※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第25話 ~sideシェラロッテ~ 9歳6月 イチゴのジャム

 雨の日は好きだ。

 家の手伝いとして薪や木材を売りに行かなくていいし、家でずっと本を読んでいられる。

 ただこの前借りてきた本は読み終わってしまった。

 

 続き4冊はあったな・・・。

 

 まだ朝ご飯を食べたばかりだけど、雨の日なら彼女も家にいるはず。

 

 

 本を片手に養父のダージリウスに外出の身振り手振りをする。

 むっと眉をしかめられたが、川カエル製の合羽を羽織って家を飛び出した。

 

 家から彼女宅までは四半刻ほど。

 川カエルはこの辺に出没する魔物で、その皮を剥いで作った合羽は防水性が高い。

 ブーツもいい職人のものであれば重宝すると聞いた。下手な職人が作った製品だと、縫製が雑で水がしみ出してくるらしい。

 

 わたしのブーツはもちろん普通の革靴だ。

 水たまりはちゃんと避けなくちゃならない。

 

 彼女の家までは森のふちを歩いて行けば着く。

 わたしの家は森の裾にあるし、彼女の家もおなじ。町と領主の館を眺めながら、しっとりと濡れた道を歩く。

 何件かの家を通り過ぎたがひっそりと静かで、森からはたまに鳥の鳴き声が聞こえた。

 

 三日ぶりに訪れた彼女の家の外壁には、もう壊れた椅子は置いてなかった。

 ノックをして家に上がり込むと、彼女はこちらに背を向けて、かまどで何やら煮込んでいる様子。

 

 合羽を脱いで近づくと酸っぱい匂いがする。

 鍋の中は真っ赤だ。

 

「いらっしゃい。木イチゴでジャムを作っていたの。蜂蜜も手に入ったから大工のところの子どもたちも喜ぶと思って」

 

 蜂蜜!!!

 

 わたしも大好物なので、彼女の袖を引いてアピールするとうっすらと微笑んでくれた。

 

「あなたも食べたいのでしょう? まだ煮込まないといけないけど、お昼すぎに来てくれるなら少し分けてあげられるわ」

 

『お昼までここにいたい』

 

 彼女は考え込む表情をしたけれど、外に目線をやってから頷いてくれた。

「わかったわ」

 

 ぱあああ、と気持ちがはじけると同時に、彼女を取り巻いていた精霊たちの数体が急にこちらに擦り寄り、突風が吹き荒れた。

 

「!!?」

 

 慌てて彼女にとりつく。

 風がぴたりと止んで、いたずら好きの精霊たちはちょっぴり頬を膨らませたが、彼女に寄り添っていた精霊たちに叱られ、うなだれている。

 

 急でびっくりしたけど、彼女のとなりにいるかぎり安心だ。

 

 

「お茶を入れるわ」

 

 空気を変えるように彼女が提案してくれてる。

 うん!と大きく頷くと、彼女はまたいつもの優しい笑みを浮かべてくれるのだった。

 

 

 

 

 くつくつと木イチゴが煮える音と、薪が爆ぜる音。

 わたしが繰るページの音。

 

 ふと本から顔を上げて鎧戸の外に目を向けると、しとしとと雨は降り続いていた。

 

 状況は自宅と変わらない。

 ダージがいて、わたしがいて。

 

 ここにはダージの代わりに彼女がいて、わたしがいて。

 

 

 ダージも彼女も無駄話はしない。

 静かなのはどっちも変わらないのに。

 

 

 ぴったりとはまった感じがするのはどうしてなんだろう。

 

 

 彼女がかまどに掛けていた鍋をキッチンのテーブルに移動する。

 ジャムできたみたい!

 

 お味見したいとそわそわしていると、こちらに気づいて苦笑された。

「もうちょっとまってね」

 

 小麦粉、卵、牛乳と高級な材料をボールに入れて混ぜ始めた。

 フライパンにたっぷりのバターを広げて焼いていく。

 

 食べてなくても匂いだけでわかる!

 これは絶対おいしい!

 

 彼女は不安そうに何度もひっくり返し、わたしは本を読む気にもなれず、彼女のまわりを熊のようにうろつく。でも熊ほどは大きくないから、犬?くらいかも。

 

「できたわ」

 

 わたしの席に置かれた木皿の上には、分厚めのクレープに赤い木苺のジャムがかかり、さらに蜂蜜もうっすらかかっていた。

 

 めちゃくちゃおいしそう!!!!!

 

 さっそくフォークを手に取り食べようと思ったが、彼女の皿にはジャムも蜂蜜もかかっていない。ただのクレープが一枚きり。

 

「甘いのは得意じゃないって知ってるでしょ」

 

 知ってる。

 そう言っていつもクッキーも譲ってくれる。

 

 でも口に入れたジャムはそこまで甘いわけじゃない。すっぱいところもあるのに。

 

 

 自惚れそう・・・。

 

 本当はわたしにたべさせたくてジャムを作ったんじゃないかって。

 わたしがこの前クッキー食べれなかったの気にして・・・。

 

「おいしい?」

 

 深くうなずいた。

 おいしくて脚が勝手にぱたぱた動いちゃう。

 

 

 優しくしてくれる彼女がすき。

 

 わたしも優しくしたいな。

 

 

 いつのまにか雨は止んだようで、窓から光が差していた。

 

 

 

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