※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

31 / 112
第30話 家探し 〜sideラウラリーエ〜

『いやだもーーー! 一緒の部屋が良いもぉぉぉ!』

 

 別れた後、平民街で宿を取ろうとしたのだけど、どこもペット不可。というか、獣は獣舎ということみたいで、フォーレが嫌がって宿が決まらず、わたしたちはテラス席の食堂で途方に暮れた。

 田舎はそのへん寛容だったのに。

 

「べつに同じベッドで寝てるわけじゃないし、獣舎で良くない? ちゃんといつものブランケット敷いてあげるから」

『嫌だも! 同じ空気の吸える距離にいたいんだも! ラウラリーエは抜け毛から爪、よだれも全部ゲットしてるくせに! せめて同じ部屋で寝たい希望も駄目なんだも!?』

 

 そう言われちゃうと、弱いわね・・・。

 話が分からないはずのフェリが、よしよしとフォーレを撫でた。

「とても嫌がってるわね? いっそのこと王都の外、野外で眠る?」

「それはもちろん構わないけど、いつまでもって訳にもいかないよね? 荷物ずっと持って行くことになっちゃうし」

「そうよね。今日は結界にして、明日お家を借りましょう? どの辺が良いのかしら」

「プティに情報収集頼んでおくわ」

 

 そうして翌日。

 プティの話だと東はテラニード王国へ至る街道があり、西はイェール海に抜ける街道があるため、東西門付近は高額とのこと。北は軍の宿舎や訓練場があるため治安がよく、おかげで高額とのことで、治安が悪く安い南部に活路を求めてやってきた。

 

 南部は土地が安いからか、雑多な雰囲気で、昨日行った貴族街とは真逆の様相。

 大きな客引きの声。

 ちょろちょろと走り回り、ぶつかっても謝りもしない子どもたち。

 子どものくせにスリを働く者もいるから油断ならない。

 あと何が目的か分からないけど、よく話しかけられる。天気がどうとか、服がどうとか。うちで働かないかとか。

 

 おかげでフェリの機嫌が急降下している。

「どこかで休も? 昼ご飯でも食べる?」

「さっき食べたばっかりだからいい」

 まったくデレのないツンのみ。

 

 南部で家借りるのはミスチョイスなんじゃないの?

 不安になったのだけれど、良い感じに外れることになった。

 

-ペット連れ? 雪狼? どれくらいの大きさになるんだい? だめだめ! それなら一部屋じゃなくて一軒家じゃないと。

-姉妹ね。ここなら月に金貨4枚! 日当たりは悪いし、隣の家の窓から丸見えだし、鍵も壊れてるけど、これ以上安い物件はないよ! 超お得だよ!

-ウィンザード領からねえ。すまないが紹介できる部屋はないねぇ。他を当たってくんな。

-ペットもいるし、金貨15枚。これ以上安い物件は紹介できない。

 

 

 昼食を挟んで、6件の業者を当たったけれど、環境が悪かったり、想定よりも賃料が高かったりして良い物件はなかったわね。

 

 金貨4枚のところは鍵は術でかければいいから問題なかったのだけれど、すぐ隣の家と窓越しに部屋が丸見えで、中年男性と目が合った瞬間に、フェリとわたしの肌に鳥肌が立った。無理だったわ。

 

 

 夕暮れ。

 

 もう今日探すのは止めようということで、食堂にやってきたのだけれど、暗い顔でフェリが深いため息をついた。

「服装が悪いの? それとも所作? 足下を見られるわね」

 シードルを飲むフェリの顔色も悪い。

 歩き通しだったから、疲れちゃったんだろうな。

 

『わがまま言うの止めるも。フェリさまが元気なのがいいも』

「フォーレが獣舎で寝るって。だから今日は宿に泊まろう? フェリには元気にしていてほしいって言ってる」

 

「フォーレ! いい子ね」

 ぎゅーと抱きしめて、なでなでしてる。ここはまあ、許してあげよう。

 

『ラウラリーエ! フェリさまの左手が冷たすぎるも! 紫色だも』

「ええっ?!」

 

 対面から隣へと席を移る。感覚が薄いから冷たいとか自覚がないのね。凍傷になっちゃってる。お風呂でゆっくり温めてあげなきゃ。とりあえず握っておこ。

 

「ラウ?」

「凍傷になってる」

 

「そうなの?」

「ええ。フォーレが教えてくれた」

 

「フォーレはほんとにいい子ね。お話しできたら良いのに」

「それよ!!!」

 

 夕飯を食べた後、わたしたちは宿を取らずに野外で結界を張った。

 

 

 精霊術で結界内の温度を上げてもフェリには効果がない。術ではなく物理的な現象として発生させる必要がある。

 焚き火を起こしつつ、お風呂の準備をする。

 お湯は精霊術で作ったものだとしても、物理現象としてそこに”ある”からね。

 

 寒さで震えるフェリの着替えを手伝って、ふたりで湯船に浸かる。

「すこしピリピリするかも?」

「感覚が戻ってきてると良いよね」

 バックハグをしながら、やさしく左手をもみもみする。

 

 うらやましそうにフォーレが見上げてくる。

「フォーレもいらっしゃい」

『いいも!?』

 

 フォーレがダイブしてきたので、お湯が跳ねた。こら~。

「フォーレが犬だからって足下見てくるところも多かったでしょ? フォーレを人間にしましょ」

 

「そんなことできるの?」

 

「たぶんね。素体は雪狼だとしても、変化くらいできるはずなのよ。やってみましょう」

 

 ナイフでフェリの指先をうっっすく切りつける。

 天才的ね。ぷっくりと血が盛り上がってきた。絶妙なほんの少し。

 

「まずは1滴ね。与えすぎないで」

 フォーレの体に悪いからじゃない。フェリの血は全部わたしのだからよ。

 

「気持ちと血とことば。覚えてる?」

「ええ。やってみるわ」

 

 フォーレが血ぺろりと舐めると、フェリの声が歌うように紡がれた。

「フォーレとお話ししてみたい。人間になってほしい」

『こちもフェリとお話ししたいも! 人間になりたいだも!』

 

 ぱあああああ、とフォーレの体が光る! こともなく、子犬の肉体がぐにゃりと人型へと変じた。

 びっくりして抱っこしてるフェリの体が、びくっと震えた。

 わたしもこうなるとは思ってなかったから、びっくりしてる。。

 

 フォーレは見た目5歳くらいで、髪はフェリの性質を受けて紅茶色。瞳はアイスブルー。

 ん? 耳としっぽ残ってるわよ? 真っ白のが。

 

「か、かわっ」

 フェリが感激して言葉を失ってる。

 え? そりゃ幼児の体型で可愛いと言えば可愛いけど。

 

 フォーレは自分の両手を眺めて人と同じ指先に目を輝かせている。

 手を表にしたり裏にしたり。しげしげ眺めている。

 

「ほらね。明日また業者を回ってみましょう?」

「ええ!」

 もやっとするけど、フェリが喜んでるからいいか。

 

 フォーレが口をパクパクしてる。

 

 わかる。最初筋肉の使い方分からなくて、もどかしいのよね。わたしは人間の体をもらったとき、動かなすぎて水精術で無理矢理動かしたもの。

 

「あ、ああ、あーあー、んーー、いーー? ふー、フー? フぇぃ? ふぇい!」

「フォーレ!」

 ふたりでぎゅーーーーーーとする。

 だめよ、それは。嫉妬する。

 

 

「今日は三人で寝ましょう!」

 見たことないくらいにフェリの目がきらっきらしてる・・・・・・。

 

 えーーー。

 

 

 えーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 今日はすっっごく楽しかったんだも!

 お家も決まったし、フェリさまもかわいいかわいいたくさんなでなでしてくれたんだも。

 歩くときはずっと手をつなげたし、椅子に座ればずっと膝だっこ。まだ腕とか上手に動かせないから、ご飯も食べさせてくれたんだも。

 ご飯もおいしかったも~。もう生肉は食べられないだも。

 

 

 夜は一緒に寝れて幸せだったのに、なんだかうるさくて起きたんだも。

 

 ぴちゃぴちゃと水音がするから、ラウラリーエが何かしてるんだも??

 でもすぐ背後にいるフェリの体がびくっと震えたも?

 

「フォーレが起きちゃう・・・・・・」

「寝てるから大丈夫」

「でも・・・。うぅっんっんぅうぅ」

 

 フェリが苦しそうだも?

 振り返って確かめようとしたら、死に直結する殺気を感じたも。

 

『これ以上邪魔したら許さない』

 風精使ってまで伝えてきたも~。

 

「ぐ、ぐぅぐぅ」

 ごめん、フェリさま~。こちでは助けられないも~。

 

 後ろが静かになったあとも、怖くて寝付けなかったも・・・。

 

 

 

 朝起きたら狼にもどってしまったも・・・。

 フェリの血1滴の効果は一日程度ということなのだも。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。