※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第60話 ヨルロン10 王太后さまのやさしさ?

 王太后さまのお屋敷に着いたのは、夕方の手前くらい。

 執務室で報告することになったわ。私たち3人は備え付けのソファに座らされ、お茶が出されたけれど、侍女さん3人は直立不動で執務席の前に並んでる。

 

 レイハスさんが報告していってくれるけど、界の狭間の浄化の話になると急に詰まりだした。

「えぇ・・・と、ダンジョン管理者の・・・・・・」

 

「うむ。どうした?」

 

「えーーと・・・、すみません。ど忘れしてしまいまして。ユスフ、管理者のお名前なんでしたか?」

「えっ!? ・・・えーーーーと、えとですね、あれです! あれなんですけど・・・。セリス、なんでしたっけ?」

「え~~~と・・・・」

 

「3人ともどうした? 全員忘れたのか?」

 

 

「「「申し訳ございません」」」

 

 

「お名前も拝聴し、お顔もこの目で見たというのに」

 レイハスさんが体を90度に曲げて謝罪してる。

 他の二人もも同じ。

 

「まあよい。フェリ、ここに」

 

 

 

 そうなるよね。

 えーー、待って待って。

 記憶読まれるの嫌なのにー!

 

 ラウとあんなことしてるって知られたら、絶対軽蔑される!!!

 

 それに私は男の子のヤガルさんと狼マスクのユーペルシンナゥさんのことは、ばっちり覚えてるんだけど、共感して大丈夫なの?

 知られてしまうのでは?

 

 

「どうした? おいで」

 王太后さまからの再度の呼びかけに、侍女さんたちは申し訳なさそうな顔をしてる。前に断ったこと知ってるのね。

 

「大丈夫だ。おいで」

 

 ・・・大丈夫じゃないのだけれど・・・・・・。

 ラウが「断ろうか?」と言ってくれたけれど、そうするとヨルロンダンジョンの報告ができなくて侍女さんたちが咎められるのではないかしら?

 私は溜息を堪えて、王太后さまに近づいた。

 

 恥ずかしいけれど、これで軽蔑されるなら仕方ない。あの行為は私も許した事だし、誰の所為にもできない。

 これで見限られても、それはそれでいいよね。大腕を振って3人で向かえるわ。

 

 執務椅子に座る王太后さまに側寄り、差し出されている手に右手を乗せる。

 優しく握られて、あの時と同じく王太后さまの気配が私を読み取っていく。

 

 無駄なことだったかもしれないけれど、ヨルロンのことがメインになるよう抗う? 誘導? してみたわ。

 

 どうかしら?

 

 

 王太后さまは、閉じていた瞳をゆっくりと開いた。

 長い睫毛がばさりと音を立てそう。

 

「なるほど。確かにダンジョンの管理人についてはよく見えないな。名前も顔も霞みがかって。それ以外の事柄については明瞭に見えるというのに」

 

 明瞭にみえちゃってるの?・・・・・・////

 一人で赤面したけど、王太后さまは私のことは眼中にないようで額を押さえた。

 

「界の狭間に、ガカーヤカム・ダンジョンか・・・。なるほど。歌とはな。ポーリンガム森林の時はストラショットだったろう? なぜ歌にしたんだ?」

 

「今回は界を隔てていましたし、壁がありましたので、ストライクショットでは届かないと思いました。けれど向こうの声は聞こえましたから、歌なら届くかと。

 血術は血とことばとイメージです。他の世界とはいえ、この世界と同じことばに聞こえました。鎮魂の歌は知らなかったので、代わりに子守歌にしました。安らかに眠るように浄化するのはイメージできましたから。みなさんも手伝ってくださったので、とても助かりました。歌に厚みがでて効果があがったかなと思います。レイハスさん、ユスフさん、セリスさん、改めてありがとうございました」

 

「他者の歌声を浄化の力に変える、か。発想すらしたことがない。面白いな、フェリシア」

 

 今回はできそうと思っただけで、最初からできると考えていたわけじゃない。

 

「いえ、今回はたまたまかと」

 

「そうか…」

 王太后さまは視線を執務机に落としたまま、考え込んでいるご様子。

 

 

 私とラウのことは気にされてないみたい?

 

 

  ・・・・・・・・・・全然気にされてないみたいね?

 

 

 沈鬱そうな王太后さまからは、私の頭で繰り広げられてる情事の様子を振り返っているようには見えないもの。

 

 

 

 どういう・・・こと???

 あれを気にしないわけないわよね?

 

 私の抗術がうまくいったのかしら?

 

 

 見せなくて済んだ?

 済んだの? ほんと?

 

 それならいいのだけれど?

 

 

 

「どうした?」

 

 王太后さまをつい見過ぎてしまったわ。

 

「いえ。なんでもありません」

 

 

 王太后さまが気にされてないのに、一人だけ意識してたら変だもんね。

 気にしない。

 とりあえず、今は思い出さないようにしよう!

 

 

「フェリシア、この界の狭間はヨルロン・ダンジョン以外も一人で入れるのか?」

 

「やり方が分かりましたので大丈夫です。記憶を見ていただければ、王太后さまも入れると思います」

 

 

「・・・・・・・・・・・・そうか」

 

 そういうと王太后さまは、よく手入れのされた美しい顔(かんばせ)を俯けて瞑目された。

 しばらくそうされて、こちらはどうしたらいいか分からずに、王太后さまの瞳が開かれるのを待つ。

 

 王太后さまの青灰の瞳がゆっくりと開かれた。

 秀麗な眉目は曇ったままで「済まないが、もう一度そこを見る」と言われてしまった。

 

 私は慌てて自分の記憶を狭間の浄化時にフォーカスする。

 余計なことは考えず、あのとき見聞きしたこと。感じたことを。

 

 王太后さまの気配がまた私の中を通り抜けていく。先ほどに比べればほんの少しの時間ね。

 この行為に対しての王太后さまの沈黙は長かった。

 

 手は握られてるから離れられないし、王太后さまはまた目を瞑っちゃうし。

 身の置き所がないというか。

 

 

 侍女さんたちは相変わらず直立不動だったけれど、ラウラとフォーレが紅茶を飲んで、カップケーキを食べてる咀嚼音は聞こえてきたわ。きっともぐもぐ食べているのはフォーレでしょうけど。

 

 

 

 

 ようやく瞳を開けられたけれど、快活な王太后さまにしては思い悩んでいる様子。

「・・・・・・・・・なるほど。それで、ガカーヤカム・ダンジョンには3人で行くと」

 

「はい」

 

 そろそろ手を離してくれてないかしら。

 思っていると、もう戻っていいぞ、と手を離してくれた。

 

 ラウラの隣に掛けて、フォーレを抱っこする。

 あったかくてふわふわで、甘い匂いがするわね♡

 ラウラが背中に腕を回してくれるから、皆に包まれて体がぽかぽかする。

 

 

 

「フェリシアへの依頼ではあるが、ダンジョン管理者からともなれば、国として何もしないわけにはいかないだろう。依頼が無事達成できるよう後押しする必要がある。貴族だろうと平民だろうとそれは変わらん。解るな?」

 

 そう言われては、確かにそうだと思う。

 

「物的支援と人的支援を両方行おう。熟成肉は提供するし、護衛の費用も不要だ。一個小隊でもおかしくないが、少人数でと言われたしな。この3人を連れて行ってはどうだ? ラウラが強いのは分かっているが、どうもお前たちは世間慣れしてないから心配でな。テラニード王国は行ったことがないだろう? レイハスなら何度か護衛として入国したことがある」

 

 王太后さまの言葉からは本当に心配しているように聞こえる。私たちの監視目的もあるのでしょうけど、どちらが本心なのか、私には判りかねるわね。

 

 

「はい! ぜひ同行させていただきたく存じます」

 レイハスさんは喜色満面の様子で、ユスフさんやセリスさんも「私たちも同じ気持ちです!」と口にする。

 

 ん? ユスフさんて小さいお子さんいらっしゃいましたよね?

 

「ユスフさん、お子さんはいいのですか?」

「乳母も家の者もおりますし、問題ございません」

 

 ユスフさんは全く悩む様子もないけど、そうなのかな。

 私はおじいさまが不在の時は心細かったけれど。

 

「フォーレは私と1ヶ月離れ離れでも平気?」

「フェリさまはこちを置いてくつもりだも!?? 絶対嫌だも!」

「そうよね。家族だもの」

 

「こういった遠征は多いですし、子供たちにも常日頃から故国に尽くすよう話をしております。ご心配には及びません」

 

 身分が高ければ高いほど王家の要求に応えなければいけないだとか、他のストレージ持ちの貴族にポジションを奪われないようにしなければいけないとか、ユスフさんにもいろいろと事情があるのでしょうけど、やっぱり子どもと離れて欲しくないなと自分勝手に思ってしまうわ。

 

 私の母はあの人と違って暴力を振るってきたりはしなかったけれど、物心ついたときには避けられてたわね。私とは関係ない、みたいに。

 だから私の母は下女のタニアなの。彼女いつもは夕方には帰ってしまうから、熱を出したときに夜も付き添ってくれてた時は嬉しかった。

 

 貴族だからって我慢させられてるけど、きっとお母さんといたいのじゃないかしら?

 

「ごめんなさい、ユスフさん。私の一方的な気持ちですが、今回は同行いただくつもりはありません。夜、子どもたちと一緒に寝てあげてくれませんか? 私は小さい頃甘えられる人はほんとに少なくて、今はラウが甘やかしてくれるんですけど、すごく嬉しいから。ユスフさんは優しいし、いいお母さんなんだろうなって思って、なんかそうして欲しくて」

 

 自分が母に甘えられなかった分、ユスフさんの子どもたちが甘えられるといいな、という身勝手な思い。自分も少し満たされた気持ちになるのはどうしてなのかしら。

 

「わかりました。本当に! 本当に心から残念ですが!! フェリ様がそう仰るのなら、今回はレイハスとセリスに譲ります。2人とも頼みますよ!」

「わかってる!」「任せて!」

 2人とも大きく頷いてる。

 

 

「王太后さまのご厚意にまた甘えさせていただいて、5人で向かいますね」

「レイハスが行くならまずは一安心だ。通行証の手配や、旅の準備もあるから、出発はそうだな・・・・・一週間、は無理か。10日後にするか。それまでは普段どおり稽古をするから覚悟するように」

 

「わかりました」

 

「今日は夕餉を食べてから帰りなさい。浄化、ご苦労だった」

 

 私たちはお屋敷で晩御飯をいただいた後、帰途に着いた。

 

 

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