※この作品はR-18です。

忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん!   作:さとう_2701

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第93話 青狼

 さて、眷属についてだけど、誰も効果や機能について聞いて来なかったけど、ラウラの指輪みたいなものね。

 

 眷属にした相手の居場所が分かるのだけれど、神力が馴染むにつれて、遠く離れていてもお話もできるみたい。

 風精の言伝が使えない私にはとっても便利ね。

 

 今日はガカーヤカム・ダンジョンの浄化よ!

 Bランクモンスターも出ると聞いたので、気合いを入れて王太后さまから下賜されたラエスメリアを背負ってきたわ。

 

 

 

 なのに、ガカーヤカム・ダンジョンの浄化は呆気なく終わった。

 もはやピクニックだったわ。

 

 ガカーヤカム・ダンジョンは上層部が天然の洞窟のように作られているのに、途中から急に石畳が現れてお城みたいな迷路になっているの。

 迷路の攻略はちょっと楽しかったわ。

 

 他界の悪意の浄化については、また歌で行うことにしたのだけれど、システィナが光る棒を振って応援してくるから気恥ずかしかった。

 

 システィナの同僚だという女性にも会わせてもらったのだけれど、持つ者と持たざる者の天の采配に思いを馳せたわ。

 こんなに違うってどういうこと?

 おかしくない?

 なんであんなに大きいの?

 

「やーん♡ シスのお姉さまかわいーいー! 私の妹にならない?」

 

 ぎゅーと抱き・・熱烈な歓迎を受けたわ。ほんとに息できないの!!

 

「マッス! 説明したでしょ! 妹になるわけないでしょう!」

 同僚はマヌティーウスファンさんと言うらしいわ。ヨルロンにいたユーペルシンナゥさんと違って、フォーレみたいなの。人間の手足にケモミミとしっぽ。色も白銀でフォーレと並ぶと親子みたいなの!

 そして美人!

 局地的顔面偏差値の高騰が起こっているわ。私も面食いな自覚が沸き起こってきてたけど、母さま筆頭にみんな美人好きよね!?

 

 息苦しさと圧倒的美人のバストの脅威にあぷあぷしていると、ぐいっと引かれて、馴染みのあるラウラの胸に着地した。

 

「お嫁さん付きかぁ♡ どっちもかわいいねー♡ 私ね、人のものが大好きなの♡♡♡ 3人で遊ばない?」

 

 この人、やばい人だわ!!!

 

「あそびません!!」

 ラウラががるると威嚇してる。

 

「マッス、お姉さまとラウラで遊ばないで」

 なーんだ。冗談ね。と安心したのに、システィナのこの後の言葉に冗談じゃなかったのね、と思い知らされた。

 

「この前遊んでいた人は? 5人くらいの間で遊び回ってたでしょ?」

「存在ごと消されそうになったから、ほとぼり冷めるまで待とうって思って」

「ばかね〜」

 

 やっぱりやばい人だわ!!

 5人って…。相関関係どうなってるの…?

 

 私とラウラが警戒する一方で、マヌティーウスファンさんはからりとした笑いを見せてきた。

「神力を生み出せるなんて、さすが女神アートリアの御息女ね。ものすごいギフトよ。誰とでも適合するの?」

 最後のセリフはシスティナに尋ねてる。

 

 いくら記憶を消せるとは言っても、この場にはセリスもレイハスさんもいるのだけれど。

 マヌティーウスファンさんは関係者しかいないみたいに喋る。

 次元の違いすぎる会話に、2人とも全く会話に入ってこない。フォーレもそうだけど。

 

「試してないけど、恐らく?」

 

 すごいわね!とマヌティ…以下略。長すぎるわ!さんが興奮してる。

 すごいの? とぽかんとしてる私たちに同僚さんが説明してくれた。

 

「あのね、普通、神力って自分の界でしか回復しないのよ。地力とも呼ばれるわ。その界の生命力を神力として受け取れるのが神なのよ。アートリア様は放浪神だけあって、どこでも回復するらしいのだけれど、その要素を受け継いだのね。当然、神力の貸借りはNGなの。その界が弱ったりするからね。移譲できるって凄いことなのよ!」

 

「はあ…?」

 

「お姉さまの中にこの世界と同じ規模の世界があるってことなの。凄いでしょう?」

 

 そういう言い方をされるとすごいかも。

 

「神力渡せるのって、界広しといえど3神くらいでしょう? その4神目が私の手に!! お義姉さまで他の界も獲れるわ!」

「マッスの手にはないでしょ。勝手にお姉さまをお義姉さま呼びしないでよ」

 

 マヌティ…長いわね。マッスは彼女の雰囲気と合わない気がするし・・・。

 

「マヌティーウスファンさんはマッス以外に何と呼ばれているのですか?」

「ティーとか、ファンですね」

 いっそ本人に聞いてみたら、にこやかに教えてくれる一方でシスティナが笑いを堪えてる。

 

「システィナ、どうしたの?」

「いえ、なんでもありません。お好きに呼んでいいですよ」

「んー、ではティーウで。そう呼ばせてもらいますね」

 なかなかかわいい♡と本人からは好評だったのに、システィナからは「可愛すぎますね」と言われたわ。

 

「では私はフェリちゃん♡ お呼びしますね」

 ナウシーさん以来ね、その呼び方。

「どうぞ。私のことも好きに呼んでください」

「ふふふ。かわいいわ♡」

 

 ん?

 システィナ? なんでショック受けてるの?

 

「マヌティーウスファン様、システィナ様、浄化も顔合わせも終わりましたし、食事にしましょう」

 リーが頃合いを見計らって声を掛けてくれたわ。

 

『いいわね!デザート持ってきてくれたんでしょ?』

「はい。今首都で話題になっているものを幾つかお持ちしました」

『リーはちゃんと手土産を持参してくれるから、嬉しいわ』

「お歓びいただけて幸甚です。フェリシア様がこの界の一柱になれたこと、システィナ様のご尽力に並び、マヌティーウスファン様がダンジョンの浄化を引き受けて下さったからに他なりません。我が主人との初の会食の機会、張り切らないわけがございません。準備が整う間、お茶をお召しになってお待ちください」

 

 ストレージからテーブルセットとティーセットをだすと、ヤーグに給仕を命じて、自分は隣で会食の設営を始めた。

「手伝います!」

 レイハスさんがリーにつくと、セリスはヤーグについた。

「私もお手伝いします」

 

 セリスに抱っこされてたフォーレは、私が抱き上げた。立ち振る舞いについては、もやるところがあるけど、セリスにもレイハスさんにも事情は説明できないし、ダンジョン出たら記憶を消すんでしょう?

 二人を立ち働かせて、私だけ座ってお茶も落ち着かないけど。

 

「お姉さま、こちらお座りください」

 システィナに促される。

 

 ソファは高級そうなハリのある布張りで深い海の色をしてるから、白銀のティーウさんやフォーレの毛並みが映えるわね。

 背中に背負ってた剣はラウが外してくれて、二人がかりで座らせられた。

 

「フェリの髪がミルクティー色だから青か。ベルベットの赤のソファでも、茶色の革製でもフェリはなんでも似合うけどね」

 急にどうしたの、ラウ?

「そうですね。お姉さまはなんでもお似合いになります」

 システィナまで・・・。

 

 家族ってフィルターがかかっているからね…。仕方ないか。

 

 私の隣にはラウラが、向かいにシスティナとティーウが座った。セリスとヤーグが手分けしてお茶を運んでくれて、ヤーグが給仕として私たちの背後に控えると、セリスもリーたちの手伝いに行ってしまった。

 

 ほぼ関係者のみね。

 せっかくなので紅茶をいただいたのだけど香りが強い。雑味がなくすっきりとした味わい。高いわね、この茶葉。

 

「お姉さま。まずは改めて確認させていただきますね。お母様から指示されているのは――――」

 

・この界の神と顔合わせをすること。

・母一門の会合に出席すること。

 

「神の使命は世界の存続です。その意に背くものの排除も使命です。かと言っても、近々に何かしなければいけないこともありません。今すぐ対処しなければならないような案件もありませんし、神力を体に馴染ませつつ、穏やかに過ごされて構いません。私も後20年弱で休暇に入りますので合流しますね」

 

 20年ゆっくり過ごしていいってこと?

「システィナの休暇はいつまであるの?」

「100年しかないのですが、とりあえずは足りるかと。他の神との顔合わせはその時に致しましょう」

 

 100年。。

 人の寿命の2倍あるわね。

 

「目下気になるのは、忌み子の存在です。テラニード王国では、オーウェルがお姉さまの転生先を掌握できるよう愛し子の保護を手厚く行いましたので、忌み子の出現はこの500年をみても片手で足りるほどです。翻ってロンダルディア王国では忌み子の出現が数えきれないほどだそうですね?」

 

「そうね。テラニード王国と比べて、愛し子は保護されているとは言い難い状況よ。カイエル陛下やダルディッシャム王太后さまのご尽力で救出活動が行われている最中ね。ロンダルディア王国に戻ったら、王太后さまと協力して事に当たろうと思うわ」

 

「リーとマグをお連れになるといいでしょう。ヤーグは少し私にお貸しいただけますか?いざと言うときのために仕込んでおきたいので」

 

「分かったわ…」

 

 聞いてはいけなそうな雰囲気だったので、何を?とは聞けなかったわ。。

 

「ほかに気になるところや聞いておきたいところはありますか?」

 

「青狼について、対応はまだ決めなくていいって言われてるけど、システィナの意見があれば聞いておきたいわ」

 

 システィナが暫し瞳を伏せて考え込む間に、ティーウが見解を述べてきた。

 

『私としては、フェリちゃんの眷属に加えて欲しいなぁ。それで、三角関係のなかに私も入れて欲しいわぁ』

 

 何言ってるの、この人は・・・。

 

「三角関係?! 詳しくは聞いてなかったけど青狼って誰?」

 そんな言い方されたら、ラウラだって気になるわよね。

 

「シェラロッテですよ、ラウラ」

「はぁ? なんでシェラロッテがでてくるの? 眷属になるのは人間には無理なんじゃなかったの?」

 

「シェラロッテの根源は人間ではないですからね。ドラゴンなどの霊獣です。人の身には有り余る力を持つからこそ霊力過多症になっているのです」

 

 ?がいっぱいついた顔してるわね。

「その青狼て霊獣がどうしてフェリと関係あるの?」

 

 そう思うよね。

 

「昔、私がまだオーウェルの子どもだった頃、青狼に殺してもらったの。そうしたら私の転生先に青狼も人間として転生するようになった。私とオーウェルとのいざこざに度々巻き込んで、本当に申し訳ないことをしたわ。どう償ったらいいのか、決めかねていて・・。眷属にするのはラウが嫌がるだろうなぁと思って、それ以外の方法がいいのだけれど」

 

 システィナに目を向けると、「アホなあなたは口を閉じていなさい」とティーウさんにお茶を勧めてから持論を述べてくれた。

「誰もこうなるとは思ってませんでしたし、お姉さまの所為ではありません。元はと言えば、オーウェルと母様が悪いかと」

 

 それはそうかもだけれど。

 

「青狼についてはサンプルが乏しく検証ができませんでしたが、転生するたびにお姉さまの近くに産まれるからには、何らかの繋がりができていると考察いたします。その繋がりを断ち切れれば、お姉さまに追随してくることもなくなるでしょう。そのまま聖獣として転生してくれればいいのですが、人として転生してくれば、また精霊力過多症に悩まされることになるでしょうね。ただ、すぐ死ぬような病ではありませんし、ロンダルディア王国でも教会が出生証明書を国に提出していますね? その際、愛し子か精霊術士か調べるのですから、教会からカトレア隊に連携されるよう制度を整えれば問題ないかと思います。まずは繋がりを切れるかどうか、でしょうか」

 

「見つけられなくて、切れなかったら、彼は・・・」

 

「お姉さまのご想像通りかと。もしお姉さまが転生される生をお選びになられるならば、追随して転生してくるでしょうし、転生されない場合は、お姉さまの限りなく近くに転生してくるのではないですか? お姉さまは青狼に恩義を感じていらっしゃるかも知れませんが、マグからの青狼レポートを読むに、イーブンではありませんか? オーウェルが関わってきたことでバッドエンドばかりだったかも知れませんが、少なくてもお姉さまの方から青狼に手を掛けたことはなかった」

 

 マグ、リー、ヤーグは解決の糸口を見つけるため、各回分厚い資料を作成していたものね。システィナも目を通したの・・。

 

「私から手に掛けられるわけないでしょう。私が頼らなければ彼は今も生きていたかも知れない。こんな不自由な生にはならなかったと思うと・・」

 

 ティーウがあきれ顔で何か言う前に、システィアのジャブが脇腹に入った。

「あなたに発言は許してないと言ってるでしょう。お菓子でも食べててください」

『シス酷い! 私だって話したいのに~』

「いいから黙ってて。家族の会話に同席させてもらえるだけでもありがたいと思って」

『はぁい』

 テーブルに用意されているのは、フィンガークッキーね。サクサクで美味しそう。フォーレもぱりぱり食べてるし。

 

「お姉さま、よく考えてください。あの時お姉さまはまだ二十代半ば。何百年と生きてきた青狼を頼って何が悪いのです? 自罰が過ぎます」

 

「でも・・」

 

「青狼は青狼の判断を以てお姉さまを助けると決めたのです。彼の意思を蔑ろにすることになると思いますよ」

 

 それでも巻き込んだことに変わりは無い。

 友人にならなければ、彼の生を歪めることは無かった。

 

「お姉さまが忸怩たる想いを抱えていることは分かるつもりです。ですが、それ以上反論なさるなら、青狼のことも憎からず思っていると思ってしまいますよ?」

 

「やっぱり!?」と隣のラウラが叫んだ。

 なによ、やっぱりって。違うわよ。

 

「ほんとうに誓って友愛の方だから」

「それならなおのこと、眷属にはなさらない方がいいです。マッスのようにお姉さまが楽しめるとも思えませんし、何千年に渡る禍根になりますよ」

 

 うう。分かったわ。

 

 当時の彼の意思、か・・・・。

 

 遠い昔の記憶だし、はっきりと思い出せてるわけじゃない。

 縁が切れるなら、切って霊獣へと戻してあげられたら。

 

 辛い思いをしたこともあったけど、助けてもらったこともある。

 一言では言い表せない。

 

 どの生でも傍らには彼がいた。

 執着してるのは、私なのでしょう。

 

 

「お姉さま、どうしても心に引っかかるとお思いでしたら、答えが出るまでこちらは待ちますよ。時間は無限にありますから。今生の青狼に何もしなければ、またお姉さまの近くに転生してくるでしょうし。いま無理に決める必要もありません。ラウラと話し合って決めてください」

 

「ええ。ありがとう、システィナ」

 

 そうね。当面決めなくてもいい。

 心に留め置いて考え続けましょう。

 

 

 

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