忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
カイエル国王陛下と面談した温室のほど近くの離宮に忌み子たちは匿われていた。
歳は20頃から下は2つまで。
ここにいるのは全部で7人。女性5人の男性2人。
食堂で顔を合わせたのだけれど、みんな肌つやも良く、身なりも良い。生活は国王様が言ったとおり、きちんと保障しているみたいね。
ラウの瞳は爛々と輝き、多くの忌み子と会えて嬉しそう。
フォーレの尻尾もぶんぶんと揺れている。
何よりラウの目線が対面に座る大きな胸の子に吸い寄せられていて、私は・・・。
ラウが率先して生活ぶりを聞いてくれているから、私は聞き役に回った。
保護されている忌み子は改革派の貴族がいる領地ばかり。
保守派と言われている領地はそもそもいないのか、さきほど国王陛下が仰ったように隠し持っているのか。
元々の生活は私とあまり変わらないようね。領主の館で監禁ないし軟禁されるか、地下牢か。
あまり顔を見たくなくて、配られた紅茶に目を落としていたら、隣に座ったシェラが脇腹をつんつん突いてきた。
「具合悪い?」
小声で耳打ちしてきた。
そう見られちゃったのね。
少しお腹は痛いけど、そこまでじゃない。
「いいえ。大丈夫よ。ありがとう」
「そう? 何でも言ってね?」
そう言うと、右腕にぎゅっと抱きついてきた。
今日はそもそも面会日であるし、別に構わないのだけれど、保護されている忌み子の一人から笑いかけられた。
「シェラロッテさんと契約されたんですね! 私たちでは過多症を治してあげられなかったので気になってたんです。良かったですね! シェラロッテさん」
「まだ契約者ではないんだけどね。えへへ」
まだって・・・。
先ほど断ったはずなのだけれど?
「シェラとこうしているのは治療の一環よ。契約するつもりはないわ」
「わかります」
同い年くらいの忌み子の女の子が訳知り顔で頷いた。
「最初怖いですよね。村で精霊術士に接する機会なんか教会の司祭様くらいですし、意地悪なことしか言わないし。私も嫌いだったんですけど、こっちの精霊術士の皆さん優しいんですよ! 怖がらなくても大丈夫です。不注意で怪我しても怒らないし」
にこにことしている彼女に悪気はないんでしょうね。
「皆さんと契約してくれた術士の皆さんが優しい方と聞いて安心ですが、私が契約するかどうかはまた別の話ですので」
「でも怪我をしたとき助かりますよ」
楽と対になる天秤の片側が命だと理解していなさそう。
「ええ。そうかもしれません。でも私には不要です」
「そうですか・・・」
女の子はしゅんとした後に、それでもめげずに話しかけてきた。
「フェリシアさんもここで暮らすんですよね?」
「その話はされていないわ。皆さんがどんな暮らしをしているか見に来ただけで」
ラウの方の話の輪に入っていたのに、国王陛下が耳聡くこちらの会話に入ってきた。
「見学という話だったけれど、もちろん今日から一緒に住んでもらって構わないよ。姉のラウラリーエと一緒にね」
ここに??
もちろん私の答えは否だ。
けれど、ラウが住みたいと言うなら一考の価値? 余地? くらいはあるかもしれない。
「ラウはどうしたい?」
「お家借りたばかりだけど、ここに住むのもいいわね!」
「ラウラリーエさん一緒に住んでくれるの!?」
「術士は通いの人ばっかりだから嬉しい!」
男子の目が輝き、女子たちも嬉しそうにしてる。
ラウは美人だし、人当たりも良いし、細々世話も焼いてくれるし。みんな喜ぶだろうな。
・・・・やっぱり私には無理。
ラウがみんなと仲良くしたり、世話焼いてるの見るの想像しただけで胸が苦しい。
変に涙が出そうになって、目元に力を込めた。
「そうか!それなら部屋を用意しよう!」
国王陛下も喜色満面で離宮の管理者を呼んで部屋を用意するよう命じている。
何か言った方がいいのは分かっていたけれど、なんて言ったらいいの?
それに言うべきことが分かっていたとしても、胸がつかえて何も言えそうにない。
食堂で顔合わせをした後、年少組がフォーレと遊びたがって屋外に出ることになった。
厚着してまるまるとした子どもたちとフォーレが一緒に駆け回ってる。年かさの子たちも体を動かしたい!とのことでラウも一緒に追いかけっこをしている。
私も誘われたけど、そんな気になれなくて。お腹痛いから、と断った。
「元気だね~」
運動しない組はテラス席でお茶をいただくことになった。
私に声を掛けてくれた子ララと、右足が不自由なレリーア(たぶん20歳くらいかな?)、あとラウが見てた胸の大きいマスナ(16、17くらい)と、シェラロッテと私。
国王陛下は仕事があるとかでイルヴァングさんと執務室に行ってしまった。
シェラが椅子を寄せて、私にべったりくっついて、液状になってる。
「シェラは運動しなくて良いの?」
「今日授業あったんだって! 運動は十分だよ!」
「そう」
術士の授業のことは聞かないようにしている。あの手紙が偽物だったのか本物だったのか、本当のところは分からないから。シェラが言ってきたことだけ聞けば良いと思うことにしている。
「愛し子のみんなは授業がなくて良いなぁ。ずっとこうしてゴロゴロしていたい」
そんなに大変なの?・・・て聞かない聞かない。
「そんなに大変なの?」
ララが聞いてくれた。
「国語に数学、地理、歴史、体術、精霊術、礼儀作法、一般教養? なんかもーいっぱいやらされてるの」
「へぇー、大変そう。私たちも術の訓練させられてるよ? 大地を豊かにするんだって」
「そうなんだ」
液体になっていたシェラが少し固体よりに戻った。
「愛し子も大変なのね~」
「あと、文字の読み書きとかも習ってるよ」
「それは基本だからね」
レリーアは侯爵家の出身らしい。暴力は振るわれていたけれど、本などは自由に読めたそう。侍女たちに聞いて文字を覚えて本を読んで過ごしていたと聞いた。
「一緒に住まないにしても、血術の訓練はするのかしらね?」
「それは訓練してどこで使うの? 聞いてる?」
「私が聞いたのは、忌み子を王宮に引き渡せば、領の土地を豊かにすると父と約束していた事ね。陛下には定期的に自分の故郷に戻り、大地を癒やしてくるよう命じられているわ。陛下の主義に賛同する領があればそこもね」
国土を豊かにするという話は嘘ではなかったみたいね。
各領地に任せていた忌み子の管理を王宮で行いつつ、貸しも作る。相手方からしたら薄気味の悪い忌み子を手放せた上に、自領が豊かになるのだ。それを断ってくるのは、よほど国王様が信用できないか、引き渡せない何かがあるのか。
訓練については何も聞いていない。
故郷に戻る、か・・・・・・。
「私もイルヴァング様から説明されたけど、愛し子がいた土地は、その愛し子の恵《めぐみ》に染まるんだって。故郷を祝福させるには、その方が効率がいいからみたいよ? でもフェリシアは断った方がいいわ。もう二度と行かない方がいい」
シェラの断言にマスナが興味をそそられたみたい。
「あなた、故郷で何やったの? そんなに嫌われるって」
半笑いで問われた。
「みんなは嫌われなかったの?」
好かれようと思ったわけじゃないけど、領民の為になるよう過ごしてきた。それでも最後は嫌われた。
どうしたら良かったの?
「普通にしてたら嫌われないでしょ?」
「忌み子だって知られても?」
「ええ。なんなら婚約もしてたわよ? 今回のことがあって破談になっちゃったけど、王様は貴族と結婚させてくれるって!玉の輿よ!」
興奮気味のマスナにララもレリーアも引いてる。
「婚家でもどうなるかわからないのに、マスナは前向きねぇ。他はみんな遠巻きにされたり、暴力振るわれたり似たり寄ったりよ。フェリシア、そんなに落ち込まないでね」
「ええ。ありがとう」
レリーアの言葉に救われるわね。
「王様が選定されるんだから、そんな変なところに嫁がされないわよ。みんな卑屈ねぇ。そんなだから嫌われるのよ。自信持ちなさい。血術で祝福すれば、成功は約束されているのよ? 一族の栄華は私にかかっているんだから、無下にされるはずないでしょう」
赤みがかった髪に空色の瞳はきらきらと自信に輝いてる。私には持ちえない光。
圧倒されちゃう。
「あなた、シェラロッテとも姉と契約しないの?」
「ええ」
「なら、私が契約しちゃっていい? 私まだ契約者決まってなくて。同性じゃないとダメって言われたけど、ピンとくる人いなかったのよね。シェラロッテと契約すればイルヴァング様とも繋がりできるし」
なんて明け透けで貪欲だろう。
「嫌よ。前にマスナとは試したでしょ。わたし、フェリシアじゃないとダメなの。ラウラリーエにしてよ」
「もちろん頼むわよ! あんなに美人と契約したら私の株も上がりそうだし。当てがわれそうだった高飛車で不細工な貴族の鼻をへし折ってやるわ!」
「すごいわね・・・」
レリーアもララもため息をついてる。
「いつもこうなのよ。ハラハラするわ」
「声かけてくる!」
マスナが立ち上がってラウに駆けていく。
ラウがなんて答えるのか、聞きたいけど聞きたくなくて。
どうしようと思っている間に、聞こえてしまった。