※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第31話 鍛錬

「「う〜〜ん」」

 

 ふたりで依頼ボードを見つめて唸る。

「フェリ、次にシェラに会うの明日でしょ? そのあとは3日後くらい? 週に2回てなると、間が3、4日しかないから受注難しくない?」

 

 冒険者ギルドの依頼ボードに貼ってあるのは、商人による荷馬車等の護衛依頼がほとんどで、討伐や採取系の依頼は少ない。あってもキグナム山脈の飛龍の爪とか、イェール海北部のブラック蟹とか、遠方なのよね。明後日までに戻るのは難しそう。

 

「そうね。片道2日のところしか受けられないし…。シェラに会うのを週2日立て続けにしてほしい、て言えば5日は確保できるけど。依頼を受けるのは少し考えましょう」

 

 冒険者ギルドをでると、外は快晴。積雪はほとんどないけど、風が冷たいわね。

 残る今日のミッションは食料品などの補充。

 安い南部の商店街をわんちゃん形態のフォーレをだっこして歩く。

 部屋を契約してもお金はまだある。イルヴァングさんから毎月20金貨もらえるなら、働かなくても食べていくことは可能よね。

 

「ラウは働くのってどうなの? まえは必要だったから稼いでいたけど」

「ん? 働かなくて良いなら、ずっとフェリと一緒にいるけど?」

 にこにこと答えてくれる。

 あなた、働いてるときも私同伴だったでしょう・・・。

 

「食堂で働こうかなぁ。料理覚えたいし」

 私に美味しい物を食べさせたい、ということなのだろうけど。

 

「それは嫌」

 フロアでラウが働いたら、みんなが声かけてきちゃうじゃない。

 

「どうして?」

 ちょっとにやにやしてる。

 分かって言ってるんでしょう!?

 

「嫌なものは嫌なの!」

「ふふ。ほんと可愛いわね」

 

 ちょっと!どさくさに紛れて、こめかみにキスしないで!

 無限にちょっかいを出してくるので、フォーレが呆れてる。

 

 少し距離を置いて歩こうと思ったのに、ラウの手が腰に回る方が早かった。

 

「ほら、他の人とぶつかっちゃうわよ?」

「う。それは、ありがとう」

 

「フェリはどうなの? 働きたい?」

「そうね・・・」

 

 率先して働きたいと言うわけじゃないけど、暇なのよね。

 こうして今は買い出ししたりやることがあるけど、そのうち何にもやることがなくなってしまうのではないかしら?

 

 今までは食料を採取したりしていたけれど、ハイエヴァーでは羊毛を紡いで糸にしたり、繕い物をしたり、保存食を作ったりと手仕事があった。

 

「フェリはやりたいことないの?」

 

 ずっとやるべき事、やらなければいけない事ばっかりだったから。やりたいことなんて、あったかしら。

 

 その時目の端に楽器屋さんがうつった。

 左手が動けば、おじい様から頂いたリュート弾きたかったけれど。

 そのほかにやりたい事は、ラウに追いつくことかしら。

 

「・・・鍛錬?」

「それもいいわね。最近思い切り体動かせてないし。フォーレも人型に慣れた方がいいしね。都外にでて組み手でもしよ?」

 

 

 午後は都外にある森で・・・・・・森? 林に近いわね。よく手入れされてて、下草もなく歩きやすい。

 あ、松ぼっくりが落ちてるから、後で拾って松の実を採取したり、焚き付けにしたりしたいわね。

 

 フォーレの人型が耳としっぽが見えちゃっていることと、風が冷たくて私の体調を心配したラウが結界を張ってくれた。こちらから外は見えるけど、外からは中は見えないらしい。何もないよう透き通って見えるんですって。

 

 フォーレを人型にすると、ラウは走り込みを指示した。歩くのも覚束ないところがあるものね。

 結界の内周をぐるぐる歩くくらいの速度で走り出した。てこてこと歩く様が可愛い♡ しっぽがふりふりしてる!

 

「フェリはこっちね」

「はーい」

 

 氣の訓練は毎日やっているけど、氣を通した体で運動するのは久しぶり。

 ポーリンガム森林で悪意を払う時に使った血の力。氣と相性がいいのよね。氣を血液に流して意識して広げる。薄く全身を包んで、足と手を多めに。身体強化も少しは板についてきたわね。

 

 ラウと相対するけど、隙なんかない。

 どこに打ち込んだって当たりはしなさそう。

 

 でも。

 隙を作って一撃当てたい、といつも思っているの。

 

 大地を蹴って、まずは胸元目掛けて一発。

 ぱんっ、と乾いた音がして、ラウの左手に阻まれた。

 

「いいね。体重乗ってる」

 

 すかさず左足の回し蹴りで頭部を狙う。

 屈んでかわされちゃった。

 態勢を整えて、殴打、蹴りを繰り返す。当たらない。

 

 ラウの方が早いし、動きを読まれてる。

 浄化したときのストライクショット的な技使えないかしら。

 もちろん血は使えないし、戦技を使用してラウを傷つけたいわけじゃない。あのときの力を種火にして単純に氣を爆発させるのは?

 

 何度か攻防を繰り返し、さらに氣を練る。左手に集めて手刀としてラウに叩きつけると同時に破裂させた。

 

「なっ!」

 

 ぱああっ、と走る閃光にラウの動きが一瞬止まった。

 横手に回って、体幹を意識して独楽のように回転する。体重を乗せて右回し蹴り!

 

「あぶな~」

 紙一重というところで、ラウの右手に阻まれた。

 

「残念だったわね」

 にこやかに言われても、全然嬉しくない。

 

「今のどうやったの? 戦技とも違ってたし」

「氣に浄化の力を混ぜてみたのよ。浄化は光っていたでしょ? 氣で散らしたの」

 

「よくそんなこと思いつくわね」

「地力が違うから。何でも思いついたものはやってみないと」

 ラウに追いつけない。

 

「今日はあと少しだけ軽く組み手をやって終わりにしましょう?」

「ええ」

 

 久しぶりの運動は疲れたけど気持ちよかった。今日の閃光は応用が利きそうだから、家でも考えてみよう。

 

 組み手は、動作の遅い私にラウが完全に合わせる形で行ってくれる。

 技量が同じ人同士でやれば楽しいのだろうけど、ラウはどうかしら?

 

 予定調和な動きも多くて、やったことないけどダンスみたい。ぎこちないところがあって申し訳ないなと思うところもあるけど、私が打った右拳を過不足ない速度と力でラウがはじく。左手も足技も同じ。

 ラウが私の速度に合わせて、突きや蹴りを繰り出してくる。私も払ったり、受け止めたり。

 ラウの軸足、腕の長さ、間合い、呼吸。そういうのを全部感じて受け止めて返す。

 

 気持ちも一つになっていくような一体感。

 

 

「フェリ、もう終わりにしよ。汗すごいことになってる」

「あれ? ほんとね」

 

 額から汗が止まらず、下着もびちゃびちゃ。

 

「帰ったらお風呂に入ろうね♡」

 ・・・まだ日も高いんだけど? 

「お風呂すきー!」

 

 走るのに飽きたフォーレはさっきまで落ち葉で遊んでいた(落ち葉を集めて飛び込んで散らすを繰り返していたわ。何が面白いのか分からないけど)のに、急に会話に参加してきた。

 

「わかったわ。お風呂にしましょう。変なことはなしよ。フォーレいるんだから」

「えええー」

 

 しょげてるけど、駄目よ。

 

 

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