※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

105 / 112
第103話 森ネズミの浄化

 

 

 みんなに加護を授けて、着いたのは夕方。

 

 この辺りは私たちが冒険者ギルドで登録した際、出身地だと申告したスルテム村がある。

 もっと北に進めばダンジョンがあるギルガの町にたどり着くわ。

 私たちを呼んだマグはさらに奥を捜索してくると言って、ここにはいない。

 

 私は村を遠く視界に収めながら、渋るラウを宥めて地面に降ろしてもらった。

 

 覚えのある気配ね。

「イーダさん…」

 

「やっぱり!? 嫌な感じだと思ったの!」

 

 でもグラハスの森と違って瘴気が薄すぎるのよね。

 だから感じ取りにくかったのでしょう。

 

 マグはよく分かったわね…。

 

 

 私は森の様子を確認してみたけれど、強く汚染されているところはなさそう。

 詳細は血術を使って調べないとわからないわね。

 全体に瘴気の靄がかかってる感じで、今すぐ被害が出る感じでもないのよね。

 

 

「ラウ、降ろして」

「やだ!この弱っちい感じが気持ち悪い!また何か仕掛けてきてるもの!」

 

「弱いからグラハスの森みたいに危なくはないと思うの。また地中から攻撃されたら持ち上げて? 詳しく調べたいの」

 

 絶対に折れないからね、と見つめると、盛大なため息とともに地面に降ろされた。

 

「何があればすぐ抱き上げるし、ここを離れて」

「わかったわ」

 

 

 私は血を垂らして血術を練り上げながらイメージした。私を中心に水面に波紋を広げるように力を広げていく。

 さらに中空へも。

 

「探知」

 

 ドーム状に広げて、村を超えた向こうの森まで血術を浸透させる。神力も混ぜると粘度があがって、より詳しく感じ取れる。

 

 

 森の木々の間。家々の隅。大きさ、形状から推察するに―――。

 

「フェリ、どう?」

 待ち切れないラウが尋ねてくる。

 

「原因はネズミね。森の方が数が多いけど、村の中まで入り込んでいるわ」

 

 数で言えば、8対1くらいで森の方が多い。

 これは大変な数じゃない?

 私の探知内だけで数百匹、少し範囲を広げるとさらに何十匹とひっかかる。

 

 この村、この森だけでこの数ということは、さらに何万匹といるのでは?

 

 

《マグ、原因はネズミみたいだけど、そっちにもいるの?》

《フェリシア様!南部に来ていますが、こちらから北上したようで、こちらの方が瘴気は強いです。森の木の実、草木、動植物も齧れております。発生源がどこか、さらに南下してみます》

《ええ、頼んだわ。何か分かったら知らせて》

《承知しました》

 

 全部殺処分する?

 リーやラウの精霊術なら可能だと思うけれど、可哀想な気がするし、ネズミの死骸を村の人が触って瘴気が広がったり、森の生き物たちが死骸を食べて広がるのもまずいわよね。

 

 一回浄化してみましょう。

 ただのネズミだったら、いくらか取り逃がしても大丈夫だろうし。

 

「このまま浄化してみるわ」

 

 私は指輪型の隠しナイフで肌を傷つけると、大地に滴らせた。

 

「悪意を退け、この地に蔓延る瘴気を浄化せよ。クレンズレイン」

 

 ドーム状の結界から霧雨を降らせて浄化の術を行き渡らせてみたけれど、ネズミたちは木のうろや民家の屋内にうまく逃げ込んでるわね。。

 

 もっと細かく霧状にすればいけるかも。

 血を捧げ、さらに体内から血力を引き摺り出す。

 細かくするの、ちょっと大変かも。

 

「すぅ…はぁ…」

 

 息を整える。

 

 雨を細かく風に溶け込ませて、すべからく結界を満たす。

 ネズミたちに浄化の力を吸着させるように照準を合わせてみたけど、どうかしら。

 

 

 …んん?

 

 ネズミたちの気配が消滅したのだけど??

 

 行使したのは浄化よ?

 一体どういうこと?

 

 理解が追いつかなくてリーとラウに訊ねてみた。

「ネズミの気配なくなったんだけど、どうなってるか分かる?」

「遠見で見ておりましたが、煙を発して消滅しましたね」

「消滅? 掛けたのは普通の浄化よ?」

「わかっております。もう一度やってみましょう。数匹捕まえて参ります」

 

 そういうとリーはすぐに3匹捕まえてきてくれた。

 リーの結界に閉じ込められているうちの1匹を譲り受け、私の血術結界で捕縛し直した。

 

 ぎちぎちに小さくした結界の中には、耳が大きく、くりっとした瞳で可愛らしい森ネズミ。

 元来臆病で、人前には出てこないはずだけれど。

 

 とりあえず浄化してみましょう。

 

 

「その身から悪意よ退け。浄化」

 

 頭から血をかけると、しゅっとわずかな黒煙をあげて見る間に体を溶かして消滅してしまった。

 

 …すごい罪悪感ある。

 

 フォーレのお耳がぺたんとしてる。

「こち、消えなくて良かったも…」

 

「そんなに危険な術じゃないのだけど…。どうしてフォーレは浄化できて、森ネズミはできないのかしら?」

 

 与えた血の量が多かった?

 もっと少量の浄化だったら大丈夫かしら?

 

 体が小さいもの。量も少なくていいのかも。

 

 

 リーからもう一匹もらって再チャレンジ!

 

 

 

 

「フェリさま…」

「うう、ごめんなさい…」

 

 フォーレからのうるうる上目遣いは心にくるわ。

 もっと繊細な浄化が必要ということ?

 

「リー、その子もちょうだい」

 

 血術結界に閉じ込めた森ネズミに術をかける。

 少しずつ、水滴が一滴一滴したたるようなイメージ。

 焦らず、森ネズミから瘴気が消えるまで。

 

 心の中でカウントし、8滴与えたところで森ネズミから一気に煙が上がった。

 手の中を見守ったけれど、結局溶けてしまった。。

 

 

 滅さずに浄化はできないの?

 

 悩んでいると、リーがフォーレの頭をなでた。

「フェリ様、生き物を蔑ろにせず助けたいお気持ちはわかりますが、このネズミたちは瘴気を振り撒く存在です。マグが向かっている地は、こことは比較にならないはず。まずは一刻も早く事態の収束に向けて動き出すべきかと存じます」

 

「そうね。この子たちには可哀想だけれど、のんびりしている時間はない。南部のように被害が出る前に浄化していきましょう」

 

「ありがとうございます。巣穴や屋内のネズミまでフェリ様の浄化で一掃していくのは大変でしょう。まずはネズミを我々の精霊術で集めて参ります。集めたところで浄化いただければ効率が良いと思いますが、いかがでしょうか」

 

「ええ、助かるわ。浄化を霧状にして満たすのは疲れるから」

 

「では、ラウとフォーレはここから南部、セリスとユスフは東部のネズミを集めてきてください。北部にも広がっていると思いますが、まずは被害の大きいところから片付けていきましょう。フェリ様、ネズミの駆除が終わりましたら、その地に祝福をお願いいたします」

 

「わかったわ。リーとレイハスは私の護衛?」

「当然です。主をひとりで置くなどあり得ません」

 

 そういうと思ったわ。

 レイハスさんは精霊術がそこまで高くないから留守組なのでしょう。

 

 ラウの頬がぷっくりしてる。

 

 さっきまで抱っこしてくれてたでしょ?

 触れ合い十分でしょ? 嫉妬してくれて嬉しいけど/////

 

「みんなも祝福するわ。瘴気を扱うのだし、気をつけてほしいから。何かあればすぐ戻ってきて」

 

 みんなに祝福を授け、ユスフさんにはストレージ内部にも祝福をかけた。

 これでネズミをストレージに詰め込んできても大丈夫よ。

 

「なんという…!! ご同行させていただけて五体投地の心境です!!」

「ユスフさん、いくよ〜?」

 

 セリス、ちゃんと飛翔術でユスフさんのこと面倒みてあげてね。涙で視界曇ってるとおもう。

 

 

 

 みんなが散ると、リーはストレージからテーブルセットを取り出した。その上にはティーセット。

 

「ささ、フェリ様、お掛けください。お疲れでしょう。すぐご用意いたします」

 テーブルセットと言っても、リーは椅子を一脚しか用意してない。

 

 これに座って私だけ飲めって?

 

「2人の分も用意してね? 私だけ座って飲むの嫌だからね。戦時だとか言い訳は聞かないわ」

「承知しました」

 

 リーが追加で出してくれた椅子にレイハスさんを座らせようとしたのだけれど「畏れ多いです!!」て叫ばれて、結局レイハスさんがお茶を淹れてくれることになったわ。リーは隣に座ってる。

 

「フェリ様、この数ですとどうしても見逃してしまうこともあるでしょう。カトレア隊の愛し子に遠征いただけるよう、ベアトリーゼに要請いたしましょう」

 

「そうね。手の空いている人がいたらで要請出してもらえる? いなければ10日間の延長を打診して」

 

 承知しました、とリーは配下にしている風精に頼んでくれた。

 

 シェラに恨まれるかもだけど…。

 テラニード王国から戻って半月くらいしか王都に滞在してなかったし。

 でも仕方ないよね。

 

 

 しばらく3人で待機していると、ラウとフォーレが戻ってきた。

 小山ほどもある氷結界に森ネズミがぎっちり詰まってる。。

 

 これが溶け出す絵面って、トラウマになっちゃうのでは??

 

「ラウ、結界の中見えないようにできない?」

「できるよ」

 

 一瞬にして不透明な氷の塊りにしてくれたわ。

 私は少しだけ開けてもらった穴から血を注ぎ込んで浄化を施した。

 

「もう一回行ってくるね」

 

 ラウとフォーレが4回、セリスとユスフは3回捕獲して戻ってきてくれて、この付近から森ネズミや瘴気の気配はすっかり遠のいた。

 

 私が仕上げにこの地に祝福を与えて完了。

 なかなかに疲れた。

 みんなも疲労困憊の様子。

 

 でもまだ日暮まで時間はある。

 

「南下だけしておきましょう。マグにも一度戻ってくるように伝えたし」

 

 そうすれば、明日は朝から浄化作業にあたれるしね。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。