※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第52話 ヨルロン2 出発

 作戦を立ててから翌々日、私たちはヨルロンに向かった。

 私とラウラ、フォーレは王城の開門と同時に走って来たけど、彼女らは前日の夜にヨルロン入りすると言っていたので、当日の五の刻にダンジョンの入り口で待ち合わせることにしたの。

 

 ヨルロン・ダンジョンの入り口は、巨大な岩を横一文字に切り裂いてできたみたい。

 もう日もすっかり昇っているのに、切り裂かれた岩の向こう側-入り口の奥は真っ暗で見通せない。

 それに朝も遅い時間だからか、入り口には数名しかいなかった。

 そう。そのうちの数人は侍女3人組で、こちらを視認すると、ぱっと笑顔になった。

 

「おはようございます! 早速行きましょうか」

 3人は荷物をストレージに預けたのね。すっかり身軽。

「フェリ様たちのお荷物はダンジョン内でお預かりしますね。ここだと目立ってしまうので」

 希少性の高いスキルと聞いてるから、身柄を狙われちゃうかも知れないものね。

 

「はい。ありがとうございます」

「みんなおはようだも!」

 フォーレの挨拶に侍女さんたちはほっこりしてる。

「ゆっくりしてる暇はないわ。急ぐわよ」

「「「はい!」」」

 ラウラの一声に緩んだ空気が引き締まる。

 

 

 ダンジョンの入り口はヨルロンの町の冒険者ギルドが管理している。

 入場するときは冒険者カードの提示と記入が必要になるのだけれど、フォーレの分は私の妹として申請した。見た目5歳なので、誰も預かってくれる人がいないの、と言い切って押し通したわ。

 

 この記録台帳には帰還予定日の記入欄もあり、予定日を二日過ぎても帰還しない場合、家族や友人の要望があれば捜索隊を出すことができるそう。また、一ヶ月過ぎても帰ってこない人は死亡扱いとされると聞いた。

 私たちは帰還予定日に明日の日付を書き、一人銀貨3枚の入場料を支払って、ようやくヨルロンダンジョンの入場を許可された。

 

「気を付けていくんだぞ。危ないなと思ったらすぐ引き返すんだ、いいね?」

 

 受付のおじさんたちはいい人で、侍女さんたちのランクがAなのに、とても心配してくれた。あれ? 私また子どもだと思われてる?

 

 ヨルロン・ダンジョンの入り口は高さ5メートル横幅20メートルはある巨大なもので、荒い鉄格子で囲われている。その一角にある入り口を開けてもらい、巨大な魔物が口を開けているような洞窟へと歩を進めた。

 

「さて、作戦どおりに行きましょ?」

 ラウの声がけに、私は頷いた。

 

 ユスフさんのストレージに武器以外の荷物を預け、全員に祝福を授ける。

「体力、知力、俊敏の向上、疲労軽減、隠蔽の加護をみんなに。そして水、火、土、風、光、闇の精霊たちよ。私の仲間たちにあなた方の加護を賜れますよう」

 

 呟きながら私は一人一人の気配に合わせて、祝福を強めていく。

 

「ラウには身体強化と水。

 フォ-レには身体強化と疲労軽減と土。

 レイハスさんには身体強化と火と光。

 ユスフさんには身体強化と闇。

 セリスさんには身体強化と風と火のさらなる加護を!」

 

 はっきり言って、血力は減るけれど、実際にみんなに精霊の加護がついたかは判断つかないのよね。

 ラウラやフォーレ、プティがいるから、感じ取れはしないけれど、信じて託す。

 

「素晴らしい祝福ですね、まだ数日しか王太后陛下から教えをいただいてないのに」

「バンドラガルの聖女の名は伊達ではないということね」

「納得」

 レイハスさん、ユスフさん、セリスさんがそれぞれ自身の体を眺めて、軽く飛び跳ねたりしてる。

 

「大丈夫そうですか?」

「大丈夫。ユスフいくよ」

 セリスさんがユスフさんに飛翔術をかける。

 

 

「フェリ」

 私もラウに名前を呼ばれて抱っこされた。年明けには大人です、て言ったのに。ちょっと恥ずかしい。

 

「王太后さまから言われてるでしょ。なるべく安静にしろって。まだ養生するべき時期だって。まだ死にかけてから2週間しか経ってないんだからね。もし戦闘になったら結界で隠れていて。すぐにわたしがぶち殺すから」

「わかってるって。無茶なことはしないわ」

 頷くと、私の上にフォーレが乗ってきた。これで準備完了ね。

 

「それでは15階へ行きましょう」

 レイハスさんはライトの精霊術を唱えるとを先頭切って駆け出した。ラウラも続く。そのすぐ後ろをセリスさんとユスフさんが飛んでついてくる。

 

 すごいスピード。

 

 びゅんびゅんと景色がながれていく。

 

 まずは15階まで極力戦闘せず走破する。作戦通りに。

 

 

 

 

 

 世界には2種類のダンジョンがある。

 一つは自然にできたダンジョン。洞窟とも言う。

 そしてもう一つは神が作ったダンジョン。

 

 神が作ったダンジョンには、そこにしかいない動植物が棲息していて、特に動物の方をモンスターと呼称している。

 この世界の動物が瘴気などによって魔物化するのとはまったく違うのだそう。

 でも一昨日見せてもらった図鑑には、昆虫型や亜人型などが載っていて、獣型や人型から、まったく関連性がないってわけでもないと思うのだけれど。

 

 私たちは真っ暗闇の中、レイハスさんの灯りを先導に進む。精霊術の明かりは私には効果が無いから真っ暗なままなんだけどね。

 1階から5階まではフロア全体が広大な岩山の階だと聞いたわ。壁などはなくて、月明かりもない広陵とした岩山みたい。

 

 あちこちに点々と光るものが見えるのは、そこにも冒険者たちがいるから。

 何かと戦ってる人たちもいるけれど、私たちは一階を駆け抜けて、明らかに人工物の階段を降りる。

 

 初めて来たけど、本当に不思議。材質は何かしら? つぎはぎもない、まっすぐな石。石よね? 色は黒いから玄武岩? 大理石もそのような色があるらしいし。切り出すにしてもこれ程真っ直ぐに切り出すのは難しいはず。

 神が作ったとされるのは、階段が階のどこかにあるから。階段ではモンスターは襲って来ず、安全地帯とされている。

 それに、階を隔てると全く違う光景が広がっていることもあるのだそう。楽しみね。

 

 途中、蝙蝠や小動物の群れに遭遇したけど、走り抜けて戦闘になることもなかった。

 1階から5階は岩山、6階から10階は雑木林。雑木林はモンスターが隠れ潜む場所が多いから、枝の上を駆けた。セリスさんとユスフさんは飛んでいたけど。

 

 ずっと駆け通しだったから、10階と11階を隔てる階段で一休みすることになったわ。冒険者たちも数人いて、強そうな男の人が多い気がする。こっちをちらちら見てる? ・・・覚えのある視線に背筋が粟立った。

 この視線は・・・・・・。

 

 

 私たちだけだったら、すぐに出ようと提案しているところなのだけれど、階段に腰掛けて休む侍女さんたちの額には汗が浮かんでいる。

 疲労回復の祝福を唱えようとしたところで、セリスさんから腕を掴まれた。首を左右に振ってる。

「セリスの指示に従って。出ましょう」

 レイハスさんも立ち上がった。

 

 セリスさんは今度は飛翔術を掛けることなく、階段を降りていく。

 みんなで続いて降り切り、階段口から脇にそれたところで、ユスフさんがハイドの闇精霊術を使った。私を中心に覆い隠すように発動したそうで、「動かないでくださいね。フェリ様がぶつかると術が無効になってしまうので」と小声で注意を受けた。

 

「どうしたも?」

 不思議そうな顔をしているフォーレのお口に人差し指を当てる。

 

 しばらくすると、階段口に先ほどの男たちの姿が見えた。

「早いな。もう見えない」

「それか、その辺にいるか、だな」

「仕方ない。彼女らの帰り際に会えたら、俺たちの荷物も持ってもらえるよう交渉しよう。闇使いとは珍しいな」

「しかも護衛もなしだ。女ばかりで危ないからな。俺たちが護衛してやろう」

 4人の男たちのセリフは言葉通りの意味じゃない。野卑な感じが拭えない。

 

 彼らに護衛を頼むなんて真っ平ごめんね、と考えていると「え?」とユスフさんが呟いた。

「結界壊れたも」

 視線を上向かせたフォーレがつぶやく。

 

「どうし・・・・」

 ドォン、と耳に届いた衝撃音を頼りに目を向けると、いつの間にか4人のうちの1人が30メートル向こうの岩山にぶっ飛ばされて、めり込んでる。

 男がいた場所には拳を固めたラウが。

 

 私たちと男たちの視線が交錯する。

 

「いつの間に…。どうやったんだ? てめぇ」

 男の1人がラウに掴み掛かった。動きは緩慢で攻撃というよりは威嚇。

 

 ラウはその手首を掴みとった。

「いででででで!」

 

「わたしたちの前から消えて。次会ったら殺すわ」

 ぽいっと放り捨てる。

 

 なんでそんな物騒なこと言うの!?

 

「おいおい、ご挨拶だなぁ。勝手にそっちから突っかかってきてよ。治療代と慰謝料くらいもらわねぇとおかしいだろ」

 

 

 男の言うとおりね。

 仲裁に入ろうとしたら、セリスさんに止められた。

 

「どうして止めるの? 今のはラウが悪いわ。怪我人の治療もしなくちゃ。レイハスさん!」

 レイハスさんの光術で、と思ったのに、ラウを守るように傍立った。仲裁する立ち位置じゃない。

 

「どうして?」

 セリスさんは硬い表情のまま、男たちと私の間に位置取った。

 

「ラウラ様の行動に間違いはない」

 淡々と告げられる。

 私が見落とした敵対行動があったの?

 

「ここは見逃すと言っている。女だからと舐めていると全員ああなるぞ」

 レイハスさんまで・・・。

 

 

 

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