※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第72話 グラハスの森2

 3箇所に祝福を与えたけれど、グラハスの森は広く、残り3分の1ほど。

 あと2回祝福すれば完了しそう。

 日は森の向こうに隠れて、灰色の空は暗く薄気味の悪いものになってきている。

 

「やはりここで切り上げましょう。カンテラでは足元が悪すぎます」

 

 みんなは光術で明るい中歩いているけれど、私だけ暗いままなのよね。

 おかげで転びかけちゃったからレイハスさんが心配してくれてる。

 

 足元はよく見えなくても、前を行くレイハスさんとフォーレがいるから、その後をついて歩けばいい。

 それほど高負荷な作業でもないし。

「大丈夫です。このまま祝福してしまいましょう」

 

 

 

 歩を進めると木々の向こうに、なにか巨大なものが見えてきた。

 巨大な魔物だったらラウが注意してくるだろうし、なんだろう? 巨大な石?

 

 近づいてみると、中央からばっきりと折れた巨木だった。

 夕闇に沈むその姿は昏く、そこから闇が立ち上ってくるよう。それにこの森に入ってから最も悪意に満ちた場所ね。

 折れた樹木の断面はとげとげしく、泣いて悲鳴を上げているみたいに見える。

 

 こんな立派な樹だもの。

 この森を守護する精霊の拠り所だったのでしょう。

 

 可哀想に。

 ラウもあのとき嫌だって泣いていた。

 きっとこの樹の精霊も嫌がったと思うの。

 

「本当に気に食わない気配ね。ここの森の精霊守は魔物に変えられた後、北の方へ連れて行かれたらしいわ」

「ここの浄化終わったら追う?」

 セリスの質問に、私も今後についていろんな事が脳内を巡る。

 

 浄化をおろそかにはできないから、追いかけるなら終わってから。

 あの男の子の傍には、死に神のような男がいた。

 ちょっと怖いけど、今のラウならどうにかなるかしら?

 一年前のあの日のことをラウに聞いたことがあるけど、生成されたばかりの体で、どうにか私を担いで逃げたって言ってた。

 魔獣にされて連れて行かれた精霊も、私たちとは敵対してくるわよね。

 

「無理よ。この樹に棲み着いていた精霊は1ヶ月は前に攫われてる。到底追いつけないわ」

「そうですか・・・」

 しょんぼりとしたセリスの肩に、レイハスさんがなぐさめるように手を置いた。

 

「精霊が連れ攫われる事件は他にもいくつか報告を聞いているわ。私たちの今回の遠征の趣旨とは違うし、それに向こうの戦力も分からない。ラウラ様がお強いと仰っても、忌み子相手では分が悪いと思う。

 もし罠を張られていて、ラウラ様、フェリシア様、フォーレ様に何かあっては、ガカーヤカム・ダンジョンでの浄化に滞りが起きてしまう。私たちはこのまま進むのが良いと思うわ。精霊を害する奴らに憤る気持ちは分かるわよ? 今回は王太后様へのご報告で留めておきましょう」

 

「はい。レイハスさん」

 

 セリスが納得したところで、私は浄化の準備を始めた。

 瘴気に満ちた大地に血を垂らし、血術と氣を体内に巡らせる。

 今日4回目だけど、浄化作業はそれほど苦ではない。血力も半分は残っているし、汚染の酷い巨木は、強めに浄化した方がよさそうね。

 

 私は巨木を重点的に浄化するイメージを乗せて、夕闇の空にストライクショットを放った。

 打ち上げた浄化の力がドーム状に広がっていくのを見ていると、突然両足の甲に痛みが走った。

 

「!!!?」

 

 倒れ込みそうになったところで、ラウが抱きかかえてくれた。

「フェリ!!」

 

 自分で革靴をみても何にも無い。

 激痛と悪寒ーーーこれは、悪意?

 

 

 シネヨ・・・キエロ・・ミンナホロベ・・・・オナジメニアワセテヤル・・・

 

 

「レイハス! フェリの靴を脱がせて!」

「はい!」

 

 両足はどす黒い紫色に変わり、靴底にはナイフが刺さったみたいな穴が空いていた。

 

 1ヶ月以上前に立ち去ったって言ってたけど、まだ近くにいる?

 私は再度手のひらを傷つけて結界を張った。半円形の結界で悪意や瘴気は通さない。もちろん精霊術も。

 

 

 立て続けての攻撃を警戒するけど、とくに何も起きない。

 さらに血を媒介にしてあたり一体の探索をしてみたけれど、忌み子の結界や悪意は見つけられなかった。

 

 

「ラウ、この付近に忌み子の気配はないわ。精霊術士の気配はある?」

 

「ないわ。いないと断言できる。それより足は大丈夫なの!?」

 

「大丈夫よ。心配してくれてありがとう」

 これくらいの悪意ならどうってことはないわね。

 ヨルロン・ダンジョンの方が肝が冷えたわ。

 

 一時は両足首まで黒く染まったけれど、体内を巡らせる血力を足に意識すれば、徐々に本来の色を取り戻していけそう。

 

 

 でもこのまま消してしまうのは、もったいない気がする。

 彼がどうして忌み子になってしまったのか。

 

 ・・・シネ・・・・・・クルシメ

 

 彼の悪意からは思念が読み取れる。共感性で読み取れないかしら?

 両足の悪意に浄化ではなく、意識を寄り添わせる。

 

 

 真っ先に脳裏に映ったのは、胸が潰れそうな後悔と喪失。

 そして喧騒と暴力、悲鳴。

 

 

 私はもう少し深く意識を潜らせた。

 

 

  

 

 

 

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