忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
「先週から術の精度と威力すごいことになってんね~」
ミネアの発言にレニーシャもこくこくと頷く。
術士学院の食堂はまあまあ混雑しているけど、そもそも精霊術士は貴族出身が多く、寄付も多い。広々とした造なので圧迫感はない。
「私も契約したらそんな風になれるのかなー?」
愛し子との契約の話はいま一番注目されてる。わたしは誰に聞かれたって構わないんだけど、ユニファが防音の結界を張った方がいいと言う。無闇にやっかみ買わなくてもいいでしょ、とのこと。
「機会があれば、かな。術士の選定基準については聞いてないけど、たぶん貴族派は含まれないんじゃない? そもそも嫌ってるんだし」
ミネアはローストビーフにフォークを突き刺しながら、さらに続けた。
「貴族派ねー。こうも見せつけられちゃうとね。契約できた人は次々出世してるじゃん」
「そうね。実力と実績が伴ってるから、貴族派も反論しにくいわね」
会話を引き継いだのは、ユニファだ。
クラスには15人くらいいるけど、仲良くしてるのはこの3人くらい。
ミネアは貴族が多い術士学院には珍しく、地方の商家の出だ。明るくて人懐こい。たまにぽろっと失言することもあるけど、友だち思いのいい子。上京してきたばかりの頃は学生寮に入っていたから、何くれとなくお世話をしてくれた。
レニーシャは貴族の四女だったかな。引っ込み思案であんまり発言はしてこないけど、忘れ物をしたらこっそり貸してくれたり、一般教養や礼節の講義では放課後教えてくれたりしてくれる。この辺はミネアも苦手なので一緒にね。
ユニファは侯爵家の次女で、成績優秀、品行方正でクラスのリーダー的存在。わたしが田舎者過ぎて見てられなかったんだと思う。いろいろとお世話をしてくれるうちに仲が良くなって、よく話すようになった。
高位貴族といっても頭でっかちじゃない。冗談も通じるし話しやすくて、何か困ったことがあれば解決してくれる頼りになる存在。男子側のリーダー格のサーランと婚約しているところもイジり甲斐がある。
「シェラの契約者、会ってみたいなぁ~」
ミネアから度々おねだりされるけれど、曖昧に濁す。
「そうね。機会があればね」
絶対に会わせたくない。
これ以上フェリシアの周辺に余計な術士は不要なの。でも、はっきりと断ると面白がってついてきそうなんだもの。
「またそれぇ?」
「ミネア、無茶を言わないの。人が嫌いな子、て聞いたでしょ」
「そうだけど、どんな子か興味あるじゃん? シェラが故郷から連れてこようとしてたくらいの子だよ? 今シェラが数学、国語、歴史で成績いいの、その子のおかげでしょ? いま貴族界は愛し子ブームが来てるし、もう誰も虐めたりしないと思うんだけどなぁ」
「貴族界はね」
ミネアののんきな一言につい言い返してしまった。
「どういうこと? 平民は虐めてるの?」
「これは言ってなかったんだけどーーー」
ナウシーさんから聞いた北方の村での契約の顛末を話した。
「なにそれ! 助けてもらったくせに殺そうとしたの?」
「ぜんぶの村じゃない。わたしの故郷でもこんな風に考える人はいなかった。でも実際にいるの。それに教会の人だって愛し子に酷いことしてたって聞いた」
ずっと聞き役に回っていたレニーシャが小さな声をあげた。
「お姉様が仰っていたのだけれど、そういう方は精霊術の力が弱まるか、失ってるって。降格か除籍処分になってるって」
「レニーシャのお姉さん、教会職だっけ? 愛し子保護政策もカイエル陛下がいらしてからだもんね。忌み子として教わった世代はそういうことする人もいるのかも。シェラの契約者は大丈夫? 警護の人がついてるの?」
しゃべってばかりだとお昼の時間が終わっちゃう。
もくもぐとパンを口に放り込みながら答えた。
「まあ、お姉さん? がいるわ」
姉ではないと聞いたけれど。
フェリシアが精霊人にしたなんて、とんでもなく驚いたけど。
「歯切れ悪いわね。姉なんでしょ? 強いの?」
ラウラリーエが精霊人だと知って、その日の夜イルヴァングさまに伝えたのだけれど、新しい養父はそこまで驚いていなかった。
「あそこまで精霊に愛されるなんて尋常じゃないしねえ。それにテラニード王国で精霊人と謁見したことがある。まったく同じというわけではないんだけれど、どこか似通ったところがあってね。もしかしたら、という可能性の一つとしては考えたいたからね。ただの姉だったら、妹離れしてくれたら・・・と思っていたんだがねえ。無理だね」
「結婚しましたしね・・・」
「それは精霊人の性と聞いたけれどね」
「さが、ですか?」
「テラニード王国の精霊人、マグ様と仰るのだけれど、マグ様もまだ主の帰還を待っていると聞いたよ」
「テラニード王国の精霊人は何千年も前からご存命と伺いましたけど?」
主はとっくにお亡くなりになってるのでは?
「生まれ変わってこられるそうだよ。いままで3度出会ったらしい。次の生まれ変わりを今も彼は待ってる。それくらい彼らの創造主は魅力的らしいね。メロメロに執着して離れられないらしい。フェリシアのところも一緒だね。ラウラリーエは離れたりしないだろうなぁ。ほんとよく殺されずに契約できたよ。私もびっくり」
「ラウラリーエはそこまで物騒じゃないですけど?」
「精霊人を普通の術士の感覚で捉えてはいけないよ。ちょっとした弾みで殺しちゃうくらい力を持っているからね。まだ産まれたばかりと考えれば、そこまで力はないのかも知れないけど、気を付けるに越したことはない。重々気を付けなさい」
以上、回想ここまで。
「実際に見たわけじゃないけど、強いらしいわ」
「へーー。お姉さんにも会ってみたいわね!」
「すっごいシスコンよ」
結婚してるってことは黙っておいてあげよ。お昼休みなくなっちゃうし。
それに今日は心待ちにしている面会日!!
この前は詳しく聞けなかったから、今日は聞き出すぞ!
講義が終わると、誰からも話しかけられないよう急いで校舎を出る。
馬車に乗って高級茶屋へ行くと、すでに3人は部屋に通されたとのこと。
階段を上って扉を開けると、ラウラリーエにべったりくっつかれ、フォーレを膝に乗せたフェリシアがいた。
「シェラ、お疲れ様」
にこ、とはにかんでくれる。
硝子窓から午後のやわらかな陽光が入り、フェリシアを照らしている。茶色の髪が輝いて見えて、まるで天使のよう。かわいい。群を抜いてかわいい。
「フェリシア!」
嬉しくなって駆け寄ろうとしたけど、フェリシアから氣?の力を感じて踏みとどまった。
「その力、どうしたの?」
「王太后さまからの訓練の一環ね。早く強くなりたくて」
「そうなのね」
恐る恐る近づいて、空けてくれている右手に触れる。
過多症はよくなったから余分な術力が放出される感じはないけど、彼女の体内でとぐろを巻いている力を感じる。
もちろん嫌な感じは受けないけど、量が多すぎない?
「体大丈夫なの? 疲れない?」
「ふふ。疲れるよ。疲れないと訓練にならないじゃない?」
「そうだけど。フェリシアはすごいわね。わたしだったら家に帰ってまで訓練したくない」
んー、とフェリシアは首をかしげる。
「私はやるべきことが分かって嬉しい。どうしたら強くなれるんだろうって思ってたから、どんどん試したいの」
「すごいわね。王太后さまのところで教えてもらうって言ってたけど、誰が教えてくれてるの?」
「王太后さまよ?」
「ご本人!?」
「ええ。驚くわよね。でもお話しやすいし、わかりやすいわ」
「すごいわね・・・」