忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
夜はだれと同衾するかで今度は賭けが行われそうになった。ジャンケン弱いヤツにもチャンスを!ということらしい。
ラウが今度こそ!とはりきっていたけれど、負けられると困る。
さすがに一晩中知らない人と寝るのは嫌だから。
「寝るのは姉さんとがいいの。ごめんなさい」
私なんかと寝たいと言ってくれているのに、ごめんなさいの気持ちで謝る。反応が怖くてラウの陰に隠れるようにして伝えると、お姉さま方が泣き崩れた。
「いいのよ!」
「なんて姉冥利に尽きる!」
「こんな妹欲しかったぁ!」
「尊い!」
最後はよく分からなかったけれど、納得してくれたみたい?
ラウはラウで得意げな顔で小鼻が膨らんでる。
夜も群れBチームで焚き火をたき、不寝番をきめる。それぐらいなら、と思ったのに免除されそうになって異議を申し立てた。
どうやら群れBのリーダーはロアさんだったらしい。
「フェリちゃんでもできる! かもしれないし、できないかもしれないし、というかフェリちゃんはそんなことしないでも大丈夫よ! 体力が有り余ってるバカどもがたくさんいるし」
「でも皆さん、明後日の作戦には参加するじゃないですか。私も役に立ちたいです。敵が近づいてきたらロアさんを起こせばいいんですよね?」
「そうね! というか、不寝番は2人1組で行うから、私と組む? そしたらラウお姉さんもゆっくり休めると思うの」
そうか。そうだよね。
「分かりました。ロアさんと組みます」
何故かロアさんがガッツポーズをして、ラウが膝から崩れ落ちていた。
「嫌じゃない?」
「嫌なわけないじゃない」
ロアさんが自分の外套に私を入れてくれて、背中から抱きしめてくれる。
私が忌み子だと知ったらこうはしてくれないだろうな。
もし何かの拍子に知って嫌な気持ちになったら?
やはり距離が近すぎるのはよくないのでは?
「あの、やっぱり一人で座ろうかなと」
罪悪感からやっぱり離れて座ろうと思ったのに、ロアさんが離してくれない。
「だめよ。寒いから。くっついてると私も温かいし、一緒にぬくぬくしましょ? フェリちゃんいなくなったら寒すぎて震えちゃう」
「そんなに? 薪たします?」
「大丈夫大丈夫」
ふふ、とロアさんが抱きしめてくる。
「やっぱり女の子は柔らかいのねー。うちにも子どもがいるんだけど、あ、男ね。ゴツゴツして痛いの。それにもう恥ずかしがっちゃって、ぎゅーってさせてくれないのよ」
こんなガリガリでも男の子よりは柔らかいのかな? それか筋肉が足りない?
「おいくつなんですか?」
「今年で8つ。もうすぐ9つね」
7つ過ぎれば周囲は子ども扱いはしないし、本人も母親に抱きしめさせたりはしないかも。
「だからついね。ごめんね。こうして接せられるのは短い間だけだし。夫が生きていれば2,3人産んだかもね」
「いえ・・・大丈夫です」
お母さんて、こんな感じだったのかしら?
ふわふわで温かくて。
「フェリちゃん、冒険者するんだったら、うちのチーム入る? お姉さんも一緒に。戦技なかなかよかったし。鍛えてあげるわよ?」
先ほどまで体を動かしたいというカルロアさんに付き合って、稽古をつけてもらっていたの。
氣による身体強化はまあまあだったし、ナイフに乗せた氣も良かったみたい。でも、動きが大振りすぎて当たらなかったけど。
「ええと・・・」
どたん、と各自張ったテントからはまだ物音がしてるものも多い。不寝番の最初だし、みんなこれから寝るのかも。
「ごめんなさい。せっかく誘ってもらったけど、私は、その・・・」
「ふふ。ごめん。いじわるなこと聞いちゃった。人間相手はこわい? 組み手でも腰が引けてたものね。冒険者ギルドの依頼は盗賊や山賊討伐もあるし。でも気が変わって冒険者やっても良いな、と思ったら声かけてね」
「はい」
「ねえ、フェリちゃん」
「はい」
「一つ結びも可愛いんだけど、明日さ、私に髪の毛任せてくれない? うち男の子だから結ったりできなくてさー」
「全然良いですよ。私からお願いしたいくらいです」
がたん! とあちこちのテントからまた物音がした。みんな転んだの?
「やったぁ! ふふ。今から楽しみ。どんな風に結っちゃおうかなぁ。少し軽く結ってもいい?」
「はい」
一つ結びを解いて、ロアさんがあれやこれや試してくれる。
「ハーフアップにしよっか? それともお団子? 好きな髪型とかやってみたい髪型ある?」
「いえ。特にないので、ロアさんの好きにしてもらっていいです。誰かに結ってもらうの、久しぶりです」
「あら、ラウラリーエは結ってくれないの?」
「こんなことで手を煩わせたくないですし」
「そう。明日だけと言わず、遠征中ずっと結わせてくれない? 昔妹たちに結ってあげてたのよ。私も懐かしいわ」
「はい! ありがとうございます」
髪を結ってもらうなんて、本当に久しぶり。昔私のお世話をしてくれていたタニア以来。
「毛先、少し痛んでるわね。私が使ってる髪油使ってみる? 良い匂いだし、つやつやになるからね?」
「はい。ありがとうございます」
髪の毛をさらさらといじられていると、テントからケイナさんが顔を出した。
「ロア! あんたいい加減にしなさいよ! 私たちだって遠慮してるんだからね! フェリちゃんと匂いお揃いとか! 許すわけないでしょ!」
ケイナさんの参入を機に、あちこちのテントから女性陣が顔を出し、ロアさんが非難に晒された。
私が不寝番をするとみんな寝なくなっちゃうからと、 当番から外されることになってしまった。