忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
今も私たちの荷物入れてくれて、アルマジロを入れて、常時発動中のストレージ。
ずっと維持するのは大変なのではないかしら?
アルマジロ15体もいれたら、結構な量になるし。
私は改めて精霊の加護と霊力消耗軽減の祝福をした。
「また祝福してくださったのですか!?」
「大変そうかなと思いまして。余計なお節介だったでしょうか?」
「いえ、そうではなくて。大変ありがたいなと思っています。こんなに祝福をいただけることはありませんからね」
ふふ、と笑うと同時に、やっぱりすごいですね、としみじみ呟かれた。
「祝福の重ね掛けもそうですけれど、朝から今の間で祝福の威力上がってますよね? 驚きの成長速度なのですが」
「ユスフばっかりずるい。私はここまでずっと飛翔術使ってきた」
ずずいとセリスさんが寄ってきた。アピールが可愛くて、セリスさんにも祝福する。
「ずるいずるい! わたしも!」
ラウラが右手を挙げて前に出てきた。
「わかったわ」
こうなったら全員に掛けるべきかな。
改めて全員を祝福すると、レイハスさんとセリスさんも「ほんとね、威力上がってる~」と3人で盛り上がってる。
せっかく褒めてもらえてるところだけど、たぶん違うと思うの。
「すみません。私も半日で血術の威力あがったりしないです。私の血術の威力って、私の好悪に比例するんです。皆さんと半日過ごして、皆さんの人となりが見えてきて、私も意識しないようなところで皆さんのこと信頼したんだと思います。ラウやフォーレはいつもと効果変わらないでしょ?」
ラウは自分の体を見つめて、そうねえと切り出す。
「いつもどおり、2倍いかないくらいかしら」
「「「2倍!!!??」」」
3人ともすごくびっくりしてる。。
「血をもらっての祝福だったら5倍はいくと思うけれど。わたしも人に成って一年ちょっとだけれど、フェリと過ごす時間が増えてるからどんどん基礎能力上がるのよね。フェリの近くにいるだけで、血力が染みこんできて強くなっちゃうの。どこまで能力が上がるのか自分でも分からないけれど、今のところどんどん上がってるわよ。ポーリンガム森林の摩狼だったら、今ならフェリの祝福なしで倒せると思う」
「そんなに強くなってたの?!」
まってよ。追いつくどころじゃない。離されてるじゃない?
侍女さんたちがこしょこしょ話してる。
「ラウラ様、Sどころか、SSS級なのでは?」
「私もそう思います」
「5日あれば国獲れる」
それ危険人物じゃない?
「だから手加減難しいの。いつの間にかちょっとずつ強くなってるから。気を付けないとほんとに殺しちゃう。さっき偉かったでしょ?」
ほめてほめて~、と大型わんこと化したラウが頭を撫でて欲しそうに擦り寄ってくる。
「いや・・・うん・・・・・・えらいえらい」
ポニテにしてるラウの頭をよしよししてあげる。
するとまた、侍女さんたちがこしょこしょしだした。
「この国の命運はフェリ様が握ってますね」
「間違いない」
「他国に行かれなくてほんとうに良かったですよね」
「死ぬ気でフェリ様をお守りしなければ」
なにか、変な風にとられてるわね。
「ラウ、もし私が殺されても、関係のない人まで巻き込んだりしないでしょ? それくらいの分別あるよね?」
気軽く聞いたのが悪かったのかしら。
大型わんこが、獰猛なわんこになってしまった・・・。
「さあ? どうかしら? どこまで縁者と見なして殺すかは状況次第じゃない? この国を滅ぼしたって精霊たちからは喜ばれるだろうし 」
あんまり怖いこと言わないでよ。侍女さんたちが怯えるでしょう。
「ラウ、もし私に何かあったとしても、仕返ししていいのはやった本人までよ。それ以外の無関係な人までは、私は認めない。絶対許さないから」
道理の通らないことは、私の信条に反する。
「私の伴侶となるからには、私の信条をラウの心に刻んで欲しい」
恥ずかしいからこっそりとラウに告げると、ぱああ、と表情を明るくして大きく頷いてくれた。
「わかったわ! 心に刻む。必ず守るわ! だってフェリのお嫁さんだもん!」
ちょっと! 声が大きい! 小声で言った意味がないでしょう!!!
「すごい。フェリ様。ご懸念をこうもあっさり」
レイハスさんが小さく拍手してる。
「クロシード領の貴族派に嫌悪感を持っていたのだけど、フェリ様の教育関係はどうなっていたの? もう感謝したいくらい」
ユスフさんは両手を合わせて神に祈りだしてる。
「猛獣使い」
セリスさんは歯に衣着せぬ物言いをするから、裏表なくて仲良くなれそう。
王太后さまは私が親しみやすそうな人を選んでくれたみたい。
今日は野営の準備をして、明日に備えよう。
野営は適当な場所にラウラが結界を張ってくれた。認識阻害も組み込まれてるから、そもそも見つけにくいはずって言ってたわ。
さきほど休憩したときと同じようにウォーターベッド改の椅子やテーブル(今度はローじゃなくてダイニングテーブルだった)を作ってくれる。
「ラウ、ありがとう。疲れない?」
心配して聞いたのに、ぎゅっと抱きしめられて頬ずりされた。
「ありがと。大丈夫よ」
後で補充させてね、とこっそり耳打ちされる。
どうやって? 今日は侍女さんたちがいるんだけど?!
「フェリ、かお真っ赤!」
「からかったの?」
「ちがうちがう。本気で言ってるわ。いつもほどとは言わないけど、多少はね♡」
キスで我慢するから、とまた小声で・・・。
ぞわぞわするから止めて!
ラウを突き飛ばすと、侍女さんたちの輪に加わった。
「手伝います」
「ありがとうございます。でもすぐできますから、座ってお待ちください」
レイハスさんに軽くいなされて、席に座らせられてしまった・・・。
私が手伝わない方が早く終わるのかしら。
3人の動きをよく観察して、手伝えそうなところは手伝えばいいしね。
ユスフさんがテーブルに次々と材料を取り出していく。
携帯コンロ2つに、フライパン、包丁、お皿の他、大きなブロック肉、野菜、香草類、香辛料なども。
大きな鍋はストレージから出すと、そのままコンロに掛けてしまった。
「すでに中に入ってるのですか?」
「ええ。スープはそのまま持ってきました。・・・というか持たされました。王太后陛下からフェリ様にきちんとお食事をさせるようにと仰せつかっております」
「・・・・・・・・・王太后さま、ご飯のことよく言ってきますよね。稽古の一環だからって昼食も食べていくように言いつけられてますし、お菓子と夕飯も持たされますし。・・・お昼の量が多くて、夜胃が重くてなかなか寝られないことがあります」
「そうでしたか。残されたからといって機嫌を損ねる方ではございません。今後は無理をせずお申し付けください」
レイハスさんはそう言ってくれるけれど、王太后さまに言えるかしら・・。
「今日は遠慮なく言って」
セリスさんの飾らない言葉に頷いた。
「はい。そうさせてもらいますね」
夕食は、お屋敷の料理人が作ったというベーコンと野菜のスープに、柔らかい白パン、ポテトサラダ、熟成肉のステーキだった。
ユスフさんとレイハスさんが調理して、セリスさんが盛り付けて出してくれる。
「皆さん手際がいいですね」
「護衛として野営することも多いですからね」
言いながらお肉をひっくり返すレイハスさん。
「野営経験が少ないと料理の腕もなかなかあがらない。私ももっと同行して肉焼きスキルを上達させたい!」
セリスさんが真面目な顔で言うから、ちょっと笑ってしまったわ。
肉焼きスキルって・・・。
「お菓子焼くのは上手にできるのに。ユスフも上手。子どもの分のお菓子作りすぎたからっ分けて貰ったことある」
「そうなんですね。ユスフさんのお子さんはおいくつなんですか?」
「7歳4歳3歳です」
え? 計算合わなくない? ユスフさん20歳くらいでしょ?
びっくりしているとレイハスさんが教えてくれた。
「ユスフのところは術士学院を卒業すると同時に結婚させられるのですよ。まずは跡継ぎをつくらされるみたいです」
希少なストレージ持ちの能力だとそうなるのね。
貴族だから婚姻は義務なのでしょうけど・・・。
相手はいい人だといいなと思うけれど、私の中で「領主」はあの人だから。あんまり想像できないわ。
「クッキーは子どもたちと作るんですか?」
「ええ。男女女なのですが、七歳になる長男もよく妹の面倒を見てくれるので助かりますね」
ほんわかと笑ってくれるから、子どもたちが大好きなんだろうな。
子どもとクッキーを焼く、か・・・・。
なんだろう。
むねがチクチクして。
目から水があふれそうになってる・・・?
ほんとうに今日はどうしたの?
いつもはなんとも思わないのに。
「わっ!」
急にラウラの方を向かせられたと思ったら、胸に顔を押し込まれた。
「わたしたちも今度クッキー焼こ?」
なぐさめてくれるの?
嬉しくて、悲しいわけじゃないのに、泣き顔を侍女さんたちに見られないって思ったら止らなくなっちゃった。
「無理よ。家にオーブンないもの」
「休日に家で焼こう」
セリスさんが決定事項として宣言する。
「やったも~~~!」
フォーレが喜んで尻尾をぶんぶん振るから、お尻に当たるわ・・。
「どうする? いいの?」
ラウラが心配して聞いてくれる。
ユスフさんのところで子どもと一緒に焼くのは難しいけど、セリスさんとだったら楽しく焼けるかもしれない。
「うん」
私が落ち着いた頃、夕食の準備が整った。
熟成肉のステーキは、いつものお肉より柔らかくて味が濃厚。
「食べやすくて美味しい」
ふふ、そうでしょう、とユスフさんもレイハスさんも嬉しそう。
「料理長が特別な肉だって仰ってたんですよ」
「私たちも食べていいって。王太后陛下太っ腹」
「ほんとに今回の任務、役得です」
レイハスさんが焼けた肉のお代わりをお皿に取り分けてくれる。
「こちもこちも~!!」
フォーレも気に入ったみたいで、耳の先がピンクになって紅潮してる。
『おいしそ~。ぼくも食べたいなぁ』
ざ、と瞬きの間にラウラに抱きかかえられた。
え? なに? ラウが結界張ったはずなのに。知らない人がいる?
首を傾けてみると、フォーレよりも少し大きい男の子がダイニングテーブルに両手を突いて、フライパンに残る肉を見ていた。
みんないつの間にか武器を構えてるけれど、襲いかかる様子はない。
さっきの件が効いてるんだろう。
「おまえ、何なの?」
ラウラの声が聞いたこともないくらいに緊張してる。