※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第40話 結婚

 ラウが絨毯の上で土下座した。

 

「フェリには不快な思いさせたけど、でも、ほんとにフェリのことしか考えてないの! 胸に目が行っちゃうのは、フェリもあれくらい大きくなるかなぁとか、あのコーデ良いなとか見てたの! ほんとに! 愛し子で、女の子で、胸の大きな子が好きなんて言ったことない!・・・でしょう??」

 

 途中勢いよくしゃべったかと思うと、最期は泣き落とし。

 

「ええ。確かに言われてはないわ。でもよく見てたから、そういう子が好きなんだろうなって」

 

 がばっとラウが顔を上げた。

 

「だから、フェリしか好きじゃないってずっと言ってるのに!」

 

「それは、忌み子が私しかいなくて選べなかったからじゃないの?」

 

 

 ラウの目が溢れそうなほどに見開かれた。

 

「ずっとそう思ってたの?」

「ええ。私以外の忌み子がいたら、そっちを選ぶって」

 

「どうして自分が選ばれるって思わないの?」

 

「選ばれる? 私が? ラウに何も益がないのに?」

 ラウの口元がへの字に曲がった。

「フェリの考える益ってなに?」

 

「ラウを守れるとか、お金を稼いでこれられるとか、ラウのできないことを代わりにできるとか?」

 

「それがフェリの考える益? わたしが思ってる益と違うけど」

「そうなの?」

 

「わたしの益は、フェリが笑ってることだし、わたしの隣にいてくれることだし、夜一緒に寝て、朝おはようって起きることだもの」

 

 なにか変なバイアスがかかってのかしら。

 

「あのね、小さな時からわたしのことを見守ってくれてたから、そう思ってるのかも知れないけれど、私にはラウが思ってくれるような価値はないから」

 

 はーーー。ラウが深いため息をついたと思うと、おもむろに立ち上がった。

 

「少し変わってくれたのかも、て思ってたんだけど違ったのね。出会ったときからそうだったものね。自分と関わると不幸になるって」

 

 心から呆れた様子に、マスナの台詞が浮かんだ。

-あなた、故郷で何やったの?そんなに嫌われるって。

 

 そうね。みんなに嫌われるようにしか振る舞えないみたい。

 

 

 呆れて出行くのかなと思ったのに、ラウがベッドに乗り上げてきた。

 

「ねえ、年が明けたら番(つがい)になるって話したでしょう? そのことはどう思っていたの? 他の愛し子が見つかったら破棄されると思ってたの?」

 

「そうでしょう? 他の子がいるのに私から栄養補給しなくても・・・。私ともしたいと言ってくれるなら、その、ぜんぜん、・・・いいけど」

 

 ラウがびっくりしてる。そんなに変なこと言った?

 

「栄養補給? 番(つがい)が?」

 

「違うの? 私の体液が栄養満点だからキスしてきてたんじゃないの? だから番いたいんでしょう?」

 

 ラウが頭を抱えてる。

 

「もしわたしがマスナと契約して番っていても、番わせてって言ったらさせてくれるってこと?」

 

 さっきそう言ったのに、どうして何度も確認してくるの?

 

「そう言ってるじゃない。私なんか欲しがってくれるの、ラウだけだと思うから。・・・・・・その、うれしい」

 

 がばっとラウが抱きついてきた。

「嬉しい! 待てない。しよ?」

 

「えっと、出血止ったかもだけど、いま生理中だから」

 

「そうだった! 生理中は別に構わないんだけど、昨日死にかけた人を襲うところだった!」

 

 それは構わないんだ・・・。

 

 ラウが手を合わせてにぎにぎしてくる。おでこがぶつかるくらいの距離。

 ラウの瞳に暖炉の火が映り込んで輝いて見える。

 

「シェラロッテに言ったこと覚えてないの?」

「どれのこと?」

 

「その地に愛し子がいると、その愛し子に適応した体になるって。どうしてわたしもそうだって思わないかなぁ」

 

「ラウもなの? でも過多症だって言ってなかったから」

 

「過多症じゃないわよ。ただの嗜好品て意味だけど。嗜好品もちょっと変かな。精霊力とか回復するしね。栄養満点なのもその通りなんだけど、摂取できなかったからって死ぬわけじゃないわ。人間のいうお菓子みたいなものかな。甘かったりすると疲労回復するでしょう?」

 

 お菓子、かあ。嫌ではないんだけど、なんか。うーん。

 

「とにかくフェリじゃないと嫌なの。他の誰かなんて美味しくないの。つい見ちゃってたのは、本当にごめんね」

 

「うん」

 

 

「納得してくれた?」

 

「うー、うん・・・うん? こんなやせっぽちの私でも良いの?」

 

「ええ。フェリが痩せてても太ってても、胸が大きくても小さくても関係ないもの。なんなら、わたしの素体はほぼフェリなんだから、フェリもわたしくらい大きくなるはずなのよ」

 

「ほんと~?」

 すごく疑わしいけど。

 

「ほんとほんと。今日はしないけど、今度試してみましょう。大きくなる方法があるんだって」

 

「そうなの?!」

「ええ。約束ね」

 小指に小指を絡ませられた。

 

「大げさというか、小指絡ませるのって、破ったら切り落とすって意味でしょ? もっと大事なことを約束する時に使うのではないの?」

 

 胸大きくするのに指切りって・・・。

 

「それなら、もう一つ大事な約束しよっか。年が明けたら番になろうね」

「ええ。それは前から約束してるでしょう?」

 

 どうして改めて約束なんて。

 

「前から不安に思ってたんだけど、番になるって、結婚とか伴侶になろうね、て意味で言ってるけど、伝わってる?」

 

「結婚!?」

 番うだけじゃないの?

 

 ラウが苦笑してる。

「やっぱり伝わってなかったのね。変だなぁと思ったの。番になるって約束したのに、フェリは契約してくれないし、妬いてくれないし。結婚するつもりで言ってたのに」

 

「だってそんなの全然・・・、思いも寄らなくて」

「やっと伝わって良かった。結婚しようね♡ ・・・・・・・・・・・・て何その顔! わたしと結婚するの嫌なの!?」

 

「嫌てわけじゃないけど、結婚は教会が取り仕切ってるの。普通の人か術士しかできないわ」

「どうして教会でしないといけないの! 大っ嫌いよ! ナウシーさんには感謝してるけど!」

「それなら、ラウのいう結婚はどういうものなの?」

 

 ラウがうーんと考え込んだ。

「精霊だったら魂の契りだけど、人間は魂触れられないし、肉体はそのうち繋げるにしても、体だけだとそれこそ番いでいいって言われちゃうから、やっぱりこころよね。・・・・・・お互いがお互いを唯一とすることかしら」

 

「今と何が違うの?」

 

「〜〜〜! そういうところだからね! ほんと無自覚ずるい! わたしのこと見捨てようとしたくせに!」

「だから見捨てたわけじゃなくて、その方がいいと思って」

 

「もういい! 待たない。いま結婚しよう」

「いま?!」

 

「だって今と変わらないんでしょう? 待つ意味ないわ。ほんとは人間みたいに指輪用意したかったんだけど」

「待って待って! よくない! 私がラウと結婚とか! 同性だし、つり合わないわ!」

 

 はぁはぁ。

 興奮したら息が切れるわね。

 

「もともと精霊だったんだよ? 性別なんて気にするわけないじゃない。それにつりあわないとは思わないけど」

「私がそう思うの!」

 

「そんなの結婚してからフェリが頑張れば? わたし、今すぐしたいの。他の誰かに先を越されるの、もういや! 絶対嫌なの!」

「そんなこと言われても・・・」

 

 結婚について今まで考えたことがないから何が正解かわからない。

 このまま流されてしまっていいものなの?

 

 困惑してる間にやさしく口付けられた。

 

「誓いのキスね」

「え〜〜〜!! ラウ、横暴よ!」

 

「横暴で結構よ! もう結婚したんだから、他の人と接触しちゃダメだからね!」

 

「シェラの治療に接触は不可欠なんだけど」

「それは許してあげる。キスとかダメだからね」

 

「そんなの当たり前じゃない。何を心配してるの? 私をそういう目でみてるのラウだけだから」

 

「そういうところが心配なんだけど。あ、そうだ。これ嵌めておいて」

 

 ラウが右手をぐっと握って開くと、手のひらに青いリングがあった。つるりとした質感で青い鉱石で作られたような円環。

 

「わたしの水精術で作ったの。フェリの居場所とか怪我とか分かるから。嵌めるね」

 

 左手の薬指に嵌められちゃった・・・。

 ねぇ、私見た目12歳くらいに見えるから、その指は流石に奇異の目でみられちゃうと思うんだけど。

 

「フェリもわたしに嵌めて。左手の薬指ね!」

 ラウが同じ指輪を瞬時に作製し、手渡してきた。

 

「この指輪にも何か機能があるの?」

 

「もちろん! フェリと結婚してるってアピールできる!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 嵌めたくないんだけれど。

 

「もういいわよ! フェリのけち! 自分で嵌めるもん」

 

 私の手にあった指輪はするっと取られ、ラウが自分で嵌めてしまった。

 

「これでフェリとお揃い♡ 結婚の証♡」

 嬉しそうなところ悪いけれど、私、承諾してないのだけれど。

 

「ふふ。不満そうな顔。わたしのこと嫌い?」

「そんなわけないでしょう!」

 

 何をされても、逆に何もしてくれなくても、好き。

 存在してくれてるだけで嬉しい。

 

「うふふ。フェリは難しく考えてるけど、気持ちが揃ってるってすごいことだと思わない?」

 

 そうなのかしら?

 こんなに大事にされて好きにならないわけないと思うのだけれど。

 

「一昨年はわたしのこと認識してなかったんだよ? それがこの一年で会話して、触れて、好きって言ってくれるのよ? 奇跡よ!」

 

「そう言われると、そうかも。というか、好きとは言ってない」

 

「ふふふ。分かるわよ。とろけそうな顔してるもの」

「ええっ!?」

 んっふっふ、とラウは先ほどから顔が緩みっぱなし。

 

「揶揄(からか)ったの?」

「違うの。好きだなとおもって。愛してるわ、フェリ」

 

 恥ずかしげもなく宣(のたま)い、でこちゅーされた。

 

「今日はもう寝ましょう? 顔色まだ悪いし。もう少し元気になったら、寝る前に愉しもうね?」

 

 同意を求めないでほしい。

 愉しんでるのはラウだけでしょ。

 

 嫌いじゃないけど///

 

 どんな言葉も十全には言い表せない気がして。

 何も言い返せないまま目を瞑った。

 

 ラウが抱きしめてくれるから、全身が温かい。

 幸せに浸かったまま、眠りに落ちた。

 

 

 

 

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