※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第36話 ナウシーさんとの共闘

「おじい様は無駄だって仰ったけど、案外そうでもないわね」

 

 心がすっきりしてる。

 

 イルヴァングさんとはシェラの面会の件で契約しているし、部屋も契約している。お金は稼がないといけない。

 それに明後日は安息日でシェラと遊ぶ約束もある。

 

 王都へ帰ろう。

 

 帰り道は点々と小さな足跡が付いてる。

 

 

 

 

 

 朝焼けはまだ遠く、びゅぉおと丘陵をなでる風が時折髪を揺らす。

 しばらく歩くと、北の森の向こうに白い煙が幾筋も空に上がっているのが見えた。

 

 なんだろう? 火事かな?

 ぴりぴりと空気が緊張してる?

 

 

 ただの事故かもしれないけど。

 少し様子を見てから帰ろうかしら。

 

 

 駆け足で向かい、森に入ってからは足音を殺して進む。

 しばらく行くと、向かいから話し声が複数聞こえてきた。

 

「あの熊しつこすぎるだろ! どこまで追ってくんだって」

「運良く逃げ出せて良かったな!」

「村の警備兵が向かっていったからな。その間に出られて良かったぜ。でもあいつじゃ勝てないだろうなー。王都も近いから、このまま逃げ切って王国軍になすりつけようぜ」

「ああ! そうしよう!」

「ちぇ、子熊をいたぶって殺したのは面白かったのになぁ」

 

 男たちの最後の一言で危うく殺気を漏らすところだった。

 私にこの男たちを裁く権利はない。

 

 そんなことより村の警備兵の様子を見に行かなきゃ!

 

 

 

 男たちがやってきた方向へと向かうと、焦げた匂いと微かな衝撃音がする。

 まだ戦ってる!

 

 村に近づくにつれて、逃げだし木陰に隠れる何人かの村人とすれ違った。

 みんな私には気がついていないようだったけれど。

 

 燃えさかる家の前、大きな熊が地面にひれ伏した人目掛けて、右手を振り下ろそうとしている。

 

 私は、走る威力はそのままにナイフを抜いて氣を溜めた。そのまま横から突っ込んで脇腹にナイフを突き立てる。

 根元まで刺さったナイフを切り下げると、氣を纏ったナイフは切れ味抜群でしゅぱっとパンでも切り裂くように肉が切れた。

 

「ぐおおおおおおお!」

 

 脇腹からぼたぼたと血を流した熊は、今度は私をターゲットにして向かってきた。

 切られてるのに案外素早い。

 

 突進も爪もかわせる。けど、もう懐に入れるようなチャンスがない。

 仕方がない。爪や手足、切れるところから切っていこう。

 氣を再び込めて、爪を切り飛ばし、機動力が少しでも減ってくれたらと思い、右足の太ももを切りつけた。

 

「グオオ!」

 苛立った熊の一閃をどうにかかわす。

 

 さっき熊に襲われてた人は大丈夫かしら?

 まだ起き上がる気配がないけど。

 なるべく引き剥がしておけば、村人が助けに行ってくれないかしら。

 

 さっきの攻撃で熊の俊敏さが落ちてる。攻撃をかわしながら近づき、切りつけて距離を取る。

 一撃でももらったら一溜まりもないから、気をつけないと。

 

 

 実戦は緊張もあって訓練以上に息が切れる。

 はっ、はっ、はーーー。

 努めて均さないと。

 

 一気に片を付けられれば早いのに。

 

 氣も無尽蔵に込められるわけじゃない。

 誰か他に戦える人はいないの?

 

 周囲に目をやろうとしたそのとき、肩口に痛みが走った。

「アタッタ! アタッタ! ミタカ? ササッテルゾ!」

 

 な?! ゴブリン?

 

 こんな時に?

 しかも6体もいる。

 

 さらに放たれた弓矢をかわそうとすると、熊のパンチが飛んできた。

 地面を転げてどうにかかわしたけれど、さすがにこの戦力差を一人でひっくり返すのは無理かも。

 

 

 村人を逃がし、私がおとりになれば。逃げるだけなら振り切れる。

 村の人たちに声を掛けようとしたところで、小さなつぶやきが聞こえてきた。

 

「炎よ炎。矮小な人の身に助力を。どうかゴブリンたちに炎の鉄槌を。ファイアーアロー!」

 燃えさかる家から炎が一際大きく立ち昇ったかと思うと、ゴブリンたちが飛び跳ねた。

 

「アチ! アチ!」

 あんまり怪我した様子はないけれど、装備が燃えて、弓も矢も燃えた。

 

 助かる!

 

 声の主は先ほど熊に襲われそうになっていた人だ。生きていたみたい!

 

「大丈夫ですか? 今治療しますね!」

 いててと身を起こした術士こそ治癒術が必要そうだけど。

 

 その声で熊がターゲットを術士に戻しちゃった。

 

「そんな時間ないから、治療は大丈夫。近接戦できないなら離れてて! あと敵を減らせそうな威力の精霊術は使える?」

「私、接近戦無理です~。得意なのは治癒で攻撃系は使えないんですよ~」

 

 

 なんてこと。

 

 彼女は指示どおり距離を置いてくれたけど、熊がそっちに向かわないように小石を拾って投げつけた。少しだけ氣を込めたから痛かったでしょ。

 

「ぐおお」

 言葉は分からなくて、怒ってるのは伝わってくる。

 

 ゴブリンたちも木製の弓ではなく、拾ったのかボロボロの長剣や鉈を構えだした。

 

 

「こいつらは私が引きつけます。貴方は村の人を纏めて逃げてください」

 

「子どもに任せて逃げられるわけないでしょう!」

 普通に良識のある人のよう。これなら任せて安心かも。

 

「私たちが死んだら、次は村人が死にますよ。大丈夫です。逃げるだけならできますから。早く!」

 私が失血で動けなくなる前に。

 

「せめて治療させてください!」

 

 早く行って、と言っているのに。しつこい。

 

 

「忌み子だから効きません。罪悪感を持つ必要もないでしょう? もう行ってください!」

 

 熊の突進をかわし、ゴブリンの一体を切りつけた。

 浅い。他の個体からの長剣をかわし損ねて背中を切られた。

 

 駄目だ。距離をとらないと。

 

 私が引きつけなくても良いように、早く行って欲しいのに、まだ彼女はもたもたしている。

 誰かと話してる?

 

「フェリちゃん! 私に祝福して! プティちゃんがなんとかしてくれるって!」

 

 え? 何ですって?

 プティが?

 

 一瞬驚いたけれど、プティなら!

 

 

 

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