※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第89話 女神アートリア2

「え!?」

 慮外の提案に目が点になる。

 まってまって。

 聞き間違いかしら?

 

「母さま、なんておっしゃいました?」

 

「だから、ジーンが神になればいい」

 

 聞き間違いじゃなかった〜〜〜。

 

 

「オーウェルを殺すのはもちろん簡単よ。でも問題はそこじゃない。記憶を持ったまま転生し、ずっと追われることでしょ? 記憶の保全は神格者の標準仕様の一つなのよ。根本から解決するためには、彼に神格を降りてもらう必要があるわ。正道は本人から継承するのだけれど、今回は妻の私がいるからね。強引に継承できるわ!」

 

 私が神・・・?

 

「本気で言っていらっしゃいます・・・・・・よね?」

 

 きょとんとした母さまは、当然、と言を俟たない。

 

「根源的に解決できそうなのは、ジーンが神格を得ることだけれど、デメリットもあるの。・・・・・・そう。記憶の保全ね。人の身であれば、前世の記憶は覚えていなくて済むわ。思い出すのが辛いと思うなら、この方法は辛いと思うの。その場合は私が他の界に連れて行ってもいいのだけれど、人の身の寿命を延ばすことは難しくて、死後どの世界に渡ったとしても、ジーンはこの世界と紐づいてるから、引き戻されてしまうのよ。私がまたこうしてジーンと会えるまでの間にオーウェルが邪魔しないとも限らないし。でも、記憶を漂白できるチャンスでもあるわ。どうする? ジーンのいいように選んでいいわ。どっちでも最大限フォローする」

 

 この男ともう永遠に関わらなくていいなら、神格を選びたいけど・・・。

 

「私に神なんて務まりますか?」

 

 母さまはぱあっと笑顔を見せてくれた。

「もちろん! 難しいことはないわ。ジーンが健やかに過ごせばそれでいいのよ」

 

「そんなことでいいのですか?」

 

「オーウェルだって自分勝手にしてたでしょ。私だって好きにしてる。神だからってなんでもできるわけじゃないしね。神って言い方も悪いわよね。世界の支柱といった方が正しいかしら。世界が悪意に染まってしまえば、この世界は終わりになる。支柱の者たちもね。だから、人々が健やかに暮らせるようにすればいいのよ。もともとあなたはこの界の愛し子として創造したわ。あなたの幸福がこの界を支えるのだもの。好きに生きてダメなわけないでしょ」

 

 どうしてか、ばちんとウインクされた。

 

「あなたを生み出せたことは、私のラッキーランキングでも上位にはいるわ。出会った頃は朴訥でいい男だったのになぁ」

 

 と母さまは結界を流し目で見やった。

「では、神格を得るでいいわね。ジーン、結界に手を」

 

 ほんとに?

 ほんとに幸せに生きるだけでいいの?

 

 ラウラやシスティナに目を向けると、二人とも頷いてくれた。

「フェリ、大丈夫よ。今だってすごいんだから。もうちょっとすごくなるだけでしょ?」

 なにその認識・・・・。別にすごくないってば。

 

「お姉さま、大丈夫です。このシスティナが全力でお支えいたします!」

 システィナの発言には母さまが苦言を呈されたわ。

「システィナにはダンジョンの管理があるでしょう・・・。まぁ! 多めに見ますけど! この界には他の界の悪意も流してるから、潰れると本当に困るのよ。ふたりとも頼むわよ!」

 

「がんばります・・・」

 と呟く私の隣でシスティナが胸を張ってる。

「お姉さまが好きなように生きられたら、他の界の悪意だってたちどころですわ!」

 

 そうかしら・・・。過大評価ですけれど・・・。

 

「もし、なってみて嫌だったらシスティナに押しつければいいわ」

 清々しいほどあっさり仰いますね。

 

「気負う必要はない、ということですね。分かりました。やってみます」

 

 私が結界に手を当てるとマグの障壁が消えて、オーウェルが横になって眠っているのが見えた。

 光も音もないのですものね。ましてや幼子。眠たいよね。

 

「本当はね、神力の持ち主が次代へと継承する技なのだけど、今回は強引に継承しちゃいます! 行くわよ〜☆」

 

「オーウェルの妻たるアートリアが告げる。ターレスガウルンドの柱が一つ、オーウェルの神格を娘、ジーンに継承す。因果よ、律せよ!」

 

 母さまの朗々たる宣句が終わると、オーウェルがカエルのおもちゃのように跳ね起きた。

 

 母さまを見上げて歯噛みしている。

「アートリア!! 久しぶりに顔を見せたと思えばどういう事だ!」

 

「起こってる通りよ」

 

 父と母さまが会話してる間に、ふと気がつくと淡い翠色の光が自分の体を包んでる。

 

「ジーンは神力を生み出す力を持って生まれたけれど、見るのは初めてね? あなたの神力はやさしい翠色なのよ」

 母さまが目を細めて喜んでくれてる一方で、オーウェルは自身の両手を眺めて戦慄いてる。

 

「神はどの神も同格だぞ!こんなことが・・・!!」

 

「そうなの。こういうこともできるの。引きこもって会合にも出ないからこうなるのよ」

 

「それはぼくに限った事じゃないだろう! アートリアはぼくのことを好いていたんじゃないのか?!」

 

 え…?

 それはオーウェルはまだ母さまに未練があったの?

 

 母さまは、うふふ、と微笑んではいるけど、笑ってないですね? なんか怖いです…!

 

「夫は飽きた数ほどいるけど? 世界か、あなたかで、世界を選んだのにまだ好きなわけないでしょ。好きだったら会いに来てるわ。子どものことも任せていいかな、くらいには好きだったのに。特にジーンはこの界に特化して創造したし。私の期待を最悪な形で裏切ってくれて、ただで死ねると思ってないでしょう?・・・シュナイダル、ユーハ来て」

 

 母さまが呟くと、虚空から壮年の男性と妙齢の女性が現れた。片膝をついて首を垂れる。

「「ここに」」

 

「計画どおりに頼むわね」

「「御意」」

 

 現れた二人はオーウェルを封じている結界を挟むように位置取った。

 

「ジーン、結界解いて。あとはこちらに任せてもらえる?」

 

 ただで死ねないような事をするのですよね?

 

「私はいいのですけれど、オーウェルはどうなりますか?」

 

 一瞬オーウェルの口元が笑んで、背筋が凍る。

 急いで訳を口にした。

 

「・・・いえ! 断じてオーウェルのことを案じているわけではなくて、対処する母さまは大丈夫なのかなって。心的負担にならないですか? このまま私がーーー」

 

 結界を小さくすればいいだけだし。

 

「本当にジーンはいい子ね。いい子すぎるくらい。このままあなたが手を下してもいいけど、簡単すぎるわ。私に負担はないから、任せてもらえないかしら? この男のことであなたがこれ以上思い悩む必要はないし、母さんにもやらせて欲しいのよ」

 

 笑顔がこわい。。

 そう仰るなら。

 

「分かりました。お任せします」

 

 結界を解くと、母さまが呼び出した男性の方のシュナイダルがすぐさま拘束した。

「放せ!さわるな!」

 

 オーウェルが文句を叫んでいる間に、現れた時と同じようにシュナイダルもユーハもオーウェルも音もなく消え去った。

 

「別の界に招待したわ。もうジーンの前に現れることはないから安心して」

 

 母さまの足元から光が渦巻いてる。

 母さまも後を追われるのね。

 

「母さま、ありがとうございました。私の為に手を尽くしてくれて」

 

 母さまは一歩踏み出すと、私を抱きしめてくれた。

「どの子も愛してるわ。もちろんジーンも。今までごめんなさい。また会いにくるからね。オーウェルは転生していたけど、ジーンはお好きになさいな。してもしなくてもいい。自分の時間の調整はそのうちできるようになると思うけど、神力はあれこれ試して使ってみなさいね。オーウェルは転移と結界内の時間停止だったけれど、人によって使える技が違うし、あれこれ試している間に新しい技を思いついたりするのよ」

 

「はい」

 

 母さまは次にシスティナとも包容した。

「この界の神々との顔合わせの段取りは頼むわね」

「はい!」

「あの子のこと、頼んだわ。もちろん、あなたのことも愛してる。何かあれば連絡なさい。対応まで時間がかかるかもだけど」

「はい。承知しました」

 

 母さまは次にヤーグとラウラに視線を向けた。

「あなたたちも大義でした。仲間内にも私が感謝していたと伝えて」

 

 ヤーグも先ほど母さまが召喚されたふたりと同じように跪き、恭しく首を垂れた。

「勿体無いお言葉です。お伝えいたします」

「今後については娘と相談すればいいけど、引き続き娘のために働いてくれるなら、改めてジーンの眷属になったらいいと思うわ」

 

「はい! ぜひそのように図らせていただきます」

 

 ヤーグ平伏しきってるわね。いつもなら、ヴァンさん並みにへらへらしてるのに。

 

 一方ラウラは、どう対応したらいいか困ってるみたいと思ったら、急に頭を下げた。

「女神さま! あの…状況よくわからないんですけど、フェリのこと助けてくれたんですよね? ありがとうございます。それで、私も眷属になった方がいいのでしょうか? わたし、フェリと結婚してますし、あ! 挨拶してませんでした!!」

 

 わたわたしてる。

 私も急に母さまにカミングアウトされてびびるわ//////

 

「うふふ。さっきジーンを見たから知ってるわ。ラウラリーエね」

 

 母さまはラウラに歩み寄ると、左手を手に取った。

 ふわっとラウラが一瞬発光する。

 

「構成はほとんどジーンなのね。それで娘のお嫁さんか」

 何やら思案したあと、ラウラのこともハグをした。

「結婚祝い♡ ・・・・・・ジーンのこと頼むわね」

 

 ・・・・結婚祝い?

 抱擁長いし・・・・。

 

「はい! 女神さま!」

 

 ラウがはち切れそうな笑顔を向けているから、変なことじゃないのかも知れないけど、後で聞いてみよう。

 

 

 

「あなたの存在が創生の意なのでしょうね」

 

 ラウラが首を傾げている。私もそう。どういう意味?

 

「ジーンはこの界に特化して創造したと言ったでしょう? この子がいる限り、この界は安全と思っていたのよ。それがオーウェルに毀損され続け、この界に思ったような祝福が与えられなかった。このままの状況が続けば浄化システムが破綻していたわ。

 今回ようやく私はジーンと会えたけれど、そこまでの道のりにあなたは不可欠だった。逆に言えばあなたの存在がなければ、私とジーンが会うことは数千年先になっていてもおかしくなかった。

 

 浄化システムが破綻した世界が何千年も保つと思う?きっと私とジーンが出会う前に世界は滅んでいたわ。

 この界に限らないけれど、界の綻びは他の界の綻びに繋がるのよ。それを止める為に私たちがいるのだけれど、稀に転機になる者が誕生することがあるの。我々は ”世界を創生した大いなるものの意思” と呼ぶわ。あなたもそうした意味を持った生なのでしょう。私のファミリーとして歓迎するわ。今度の会合にはジーンと一緒に参加なさい」

 

「はい! 嬉しいです! ぜったいフェリを幸せにするので!」

 

「頼もしいわね。期待しているわ」

 

 母さまを包む光が強くなる。

 もう行かれるのね。

 

「ジーン、そんな顔しないで。また会えるわ。困ったら妹でもお嫁さんでも頼りなさい。もちろん私にもね」

 

 急に近づいてきたかと思うと、頬にキスされた。。

 そしてシュン、て界を渡っていってしまうし!

 

 飽きた数だけ夫がいるってことは、子供もたくさんいらっしゃるんでしょうね。

 他の界の管理もされていらっしゃって、お忙しいのだろうとは思っていたの。

 もう戻っていらっしゃることはないと思っていたから。

 

 母さまがちゃんと私のことを気にかけてくれていて。

 

 

 どうしよう。。

 

 

 嬉しい。。

 

 

「フェリ! 泣く時はここ!」

 ラウラがぎゅうってハグしてくれる。

 

「うん」

 

「お姉さま、よかったですね」

 なぜかシスティナも涙声。

 

「うん」

 

「超絶嬉しいのですが、おれ、殺されません? マグとリーを差し置いて、おれだけ女神さまに拝謁したんですよ!!!!」

 

 借りてきた猫みたいだったから心配してたけど、母さまがいたからだけか。

 いつものヤーグで安心ね。

 

 大丈夫よ。からかわれたりしても、殺されたりはしないから。

 

 

 

 

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