※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第79話 カンラータにて水上戦

 カンラータはセイラース川に面して発展した町で、セイラース川を挟んだ対岸側はテラニード王国になる。

 川岸には関所が設けられ、ロンダルディア王国側で出国手続きをし、橋を渡ってテラニード王国側で入国手続きをする。

 

 

 今日は朝から弱い雨が降っていて、外套がしっとりと濡れる。

 

 私はこれ幸いと外套のフードを深く被り直した。

 

 朝食時はばたばたして出てきたから、あんまり考える余裕もなかったけど、出国の手続き待ちで手持ち無沙汰になると今朝のことが甦る。

 

 

 ラウの手つきや股の和毛にかかる吐息の甘さまで。

 股の間からトロりと濡れた感触がして、体がぞくりと震える。

 

 ショーツはラウ特製だから染み出してくることはないけど…。

 

 あーもー!

 朝からなんてやらなければよかった…////

 

 

 昨夜はフォーレをセリスとレイハスさんに預けて、数日ぶりの夜ではあったけれど、ラウの素肌がぽかぽかで気持ち良くて、盛り上がる前に寝てしまったの。

 

 気づいたら朝で、ラウもすやすやと眠っていて。

 申し訳なさと、えいよう足りてるかなって(そういうのではなくてお菓子的とは聞いたけど)心配になってキスしたら、盛り上がって…//////

 

 

 …そして時間が足りなかったの!

 夜の時はラウが満足するまでするから、私の方も疲労困憊でこれ以上ムリ!!な状態で終わるんだけど、朝からだったから時間足りなくて。

 

 お互いし足りない(とくにラウがね!)まま宿をでることになったの。

 

 ラウにあそこを舐められてイキたいなんて、ずっと考えちゃって。

 

 ちがうちがう!

 朝からこんなこと考えちゃダメ!

 

 暇だからこんなこと考えちゃうのよね。

 早く関所抜けて、テラニード王国に抜けられればいいのに。

 

 ふと私の肩を抱いていたラウが顔を近づけてきた。

 耳に唇くっついてるわよ!

 

「今日の夜もフォーレは引き取ってもらおうね♡♡♡」

 湿った息が耳孔を濡らす。

 今夜って言われてるのに、体が準備し始める。

 

 もーー!

 

「朝からやめて!!やっぱり少し離れて!!」

 

 でれでれしてるラウを突き放してると、ぱっと顔を上げられた。

 こんなことで怒ったり不機嫌になるラウじゃない。

 遠くを見つめて、何かを探ってるみたい。

 

 はっとした様子に、私も緊張する。

「どうしたの?」

 

「魔獣が来るわ。もうすぐよ」

 魔獣はその辺の獣とは訳が違う。忌み子の血を与えられた獣のこと。

 この辺の地域、忌み子の被害多くない?

 

 ラウの視線は川の方を向いてる。

 目の前は煉瓦で積み上げられた城壁があるから、どんな風かは分からない。

 私も血術で探ろうとしたけど、ラウに止められた。

 

「そんなことしなくてもすぐ現れるわ。レイハス、この城壁飛び越えちゃダメなの?」

 

「緊急事態ですし、文句は言わせません!」

「良いわね!同行してもらった甲斐があるわ。フォーレはセリスにくっついてなさい!」

 

 私はラウ抱っこ(再)されると、3メートルはある城壁の上までジャンプされた。

 

 だから、早いの!びっくりするの!

 煽られてフードが外れちゃったけど、おかげ視界が開けた。

 

 川上から巨大な影が川面を移動するのが見える。

 橋桁にぶつかり、橋が大きく揺れた。

 悲鳴とともに通行人や荷馬車が横転し、小さな子が川に投げ出された!

 

「セリス!」

 名前を呼んだだけで分かってくれて、飛翔術で救助に向かってくれた。

 

「フェリ行くわよ」

 

 ラウは私を抱っこしたまま宙を踊る。

 石製の欄干に降り立ったけど、急に空から飛び降りてきたみたいになって、注目を集めてるわね。気にしてる場合じゃないけど。

 

「アイスウォール!」

 

 川面が円形に凍りついていく。

 この円柱の中に魔獣を閉じ込めたのね。

 

「下ろすけど、わたしから離れないでね。ちゃんと掴んでて」

 抱っこはやめてくれたけど、左手は背中に回ってるし、離れようがないでしょう?

 一応ラウの体に腕を回して掴まるポーズをする。

 

「ウィップ」

 右手に水でできた鞭を握ると、大きく腕を振りかぶる。ラウにしてはあまり見たことのない挙動で、全身を使って鞭を振り下ろすから、重心が動いて抱きつくだけなのにドギマギしたわ。

 水面を見れば、円の中央に先端を沈み込んでいく。

 

 しばらくすると、巨大な黒い塊が縄状の水にぐるぐる巻きにされて水面に浮かび上がってきた。

 鞭だけど、釣りね。

 

「お、おも!!」

 アイスウォールがあるからその外へは出ていけないけど、生簀で泳ぐお魚よろしく激しく暴れ回ってる。

 

 これを釣り上げるつもりなの?

 橋の耐久値大丈夫かしら?

 

 思ってるそばからラウの足元の欄干が重量に耐えきれず、ぼろっと崩れた。

 危うく川に落ちそうになったけど、私たちの周囲を覆うように崩れた煉瓦が集まってくる。不足分も何処からか集まってきて補強された。

 

「フォーレね。土精で足場作ってくれたわ」

 

 よし!とばかりに腕に力を込めるラウの服を慌てて引っ張った。

 

「私たちの足場は大丈夫でも橋に打ち上げたら、耐えきれずに崩れるんじゃない?」

 

 通行人はレイハスさんが避難誘導してくれてるけど、まだ逃げきれてない人も多い。

 

「岸に打ち上げられない?」

「重すぎてとてもじゃないけど無理よ」

 

 国境を繋ぐ橋の両岸は街を守る城壁が聳え、岸に上げるには城壁を破壊することになる。さらに向こう側に人がいた場合、死傷者がでる。

 

 誰もいないところに打ち上げられたらいいのだけれど。

 

 

 生簀で暴れてる魔獣がアイスウォールを壊そうと体当たりしてる。

 アイスウォールは破られないにしても、陸に打ち上げてもらわないと浄化は難しい。

 フォーレの魔狼の時も口をこじ開けて飲ませたんだし、膠着状態。

 

「緊急事態だから」

 右手親指に嵌めた隠しナイフで指を切り付けると、ラウの口に含んだ。

「ラウラリーエの体力、筋力、地力、精霊力、幸運、あらゆる能力の向上をもたらさん」

 

 馴染みのある温かな舌で舐め取られ、ゆっくりと嚥下される。

 

「ラウラ! まだ他に来るも!」

 セリスに抱っこされたフォーレの声が中空から降り注ぎ、慌てて視線を戻すも、大きな衝撃音とともに橋が大きく揺れた。

 

 ラウとともに投げ出されたはずだけど、あちこちぐるぐる回されてる間に、関所の屋根の上にいたわ。

 朝ごはん軽くしておいてよかった・・・。

 

「3匹か」

 ラウの視線を追うと、アイスウォールは破損して中はもぬけの殻。大きな魚影が3つ橋に体当たりするところだった。

 

「もうもたないも!!」

 フォーレの悲鳴に私はとっさに血術で結界を張った。ラウも橋に沿ってアイスウォールを生成したみたい。

 

 どおおおおおおん。

 

 低い地響きが聞こえ、川の水が津波となって橋を飲み込んだ。

 避難は完了していて、橋の上には誰もいないけど、橋の入り口にある関所内へと川の水が押し入ってる。波が引いた時に川へ攫われないように入り口に格子状の結界を追加で急いで張った。

 ロンダルディア側だけじゃなくて、テラニード側も。

 

 今回は守れたけど、何度か受けたら衝撃に橋は耐えきれないのではないかしら。

 崩れても土精使いがいれば再建は早そうだけれど、どのみち魔獣を逃す気はない。魔獣は瘴気を発生させるから。

 

 

「レイハス!」

 ラウが急に関所の屋根から飛び降りて(だから!びっくりするのよ!!)、城壁の上へ避難していたレイハスさんに私は受け渡された。

 

「今から3匹岸に上げるから、打ち上がったらフェリ連れて行ってくれる?」

「わかりました」

 

 レイハスさんの返事を聞くや否や、ラウはセイラース川に飛び込んだ。元々水精だし、大丈夫よね?

 

 心配になって川を覗き込んでいると、一軒家ほどの黒い塊が空を吹き飛んでいった。水分をまき散らしながら。

 お陰であたりが川臭い。

 

「盛大に飛びましたね。あれなら町を通り越して北部の草地に着地してそうです。急ぎましょう」

 

 ラウよりも筋肉質なレイハスさんに抱っこされたまま城壁の上を走り抜ける。

 

 走ってる間にも、二体目、三体目が宙を飛んでいく。

 急がないと逃げられるちゃうかも、と心配しながら土煙の上がる草原へと急行したけど、魔獣は例のウィップでぐるぐる巻きにされて、地面をびたんびたんしてたわ。

 

「浄化します!」

 下ろしての意だったのだけれど、レイハスさんは私を抱っこしたまま元気に「はい!」と返事をしてくる。

 

「あの…。下ろして欲しいのですが」

 

「レイハス! 下ろしちゃダメよ!」

 ラウが追いついちゃった。

 

 どうして?

 降りて血術使いたいのだけれど?

 

「グラハスの森では明確に愛し子を狙って攻撃されたわ。今回だって何があるか分からない。わたしが受け取るまで抱えてて」

 

「わかりました!」

「・・・・・・・・・」

 引き続きレイハスさんに抱っこされることになったわ。

 

 ラウは魚状の魔獣に近寄るとアイスランス(もとい杭)をぶっ刺し、まるで焚き火で川魚を焼くようなスタイルで地面に突き立てていく。焼く時とは逆さまで頭が上、尻尾が下だけどね。

 

「フェリ! 準備できたわ!」

 会心の笑みを浮かべてる。・・・・けど絵面が良くないわね。

 さっさと浄化しましょう。

 ご丁寧に私の手が届くようにウォーターマット製の階段まで付けてくれてるし。

 

「3体も大丈夫なのですか?」

 レイハスさんが心配してくれるけれど、大丈夫だと思うわ。

 

「この3体、あんまり悪意に染まってないんですよね。数日以内に変質させられたのかしら?」

「わたしも同様の見解よ。それにフォーレの時やグラハスの森と違って精霊に血を与えたんじゃなくて、元々いた魚に血を与えたことも力が弱い一因じゃないかしら? 水の中ではやっかいだったけれど、こうして身動きできなくなってるし。大丈夫でしょ?」

 

「ええ」

 

 ラウが串刺しにしてるから、ぼたぼたと地面に瘴気が落っこちてる。

 

「レイハス!」

 

 ラウが上機嫌で両手を差し出してくる。

 受け渡される私・・・・。

 なんなの?

 荷物かなんかなの?

 

「ラウ、言っておくけど、地面に下ろして貰った方が血術の威力は上がるからね?」

 術は姿勢から。

 氣は丹田を中心に体内を巡らせる。血術はもう少し上。正しい姿勢だと巡らせやすいの。

 

「わかってるわ。今回はできるでしょ?」

「やってみるけど」

 

 私はラウに抱っこされたまま階段を上って、魔獣? 魔魚? に対面した。一匹がラウの3倍はあるし、目は血走ってる上に、どこ見てるか分からなくてすごく怖い!

 

 魔魚からはグラハスの森の時に感じたイーダさんの悪意のようなものは感じられない。

 フォーレが摩狼の時も声が聞こえたけど、精霊じゃないからかしらね。

 

 私は手を傷つけると、魚の口に血を滴らせた。

 魔魚の体内から悪意が浄化されるイメージを持つ。

「このものから悪意が取り払われ、元の姿に戻りますように」

 

 数滴血を与えると、魔魚の体から黒煙が立ち上り、みるみる縮んでいく。

 後に残ったのは、川魚にしては大きな魚。

 

「パイクですね」

 レイハスさんは物知りね。

「捨てるのは忍びないですが、悪意に一度染まったものを食べるのも勇気が要りますね」

 そうね。私もそう思う。

 

 続いて2体目は鯉で、最後の3体目に至ってはピロークラブと呼ばれる枕サイズの蟹。

 魔魚だったでしょ? どうして浄化したら蟹になるの?

 納得いかなかったけれど、ラウもレイハスも納得いかない顔をしてたから、溜飲を下げたわ。

 

 最後に魔魚の血を吸った大地を浄化して、私はふとラウを見上げた。

「ねえ、セイラース川も浄化した方が良いのではないの?」

 

 ラウは思案顔。

「うーーん。結構な川下まで流れて行ってるとは思うけど、一応しておく?勝手に浄化されることはないから、フェリが川上で浄化しておけば、 ゆくゆく勝手に綺麗になるかも知れないし」

「瘴気に侵されるって分かっているのに、何も行動しないのも気が引けるわ。やれるだけやりましょう」

 

「この子たちはどうします? 川にリリースしますか?」

 この子たちを食べたい気持ちもないし、それが良いと思う。

 

 

「この子たちじゃないけど、お昼蟹食べたい」

「いいわね」

「賛成です」

 

 

 焼き蟹とゆで蟹、どっちがいいかしら?

 蟹は久しぶり。

 久しぶりに食欲がわいた。

 

 

 

 

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