※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第65話 シェラロッテとの放課後4

「お待たせしました〜。ダブルクリームハニープリガムバニラアイス掛けで〜す」

 

 ミニスカートから惜しげもなく足を出した女性が、テーブルに巨大なパンケーキを置いていったのを、フェリシアが固まったままみてる。

 

 小声で、なんて言ってたの? 精霊術の術文? て聞いてくる。

 店員さんのお尻を追ったままさらにつぶやいてる。

「しかもあの格好・・・。ここは茶屋じゃなかったの? 花街?」

 

「ここは茶屋であってるよ。美味しいデザートをかわいい格好で提供してくれる店なの。すごいよね」

 

 独り言のつもりがわたしが回答しちゃったから、恥ずかし気に目を伏せてる。睫毛ながいなぁ。

 

 フォーレがきらきらおめめ♡で食べていい?て伺ってくるので、goサインを出す。

「わーい!美味しそうも!!」

 

 フォークを使ってパクパク食べてる。ほんとかわいいな。

 

「ここのパンケーキは甘さ控えめで美味しいの。クリームじゃなくて、生地の方だったら食べやすいかも?」

 わたしのアドバイスに、フェリシアはすみっこの方をフォークでつついて口に含んだ。

 

「どう?」

「ええ。美味しいわ。連れてきてくれてありがとう」

 

「ここのパンケーキ美味しいよね〜」

「ほんと」

 被せるように声が重なり、わたしは向かいの席に胡乱な目を向けた。

 

 私服姿のナウシーさんがおっとりとした様子で大皿のパンケーキに手を伸ばしている。彼女はフェリシアの契約者だし、まだ分かる。

 分からないのはナウシーさんの隣に座るセリスという女性。

 王太后さまのところから派遣された護衛らしいけど、どうしてフォーレに張り合うくらい手を伸ばしてくるの? 護衛ならうちのサティーヌみたいに控室で控えてなさいよ。

 

 しかもタメ口だし。

 

「二人の護衛で、王太后さまのところの侍女なんですよね?」

 わたしの質問の意図を理解した上で、さらに手を伸ばしてくる。

 

 大皿のシェアする食べ物選ばない方が良かったかな〜。いやでもフェリシアと同じ皿のもの食べたかったのよね。

 せっかく注文したのに、フォーレとセリスさんとで食べきっちゃいそうじゃない?

 

「まあ、そんなところ。今日は私服だけど」

 

 彼女がこの前ナウシーさんの話に出たセリスさん。術士学院で優秀だったってきいた。身長だってそこまで差があるわけじゃない。力だってそう。制御がうまいのかな?

 

 わたしの視線を他所にセリスさんはパンケーキにクリームをたっぷりくっつけてる。

 

「フェリとの帯同が指示。控えてたら命令違反になる。あとフェリシアが敬語やめてって言った」

 

 フェリシアを見ると、こくりと頷いた。

「当然の事実なのだけれど、王太后さまに仕えてる方は皆さん貴族なのよ。敬語を使われるなんておかしいでしょ?」

 

「うーん。個人的な心象としては敬語でもおかしくないけどね。フェリシアからしたら変に思うよね」

 

『はぁ? 別に変じゃねぇだろ。ニンゲンが精霊を敬ってて、敬ってる精霊が愛し子を大事にしてたら、大事に思って敬語になっても変じゃねぇだろ』

 

 そしてこの口の悪い風精。

 プティと言うらしい。

 

『あ、あの姉ちゃん、足長~。パンツ見えそうじゃね?』

 ふらふらといなくなってしまった。

 

 何しに来たの??

 

「ねえ!だれかそろそろ説明してくれない? ラウラリーエはどうしたの? それに今日は平日だからナウシーさんは治療院で仕事でしょ? どうしてここいるの?」

 

 フェリシアはええーと、と苦笑いし、フォーレとセリスさんは競ってパンケーキを食べてる。

 

 今日の待ち合わせはいつもの高級茶屋の前にしてたんだけど、急遽変更になって現地集合になり、しかも王太后様の馬車で来て、降りてきた中にラウラリーエはいないし、詳しい話は後で話すからってとりあえず店に突っ込まれたのよ?

 仕方なさそうにナウシーさんが口を開いた。

 

「私が聞いた話ですと、昨夜ラウラちゃんとフェリちゃんケンカになったのですって。それでテラニード王国へ遠征に行くまでの間は、シェラロッテちゃんと同席しないことにしたらしいの。それで今日は私とセリスちゃんが来たのよ」

 

 へええ。二人はラウラリーエの代わりって訳ね。って最初から分かってるわよ!

 

「同席しないって、どうして? 今までずっとフェリフェリフェリフェリ言ってたのに。それにケンカなんて珍しいね?」

 

 フェリシアをのぞき込むと、悲しそうな顔をさせちゃった。

 わたしの質問にはセリスさんが答えてくれた。

「ケンカの原因は昨日のシェラロッテとのハグ」

 

「ハグ!?」

 

 たしかに昨日めちゃくちゃラウラリーエいらいらしてたからなー。

 それでフェリシアとケンカになったの?

 

「でもさ、ラウラリーエはフェリシアの護衛だって自認してたじゃない? あれくらいでケンカして役割放棄するなんて、散々守る守るって――――」

 

 くいくいと袖を引かれた。

「それ以上言わないで」

 むっと可愛い顔で睨まれた。

 

 口をつぐんだところに、女の尻を追いかけて飛んでいったプティが戻ってきた。さらりと爆弾を投下する。

『あの馬鹿、昨日怒りにまかせてフェリさまの両腕握りつぶしたんだよなー』

 

「は?」

 なんて言ったの? 聞き間違い?

 

『だから、握りつぶしたんだよ。ナウシー夕飯食べてたのに、手首がぐしゃぐしゃになってフォーク落っことしたんだぞ』

「止めてくださいよ~、プティちゃん」

 

 なんで恥ずかしがるの、ナウシーさん・・・。

 

『なんでだ? ほんと人騒がせだぜ。敵襲でもあったかって急いで駆けつけてみれば、ラウラはめそめそ泣いてるし。俺が駆けつけてる間にナウシーは王太后サマに連絡入れてくれたんだろ? フェリさまに何かあれば一報入れることになってるからな』

 

 その後を引き継いだのはセリスさんだ。

「大変だった」

 疲れをにじませる一言にすべてが凝縮されてるわ・・・。両肩の丸まり具合といい、悲壮感ある!

「フェリの家の周囲を確認して異常がないかを調べ、王太后殿下から事情聴取するから二人を連れてこいって言われて、あげく痴話げんか。 聞かされるこっちの身にもなって欲しい」

 

「ご・・・ごめんなさい」

 フェリシアが小さくなってる。

 

「昨日一番喜んでたのはジーナ様。フォーレさまと一緒にアイスを食べながらご入浴なさってご満悦だった」

「アイス美味しかったも!!」

 元気いっぱいにフォーレがフォーク振り回してる。

 アイス食べながら入浴とかずるい! ぜったい美味しいヤツじゃん。

 

「私も同席したのだけれど、話し合った結果、ラウラちゃんがしばらくシェラロッテちゃんと顔を合わせないって言ったのよ~。ジーナ様曰く、人間になりたてのラウラちゃんは感情と肉体のコントロールがまだ苦手なのですって。それでシェラロッテちゃんと顔を合わせてまた感情任せになって、フェリを傷つけるくらいなら会わないって」

 

「私も悪かったの。早く痛いって言えば良かったのに、意地張っちゃって・・・。契約してからどんどん力が強くなるから制御が難しいってラウから聞いていたのに。本当にラウには申し訳ないことをしたわ」

 

 え? 手首潰されたフェリシアがそんな申し訳なさそうな顔するの?!

 

「そんな暴力にさらされてラウラリーエのこと怖くないの?」

 もし友だちの彼氏が暴力的な男だったらすぐに別れろとみんなで説得するけどな。どうしてここのメンツはそう言わないの?

 

「怖くないわ。ほんとにあれは事故みたいなものだったし」

 

「大丈夫なの?」

「ええ」

 フェリシアはいたって平気そうで、怯えた様子もない。大丈夫なの??

 

「それなら良いんだけど。何かあったら言ってね? 愚痴でも何でも聞くからね?」

 ありがとう、と微笑むフェリシアはやっぱり可愛い。

 

 んん? ということは?

 ぱーーーっと脳内に啓示がもたらされた。

 しばらくは邪魔者なしでフェリシアと過ごせるって事!!?

 やったわ! めちゃくちゃハッピーデーじゃん!

 脳内でお祭り騒ぎになっていると、半眼でセリスさんからフォークを突きつけられた。

 

「今日はフェリとフォーレさまの護衛で付いてきてるけど、ラウラ様の代わりでもあるから。血を飲むときはハグはなし。血はカップから飲んで」

 

「はあ? なんでそうなるの? 昨日フェリシアが良いって言ったのよ?」

 あの柔らかな温もり。花のような香り。フェリシアに包まれて、地上にも天国があると思ったくらいなのに。今日もそれを楽しみに授業を乗り切ったのに酷すぎる。

 

 いやだと言い張ってやる!

 意気込んだのに、フェリシアが本当に申し訳なさそうに謝罪してきた。

 

「一度は許可したのに、本当にごめんね。・・あのね、私から離れるのは嫌だってラウは言ってくれているのだけれど、それを曲げてまでシェラと会わないって決断したでしょう? ラウが我慢しているのに、私だけ何もしないって訳にいかないわ。ラウの誠意に応えたいから、しばらくはハグはしないことに決めたの。勝手にごめんね。それで私が約束をきちんと守れてるか監視と護衛を兼ねてセリスさんが来てくれてるのよ」

 

 

 なにそれーーー。

 がっかりと肩を落としてしまったけれど、潔癖なフェリシアが言い出しそうなことね。

 

 ラウラリーエの不在をラッキーチャンスと思ったけれど、そう簡単に排除できるとも思ってないし。

 それにフェリシアがラウラリーエのこと好きなのは見てて分かるしね。この状態でラウラリーエがいなくなったとしても、すぐに私に乗り換えてくれるはずもない。

 長期戦は覚悟してますとも。

 

 わたしは綺麗に結い上げられたフェリシアの頭をよしよしと撫でた。

「え? どうしたの?」

「しゃくだけど、フェリシアが決めたとおりで良いわ。フェリシアの負担になりたくないしね」

 

 そう。勝負は今じゃない。学院生でいる限りは、こうしていつも置いて行かれてしまう。さっさと卒業してフェリシアと帯同できるくらいにならなくちゃ話にならない。

 

 身体的接触はできるだけ譲歩させていきたいけれど、ゆっくりでいい。ラウラリーエとの間に食い込んでやるんだから!

 

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