忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
「フェリシア様、この学園にいた協力者を捕らえて参りました。ガーネルド家の三男ですね」
ガーネルド家と言われてもロンダルディア王国の貴族だって知らないのに、隣国の貴族なんて知りようもない。
わたしはソファを水術で生成し、フェリを隣に座らせて、三男坊に相対してる。
三男坊は縄でぐるぐる巻きにされて正座させられてるわ。マグはわたしたちと三男坊の間にすっと立ったまま。何かあれば即時に対応できる位置。
「ガーネルドね。ほかにも何家か協力してるところがあったでしょう? 決着が付いたら事情を聴取の上、それぞれ恩賞か処罰か対応してもらえる?」
「御意」
「聴取はあとで誰か対応させるけど、今何か言いたいことはあるかしら?」
フェリが三男坊に尋ねると、マグが轡を外した。
「オーウェル様は?」
三男坊は意外にもあの子どもを支持してるみたいね。主としては悪くなかったのかも?
フェリは視線を部屋の中央に鎮座してる黒い結界に向けた。マグが視界を遮断したからね。全ての色を弾いて黒くしてる。
「あの中よ」
「オーウェル様をどうするつもりです? あなたは女神からオーウェル様に与えられた供物だと伺っている。こんなことをして無事に済むと思っているのか? 彼を怒らせると大変なことになりますよ?」
フェリはまたわたしの知らない顔をしてる。
酒場の隅で疲れた顔でお酒でも飲んでる人、歓楽街の裏通りで座り込んでる人、そんな顔。
「そんな脅し・・・・。酷いことをされたから協力しているの?」
三男坊は恥じることもないといった様子で、胸を逸らして答えた。
「オーウェル様は短気だし気性が荒く敵対者には容赦はしないが、我が家に伝わる手記には、王国への貢献はもちろんのこと、我が国の根幹たる愛し子への保護活動など、国の発展に寄与していると記載がある。もちろんテラニード史実にもだ。明確な功績がある。オーウェル様を失うことは国家の損失と考えるが、供物たるあなたはどうお考えか?」
「口の聞き方に気をつけろ!」
目にも止まらぬ速さでマグが三男坊の頭を床に叩きつけた。
「いいのよ。マグ、離してあげて」
「しかし・・・・。御前にお連れするべきではございませんでした。平にご容赦を」
「いいの。離してあげて」
わたしの腕はフェリの腰に回して、お腹に置いてる。
ぎゅ、と手を握られたから、わたしも握り返した。加減はしたわよ。また砕いたらわたしが泣いちゃう。
「どうお考えか、と聞かれたら、こう答えるしかないわ」
暗い瞳だ。
憎悪が滲んでる。
「知ったことではないわ。
オーウェルの働きがなければ滅びてしまうなら、滅んでしまえばいい」
「なんて自分勝手な!」
「話はもういいわよね。マグ、丁重に扱って。貴重な証人だから」
「御意」
マグは男に再度轡を噛ませて肩にかついで結界から出ていった。
また二人きり。
フェリはこちらを見もせず、床に視線を落としたままぽつりと呟いた。
「幻滅した?」
憎悪の気炎は消え失せて、また不安で泣きそうになってる。
「何も聞いてないのに? 少なくても14年間フェリのことを見てきたわ。あんな男よりもフェリを信じてる」
「うん」
「だから聞かせて? 何が起こってるの? フェリはマグが帰還を待ってたっていう主なの?それにオーウェル、神って言ってなかった?」
順番に答えるわね、と前置きして、フェリはとつとつと語ってくれた。
「マグが帰還を待っていた主か、の問いは答えは ”はい” よ。私が彼らを精霊人にしたの。オーウェルのことは精霊教会の聖書には少しだけ記述があるんだけど、女神の夫よ。彼自身も神なの。彼の力は転移と時間を止めること。精霊術ではない彼の固有能力よ。オーウェルは先史時代からこの地の神で、女神はそこに訪れた放浪の神なの。二人の間には子どもができた。それがジーン」
ジーンって、フェリのこと呼んでた!!!
しかも供物って!!!
「そう。私の前世ね。前前前前前・・・だけど。オーウェルは固有能力の使用にあたって神力を消費するのだけれど、自然回復だととても遅いらしいの。それで私の血肉を代わりに――――」
食べてたの?
ふざけないでよ!
わたしだって血を飲むの遠慮してるのに!
「親だったんでしょう? とんだくそ野郎ね! 女神はどうして助けてくれなかったの?」
これはバンドラガルのお姉さま方から習った由緒正しいセリフである。
わたしの口が悪いわけではない。
「母さまは私を産んで10年ほどで他の界へ渡られてしまったの。じっとしていられない方だったから」
「オーウェルがそうしそうだって予測できそうなものじゃない? 何にも講じずにいなくなっちゃったの?」
フェリに聞いたって仕方なかったのに。
八つ当たり気味に聞いちゃった…。
「そのあたりのことは、考えたところで憶測の域をでないと思っていたの。こうなると分かっていて出ていったのか、ついふらっといなくなってしまったのか。前者だと悲しくなっちゃうから考えないようにしていたのだけれど、今回ヨルロン・ダンジョンで母さまの腕輪を受け取れたから、ついふらっと何も考えずに出て行ってしまったのね、と知れて嬉しいの!」
女神さま・・・・・・・・・。
ちゃんとして!
女神の不作為で長年苦しめられたって言うのに、フェリは嬉しそう。
生まれ変わっても、人格もそれほど変わらないのでは? ジーンて子もフェリと似たような性格だったのじゃないかしら?
「行った甲斐あったわね。心配だったけど、本当に良かったわ」
「ええ。神が作った被造物には支配権があるの。私はそれに逆らえなくて、ずっとずっと苦しかったんだけど、母さまの腕輪のお陰でようやくその軛から逃れられたわ!」
笑みを浮かべるフェリ。
フェリの喜びはわたしの喜びでもある。
「ガカーヤカム・ダンジョンの腕輪にはどんな効力あるのかしらね?」
フェリの動きがぴたりと止まった。
「聞いてないわ。どんな効力なのでしょう・・・」
「女神の腕輪だし、悪いことはないよね! 期待しよ!」
「そうね。母さまはこれ以上事態が悪化するようなことはなさらないと思うけど…」
「けど?」
「思いつきで行動するところがある方だから・・」
「わかった! 警戒しておこう!」
神相手になにが出来るかわからないけどね。
「あと、どうして急に昔のこと思い出したの? ガカーヤカム・ダンジョンの腕輪があれば思い出さずに済んだってリーが言ってたけど」
「オーウェルの所為よ。彼の支配下に入るには記憶の復旧が要件になるから」
「ん? でも、フェリはもうオーウェルに従わなくていいはずじゃなかったの?」
フェリはまたわたしの胸に頬をぐりぐりと寄せた。
「ラウはほんとに気がつくわね・・・。抗おうと思えば抗えたかも知れないわ。でも、オーウェルは私のことを知っているのに、私は彼のことが分からなかったし、起こっていることの事象も分からなかった。ヒントがあるなら受け入れるでしょ。何も分からないままラウを危険なままにしておけないもの」
イケジョすぎる…。
わたしの嫁カッコ良すぎるんですけど!!
「フェリ、大好き♡」
おでこにキスする。
足りないわね。
瞼と頬にも口付けを落とす。
「ありがと//////」
「ところでガカーヤカム・ダンジョンの管理者はフェリの知り合い?」
「妹よ」
食い気味の即答。
フェリの妹はもちろんハイエヴァーにいるはず。
「ジーンの?」
「ええ」
「すごいね!」
話では、その管理人さんが女神様に直訴してくれたって言ってた!
お姉さん思いの、しかも数千年越しの姉妹愛!
ん!? これは要注意なのでは?
「妹さん、ジーンさんのこと大好きだね?」
「そうね。自慢の妹。しかも管理者になってるなんて」
「会えるの楽しみだね?」
「ええ。とても」