説明が始まった。説明はケイナさんがしてくれた。
「オークだけど、20から30体ほどに分かれて群れを作ってるらしいんだ。群れには便宜上AからDを割り振ってる。私たちの担当は群れB。4つのチームで4方向から取り囲んで攻める。撃ち漏らすとまた増えるから、絶対撃ち漏らさないで」
「わかったわ」
ラウも向かいでこくこく頷いているが、なでられたり触られたりしてるから緊張感がない。
「ラウラリーエは3人分は働いてくれるって思うんだけど、大丈夫かな?」
ラウの首が20度ほど傾いた。
「1人分がどれくらいか分からないですけど?」
サニクレアさんがラウを見上げた。
「レッドベア倒すのにどれくらい時間かかる?」
「一体ですか?」
「そう」
「いーち、て数える間くらい?」
ラウが確認してくるので同意する。
「そうですね。レッドベアならそれくらいと思います。5メートル四方なら何頭いようと一網打尽よね? 30メートル離れちゃうと別々に術を打ち込むから2か3くらい?」
「そうね。それくらいで倒せると思う」
頭上から質問が飛んだ。
「それ乱戦でも大丈夫?」
「うーん、たぶん? 確実にするなら、事前に保護術かけた方がいいかも。仲間ですよー、て精霊術かけておけば当てませんし」
「了解。群れBチームには全部かけよ。同士討ちなんて馬鹿らしいし。出発は明日の日の出なんだけど、現場に近くに着くのは翌日の遅く。その翌朝の日の出に作戦開始よ。保護術は開始前がいいね」
「わかりました」
二日歩き通しで、三日目に作戦決行。帰りも二日かかると思うと、食料もそれなりに準備する必要があるわね。
ところで、とクレアさんがこちらをのぞき込んできた。
「フェリちゃんはどのくらい戦える? ラウラリーエがどうしてもっていうから連れて行かれることになっちゃったけど、後ろにギルド長が本部を構えるからそっちで待ってる?」
「私はどこでもい・・・」
「だめ!」
最後まで言わせてもらえなかった。
「フェリが近くにいないと心配で頑張れない。本部にいて襲われたらどうするの!」
サニクレアさんもあきれ顔だ。
「一線を退いてても、あのギルド長強いよ? もともとBランクだし」
「戦闘中に私みたいな子どもがうろうろしていたら、皆さん気を遣ってくださりそうですから、本部で待ってますね。ラウ、これで決まりね」
ラウの頬が冬の食料を集めているリスみたいに膨れた。
「私がもっと強かったらよかったんだけど、ごめんね」
「その言い方はずるい。フェリが頑張ってるの、わたしも知ってる」
「本部には私の方から伝えておく。支度金を預かってきてるから渡すわ」
ケイナさんから金貨一枚手渡された。
「私たちはこのムシムシ亭の2階に泊まるから、君らも泊まるなら朝起こしてあげるけど?」
ラウは私じゃ起きない時があるから助かるかも。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますね。それでは、私たちは食料品とか買いに行ってきます。夜はこの宿に泊まりますので」
「了解。じゃあ夕食時にここでね」
私たちは食料品やなどの日用品などを買い回り準備を整え、翌日に備えた。