忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
時刻は夜半。
ラウが明けた穴から夜空に星が瞬いてる。
室内から勝手にランプを拝借して灯してるけど、大穴が空いてることもあって寒い。
かといってラウの隣りに座るとふわふわで温かくて眠くなっちゃうの。
私は冬眠前の熊のように結界内をうろうろと歩いた。立ったままでも寝ちゃいそう。
眠い!
ほんとに眠い!
瞼を指で押さえても、白目のまま寝ちゃいそう。
ラウラが気を使って組み手でもしよっか?と提案してくれたけど、ずるべしゃ、てそのまま寝そうなの。
二徹は私の発展途上の体にはつらい。。
早くシスティナ来てぇ。
眠くて意識を失いかけた頃、がたん、とラウラが立ち上がった。
「きたわ」
壁の大穴から、緑髪の精霊人のヤーグと、ピンクゴールドの髪をハーフアップにした妹のシスティナが入ってきた。
相当急いでくれたようで髪は乱れてるし、息も上がって汗だく。
二人とも美人だから、汗に濡れて色気ましましに見えるわ。。
ヤーグは嵐の精霊で飛翔術で飛んでくるのだと思っていたのだけれど、走ってきたの?
システィナはラウラと私に即座に目を走らせると、私に向かって走ってきた。
「お姉さま!!」
お姉さま?? そんな風に呼ばれていたかしら? 考える間もなく、ぎゅううと抱きしめられる。
システィナ、だいぶお姉さんになったわね。最後に見た時は14歳でまだまだ大人になる、そんな時だった。それが今や20代半ばの女盛り。ラウラよりも肉感のある胸に包まれて窒息しそう。
「システィナ、苦しいわ」
「ごめんなさい!」
少しだけ離してくれたけれど、
「お会いしとうございました! この時をどれほど待ち望んだか!!」
溢れんばかりの神々しい笑み。
私もついつられて笑い返す。
「私もよ。貴方のおかげと聞いたわ。…その、ありがとう」
「とんでもないことです。早く済ませてしまいましょう。さあ、腕輪を受け取ってください」
ヨルロン・ダンジョンで受け取ったのと同じ銀色の腕輪。
早速血力になじませると、すぅと体に入っていく。
「システィナ、これにはどんな効果があるの?」
妹は眉尻を下げて苦笑いした。
「母様はスペシャルな効果がある!と仰られていましたが、具体的には教えていただけなかったのです。どうですか? 使い方わかりますか?」
私は首を左右に振った。
「ヨルロンでいただいた腕輪のときもそうだったけど、力の内容は分からないのよ。今回も全然見当も・・・」
困っていると、ラウラとヤーグが同時に叫んだ。
「フェリ!」
「主様!」
私を見て驚いてる。
「?」
私は自分を改めて見てみたけど、何にもないわ。
「何にもないけど?」
私が確認を終えて、ラウラ、ヤーグ、システィナに顔を向けると、彼女らはなぜか天井あたりをあわあわと眺めている。
「ねえ、どうしたの?」
みんなの視線の先を追ってみるが特に何もない。
ランプの淡い光が映っているだけに見える。
精霊術かな?
みんなには何が見えているのかしら?
落ち着いたら何が見えていたのか、ラウラから話を聞こうと思って諦めていると、ものすごい爆音がして暴風が駆け抜けた。
私はもちろん突然のことに対応できなくて、吹っ飛んで棚にぶつかりそうなところをラウラとシスティナに助けてもらったわ。
「フェリ、大丈夫?」
「お姉さま、大丈夫ですか?」
こくこくと頷いた。
システィナを待つ間、手すきだったから少し片づけたのだけど、今の衝撃で片づけた物はさらに散乱。床一面に散らばったし、風通しがいいと思ったら、建物の向こうまで穴が開いちゃってる。。
何が起こったの? オーウェルの仲間でも攻めてきた?
爆発音のあった方に目を向けると、またしてもラウの開けた穴から誰か入り込んできた。
この懐かしい気配は――――。
「ごめんなさいね。 転移場所間違えちゃったわ!せっかく花火うちあげたのに」
よっこらしょ、と美女が入室してきた。
「「母さま!」」
榛色の髪に空のような青い瞳。白いセーターになぜか膝上のスカート履いてる・・・。この辺では見ない服装だわ。
それに母さま、若くなってない? システィナと姉妹みたい。システィナが少しばかりお姉さんに、ね。
「システィナ、ちゃんと腕輪を渡せて偉かったわね~」
母さまはまずはシスティナを抱きしめて挨拶すると、次に私の前にやってきた。
お会いするのは何千年ぶりなのかしら・・・。
「母さま・・・」
つい視線を床に向けちゃう。
会えるなんて思ってなかったから、なんて声を掛けたらいいかわからない・・・。
父さまをよろしくね、て言われたのに私はうまくできなかった。
叱責される?
おぞましいと見捨てられたのかも、と思ったりもしたけれど、母さまは腕輪を贈ってくれた。
怒ってない。
嫌われてはない、はず。
でも・・・・。
勇気が出なくて顔も上げられずにいると、
「ごめんなさいね、ジーン」
あの頃と変わらずに包み込むように抱擁されて、いろんな煩悶も全部丸ごと包まれて――――。
「う・・・うぅ、うぁ・・・ぁああああ」
システィナもいるからって思ったのに、声が抑えられなかった。
ずっと、ずっとずっとずっと!!!!
嫌だった。
生まれ変わりたくなかった。
生きたくなかった。
「こんなに傷つけられて・・・」
「見ないで!」
腕を突っ張って母さまの共感性を弾いたけど、いくらか見られたかもしれない。
ぐしぐしと涙を拭いて顔を上げると、母さまは本当に悲しそうな顔をしていたけれど、怒りの波動も伺える。
「おかあさん変なこと聞いてくるなぁ、って思うかもしれないけど、まずはこれを聞かないと先に進めなくて。正直に答えてくれる?」
両肩に手を置かれてのぞき込むようにされた。
「オーウェルのこと好きだったりする?」
すき?
あの男のことを?
意味が脳に浸透すると、あまりの気持ち悪さに体が震えて、先ほど食べた粥が食道を逆流してきた。
「う・・・うぅ」
背後に控えてくれていたラウラが真っ先に反応してくれた。
「フェリ! 出していいよ!! わたしの両手に出していいから」
でも・・・。
「いいから。大丈夫。すぐにクリーンできれいにするから。ね?」
ごめんね。ラウ。
うええ。
口の中のを飲み込むこともできなくて、どうしようもなくて吐き戻していると、システィナが背中をさすってくれた。
「お姉さま、大丈夫ですよ。・・・母様!なんてこと聞くんですか?! そんなことあり得るわけないじゃありませんか!」
「だって、男女のことって当事者じゃないと分からないじゃない? まずは聞いてみようと思って。対処はそれからよ。ジーン、どうなの?」
もちろん答えは決まってる。
私は口の中のものがなくなると、はっきりと正直にありのままを口にした。
「嫌いです。考えるのも、そう周囲に思われるのにも、絶望を感じます・・・」
うう…。まだ胃がふるえてる。。
母さまは両手をぱんと合わせると「よかったわ~」と微笑まれた。
「これで実は好きだったりしたら対応を変えなくちゃならないからね。今回の件、私なりにいくつか解決方法を考えてきたのよ。システィナに渡した腕輪はオーウェルに残っている神力を吸い出すことができるわ。残力がなくなれば、転移も時間操作もできないでしょ? あなたに触れれば神力を失うことになれば、近寄らなくなるはずよ!」
「母さま! ありがとうございます!」
それならラウラが負けることはありえなくなる。
ただの術士に成り下がるのなら、みんなだって対処できるはず。
「ただね、これは緊急措置なのよ。私が腕輪で対処したことが永遠に可能だと思う? オーウェルだって、あなたから神力を得なくても自然回復するわ。それに腕輪の除去だってしてくるかもしれない」
そう指摘されたら、その通りかも。
さすが母さま。
「だから根本的な解決方法も考えてきたの!」
ふんす、と胸を張る母さま。
すっごいどやぁ〜ってしてる。
こんな人だったわね…。
いつも自信満々で楽しそう。
そんな母さまが大好きだった
「ジーンが神になればいいと思うの!」