※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第2話 家族?

「ハイエヴァーからは山三つは向こうじゃ。安心してくだされ」

 

 頭、胴体、手足がついた小さな石人形がしゃべった。

 およそしゃべりそうもないのに、口がぐにゃりと器用に曲がる。

 

「胴体に空洞があって、石を振動させて声にしております。魔物ではないので、ご安心くだされ」

「…わかりました」

 

 魔物はこんな風に話さない。

 

 町ではないと言うし、不思議な場所だ。

 

「それより傷口を診た方がいいですじゃ。説明はあとでもできますからの」

 

 石人形の言葉を受け女性がはっとした様子で、私をうつ伏せにひっくり返した。

 背中にあるボタンが外されていく。

 どうやら服を前後ろ反対に着させられているみたい。

 

「無理に動いたから傷口が開いたようじゃな。傷口を綺麗に拭いて、包帯を巻き直した方がいい。着替えもしたほうがいいじゃろな」

 見た目子どものおもちゃなのに、老成したおじいさんのような口ぶりが少しばかり気になる。

 

「拭くんじゃぞ!おい!」

 

 石人形が忠告すると同時に女性がのしかかってきた。

 ぬるりとした生温かい感触。

 

「え?」

 

「フェリさまがびっくりされておる! やめんか!」

 

 静止の声も無視してぴちゃぴゃとした水音が響く。

 

「ちょ、え?ちょっと!」

 

 体を起こそうにも、のしかかられていて難しい。

 身動きできない間に脇腹からじっとりと舐め上げられた。

 

「ううっ」

 

 くすぐったいような。

 

「汚いから、舐めるのはだめ。だめだって!」

 

 私の言うことも聞いてくれない。

 

 何度も脇腹や背中を舐め上げ、傷口の縁を舐めて、最後に傷口を吸い上げられた。

 

「んっ!」

 

 それは痛い。涙目になる。

 

 最後に湿布?を貼られたら、服を着せられて仰向けに戻された。

 

「フェリさまの血きたないない。大切。元気なる」

 

「は?」

 

 私自身びっくりするくらい不機嫌な声がでた。

 女性が首をすくめてしゅーーん、とした。

 

「人の血を舐めてはだめ!具合悪くなったり、病気になったらどうするの?」

 

「しない!フェリさまの血すごい!みんな元気なる!」

 

 目がキラキラとして話が通じない。

 

 疲労感から体が毛布に沈み込んだ。

 はあ、と大きなため息をつくと、また女性はしゅーーんとうなだれた。

 

 疲れて目を閉じると、2日経っていて驚いた。

 

 

 気がつくと女性がわんわん泣いていて、胸元がひんやりとした。

「フェリさま死ぬどうしよう。ずっとずっと寝てばっかり。一昨日も起きた少しだけ。もう起きてくれなかったらどうしよう」

「どうじゃろうなぁ。起きてくださるといいが。次に起きたらご飯を食べてくだっすたらいいのぅ」

「うん。兎獲った。うまく切れなくてお肉小さいなったけど。フェリさま、フェリさまぁ・・・」

 

 延々と泣き続けられたら、目も覚める。

 

 それにしても彼女らは私を誰かと勘違いしていないだろうか?

 私は様付けされるような人間じゃない。

 

 悲しむ必要なんてどこにもないのに。

 

 まぶたが重くて開かないから、口を紡いだ。

「なか・・・い・・・で」

 

 きっとあなたが想うフェリは元気にしているから。

 でも思ったより声がかすれて出ない。

 

 水のみたい。

 

 思うと女性が聞いてくれた。

「水飲みたい?」

 

 微かに頷くと、少し口を開けられて、生温かいものに唇が包まれた。

 温んだ水が少しずつ注ぎ込まれる。

 

 これ、覚えてるかも。

 

 前もこうやって飲ませてもらった。

 

 この感触はなんだろう?

 温かくて柔らかくて、口と同じくらいのサイズ。

 革製にしては柔らかすぎるし、なめらかだ。

 よっぽどなめしたのかな。

 

 3回嚥下すると、それが離れた。

 

「もっといる?」

 

「だいじょうぶ」

 

 さっきよりは声がでた。

 でももう手足の感覚が薄い。一昨日外にまで出たのが信じられないくらい。

 

 十分かな。

 もういいよね。

 

 おじいさまの言いつけは守れなかったけど、私なりに頑張った。

 最期、こんなに優しい人たちに看取られるなら十分だよね。

 

 

 女性の誤解を解いてあげなくちゃ。

 

「きっとね、あなたのフェリさんは元気だから。泣かなくて大丈夫」

 ゆっくりゆっくりと話した。

 

「あなたは、あなたの大事なフェリさんと私を勘違いしてると思うの。だから、心配しないで。きっと帰ってくるわ」

 

 女性がぎゅうっと抱きついてきた。

 ふわりといい匂いがした。

 

「どうして、そんなこと言う? わからない。フェリさまはひとりだけ。ここにいるフェリさまだけ。ほかにいない。間違いない。フェリさまどこか行こうとしてる? どこか行きたいなら連れてく。でもその前にごはん食べる。元気なる。人間ご飯食べないと死ぬ。フェリさまずっと食べてない。スープ作った。フェリさまのため作った。食べて?」

 

 いまさら食べて元気になったところで、行く場所もないけど、私のために作ったというのだ。

 食べないのは失礼だ。

 

「食べさせてくれる?」

 

 さっきみたいに二口飲ませてもらうと、お腹いっぱいになった。

 

 またねむい。

 なにかお返しがしたいと思いながら、ねむった。

 

 夜もなんだか騒がしい声が聞こえて、夢うつつのまま飲まされた気がする。

 

 

 翌日、少し元気になった私はまた飲まされそうとして悲鳴を上げた。

「待って!ちょっと待って!」

 

 女性は不思議そうに首をかしげた。

 口に含んでいたスープを一度嚥下する。

「フェリさまどうしたの?」

「どうしたって、こっちのセリフよ! 今までもこうして飲ませてくれていたの?」

 

「うん」

 

「うん、て・・・」

 私は毛布に顔をうずめた。

 

 まさか、口移しだったなんて・・・。

 予想外すぎて、言葉もでない。

 

「フェリさま?」

 

 はあ・・・。

 

 私は女性を見上げた。

 

 悪いことをしたなんて微塵も思っていない。

 きらきらした瞳・・・。

 

 私も誰かに聞いたわけじゃないけど、番の行為なんだろうとは察している。

 森に棲む動物たちも番で舐め合ったりしているし。

 赤の他人同士が気軽にしていいものじゃない。

 

「私なんかにだめよ。大事な人とすることだから。大事な人のためにとっておいて?」

 

「フェリさま大事。なにより大事。一番大事。いい」

 

 最後は疑問系ではない。

 いいでしょ、と言い切ってきた。

 

「あなたご家族は? その石のお人形だけ?」

 

 家族がいれば説得してくれるのでは、と思ったのだけどまた想像を超える回答がきた。

 

「かぞく? 人間のいう家族?」

「ええ」

「血つながってる?」

「そうね」

「わたしの家族フェリさま! フェリさま家族!」

 

「んん?? 待って。本当にわからない。おじいさまかあの人に隠し子がいたってことなの?」

 

「ちがう。フェリさま覚えてないの? フェリさまが助けた。ラウ湖。穴狐」

「あなぎつね?」

 

 私は一番最後に見た穴狐のことを思い出した。

 

 

 

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