忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
今日はシェラロッテとの面会日。
午後からあの茶屋に向かうけれど、フェリは月のものがきて少し怠そう。
「お腹痛い?」
ベッドで優しくお腹を撫でる。
「ん、少し。どうしてラウに触られると痛みが和らぐのかしら」
体温がそうさせるのか、フェリの血を分けた存在だからか。詳しくは分からないけど。
「手、当ててあげるね」
「ありがとう」
「こちもするも!」
反対側から幼児の手が伸びた。
「ふたりともありがとう」
-ふかふかであったかい・・・。
誰ともともなくフェリが呟いた。
かわいいなぁ。大好き。
こめかみに鼻先をくっつけて、フォーレに気づかれないようにキスをする。
途端に少し頬を赤くそめながら、むくられた。
午後。先日会った高級茶屋にて2回目の面会。
フォーレには犬に戻ってもらおうと思ったけれど、フェリの気持ちで人型になってるのだものね。
難しかったわ。
外套のフードはかぶせたままにしてあるけど、触られたら耳がみえちゃう。フェリは大丈夫って言ってたけど。
今日会うのはシェラロッテとスペイタスさんだけだったと思うけど、入室してきた中にイルヴァングもいる。今日は平日のはずだけど、仕事は?
シェラロッテは席に着くフェリを目にすると、大きく破顔した。
「フェリシア! 久しぶり! 元気にしてた? その子は?」
「フォーレよ。精霊だって話をしていたでしょう? 変身できるみたいなの」
「ええーーー!! すごいすごい! お話もできるの?」
「すこしなら」
フェリが抱っこしていたフォーレのフードを外す。
え? 外すの? 確かにこうして会っていればいつかはバレちゃうだろうけど。
恥ずかしげにピクピク動くケモミミを見て、シェラの目が点になった。
「耳ついてるよ?」
「ええ。もともと狼だもの」
「えーー!! すごいすごい! 触ってもいい?」
「すこしね。くすぐったいみたいだから」
緊張の面持ちでフォーレが触られる中、スペイタスさんが一人一人に紅茶を淹れ、給仕してくれた。
部屋には誰も入らないよう、壁際にはサンドイッチやお菓子類、茶器が最初から用意されていた。わたしたちの方が先に来たけど、紅茶の正しい淹れる方なんて知らないし、冷めちゃうしね。
「ありがとうございます」
「フォーレと話をしたいと言っていたが、まさかヒトになるとはねえ何がきっかけだったんだい? この前は狼だったろう?」
対面に腰掛けたイルヴァングが聞いてきた。
「フェリがフォーレと話したいと思ったからよ。それにフォーレが応えただけ」
「なるほど」
興味深そうにつるりとした顎をなでながら、フォーレを見てる。
なお、わたしは変身できない。
わたしの体は、フェリと同じ人間になりたいと望み、彼女の願いと己の願い、大量の血で生成されたもの。
フェリがわたしをケモミミの穴狐にと望んだとして、わたしもなりたいと思っても、あの時の願いを越えられない、ということね。
できたらフェリに抱っこして、なでなでしてもらえたのに。
少し残念に思いはするけれど、この体は自分にとってもかけがえのない大事なもの。仕方がないと諦めが付く。
「テラニード王国で似たような存在と会ったことがあるよ。もっともあちらはそもそもが人間の形だったけれどね」
「へ、へぇ〜」
ばれてるの? それでかまかけられてるの?!
フェリ助けて!
「そうなんですね。フォーレの場合は素体が雪狼ですが、その方は素体が人間ということですか?」
心の声が聞こえたのか、フェリが助け舟をだしてくれた。
「さあ? 誕生された際の逸話は伺っていないね。だいぶ長命の方だから。2000年以上ヒトの姿で過ごされているとか」
フォーレを抱いているフェリの手がそっと伸びて、わたしの手に重ねられた。もどかしげに左手の親指だけでもと指を絡めようとしてくる。
「フォーレもそのくらい生きるんでしょうか?」
「さあ?どうだろうねえ?」
イルヴァングが紅茶の香りを楽しみながら、カップを傾けた。
「彼の方は国の助言者の立場にいらっしゃる。フォーレが長命ならそうなる可能性もあるね」
「フェリさまと一緒に居られないだも?」
こちらの話を耳にしたフォーレは不安そう。耳がぺったりしてる。フェリも不安そう。
ぎゅーっとフェリがフォーレを抱きしめた。
「先のことはわからないわ。でも、あなたと私が望む限りは一緒にいられるわ」
「フォーレがうちにいたいなら、わたしも手助けするわ。・・・だから、わかってるわね?」
フォーレを誘拐したり、乱暴なことを考えてる不埒な者どもは撃退するけど、フェリに対してはわかってるわね? わきまえなさいよ?
「わかってるだも!こちはフェリさまのことが大好きだも。一緒にいたいんだも」
振り返りながらの上目遣いムーブ。
「!!!」
なかなかの攻撃力ね…。
フェリが叫びそうになって、喉が上下したわよ。言葉必死に飲み込んでる。
「へへ。フェリさま、少し苦しいだも」
「・・・ごめんなさい」
「私もフォーレのこと大好きよ。お菓子も紅茶もいただいて大丈夫よ。お茶は熱いから気をつけてね」
「大丈夫だも! こちは土精だから、熱さは平気だも」
フェリが皿からクッキーをとって手渡すと、小さな両手で持って、はぐはぐ食べる。フェリの膝にいるのに、ぼろぼろこぼしてるけど口がまだ小さいしね。
それよりも。
わたしは心が小さいので。
「フェリ、わたしは?」
「?」
何の話かわからないようだったので、改めて問う。
「わたしのことは好き?」
ぼっ、と一瞬にしてフェリの顔が真っ赤に染まる。聞かなくてもわかるけど、あえて聞きたいの。
「どうしてこんなところでいちいち聞いてくるの? 言わないわ」
んふふ。かーわい♡
フェリの耳に口付けて囁く。
「違う場所で言ってね。絶対ね」
きっ、と睨んでくるけど、全然平気。かわいいだけ。あー、早く夜にならないかなぁ。
フェリに絡んでいるとシェラロッテが話しかけてきた。
「ねーねー、フォーレもラウラリーエも今日光ってない?」
内心の動揺を押し隠しながら、答えた。
「ほんと? 気のせいじゃない?」
シェラロッテが改めてフォーレをしげしげ眺め出した。
やめて。
見ないで。
どうして気がつくかなぁ?
「んーん。気のせいじゃないよ。すこーーしだけ光ってるよ」
「そうなの?」
フェリにまで聞かれてしまったけど、これは正直に答えるのは、ちょっと難しい。
フォーレもわたしを見上げて対処は任せた様子。
「フェリがわたしたちのことを大好きって言うから、祝福された状態になって少し光ってるだけよ。何かあるわけじゃないから」
嘘です!!!
フェリの経血を二人で摂取しました! だから、祝福状態になってるの。いまなら、どんな状態異常も無効よ!
でもフェリに内密のことなので、公開はできないわ。
「言ってない!」
「そうね。でもわたしはそう受け取ったから♡」
「〜〜〜〜っ!」
悔しそうにむくれてるけど、嫌いとは言ってこないのね。
あー、かわいい♡。
「フェリシアとラウラリーエは本当に仲が良いよね。わたしもきょうだい欲しかったなぁ」
フェリの右腕を胸に抱きながら、わたしたちを見上げてくる。
「兄弟姉妹でも仲の悪い人は悪いわよ? それにきょうだいは増やせなくても友だちは増やせるでしょう? 仲の良い子がいるんじゃなかったの?」
「まあねー。みんな仲良くしてくれるよ? でもさ、仲良くしてくれるからって好きになるわけじゃないでしょ?」
「・・・・えぇと、お友だちの話よね?」
「そう」
わたしは二人の会話に入りたいわけじゃないから、聞き流すことにして軽食を楽しむ。ここの料理美味しいわよね。レシピ教えてくれないかしら。
「・・・嫌われているよりかは、好きになるんじゃないの?」
「フェリシアは? 嫌われてたら嫌いになる?」
「私? 嫌いにはならないわ。距離を置いて欲しいということだろうから、そうするだろうけど」
「じゃあ、逆に仲良くしてくれたら? 好きになる?」
「好き、はよく分からないけど、良くしてくれた分返そうとはすると思うけれど」
「そっか」
一瞬、こちらを見てきたシェラロッテの視線を受けて、ぞわっと鳥肌が立った。
挑発? 嘲笑? 冷たいぞっとするような。
は?
そんなんで退くわけないでしょ。
ほんとこの子嫌い。
「ところで、今回私が同席したのは、ちょっとお願いしたいことがあってね。私の知り合いが二人と会いたがっているんだよ。どうだろうか?」
にっこりと世の女性を魅了するであろう笑顔。
こういう笑顔するヤツは気をつけろってプティが言ってたわね。