※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第39話 契約2

 さわさわと髪を撫でられてる。

 覚えのある手つき。気配。匂い。

 目を開けると、疲れた顔をしたラウがいた。

 微笑んでくれるけど、うっすらと隈がある。

 

「おはよう、フェリ」

「ん、ぉぁ・・・」

 喉が渇きすぎてて声が出ない。

 

 体を起こそうと思ったのだけれど、力が入らないわね。

 大丈夫と思ったのだけれど、血を流しすぎたみたい。

 

 まごついていると、ラウの顔が近づいてきた。

 キスされて水を飲まされる。

 ラウから与えられる水は、生温かくてどこか甘い。

 

「もっといる?」

「うん」

 

 二回飲まされた後、ラウの温かい舌が入り込んできた。

 最初は優しく舌を舐られていたのに、だんだんと強く口腔中を舐め回される。

「んっ・・・ふっ・・・」

 キスはすき。

 ここに居てもいいって思えるし、ラウを近くに感じられるから。

 

 しつこく口づけていたラウが離れた。

「フェリ、すき」

 どうしてそんな泣きそうな顔で言うの?

 

「マスナの方が好きだから契約したんじゃないの?」

「っちがう!!」

 

 急に大きな声を出したのを恥じたのか、またしゅーーーんとしてベッドに突っ伏してしまった。

 

「プティにもばかだって言われたわ。フェリにやいて欲しかったの」

 

「やく?」

 

 意味が分からずにいると、ラウが顔を横向けて見つめてきた。

 

「嫉妬」

 

「しっと?」

 悲しくはあったけど、しっと??

 

 

「フェリにとって、わたしはマスナに譲ってもいい存在だった?」

 

「 譲る? ラウは私のものじゃないのに?」

 

「うん。マスナじゃなくて、私と契約して! て言って欲しかった。なのに、フェリは何も言ってくれないし、わたし置いて遠く行っちゃうし。フェリはわたしがいなくてもいいんだって分かって・・・」

 ゔゔ、とまたベッドに顔を伏せちゃった。

 

「そんなこと言われても・・・。ラウも私じゃなくていいんでしょう?」

 

 ぼろぼろに泣いたまま、がばっと顔を上げた。

 

「いつ、だれが、そんなこと言ったの? フェリじゃなくて良いって、いつ!?」

 

 圧がすごい。。あちこちの家財がカタカタと鳴ってる。

 

「え? えー? だって、ラウが好きなのは、忌み子で、女の子で、胸が大きい、大人がいいんでしょ?」

 

 

「なにそれーーーーーー!!」

 

 大声で怒られても・・・。

 

「だっていつも胸の大きな女の人、目で追いかけてるでしょう? それに今まで私のことを大事にしてくれてたのは忌み子だからでしょ? マスナの方がラウの好みに合うと思ったのだけれど」

 

 ぐいぐい来ていたラウがベッドに倒れ込んだ。

 

 

「ラウ?」

 

 

「わんわんわん!」

 

 ベッドの空きスペースで寝ていたフォーレが起き出してきて、指先をペロペロなめてくる。

 

「ヒト型になりたいの?」

 こくこくと頷く。

 

 ベッドサイドにはナイフは置いてない。

 

「私のナイフどこかに置いてないかな? それかフォーレかじってくれる?」

 

 またしてもこくりと頷いて、フォーレが指に歯を突き立ててきた。少しばかり血が出て、そのまま舐めさせる。

 ナウシーさんびっくりするかな。ごめんなさい。

 

 すぅと傷跡が消えて綺麗にする必要もない。確かに便利かも。

 

 ヒト型になったフォーレは両手で耳を押さえた。

「煩くて寝てられないだも! プティは笑い転げてるし、ラウは死んでるし。どうしたんだも?」

「さあ?」

 

「フェリさまは元気になっただも?」

「ええ。大丈夫よ」

 

「まだ顔色悪いも。夕方ナウシーの知り合いっておねぇさんが来て、フェリさまに元気を分けてくれたのだも。もう少し寝たら良いのだも」

 そう言って、私の肩口に頭を乗せてくる。

 

 思えばこのベッドには天蓋が突いてるし、やけに広い。配置されてる家具も高そう。

 

「ところで、誰のお家なの?」

「ナウシーだも。でかいお屋敷だも」

 ナウシーさん、貴族だったのね。

 

 外はすっかり白んでる。

 

「あれ? 今日何日?」

 フォーレは目をぐしぐしこすっている。

 あー、起こしてごめんね。

 

「わかんないだも。昨日は離宮に泊って、朝起きたらラウに連れて行かれて、フェリさま迎えに行ったも。今日はその次の日だも」

 

 ん?もしかして今日、安息日じゃない?

 

「ラウ、今日安息日?」

 揺さぶると、魂の抜けた様子のラウが顔を上げた。

 

「そうじゃない? ナウシーさんもそう言ってたし。それがどうかしたの?」

 

「今日シェラと遊ぶ約束してたの」

 中央公園で集合して、商店街をぶらつくと聞いたけど、ちょっと歩けそうにない。

 

「いつもの茶屋に場所を変更してもらおうかしら」

「会うつもりなの?!」

 

「週に二回会う契約よ。部屋代も稼がないといけないし。それにあんまり間開けるとシェラも苦しいだろうし」

 

「だからって・・・。死にかけたんだよ? 数日は安静にしてなきゃ駄目だよ」

 

「でも傷治ってるし」

「傷治ったって血が足りてないでしょ。体起こすのも無理でしょ」

 

「それはそうなんだけど・・・。ナウシーさんにここに呼んでいいか聞いてみようかしら」

 

 

 あっさりと了承がとれて、午後シェラロッテがナウシーさんの家を訪問してくれた。

 部屋に入ってきたシェラは、私とラウとナウシーさんをそれぞれ見比べて、えーーー!と声を上げた。

 

「百歩譲ってラウラリーエならまだしも、どうしてフェリシアと知らない人が契約してるの~?」

「失礼ですよ、お嬢様」

 シェラの付き添いはいつもの老執事ではなく、若い女性だ。

 今日はスペイタスさんはお休みかな。

 

「ちょっと怪我しちゃって。でもナウシーさんとは王都に着いたら契約解除するって約束してるから。ね、ナウシーさん」

 

 今日は安息日なので、ナウシーさんの服装も神官職の白いローブではなく、落ち着いた青のドレスを身に纏ってる。

 

「そうですね。そのようにお約束しました」

「では契約を解消してくれますか、ナウシーさん」

 

「いやです」

 

 ん?

 聞き間違いかな?

 

「いま「嫌です」ていいました?」

 

「ええ。フェリちゃんはなんだか放っておけなくて。このまま契約しておきましょう?」

 

「ナウシーさん! 契約違反です! ナウシーさんに何かあったら!」

 

 ナウシーさんがラウとは反対側のベッドサイドから詰めてくる。

 ぽんぽんと、また頭を撫でられた。

 

「そうですね。契約しておかないと何かあったら悲しくなっちゃいます。プティちゃんを泣かせて、ラウラちゃんも泣かせたんでしょう? メ、ですよ」

 

 私が悪いの? それはちょっと釈然としないわ。

 

「フェリちゃん、私が心配なら、ラウラちゃんとも契約しましょう?」

 

「待ってよ!ラウラリーエと契約するならわたしともして!」

 

 シェラまで参戦してきた。

 

「なんでそうなるの?」

 皆が大事だから契約したくないのに。

 

「私は契約はやめませんよ? ラウラちゃんとシェラロッテさんと契約しなかったのはお二人が大事だからだったのでしょう? 私トロいので、戦闘に巻き込まれたら死んじゃうかもしません」

 

「脅してるつもり? それなら契約止めればいいじゃない」

 

「やめません。フェリちゃんも大事なので。フェリちゃんがお二人を大事なように、みんなもフェリちゃんのことを大事に思ってますよ。それが分からないような子では、心配で契約止められません」

 

「なんなの、その理屈」

 

「三人も契約していれば、全員死ぬと言うことはないんじゃないでしょうか~」

 ナウシーさんの爆弾発言に、ラウとシェラのおめめがキラキラした。

 

「この策士!!」

 

 んふふ、と頭をなでぐりなでぐりされた。

 

「フェリちゃんが可愛いからですよ。あんなところであんな風に死ぬのを受け入れちゃ駄目です。まあ私も死にかけたので人のこと言えないんですけどね~」

 

 確かにナウシーさんは危なっかしいから、忌み子の加護がないとほんとに危ないかも。

 こういうところが憎めなくて、突き放せない。

 

 

「フェリ、契約して」

 ラウの期待のこもったまなざし。断られないという安堵感から、嬉しさが全身からにじみ出てる。

 

「そんなに嬉しいの?」

「嬉しい」

 

「マスナとは契約しなくていいの?」

 

「フェリがいいの。フェリが言ってたことは夜ちゃんと説明するから。本当にフェリがいいの! 契約して」

 

 どこか納得いかないけど。それでもラウにそう言ってもらえて嬉しいってやっぱり思ってしまって。

 

 はぁ。ため息吐いちゃった。

 こんなことになるはずじゃなかったのになぁ。

 

 

 ラウが切ってくれるというから、お任せした。

 指先を切って少し舐められる。

 

 契約も少し考えなきゃ。

 

「私フェリシアは汝ラウラリーエとの怪我の転移の契約締結を望む。要件は、

 ひとつ、致命傷は転移しない。

 ひとつ、契約締結になったとしても、私からの宣言で一方的に破棄にできる。

 ひとつ、この契約によってラウラリーエは最大限の精霊の加護を得る。

 ひとつ、ラウラリーエに幸運と幸福がもたらされる。

 以上を要件とする。汝ラウラリーエは契約を望むか?」

 ラウは文句のありそうな顔をしているけれど、結ぶ、と宣言した。

 

 ばちっと雷のようなものが起こったと思うと、ばちばちばちばちっ!とラウの全身が発光し髪の毛が逆立った。

 

「あ''あ"あ"あ"っ!」

 

 ナウシーさんの時とは全然違う。

 

「ラウ!」

 

 腕が、体が上手く動かないのがもどかしい。

 腕を引いて倒れ込ませると、弾けそうなラウを抱きしめた。

 

 私が触っても落ち着く気配がない。

 びくびくと痙攣する体を強く抱きしめる。

 

「ラウ!」

 

 やっぱり契約なんかするんじゃなかった!

 半泣きの気持ちで声を上げる。

 

「私とラウの契約をーーー」

 ばっとラウに口を押さえられた。

 

「だめっ。ふーーー、ふーーー、もう少しだから」

 しばらくすると、徐々にラウの状態が落ち着いてきた。

 光が収まり、乱れた髪を直してあげる。

 

「ふぅ。なかなか刺激的ね。ぎゅっとしてくれてありがとう。フェリ」

 みんながいるのに、ついでみたいにすぐこめかみにキスしてくる。

 やめてよ、もう。

 

「大丈夫なの?」

「ええ。全身フェリの血で浄化されたって感じ。少し疲れたけど大丈夫よ。どれだけ加護が強まったか試したいくらい」

「それなら良かったけど・・」

 

「私の時と状態が違いすぎて驚くわ~」

 ナウシーさんの腰が引けてる。

 

「ナウシーさんの時はどうだったんです?」

「ぴりってくらい。全然あんなビリビリビリじゃないわ」

「わたしはどっちかな~。でも契約しないのはあり得ないから。フェリシア!わたしとも契約して!」

 

 同じ条件でシェラとも契約したけれど、こっちはナウシーさんより少しぴりっとした感じだった。

 

「なんだ、全然平気ね。これでほんとに転移してくるの?」

 

「そうそう! これだけじゃ転移してこないのよ。ある程度血液を摂取しないと駄目みたいで。私も必死でフェリちゃんの血舐めたもの」

 

 にこやかに知識を披露するナウシーさん。

 ぞくりと悪寒を感じて、ラウを見ると、殺意すらこもった瞳で睨まれていた。

 

 なんでなんで?

 私が悪いの?

 こわいこわいこわい。

 ラウのことみるの止めよ。

 

「こちも契約したかったもーー」

 私の隣で寝そべってるフォーレを抱きしめる。

 

「どうしたも?」

「フォーレ大好きー」

 頭皮の匂いを嗅ぐと石けんの匂いがした。ちゃんとお風呂に入れてもらえたのね。

 

「ナウシーさん、それってどれくらい? 今日は?」

 シェラとナウシーさんが話してる。

 

「今日は無理よ。昨日失血で死にかけてたし。 昨日お婆さまのご友人に来ていただいたのだけれど、普通は2,3ヶ月掛けて体を同化するものだって怒られたわ~。フェリちゃんの負担になるし、少しずつ血をもらうのが良いらしいよ」

 

「それもそうね。次から少しずつ血をもらうね」

 シェラが太陽のような笑顔を振りまく一方、ラウの表情が酷い。

 

「ラウラちゃんは契約できたのに、嬉しくないの?」

 ナウシーさん、結構肝座ってるのね。悪魔みたいな顔してるラウに話しかけるなんて。

 

「嬉しいです。嬉しいですよ! でもそれ以上に・・・・・・何でもありません」

 

「そうですね~。ちゃんとフェリちゃんと話し合った方が良いですね。フェリちゃんもちゃんと聞いてあげてくださいね? あと、フェリちゃんもちゃんと思ってることを言うこと。じゃないとまた挟まっちゃいますから」

 

 挟まるって何処に?

 

「さあ!お茶にしましょう」

 

 始終ナウシーさんのペースで転がされ、夕食前に家に帰ると言ったのに、もう一週間いるよう勧められた。

 

「実はお婆さまのご友人に、ご訪問の約束をしてしまいまして。当家の馬車で向かってもらいたいのです。それまでは是非家で寛いでいてください。あと、お婆さまもフェリちゃんと遊びたいと言ってました。することなくて暇してるんですよね。申し訳ないですが、お相手してもらえると助かります。私は明日から仕事ですしね~」

 

 よく分からない理由で一週間お世話になることになってしまった。 

 

 

 そして、ラウ待望の夜ーーー。

 

 

 

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