※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

20 / 112
第3章 過去編
第19話 再会1


 今年もあと10日ほど。

 年越しのお祝いため、買い物をしようとバンドラガルよりさらに西方の町にやってきた。

 王都はさらに西の端、イェール海に面した場所にあるから、街道は「上り」に当たる。

 

 買い物はどこでもよかったし、冒険者ギルドから近隣の街に捜索願いをだされているとのことだったので、今までいたウィンザード領を出て王領まできた。

 木は森の中に隠せってね。門番に冒険者カードを見せたけれど、誰何されることもなく通されたわ。

 この町は王領の中でも東の方に位置する町で、大きさはバンドラガルより少し大きいくらい。

 

 来る途中に狐や兎を見つけて狩ってきたのだけど、当初は商業ギルドで売ろうと思ったの。でも、身分証の提示を求められたら冒険者カードしかないし、どうして冒険者ギルドで売らないんだ?と聞かれることになる。

 結局、冒険者ギルドで売ったんだけど、内心ばくばく。

 無事売れて良かった。

 

「食料を買って帰りましょう?」

 ラウを見上げると、眉根をよせて難しそうな顔をしている。

「どうしたの?」

「ここで依頼をこなして、少し稼いでからにしてもいい?」

「いいけど、どうして? 年明け1ヶ月分くらいなら買えると思うけど」

「そうだけど、お祝いしたいなって」

「そうね。誰かと年越しを過ごすの久しぶりだから、ムームとフォーレとラウがいてくれて嬉しい。ごちそう作りたいな」

 数日前から準備しよう。

 自然と顔がほころぶ。

 フォーレも故郷には帰らず、私たちと一緒に暮らすと言ってくれた。

 家族が増えてにぎやかで本当にうれしい。

 

「フェリ~~」

 ぎゅーーとラウが抱きついてきた。

「くううん」

 フォーレも足下ですりすりしてくる。

 

「ちょっと! え? 二人とも何?」

「かわいいなぁって思って」

「わんっ!」

「それいっつも言うじゃない。いいから離れて!」

 

 ラウの話を詳しく聞くと、誕生日を祝いたいのだそう。

 誕生日か…。

 裕福な家なら誕生日を祝う家もあると思うけど、庶民は年越しと同時にひとつ歳が増えたと数えて、年越しと歳が増えるのを同時に祝うのよね。

 

「フェリは自分の誕生日いつか覚えてる?」

「えっと、日付のこと?」

「ええ」

 

 えーと、冬に産まれたのは聞いてたけど。

 

「1月の12日。すごく難産でみんながフェリの誕生を心待ちにしてた。産まれる前から、私たちの愛し子なのは分かってたからね」

「1月12日は動物たちがラウ湖に毎年誘いにきてたわね。歌うたってほしいって。ラウの差金だったの?」

「わたしだけじゃないわ。あの土地に棲む精霊たちの総意よ」

 

 朗らかに笑って言うけど、雪の中ラウ湖まで行くの大変だったんだからね?

 

「わたしを作ってくれたのも、年末の2日前だったでしょ?ふたり分の誕生日のお祝いしたいな」

 誰かと過ごせるだけで嬉しくて思いも寄らなかったわ。

「私もラウと会えたの嬉しいから。お祝いはいいアイデアね。プレゼントをそれぞれ用意して渡す?」

 

 それほどずれた提案でもないと思ったのだけれど、「だめ!!」と即否定された。

 

「何を買うか内緒にするって事でしょ? 別行動はだめ。今はプティもふらふらしていないし、こんなに可愛いんだからバンドラガルみたいに絡まれたらどうするの?」

 

 ぷりぷり怒ってる。

 

「どちらかと言えば、ラウの方が可愛いから、絡まれるならラウだと思うけど・・・」

 冒険者のお姉様方の例もあるので、女性に心配されて声をかけられることはあるかもしれない。

 

「わかったわ。2人で買いに行きましょう。どういうのにするか目星は付いているの?」

 

「ネックレスとかピアスとか指輪とかつけてる子も多いじゃない? フェリも似合うと思うの」

 

 そうかしら?

 こんな貧相な子どもが装飾品をつけたところで不相応ではないかしら・・・。

 

「私には似合うと思えないけど、ラウは似合うと思う。依頼を受ける前にどれくらいするのか、お店に見に行きましょう?」

 洋服や装飾品の見立ては苦手だけれど、ラウに似合う物は私が選びたい。

 

「やった!!早くいこ!」

 

 依頼ボードの脇で騒いでいたので衆目を集めてしまい、何人かの男性から店を案内しようか、と声を掛けられたけどラウが断ってくれた。

 

 バンドラガルと同規模とは言っても、こちらの人の方が垢抜けた格好の人が多いように思う。コート一つとってもワンポイントの飾りがついたり、東ではみたことのない橙の色だったりと華やか。

 

 私とラウのコートは旅にも耐えられる頑丈な外套だから、町の人が着るコートと比べられるものでもないかもだけど…。

 

 それに年末とあって、年越しの飾りつけもされている。四精を讃える幟があちこちに立ち、火精、水精、土精、風精の像があちこちに立っている。

 

 精霊からは嫌われていると思っていたから、事実を教えられた今でも精霊教会の教えは苦手。 

 

 疎外感を感じながら街を歩く。

 ラウが串焼きを食べたいと言うので、二人と一匹で食べながら。

 

 すれ違う人はみんな自分の家族に夢中で、私たちに注意を向ける人もいない。

 

 天気はよくて、寒いけど、抜けるような晴天で、背に回されたラウの手が温かくて。

 幸せだなと思ったの。

 

 なんの憂いも不安もなく、幸せだなって。

 

 

 しばらく街を歩いて、装飾品店を冷かした後、宿を決めて、夕飯をどこで食べようかとぶらぶら歩いていると、いきなりラウが肩を強く抱いて、胸に顔がむぎゅっと当たった。

 

 どうしたのか聞く間もなく、頭上から低い声が発せられた。

「勝手に触らないで」

 

「その子、ハイエヴァーのフェリシアでしょう?!」

 どきっと胸が跳ねて、体がこわばる。

 

 こんな場所でまだ過去が足を引っ張るのか。

 声は年若い女の子のようだけど。

 

「知らないわね」

 体を引き寄せられたまま、ラウが足早に立ち去ろうとする。

 

「待って!! わたしよ。シェラロッテよ!」

 

 一瞬足が止まってしまった。

 懐かしいとかじゃない。

 謝罪した方がいいかと逡巡してしまった。

 でもシェラロッテに私の名前を教えたことはない。立ち去った方がいい。

 

 一歩踏み出す前にさらに声がかかった。

 

「うちの子が急に済まなかった。よければ話だけでもどうかな? 悪いようにはしない。私は術士軍に席をおいているイルヴァングという。話を聞かせてもらえれば、ウィンザード領で出されている捜索願も取り下げてあげられるよ?」

 

 それがどれだけの効力があるの?

 取り下げてもらったところで、ほとぼりが冷めるまではバンドラガルへは行けないでしょ?

 

 ラウはどちらがいいのか判断しかねるようで、足が止まってしまった。

 私はラウの腕を抜けて、声のした方へ顔を向けた。

 

 黒い髪に青い瞳。二年ぶりの彼女はすっかり大人びていた。

 となりの長身の男性がイルヴァングさんなのかな。金糸の長い髪に、ラウと似た湖沼色の瞳。男にしては信じられないくらいの美丈夫。一瞬女性と見間違いそうになるけど、男の中でも高い身長と肩幅、喉仏が男と知らしめる。20代中ばくらいかしら。

 

 私を見て、シェラロッテが驚いたようだった。

 なにか変なところあったかな? あの頃と違って貫頭衣を着てないから?

 

「捜索願は取り下げていただかなくて大丈夫です。・・・お父さんのことは助けてあげられなくてごめんなさい」

 

 だいぶ思い出さないようにはなったけれど、こうして直接突きつけられると、まだ町の人の罵倒が脳内に響く。

 彼女も私の所為でお父さんが亡くなったと思っているはずだ。

 それにしては嫌悪や怒りの感情はみえないけれど・・・。

 謝罪もできたし、もうシェラに対して思い残すことはない。

 

「ラウ、フォーレ、行きましょう」

 ラウの腕を取ると、シェラが慌てた様子で迫ってきた。

 

「話を聞いてほしい! 感謝と謝罪を。そしてフェリシアのことも聞かせてほしいの」

 

 王都に精霊術士として仕えることになった彼女と?

 もう接点などないのに?

 

「結構よ。それに私は名前を教えたことなかったでしょう? どこで聞いたかは聞かないけれど、それだけでもう十分」

 

「なるほど。これは手強い」

 イルヴァングが顎を撫でながら笑みを浮かべた。

 

「なら、これはどうかな? 実はシェラは精霊力過多症で困っていてね。この件も含めて話をしたいんだ」

 

 精霊力過多症は精霊術士がまれに発症する病気で、霊力が多すぎて体に負荷がかかる病だ。倦怠感や発熱などが主な症状だったはず。治療法としては精霊術を積極的に使用して霊力を溜め込まないようにするんだったかしら?

 

「私がこの件で役に立てるとも思えないけれど?」

 

「そんなことはない! 一番の特効薬だと思っているよ。ぜひ話を聞いてくれないかな?」

 

 物腰は柔らかな印象で、無理強いをされてる感じは受けないけど、じわじわと逃げ場を失う感じが嫌ね。搦め手がうまいというか。

 シェラを嫌っているわけではないし、なにか役に立てることがあるなら話を聞くのもやぶさかじゃないかも。

「分かったわ。話を聞きましょう」

 

「嬉しい!」

 

 私の手を取ろうとしたシェラの手を、ラウがはじいた。

「だから、勝手に触らないで」

 

「ラウ? どうしたの?」

 バンドラガルではお姉様方に触られまくっていたし、嫌がっていても叩いたりすることはなかったのに。こんなにピリピリするなんて。

 

「わたし、シェラロッテ嫌いなの」

「えぇ? 話したこともないでしょう?」

「それでも嫌いなの!」

 

 よく分からないけれど、精霊術士は嫌いだって言っていたから、それも関係してるのかも。あとでゆっくり話聞いてあげたいな。

 

「ごめんなさい。ラウが機嫌悪いみたいで。ラウ?」

 

 ラウの腕を撫でると、彼女の眉尻が下がった。

「う・・・、手荒だったことは謝る。ごめんなさい。でもわたしのフェリだから触ってほしくない」

「そうなの!?」

 シェラが素っ頓狂な声を上げて、こちらの首筋を見てきた。

 奴隷になった場合、首輪を嵌める場合があるからだけど。見過ぎじゃない?

 

「奴隷にはなってないわ。彼女は私の命の恩人。今の私は彼女の意で生きてるの」

 

「・・・・・・そうなんだ」

 シェラがなぜか意気消沈とした。

 

「場所を変えよう。少し話も長くなるようだからね」

 イルヴァングさんの提案で続きは夕飯を取りながらになった。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。