忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
王太后さまからの会食を断って、護衛も断って(でも3人隠れて着いてきてたわ)、どこか寄って食べる? て話もでたんだけど、みんな家に帰りたいって言うから、そのまま帰ってきちゃった。
「プティ、ただいま!」
ラウラの一声でプティがいるのを知る。
今回は遠征についてこないで、王都近辺を守っていてくれたのよね? 主にナウシーさんを。
猫からヒト型になったリーが空を見つめて挨拶した。
「こちらがプティですか。初めまして、リーと申します」
プティとリーが会話するのに、ヒト型を取る必要はない。少しでも私が分かるようにとの配慮から。
マグもボーダーコリーからヒト型になったのだけれど、お陰で狭い我が家はぎちぎちよ。
「我はマグだ。ラウラの話だと、愛し子と忌み子の動向を探ってくれていたそうだが、首尾は?」
え? そうだったの?
「まずは食事にしましょう。勝手に使わせていただきますね」
リーは腕まくりすると、ストレージからダイニングテーブルに次々に食材を出していく。
「こちもお野菜切ったりしたいも!」
フォーレがリーの足元に向かった。私も夕飯のお手伝いした方がいいかしら?
プティと話すなら、私がいると通訳で余計に時間かかっちゃうだろうし。
足を踏み出しかけたところで、お腹に手が回った。
「フェリはこっち。座って」
部屋は入った瞬間にラウがクリーンをしてくれたから、埃はないわ。
ベッドに私とラウが座り、マグはダイニングテーブルから椅子を持ってきた。
なんかマグ、にまにましてない?
「ラウラが精霊たちに寄り付かぬよう制限していたらしいので精霊の姿は少ないですが、フェリシア様の気配が染み付いていて、それが心地いいのです。さて、プティ、報告を」
私には聞こえないから、マグが通訳してくれる。
「愛し子は2人、ミッドゲイン領とベルロンド領ですね。忌み子も2人。フェリシア様、愛し子は早急に保護した方が宜しいでしょう。フェリシア様とラウラが遭遇した男性の精霊術士は、愛し子を探して堕としているようですからね」
「イーダという忌み子のことで、何か知らない?」
私はプティがいそうなところを向いて話しかけると、ラウがふふ、と笑いながら腰に回した腕の力を強めてきた。
「そこで大丈夫。プティが合わせてるから」
では、ちゃんとここにいてくれてるのね。
通訳はまたしてもマグがしてくれた。
「プティが捜索したのは王都中心で、イーダのことは噂も聞こえてないようですね。耳にした忌み子は、一人は男性で王領北部で目撃後北部へ移動、もう一人は女性で南部から西部へ移動したようだとのことです。明日カトレア隊に行き、瘴気の話が出ていないか確認いたします。また愛し子についてはその後、保護に行ってまいります。遠くありませんし、夜には戻れるでしょう」
「ラウと二人でってこと?」
私は明日はシェラと会う予定があって、もともと別行動ね、て話になっていたのよね。
「そうですね。難しい業務ではないですし、リーはあなたの傍を離れたりはしないでしょうし」
「当然です」
キッチンからリーの声が飛んできた。
「…ふむ、なるほど」
「どうしたの?」
「プティが愛し子は幼いようだから、フォーレを連れて行ってはどうかと」
「すごいわね、プティ」
小さい子は見も知らない人が来て不安でしょう。フォーレは癒しになると思う。
「フォーレ、明日はマグとラウラを手伝ってくれる?」
「もちろんだも!任せるも!!」
頼もしいわね。
「よろしくね、みんな」
その日の夜。
私はラウにぎゅうぎゅうに抱きつかれていた。
フォーレたちは動物の姿になって、あっちもバスケットにぎゅうぎゅうに詰まってる。
さっきまで私たちのベッドにいてくれて至福だったわ。
「フェリ、こっち」
顔の側面を温かな手で包まれて、ラウの方を向けさせられる。
「あっちとの触れ合いタイムはもう終わりだから」
「分かってる」
ちょっとした嫉妬も嬉しい。
今はラウと二人きり。
結界が張ってあって、外からは中の様子は見られない。
月光が注ぐ室内は灰明るくて、久しぶりの我が家だけど、記憶とは少し情景が違う。
出発前に絶えず焚いていた暖炉の火は、今夜は消えてる。5月半ばでもうだいぶ暖かいからね。
あの頃は暖炉が絶えずパチパチいってて、ラウの緑青の瞳に炎の欠けらが映り込んで綺麗だった。
柔らかなベッドで向かい合って、ぴったりとくっつく。
ハリのある胸がむにゅり、と私のそれと重なる。
重量さ、肉感にため息がでる。
ラウのおかげか少しだけ大きくなったけど…。
触り心地いいって思われたいなぁ。
私が癒されてるみたいに、癒してあげたい。
私がそんなことを考えてるなんて、ちっとも察せずに、ラウは二人きりになれたのが嬉しいみたいで頬擦りしてくる。
「はああああ♡ フェリのにおい♡ 好き♡ いい匂いすぎる〜〜〜」
「おんなじシャンプーと石鹸使ってるでしょ/////」
照れ隠しについキツイ口調で言っちゃったけど、気にしなかったみたい。よかった。
「ちがうよ〜〜〜。フェリはもともといい匂いがするからね、さらにいい匂いがするの!」
すんすんと首筋や胸元に鼻を近づけて堪能してる。
「はあああああ♡♡♡」
匂いを嗅ぐばかりでラウの手はぜんぜん動かない。
今も彼女の熱、柔らかさは何も変わらない。
気持ちも、優しさも何一つ。
私だけが出発前とはすっかり変わってしまったわ。
ラウはまだその気じゃないのに、して欲しくて私だけがうずうずしてる。
バレたら嫌だから顔には出さないけど。
「明日やだなぁ」
だだ捏ねてるラウが珍しくて、抱きしめて髪を撫でた。
「マグが鍛えてくれるって聞いたけど?」
「精霊術の精度が甘いんだって。マグを超えられなきゃシスティナを越えられないわ」
「敵同士じゃないのだし、負けても良くない? 対人だったら負けないでしょう?」
「神の一員になったんだよ? いつ他の神からフェリが狙われるかわからないの! 神族でも珍しい神力の譲渡ができるんだから、油断できないわ」
システィナから話を聞く限り、その世界の要である神がそうそう来るわけないと思うのだけれど。母さまでもあるまいし。
もっと強くなりたいと願うラウに、追いつきたいと思っている私は? もう無理じゃない? いつか追いつける?
ラウが小さい子みたいに、私の肩口にぐりぐりを頭をこすりつけてくる。
かわいい。
「マグに鍛えてもらえるのは嬉しいの。シェラロッテと会ってるのが嫌なの。・・・好きになったりしない?」
顔を上げて見つめてくる。
「ごめんね」
言葉を尽くしているつもりだけど、あなたにはまだ届かないみたい。
あなたの不安を消してあげるために、私は何ができる?
彼女の前髪を書き上げて、キスを落とした。
「愛してるわ、ラウラリーエ。前も言ったと思うけど、シェラは友人よ。そんな風には見てないわ」
「でも、ジーンを助けたのは青狼だったシェラロッテだし、その後も何度か結婚したんでしょ?」
「そうね。何度かね。全部が全部結婚したわけじゃないし、オーウェルの所為で浮気したって言われて殺されたこともあるし。・・・恨んでないわよ。仕方ないことだったと思う。家族や友人にも何度かなったけれど、ぴったりくるのは ”戦友” かしら。私の事情に巻き込んでしまった被害者と思ってる。ごめんね、ラウみたいにしたいわけじゃ無いんだけど、大事にしてあげたいの。すごく借りがあるのよ」
「でも、でもでもでもでも、眷属にされるの嫌! ぜったいフェリの取り合いになるもん。わたしのフェリだもん!」
ふふ。フォーレみたいね。
「分かってるわ。おいそれと眷属にしたりしない。まずはどうして私の転生先に転生してくるのか、シェラの魂を調べてみようと思っているの。私から解放してあげられるなら、それが一番だと思うしね」
「うん! わたしもそれがいい!」
「何か決めるときはラウに相談するから。一人で決めないから、安心して?」
「…うん」
まだ納得はできてないみたい。
シェラのことも、オーウェルのことも、ずっと考えてる。
ふとした瞬間に浮かんでくるの。
あの時は、あれで良かったのか。
他にやりようはなかったのか。
オーウェルとのことは割り切れる。どうしようもなかったと。あれ以上のことはできなかった。
シェラ――青狼とのことは、少し難しい。ほかにやりようがあった気もするけど、付き合ってる男女二人の関係性でどちらかだけが悪いと言い切れることは、そうないと思うの。だけれど、私にはオーウェルのことがあったから。
打ち明けたこともある。
彼は返り討ちにあって、生首だけで戻ってきた。
言えなくて黙っていたこともある。
浮気を疑われて殺された。
何が正しかったのか、今もわからない。
分かるのはひとつだけ。
「今まで何度青狼と暮らしてきたとしても、救われたのは今生よ。そしてそのきっかけはあなた。あなたが私を生かさなければ、オーウェルと決別することもできなかった。
青狼に何度もチャンスがあったとするなら、あなたはたったの一度でものにした。母さまも、システィナのことも含めてタイミングを全て掴んだ」
―――私をも。
もう少し、可愛げのある言い方にしよう。
「私はあなたが好き。これ以上、どう言えばいいかわからないわ。ずっとそばにいて?」
ぱぁぁぁと喜んでくれると思ったのに、今日のラウラは少し違う。
「…うん。あのね―――」
まだ何かあるの?
「何度か結婚したシェラロッテのことは、フェリから解放するんでしょう?」
「ええ。そのつもりよ?」
「わたしも・・・・・・わたしもいつか解放したくなっちゃわない?」
ラウにしては珍しい。
そんな先のことを心配するなんて。
言葉でならなんとでも言える。
ずっといる。
離れない。
近くにいて。
シェラとは違って、ラウは眷属だから気持ちが反らない限りは、本当にずっと一緒に過ごすことになる。
「記憶はあるけど、それぞれの人生は短いものばかりだから、いつかの話は想像もつかないわ。私、今まで浮気したことないし、夫以外の人に惹かれたこともない。いまはラウのことが大好きなのに、冷めるなんてあるのかしら?」
「わたしもフェリのことが好きじゃなくなるなんて、想像もつかない。でも…」
漠然とした不安があるのね。
「ごめんね、取り除いてあげられなくて。転生してる私よりはシスティナに聞いた方がいい回答もらえそうだけど。あの子、3回結婚してるって言ってたし」
「そっか! 今度会ったら相談してみる!」
良かった。元気になったみたい。
「ラウは私に誰か近づくの警戒してるでしょ? システィナはいいの?」
リーへのあたりもすっかり引っ込んでいるけど。
「システィナはフェリの子なんだから、わたしの義理の子になるでしょ? それに大切な相談相手よ。それから精霊人は性欲がないって聞いたから安心してる。リーのフェリ至上主義にもね。たまにわたしが至らなくて悔しい思いもするけど、フェリのためだもの」
お話聞いてくれてありがとう、とラウが言うけど、私こそ嬉しいの。答えのでないようなことでも、打ち明けていいのね、て思えるから。
「さて、明日はフェリといられる時間短いから、その分、ね?」
「ええ」
ラウを抱き寄せて耳元に囁いた。
いっぱいして?
両手が重なって、彼女の細い指がひとつひとつ絡んでくる。
私も少しでもラウを感じたいから、つよく握り返した。
ラウは何も言わないけど、目がよくできました、て言ってる。
ご褒美みたいにキスが降ってくる。
瞼に。
頬に。
鼻の頭に。
次に唇に降ってきたときに、もう離したくなかったからラウの首に腕を回した。
力が強くても女性の体よ。
華奢で柔らかい。
前世の記憶を思い出してから、私は反省したの。
ラウはずっと私に奉仕ばかりして、ぜんぜん自分の欲を向けてこないの。
男性とだったら、最後は男性が気持ちよくなって終わるでしょう? 女はイってもイかなくても関係ない。
情事はそういうものだって思い出してから、ラウラとの情事の違いに目が醒める思いだった。
ラウラは私を気持ちよくするばかりで、気持ちよくして欲しい、と言ってきたことすらない。
私を舐めたって、自分が気持ちよくなるわけじゃなくない?
揉めたわよね。
「舐めるだけだって気持ちいいの!フェリがいくとわたしも気持ちいいの!」
それ、ほんとう?
ちょっと信じられないわ。
それに私だってラウを気持ちよくしたい。触りたい。
なのに、まだ未成年だからって断るの。
成人したら覚えてなさい。
めちゃくちゃしつこく抱くんだから!