忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
ラウが絨毯の上で土下座した。
「フェリには不快な思いさせたけど、でも、ほんとにフェリのことしか考えてないの! 胸に目が行っちゃうのは、フェリもあれくらい大きくなるかなぁとか、あのコーデ良いなとか見てたの! ほんとに! 愛し子で、女の子で、胸の大きな子が好きなんて言ったことない!・・・でしょう??」
途中勢いよくしゃべったかと思うと、最期は泣き落とし。
「ええ。確かに言われてはないわ。でもよく見てたから、そういう子が好きなんだろうなって」
がばっとラウが顔を上げた。
「だから、フェリしか好きじゃないってずっと言ってるのに!」
「それは、忌み子が私しかいなくて選べなかったからじゃないの?」
ラウの目が溢れそうなほどに見開かれた。
「ずっとそう思ってたの?」
「ええ。私以外の忌み子がいたら、そっちを選ぶって」
「どうして自分が選ばれるって思わないの?」
「選ばれる? 私が? ラウに何も益がないのに?」
ラウの口元がへの字に曲がった。
「フェリの考える益ってなに?」
「ラウを守れるとか、お金を稼いでこれられるとか、ラウのできないことを代わりにできるとか?」
「それがフェリの考える益? わたしが思ってる益と違うけど」
「そうなの?」
「わたしの益は、フェリが笑ってることだし、わたしの隣にいてくれることだし、夜一緒に寝て、朝おはようって起きることだもの」
なにか変なバイアスがかかってのかしら。
「あのね、小さな時からわたしのことを見守ってくれてたから、そう思ってるのかも知れないけれど、私にはラウが思ってくれるような価値はないから」
はーーー。ラウが深いため息をついたと思うと、おもむろに立ち上がった。
「少し変わってくれたのかも、て思ってたんだけど違ったのね。出会ったときからそうだったものね。自分と関わると不幸になるって」
心から呆れた様子に、マスナの台詞が浮かんだ。
-あなた、故郷で何やったの?そんなに嫌われるって。
そうね。みんなに嫌われるようにしか振る舞えないみたい。
呆れて出行くのかなと思ったのに、ラウがベッドに乗り上げてきた。
「ねえ、年が明けたら
「そうでしょう? 他の子がいるのに私から栄養補給しなくても・・・。私ともしたいと言ってくれるなら、その、ぜんぜん、・・・いいけど」
ラウがびっくりしてる。そんなに変なこと言った?
「栄養補給?
「違うの? 私の体液が栄養満点だからキスしてきてたんじゃないの? だから番いたいんでしょう?」
ラウが頭を抱えてる。
「もしわたしがマスナと契約して番っていても、番わせてって言ったらさせてくれるってこと?」
さっきそう言ったのに、どうして何度も確認してくるの?
「そう言ってるじゃない。私なんか欲しがってくれるの、ラウだけだと思うから。・・・・・・その、うれしい」
がばっとラウが抱きついてきた。
「嬉しい! 待てない。しよ?」
「えっと、出血止ったかもだけど、いま生理中だから」
「そうだった! 生理中は別に構わないんだけど、昨日死にかけた人を襲うところだった!」
それは構わないんだ・・・。
ラウが手を合わせてにぎにぎしてくる。おでこがぶつかるくらいの距離。
ラウの瞳に暖炉の火が映り込んで輝いて見える。
「シェラロッテに言ったこと覚えてないの?」
「どれのこと?」
「その地に愛し子がいると、その愛し子に適応した体になるって。どうしてわたしもそうだって思わないかなぁ」
「ラウもなの? でも過多症だって言ってなかったから」
「過多症じゃないわよ。ただの嗜好品て意味だけど。嗜好品もちょっと変かな。精霊力とか回復するしね。栄養満点なのもその通りなんだけど、摂取できなかったからって死ぬわけじゃないわ。人間のいうお菓子みたいなものかな。甘かったりすると疲労回復するでしょう?」
お菓子、かあ。嫌ではないんだけど、なんか。うーん。
「とにかくフェリじゃないと嫌なの。他の誰かなんて美味しくないの。つい見ちゃってたのは、本当にごめんね」
「うん」
「納得してくれた?」
「うー、うん・・・うん? こんなやせっぽちの私でも良いの?」
「ええ。フェリが痩せてても太ってても、胸が大きくても小さくても関係ないもの。なんなら、わたしの素体はほぼフェリなんだから、フェリもわたしくらい大きくなるはずなのよ」
「ほんと~?」
すごく疑わしいけど。
「ほんとほんと。今日はしないけど、今度試してみましょう。大きくなる方法があるんだって」
「そうなの?!」
「ええ。約束ね」
小指に小指を絡ませられた。
「大げさというか、小指絡ませるのって、破ったら切り落とすって意味でしょ? もっと大事なことを約束する時に使うのではないの?」
胸大きくするのに指切りって・・・。
「それなら、もう一つ大事な約束しよっか。年が明けたら番になろうね」
「ええ。それは前から約束してるでしょう?」
どうして改めて約束なんて。
「前から不安に思ってたんだけど、番になるって、結婚とか伴侶になろうね、て意味で言ってるけど、伝わってる?」
「結婚!?」
番うだけじゃないの?
ラウが苦笑してる。
「やっぱり伝わってなかったのね。変だなぁと思ったの。番になるって約束したのに、フェリは契約してくれないし、妬いてくれないし。結婚するつもりで言ってたのに」
「だってそんなの全然・・・、思いも寄らなくて」
「やっと伝わって良かった。結婚しようね♡ ・・・・・・・・・・・・て何その顔! わたしと結婚するの嫌なの!?」
「嫌てわけじゃないけど、結婚は教会が取り仕切ってるの。普通の人か術士しかできないわ」
「どうして教会でしないといけないの! 大っ嫌いよ! ナウシーさんには感謝してるけど!」
「それなら、ラウのいう結婚はどういうものなの?」
ラウがうーんと考え込んだ。
「精霊だったら魂の契りだけど、人間は魂触れられないし、肉体はそのうち繋げるにしても、体だけだとそれこそ番いでいいって言われちゃうから、やっぱりこころよね。・・・・・・お互いがお互いを唯一とすることかしら」
「今と何が違うの?」
「〜〜〜! そういうところだからね! ほんと無自覚ずるい! わたしのこと見捨てようとしたくせに!」
「だから見捨てたわけじゃなくて、その方がいいと思って」
「もういい! 待たない。いま結婚しよう」
「いま?!」
「だって今と変わらないんでしょう? 待つ意味ないわ。ほんとは人間みたいに指輪用意したかったんだけど」
「待って待って! よくない! 私がラウと結婚とか! 同性だし、つり合わないわ!」
はぁはぁ。
興奮したら息が切れるわね。
「もともと精霊だったんだよ? 性別なんて気にするわけないじゃない。それにつりあわないとは思わないけど」
「私がそう思うの!」
「そんなの結婚してからフェリが頑張れば? わたし、今すぐしたいの。他の誰かに先を越されるの、もういや! 絶対嫌なの!」
「そんなこと言われても・・・」
結婚について今まで考えたことがないから何が正解かわからない。
このまま流されてしまっていいものなの?
困惑してる間にやさしく口付けられた。
「誓いのキスね」
「え〜〜〜!! ラウ、横暴よ!」
「横暴で結構よ! もう結婚したんだから、他の人と接触しちゃダメだからね!」
「シェラの治療に接触は不可欠なんだけど」
「それは許してあげる。キスとかダメだからね」
「そんなの当たり前じゃない。何を心配してるの? 私をそういう目でみてるのラウだけだから」
「そういうところが心配なんだけど。あ、そうだ。これ嵌めておいて」
ラウが右手をぐっと握って開くと、手のひらに青いリングがあった。つるりとした質感で青い鉱石で作られたような円環。
「わたしの水精術で作ったの。フェリの居場所とか怪我とか分かるから。嵌めるね」
左手の薬指に嵌められちゃった・・・。
ねぇ、私見た目12歳くらいに見えるから、その指は流石に奇異の目でみられちゃうと思うんだけど。
「フェリもわたしに嵌めて。左手の薬指ね!」
ラウが同じ指輪を瞬時に作製し、手渡してきた。
「この指輪にも何か機能があるの?」
「もちろん! フェリと結婚してるってアピールできる!」
「・・・・・・・・・・・・」
嵌めたくないんだけれど。
「もういいわよ! フェリのけち! 自分で嵌めるもん」
私の手にあった指輪はするっと取られ、ラウが自分で嵌めてしまった。
「これでフェリとお揃い♡ 結婚の証♡」
嬉しそうなところ悪いけれど、私、承諾してないのだけれど。
「ふふ。不満そうな顔。わたしのこと嫌い?」
「そんなわけないでしょう!」
何をされても、逆に何もしてくれなくても、好き。
存在してくれてるだけで嬉しい。
「うふふ。フェリは難しく考えてるけど、気持ちが揃ってるってすごいことだと思わない?」
そうなのかしら?
こんなに大事にされて好きにならないわけないと思うのだけれど。
「一昨年はわたしのこと認識してなかったんだよ? それがこの一年で会話して、触れて、好きって言ってくれるのよ? 奇跡よ!」
「そう言われると、そうかも。というか、好きとは言ってない」
「ふふふ。分かるわよ。とろけそうな顔してるもの」
「ええっ!?」
んっふっふ、とラウは先ほどから顔が緩みっぱなし。
「
「違うの。好きだなとおもって。愛してるわ、フェリ」
恥ずかしげもなく
「今日はもう寝ましょう? 顔色まだ悪いし。もう少し元気になったら、寝る前に愉しもうね?」
同意を求めないでほしい。
愉しんでるのはラウだけでしょ。
嫌いじゃないけど///
どんな言葉も十全には言い表せない気がして。
何も言い返せないまま目を瞑った。
ラウが抱きしめてくれるから、全身が温かい。
幸せに浸かったまま、眠りに落ちた。