忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
第51話 ヨルロン1 どうしてバレてるの?
翌日、急に伝えるよりはと、訓練後に次の休息日とその翌日も訓練を休みたい旨を伝えた。
王太后さまもお忙しいでしょうし、スケジュールの調整もおありになるでしょうし。
ただ、詳しく伝えるのはやめておくことにした。
ダンジョンに狩りに行くなんて言ったら、理由を聞かれるだろうし、生活費が足りないなんて言いたくなかったから。
バンドラガルに絵姿を買いに行くのはまた今度ね。生活費を稼ぐ方が先。
「休みたいと言うなら構わん。イルヴァングのところのにも伝えたんだろう?」
「はい。昨日、風精に伝えてもらいました」
「して、なにをするんだ?」
「王都を回ってみようかと。このあたりのことは疎いので、せっかくならと思いまして」
「そうか。それならレイハス、ユスフ、セリスを連れて行くといい。詳しいぞ」
侍女さんたちの列からの3人がすっと一歩前にでてお辞儀をしてくる。
「3人もですか? のんびりと私たちだけで回って参りますので」
やんわりと断ったのだけれど、思った以上に王太后さまの一声が強い。
「まあ、そう言うな。荷物持ちもいた方がいいだろう。レイハス、頼んだぞ」
「はっ、畏まりました」
一番年長なのか、レイハスさんが首を垂れて返事をする。
困ったわね。どうしよう。置いて行ったら彼女らが叱責されそうだし。
どう言ったら同行を諦めてもらえるか考えていると、王太后さまがにやりとお笑いになった。
「本当なら私が付いて行きたいところなのだがな、執務があって残念だ。帰る前に彼女らと打ち合わせをしたらいい」
と、外出されて行ってしまった。
「ではこちらへ」
案内された部屋は王太后さまのお屋敷の2階。
レイハスさん、ユスフさん、セリスさんと私たちのみ。
3人とも美人さんで良家の子女らしい佇まい。
「フェリ様、ラウラ様、フォーレ様、どうぞお掛けください」
レイハスさんが促してくれる間にユスフさんがお茶を入れてくれる。
どうしよう。
明後日の安息日が本当に観光になっちゃう。もしダンジョンで稼ぐのが難しければ、蟹か鹿を取りに行かなければならないし、家賃の支払いまでまだ2週間あるけど、時間は無駄にできない。
「えっと、あの、王都を案内してもらう件なのですが・・・」
「まあまあ、お掛けください」
最後まで言わせてもらえず、セリスさんが椅子を引いてくる。
断る隙間を与えてくれない!!
「座っちゃいましょ」
ますます断り辛くなるのでは? と思ったのだけれど、ラウラが座ってしまったので、仕方なくフォーレを抱っこしたまま腰掛けた。
ユスフさんがお茶を配ってくれると、
「まずは自己紹介させていただきますわね」
と一人ずつ紹介が始まった。
自己紹介に私の所感も付け加えるわ。
レイハス・シルヴァウンド。剣士。精霊術は簡単なものしか使えないが、身体強化が得意とのこと。
藤色の癖のない髪をポニーテールにしてる。長身ですらりとしてるわ。性格は真面目で固そう。
ユスフ・ハガーヌ。精霊術士で闇が得意。茶色のボブカットで身長はラウより少し小さいわ。ニコニコしてて印象は小さいワンコみたい。
セリス・ヒサーグル。短剣使いで、精霊術は風が得意とのこと。探査や斥候もできる。
黒髪のショートで、あんまり表情は変わらない? かも。クールな感じ。
「ええと・・・」
王都の人の自己紹介は自分の得物やスキルについて話すのかしら? 街歩きにはあんまり必要ないような?
困っているとユスフさんがクスりと笑われた。
「まだわかってないようですよ、レイハス」
「そのようね」
レイハスさんが私を安心させるように微笑まれた。
「ダンジョンに行かれるのでしょう? 我々もお供いたしますわ」
「!!?」
いつのまに? どこから聞きつけたの?
そういうことね、とラウラは驚くことなく納得してる。順応早すぎない?
「王都にきてから、いろんなのが周囲を嗅ぎ回ってるから不思議じゃないでしょ」
「それって貴族派とかじゃなかったの? 王太后さまに私の個人的な事情が筒抜けだったのは、まあいいとして、ただでさえ訓練でお時間をいただいてるのに、これ以上リソースを割いていただくのは申し訳ないわ」
「どうするの? 断る?」
「でも、せっかくのご厚意を無為にしては気を悪くされると思うのよ・・・」
「じゃあ、一緒に行ってもらう? 闇精霊術士がいるのは助かると思うわ。ストレージが使えるってことでしょ?」
ラウラの問いにユスフが頷いた。
「もちろんです」
「どれくらい入るの?」
「いまのこのお部屋くらいでしょうか」
王太后さまのお屋敷の中では小さい方だけど、10人は優に入れる。
魔狼だったら10体は入るかしら。天井ギリギリまで入れて。
「すごい!」
「なかなか大きいわね。どれくらい持つの?」
「フルでも3日は持ちます」
今回は2日だけだし余裕ね。
「寝具や調理器具、食材などはこちらで用意しますが、そちらは3名になりますか? フォーレさまはお小さいので留守番もあり得ると思いましたが」
ユスフさんの気遣いにフォーレは振り返って私に抱きついて来た。
「こちもいく! 置いていかれるの嫌だも! 一緒だも!」
「置いていかないわ。一緒よ」
頭をなでなでする。するするとした髪の毛の手触りが本当にいい。
にこーと笑うと安心した様子で私の膝の上に収まり直した。
「く・・・、では6人分用意いたしますね・・・・・・」
え? どうしてか3人とも俯いて肩を震わせてる。
「どうかしましたか?」
「いえ!何でもないのです」
隣ではラウラが肩をすくめてる。
「王太后さまの趣味なの? この屋敷の人は小さくて可愛らしいものが好きよね」
「あぁ。フォーレは大変可愛らしいものね。耳も尻尾ももふもふでジーナさまもこの感触お好きよね」
なでなでするとフォーレが目を細めて擦り寄ってくる。
「気持ちいいも♡ みんなも優しくしてくれるも♡」
「良かったわね」
フォーレがそう思ってくれて嬉しい。と、急に私の頭もなでなでされた。
「ラウ、どうして私の頭をなでるの?」
「かわいいな、とおもって」
「・・・・・・・・・もしかして、私も”小さい”に入ってるっていいたいの?」
女性は特に小さい子に親切な人が多い。
「私、年明けには成人するんだけど?」
「「「え!?」」」
侍女さんたちに衝撃が走った。
私のこと何歳だと思ってたの!?
「私14歳です! 小さい子じゃないですから!」
「そうだったのですね・・・。申し訳ございません」
レイハスさんが謝罪してくれたけど、ちょっとだけ・・・ちょっとだけね! 身長が足りない私が悪いのでしょうね。
「いえ。ですので過剰な援護は不要です。ここでは血術の訓練しかしてませんが、私も戦えます。フォーレも土精の精霊術は得意ですし、その上で作戦を立てましょう」
レイハスさんが大きく頷いてくれた。
「私も以前冒険者をしていて、25階までは行ったことがあります。モンスターの生息域なども分かりますので、そこも加味していかに効率よくモンスターを倒すか、検討しましょう」
27歳のレイハスさんを筆頭に、経験豊富な3人のお話から見識を広めることができたわ。戦闘はそこまで好きではないのだけれど、課題に対する解決策の提案・推考、作戦の立案は楽しいわね。実行する日が楽しみ。