忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
冒険者ギルドの閉店後、ミルシアさんと夕飯を食べることになった。
ティーエさんにいい酒場を聞いてきたとのことで、そこの個室に向かう。
「個室空いてなくても、防音の結界張るから大丈夫よ」
とラウが言ってくれたけれど、空いてたみたい。
ミルシアさんが適当に頼んでくれたけど、ビールやワインが届かない。
届いたのは、私たち3人にはシードル、フォーレには水だ。
「今日飲まないの?」
「さすがに呑気に飲む気になれませんよ。本当にヨルロン・ダンジョンに行かれるつもりですか?」
調理後すぐに持ってきてくれたようで、肉が焼ける音が部屋に響く。
「もちろんよ。最低でも15階の魔物は倒したいな。ね、フェリ?」
「ええ。魔狼で18階くらいってティーエさんが仰ってたし。大丈夫だと思うわ。無理そうだったら逃げるし。12階でも魔物の甲殻や牙は売れるって言ってたしね。高そうな魔物は覚えたわ」
はあーー、とミルシアが大きなため息をついた。
「目立って大丈夫なのですか? 教会に目をつけられないようにバンドラガルから出たのはなかったのですか?」
「心配してくれてるの?」
ラウが茶化すが、ミルシアさんはさらに渋い顔をした。
「当たり前でしょう! ロアさんたちには挨拶に来たそうじゃないですか!? 私のところには来てくれなかったくせに〜。どうせただのギルド職員ですよ。ロアさんたちは詳しい話は教えてくれないし、討伐戦に出た冒険者たちは、フェリちゃんのことを聖女さまって持ち上げるし。王都と教会から騎士団が派遣されて、あちこち調べたり、取り調べ受けたりしたんですよ!」
やはり大変だったのね。
「ミルシアさん、ごめんなさい」
「謝罪受け入れますから、こっちに座ってください。フォーレちゃんも」
「・・・・・・どうして?」
「だってロアさんやケイナさんやサニクレアさんばっかりずるいじゃないですか! 私にはぜんぜん懐いてくれないのに!」
「・・・それは・・・・・・ごめんなさい」
ラウが頼りにしてるのも嫌だったし、可愛くて胸が大きくて気が利いていて、大人で美人で誰からも好かれてる彼女が羨ましかったのね、て今ならわかる。それに・・・。
「無条件に親切な人は苦手なの。利害がはっきりしてる方が付き合いやすいし。でもバンドラガルからこっちにきて、旅の間も、王都の人も、裏表なしに親切な奇特な人もいるって分かったわ。少しは懐いてあげる。だからラウにすぐ変な知識入れるのはやめて」
ミルシアさんをフォーレと私で挟む。
「きゃー♡ 子どもたちが両手に!!」
脇に手が回ってぎゅっとされた。
「良かったね、ミルシアさん」
ラウが鷹揚に微笑んだ。嫉妬したりしないの?
「変な知識じゃないですけどね〜。お二人ともお揃いの指輪して仲が良さそうですね?」
ミルシアさんがさらに水を向けてきて、ラウが嬉しそうにニマニマする。私も緩みそうになる頬を頑張って引き締めたわ。
「お陰様で♡ ミルシアさんが助言してくれたからですよ!また何かあれば聞いてくださいね♡」
「もちろんです♡ いつでもご相談ください!それで、ダンジョンで高額の魔物を狩ってきたりしたら目立ちますけど、大丈夫なのですか?」
あ、回答忘れてたわね。これには私が答えるわ。
「大丈夫よ。教会のトップの人と顔を合わせる機会があって大丈夫になったの」
「そうでしたか! フェリちゃんの聖女ぶりにバンドラガルではファンクラブ出来てましたからね。何かあったら教会許さねぇって息巻いてる人がたくさんいましたよ」
「え!?」
ファンクラブってなによ…。
「わたしも入りたい! 王都支部はないの? 具体的な活動内容は?」
「ラウ! 食いつかないで!」
「そもそもはオーク討伐戦のフェリちゃんの活躍を共有する活躍内容だったんですよ。私も行きました〜。ケイナさんやサニクレアさんに指示したと聞きましたよ。集団戦の指揮経験がおありだったんですね」
ハイエヴァーで兄と領兵の指揮、作戦立案に携わっていたからだけど、ミルシアさんには明かせないわね。
「ええ。少しね。お手伝い程度だけど」
「またご謙遜を〜。ラウラリーエさんが結界を張って、そこを拠点にするってみんなに声をかけて回ったそうですね。あの声に勇気付けられて助かった人が大勢いたんですよ! 問題が解決したなら、またバンドラガルへ行ってみてください! みんなお礼を言いたくてうずうずしてました。そうそう、教会で異端認定されたら、殴り込みに行こうって計画もありましたねぇ」
ジーナさまは私を異端認定しそうもないし、回避されたとみなして大丈夫よね??
でも各支部まで指示が行き届いてるかはわからないから、不安だわ。
「あとは、フェリちゃんの姿絵が御守りになるって飛ぶように売れました! それがこちらです!!」
興奮した様子のミルシアさんが胸元から一枚のカードを引っ張り出した。チェーンが付いていて、首からかけるようになってる。パカっと開けると、中には私とラウの姿絵がカラーで!!
「なにそれー!! ほしいほしい! 王都に売ってないの!?」
ラウが絶叫するからびっくりしたわ。フォーレも目を白黒させてる。
「残念ながら、冒険者ギルド、バンドラガル支部だけの限定アイテムです。ほら、バンドラガル行きたくなって来たでしょ?」
にやにやしたミルシアさんにまんまと乗せられてる。
「行く行く! フェリ、次の次の休みはバンドラガルに行こ!!!」
「行かないわよ。それにあんまり似てなくない? 私、こんなに美人ではないけど?ラウはまあ似てるかもだけど」
「「似てます!」」
ハモらないでよ。。
「モンスターや手配書の似顔絵なんかを担当してる、うちの職員が書いたんですよ! 画力には定評があります! お陰でバンドラガル支部は大儲けです!!」
フンス、とミルシアさん。。
「それは良かったわね…」
「フェリ〜〜〜。わたしもフェリの姿絵ほしい〜〜。ほしいほしい〜〜」
手足をじたばたさせてくる。。
なにその駄々。
フォーレがお目をまん丸にしてラウと私を見比べる。
「本物目の前にいるのに?」
フォーレはいいこと言うわね!
でも駄々は1秒も止まらなかった。
「だって14歳のフェリはこの絵の中にしかいないのよ? すくすく大きくなってるし、過去のフェリを偲ぶには必須のアイテムだわ!」
そう言われると。。
「15歳のラウもこの中にしかいない?」
ラウはもうあまり変わらなさそうだけど。。
「もちろんよ! 私も毎年成長してるからね」
たしかに、去年のラウにはもう会えないわけで。
でもバンドラガルにはいる。。
「………行こうかしら」
「そうこなきゃ!」
まんまと乗せられた感あるけど、去年のラウが手に入ると思えば胸がときめいてしまうのだった。