忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
シェラロッテと別れ、馬車は王太后さまの邸宅へと急いでくれる。
まもなく城壁の向こうに日が沈む。
二月の今は日が短いから、あっという間に夜になる。
貴族街は馬車はあちこち走ってるけど、徒歩の人はみかけない。
みんな一日の終わりを家族と過ごすべく、家にいるんだろう。
今日はナウシーさんもセリスさんも・・・あ、呼び捨てでって言われてたわ。セリスもフォーレも楽しそうだった。
パンケーキ美味しかったな。ラウもいたらもっと楽しかったのに。
フォーレが膝に乗ってはくれているけれど、半身が寒い。
王都西部にあったパンケーキ屋から王太后さまのお屋敷までは四半刻ほど。
あっという間に着くって分かってるのに。
「セリスちゃんは明日も護衛ですか?」
ナウシーさんの質問にセリスが首を縦に振ってる。
「はい。朝は隊で訓練ですが、午後はまた護衛できます」
「そうなのね~。私も朝は治療院ですが、午後はまた合流させていただきますね~」
「毎日お茶会、楽しい」
セリスの口角が少し上がってる。
隊とは王立カトレア隊のことで、王太后さまが王妃在任中に新設されたらしい。主に皇族女性の護衛を担当しているけれど、ここ十年ほどは忌み子の保護なども対応しているそう。隊員の中から、お屋敷の侍女さんたちを派遣して貰っているのですって。全員ではないっては聞いたけど。
「もちろん~! 私も治療院での仕事が嫌いなわけじゃないのよ。皆の怪我を癒やすのは大事なお役目ですもの。でも女の子同士のお茶会は特別よね~♡ 術士学院の放課後にみんなで寄り道して帰った頃を思い出すわ~」
ほくほくとしたナウシーさんに対して、セリスは少し悲しそう。
「口下手だからあんまり友だちできなかったのです。だから、今回は嬉しい」
一緒に楽しみましょう~!と意気込むナウシーさんにセリスもフォーレも喜んでる。
「ほら、フェリも一緒に」
セリスに手をつかまれる。
もちろん楽しい雰囲気は私も好ましい。
でも一方で、ふと以前シェラロッテからもらった手紙のことが思い浮かんだ。
たしかにこんなことが日常なら、私とは釣り合わないわね。
あの手紙が改竄されていてもいなくても、近い未来に結局は道は違えていたような気がする。
将来のことを漠然としか捉えてなかったけれど、王都に住むのは苦手かも。
綺麗な服も、美しい宝石も、美味しい食べものも、どれも興味がないもの。
仔羊が産まれた。
蜂蜜が獲れた。
今年は小麦の作柄が良かった。
魔物討伐で町内の多くの人に肉が振る舞われた。
薪が足りた。
冬の餓死者が出なかった。
そういったことが私は嬉しくて、故郷を追われたくせに故郷が懐かしくて、やっぱり恋しい。
町の皆は元気でやってるかしら。仔羊も仔牛も良く産まれて、幸せにやってるかしら。
思い出すのも苦しかったけれど、最近やっとあの事件と町のことを分けて思い返せるようになってきた。
暮らすなら田舎がいい。いろいろ終わったらムームのところに身を寄せようかしら。
それなら応急処置しかしてない蝶番を直さないといけないわね。
フォーレが壊したときのことを思い返して、思い出し笑いをしそうになってこらえた。
王太后さまのお屋敷に着くと、寒いのに馬車回までラウが出迎えにきてくれていたの。
セリスが私の手を取って下ろしてくれる。フォーレは自分でジャンプして飛び降りてしまったわ。
「お帰りなさい」
ふわっと力のこもらない抱擁。もっと力一杯が良いけれど、それでもいいの。
掛けていたピースがやっと足りた気がする。
温かくてやわらかい彼女からは甘やかな良い匂いがするし、このままずっとこうされていたい。
「ほら、フェリシア様。行きましょう」
苦笑いしたセリスに腕をそっと撫でられた。ため口契約はお屋敷や高位の身分の方がいらっしゃらない場合のみ適用なの。たとえ出迎えに出てくれているのが侍女さんたちばかりだとしても、私と友だち口調で話していたら、後で叱責されてしまうのですって。
「ええ。・・・ラウ、ただいま」
ラウに抱擁を解くように視線を向けると、眉尻を下げて微笑まれちゃった。
「腕が離れたくないっていってる。どうしよう、フェリ」
う”ーー。かわいい。すき。
半日離れてただけなのに。
こんなに離れがたく思うなんて。
恥ずかしいから背伸びしてラウの耳元に顔を寄せる。
「それは私もだから。あとでいっぱいぎゅってして?」
いつまでもここにいたら出迎えてくれた侍女さんたちも屋内に戻れないわ。
「もちろん。あ! こうしよ?」
私はひょいっと抱き上げられ、いつものお姫様抱っこ。
・・好きだけど。好きだけどね。大分恥ずかしいわ。
「これなら動けるし、くっついてられるでしょ?」
「そうだけど・・・。恥ずかしいから下ろして」
「だーめ♡」
侍女さんたちのまなざしが生温かいわ・・・。
私はそのまま邸内に連れ込まれた。
実は昨夜の聴取後、王太后さまの命によりしばらくこのお屋敷で起居することになったの。
今回は運良く私の両手首だったけど、もしかしたら町に大穴が空いたかも知れないし、力の加減ができるまでは危なっかしくて放っておけないのだそう。
大丈夫と思うけれど、断言はできないしね。
「フェ~リ♡」
ずーっとすりすりしてくるわね。
膝抱っこのまま夕飯食べるとか言い出さないわよね?
言い出さないよね!?
夕食はもちろん下ろしてもらったわ。膝抱っこでごはんとか・・・//// フォーレじゃないんだから。
今日はもちろん何もなかったとナウシーさんとセリスに証言して貰って、夕食もお風呂も終わって、いざベッドタイム。
昨日はキスしかしなかったから、実はすごくむずむずしてる。
すごくしたくて、触って欲しくて。
フォーレは今日もジーナ様が預かってくれてる。また三人でお風呂入ってアイスでも食べてるのかも。
お風呂でも半端に触られて、もうバスタオルの下の胸の先はつんってなってるし、さらにその下も大変なことになってる。
「ラウ・・・」
甘えた声でキスをねだる。
「うん」
もつれ合うようにベッドに乗ると、ラウが結界ベッドを敷いて、結界を張ってくれた。濡れた体も瞬時に乾かしてくれる。
すごく便利だけど、濡れた髪に触れたままキスしたかった。
ラウを押し倒して深く口づける。
貴方のことは怖がってない。私がこんなに欲しがってるって証明したい。
ラウのぬるぬるとした舌が気持ち良くて、追いかけてこすり合わせて、どこが一番ふれあえるかずっと探してる。
もっと大人になれたら、ラウの咥内にもっと入れるようになるのかしら?
まだ子どもだから舌の長さが短いのかも知れない。それなら早く大人になりたい。
ラウともっと隙間なく密着したいから。
「はあ。・・・んふっ・・・」
お互い吐息が漏れて、ラウの舌が私の咥内に押し入ってきた。
ああ。唾液があふれ出して止らない。
ラウに流し込み、白くやわらかなその喉元に指を這わせる。しっとりと熱を持った肌がこくりと嚥下するのを感じ取れた。
私のものがラウの体内に取り込まれること自体はなんら思うところはない。欲しいのね、とただ思う。
けれど。
飲み込んでから二瞬後にはラウの湿度が増す。
私に対する執着というか欲望のようなものがにじみ出て、私をたまらなくさせる。
私を全部しゃぶり尽くしたいってラウの瞳も体も全部がそう言ってて。
そのくせ今日は
「大丈夫だから触って。痛いときは痛いってちゃんと言うから」
「でも・・・」
今日、私がシェラロッテと面会している間は侍女さんたちと力の加減の訓練をしていたそう。
おてて繋いだりとか・・・。ずるい。
私はキスを止めて、ラウにぴったりとくっついた。
首筋のくぼみにすっぽりと顎を嵌める。耳の裏の匂いもかげる良いポジション。
温かくてこれだけでも多幸感にあふれる。
あふれるけど・・・。
ラウが悪いと思うの。
毎日あーいうことするから。
「ラウはもうキスだけで満足できるようになったの?」
「どうしてそんな意地悪言うの?」
泣きそうな声が降ってくる。
意地悪はどっちよ。
「私だって触ってって言ってるのに!」
「でも・・・」
「でもとか、ききたくっ・・くしょん」
裸でいちゃいちゃしてたから体冷えちゃった。
慌ててラウが毛布を引き寄せてくれる。
今日してくれないとか、困るの。明日もっとむずむずするって事でしょう?
本当にどうしたら良いの?
「ラウ、触ってよ」
うーーーー、としばらくうなってから「どこを?」なんて聞いてくる。
分かってるくせに! 言えるわけないじゃない!
私は自分なりに相当がんばった。
「おむねと、し…した…」
「したって?」
意地悪すぎない?!?!
ラウのばか!
湿度をもったラウの声音が低く沈んだ。
「・・・ごめんね。まだ怖いの。傷つけたらどうしようって」
「私はラウにだったら何されてもいいわ。でも、ラウが傷ついちゃうものね。今日訓練したんじゃなかったの?」
「ええ。感情的にならずに、相手をよく見たらいいってアドバイスされたわ。あと一歩引いて俯瞰した気持ちで見るといいって」
「そうなのね」
「うん。私もよく見るように気をつけるけど、フェリもいつもより声出してくれる? 気持ちいいのか痛いのか判断したいから」
声出すの? 普段だってあんまり我慢できてなくて、自分でも呆れるほど出てるのに?
私は、うん、て言わないとラウが触ってくれない気がしてしぶしぶ了承したの。
でも、それもよくなかったの。
「フェリ、おむねの先っぽ弄られるの好きだものね」
優しく優しくなでられる。
いつもみたいに齧って、指先で弾かれて、引っ張られたりしない。
生殺しみたいな愛撫がはじまった。
「気持ちいい?」
「…うん」
気持ちよくないわけじゃない。でももっと気持ちよくなれるのを体が分かってるから満たされない。
「…もっと強くして?」
「これくらい?」
「んっ、もっと」
「もっと?」
「うん。もっと」
「これぐらい?」
「や、もっと!」
願えば願うほど私が変態みたいで、自尊心が抉られる。
いつもなら何にも考えられないくらいめちゃくちゃにされるのに。
なりたい自分との乖離が酷くて、体は熱いのに気持ちが冷えてきちゃった。
理性を手放すには快感が遠すぎて・・・。どうしたらいいの?
「フェリ? ・・・気持ちいい?」
さわさわと優しく撫でられる。
ラウの瞳はいつもの情欲を抑えて、私の顔色ばかりうかがってる。
気持ちがすれ違ってる。
私がラウを傷つけたんだから、私から歩み寄るべきなのに。
羞恥心や矜持が、心も口も重くさせる。
結婚したからと言って、女性同士でこんなことをやる意味はほんとはなくて。
ラウの栄養補給の時間なんだから、気持ちよくなる必要は無いのよね。ラウが気持ち良くなってるところを舐めたいって言ってるだけなんだから。
性欲なんていらないのにな。食欲、睡眠欲、やるべき事さえできればそれでいいのに。
「うん。気持ちいい・・・よ」
これを機会に夜の生活も改めたら良いかもしれない。
みっともない声を上げずに済むし、してほしくてうずうずしてるなんて恥ずべき事よ。
こんな事に意識を使うより、訓練に没頭した方が良い。
「したもさわるね。これくらい?」
ラウの指が優しく伸びてくる。
優しく羽のようにこねられる。
「…うん」
ずっとされてれば、いつかいけるかも知れない。
いえ・・・、むりね。
ラウの手が止った。
「気持ち良くない?」
「いいえ。気持ちいいよ?」
気持ちいいか、そうでないかの2択で言えば気持ちはいいから。嘘は言ってない。
「でもフェリ、気持ちいいって顔してない。全然濡れないし」
「そんなこと無いと思うけど?」
多少は濡れてるでしょ?
「いっつももっとびしゃびしゃだもの」
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それ、私にどうしろって言うの?
「あのね、思ったんだけれど、別に私を気持ち良くしなくても良くない? ラウは好きなところ舐めれば良いし」
「!!!!」
ラウはこの世の終わりみたいな顔で、数秒動きを止めた。