忌み子のわたし、精霊に愛されてました。知らなかったの!見えないんだもん! 作:さとう_2701
フェリに求められるまま与えた翌日、わたしはシスティナに呼び出されたわ。
今度はリーもいない二人きり。
「お姉さま、ほわほわの笑顔でおやすみでしたね。ラウラ、ありがとう」
「いいえ〜。わたしの嫁だもの。大事にして当然よ」
フェリは寝たの遅かったしね。朝方まで抱き合ってたから、気が済むまで寝かせてあげたい。
それに早く戻りたい。また隣にいないって悲しませたくないから。
わたしが中座した分は昼食後に複写し終えて配り終わってるし、なんの話?
「フェリのそばにいたいから、手短にしてもらいたいな」
「もちろんです。リーにも伝えたのですが、ラウラには重々気をつけてもらいたいのです。無茶をしない、勝手をしない、誰かを頼る。まず事を起こす時はリーやマグ、私を頼ってください」
「え!? 結婚式のこと言ってる? まだ悩んでたから助かる!」
愛し子みたいに心読めるの!?
びっくりするとシスティナからもびっくりされた。
「結婚式ですって!? まだしてなかったの?」
「そうなの。急ぎで作った指輪は贈ったんだけど、ちゃんと鉱物で作ってあげたいし、ダイヤとかプラチナとか? あとはウェディングドレス着せてみたいの♡ お揃いでね。まだどこであげるかとか、詳細決めてないんだけど、フェリが15歳になったらしたいなって思ってて・・・・」
「なるほど。それは急務ですわね」
顎に手をあてて考え込み出した。
「場所も参列者も決めてないのですか?」
参列者か。
「フェリの妹がいるって思ってなかったから、ここに来る前はプティとフォーレとムームだけでいいかなって思ってたんだけど、呼ばなかったらシスティナもリーも怒るよね?」
「怒る? 怒るなどという軽い言葉で済むと思わないで? 絶対に呼んで。というか、企画から入るわ。そもそもお姉さまはご存知なの?」
「改めて指輪は贈るっていってあるけど、結婚式の話はしてないわ。サプライズで喜ばせようと思って♡」
どがあああああん!!
システィナが近くの岩石を殴りつけた。
「結婚式と言ってるのに、相談もなしに決めようとしてたのですか!?」
髪の毛逆立ってますけど!!
目が怖い!!
「だから相談したかったの! フェリ、年明けたら15歳になるんだけどまだ9ヶ月あるし、準備も間に合うでしょ?」
システィナが無言で微笑んだ。
なにその笑顔! こわい!!
――――――――緊急会議が行われることになったわ。
体が重だるい。特に腰回り。
でも嫌な目覚めじゃなくて、心地よい疲労感に包まれてる。
愛されてるって、心の深いところまで思い知らされて、刻まれて、髪の毛の先から指先まで幸福に満ちてる。
オーウェルに傷つけられた自尊心も満たされて、私はそばにある温もりに体を寄せた。
もう少しこのままぬくぬくしていたい。
「起きた?」
今度はちゃんと隣にいてくれて嬉しい。
起きたらこの時間はおわっちゃう。
私は狸寝入りを装いながら、ラウの柔らかな胸元に顔を擦り付けた。
「ふふ。かわいい♡ 昨日もかわいかったけど。いつもずっと常にかわいい♡ わたしにいっぱい教えてくれたから、のど乾いたんじゃない?」
それは声あげ過ぎって言ってる?
「聞き苦しかったら、ラウが加減して」
あー。声がさがさ。
「そうは言ってないでしょ。声あげて教えてくれてありがと♡ どれくらい気持ちいいか分かるから助かるし、わたしのテンションもめちゃくちゃ上がるの。よがり声大好き。興奮する」
言葉どおりにラウラの瞳に情欲が浮かび、上にのしかかってきた。額、瞼、頬へと口づけて、この後はキスしてくれると思ったのに、耳の下、首筋と移っていってしまう。
少し残念だけど、ラウの重みや匂い、体温といった、彼女を構成するひとつひとつが私を気持ちよくさせる。
触って欲しくて疼く。
「ラウ…」
起きたばっかりでいいのかな。
昨日もあんなにしたのに、呆れてない?
ほかのみんなは?
いろんなことに気づいた私を引き止めるように、ラウの手がショーツに潜った。
「いいの?」
こんなことしてる時間はあるの?
「少しだけ触らせて? すぐ終わらせるから」
確かにいつもよりは短かったけど、私の少ない体力はすっかり0になった。
「喉乾いたでしょ?」
ええ。さらにね。
心の中で思っているとラウの顔が寄って、ぷにと艶やかな唇が、私のカサついたそれに触れてきた。
「あとでクリームぬるね」
唇への愛撫もそこそこに、ラウの舌が入り込んできて、少しずつ水を口内に含ませられる。
水は私の口内で生成してるみたいで、舌の上に乗せられる。
美味しいけど、ラウのベロ舐めたい。
喉奥に直接水分入れてくれていいのに。
私が自分の気持ちに素直に実行すると、ラウの舌がさらに深く潜り込んできて、丁寧にしつこくこちらの舌を絡め取り、体と体が交わってるみたいにしてくるから、一旦落ち着いた欲がまた湧き上がってきた。
きりがない。
いい加減もうやめないと。
そう思うのに、ラウの首に回した腕を外せない。
もう一度してほしい。
「ラウぅ…」
甘えた声を上げたとき、びくっとラウの体が僅かに飛び上がった。
ラウが私から目を離してベッドの周囲に張った結界を見やる。
「もう時間だって」
心底残念そうに体を離された。
うう。残念だけど、そう言われたらそうよね。
言ってもらえて良かったくらい。
上半身を起こすと、どろっと奥から流れ出てきた。
昨夜の名残かな。これ使ってぬるっぬるに擦って欲しい。ラウに舐めて欲しい。
無限に考えちゃう。。/////////
「フェリ。夜にまたしよ? だから、そんな顔ダメ」
ふふ、とラウが顔に張り付いた髪を払ってくれた。
「クリーンするね。このフェリを見ていいのはわたしだけだから」
「うん」
結界を解除されて、私は意識を切り替えた。
ようやく起き出して椅子に腰掛けると、すかさず右隣にシスティナが着席した。
勢いがありすぎない?
どうしたの?
私の左にはラウ、対面にはティーウさんが座った。リーは携帯コンロの前でお鍋をかき混ぜたり、お茶の用意をしているわね。
ほかのメンツは見当たらない。
「フォーレは? それにみんなは?」
「みんなで狩りに行っております。お暇だということでしたので」
「そう。ごめんね、起きるの遅くなってしまって」
「いえ、それについては問題ございません。それより!!」
ずずいとシスティナが迫ってきた。
「結婚式をまだされていないと伺いました!」
なんだ、緊急案件かと思ったわ。
リーが温めた粥とシードルを出してくれたので、シードルを一口飲んだ後、粥のスプーンを手に取った。麦を野菜やベーコンで煮込んである。美味しそう。
「結婚式なんて別に不要でしょう? 互いの親族同士紹介するイベントじゃない。神に宣誓もないし」
今世ではもちろんしたことはないけど、過去に何度かした事がある。
幸せだった記憶もあれば、そうじゃない時ももちろんあって、綺麗な服を着れるのは嬉しかったけど・・・。
ん?
今回綺麗な衣装着るのラウラなのでは!?
純白のウェディングドレスにうっすら化粧をしたラウラはきっと綺麗にきまってる!!
わくわくとした次の瞬間、すぐ悲しくなってしまった。
ウェディングドレスのベールを持ち上げるのは花婿さん。
花婿さんの黒の正装と花嫁さんの白のウェディングドレス。そのコントラストしか思い浮かばない。
私じゃベールを持ち上げることもできない。
「ドレスはラウだけが着るわけじゃないよね?」
ラウ、システィナ、リーの頭が ? で埋め尽くされているのは見てとれた。
「フェリもドレス着るんだよ??」
不思議そうにラウに言われて、申し訳なくなっちゃった。
ウェディングドレスとウェディングドレスで結婚式するの? 変じゃない?
それに美人の隣に私が並ぶの?
化粧したら少しは見れるようになるかもしれないけど、この幼児体型で?
幻滅しない?
「お姉さまはあまり気乗りしないですか?」
システィナの問いに頷きそうになったけれど、仮に私が花婿さんだとして、花婿に結婚式は気乗りしない、て言われたら? 花嫁としては悲しいのじゃないの?
一応意向を聞いておきましょう。
私は何度かした記憶があるけど、ラウは初めてだしね。
「ラウは結婚式したいの?」
「もちろん! フェリのかわいい姿見てみたいし!」
即答。。
かわいく…か。確かにナウシーさんのおばあ様から買ってもらった衣装以来、かわいい格好はしてないけど・・・。
服さえ可愛ければ、中身がどうとでもなれる?
どうしよう。
ラウがしたいと言うなら、すべきよ。
でも後で振り返った時にがっかりしない?
「フェリ様は何がご懸念ですか?」
リーがみんなに紅茶を配りながら尋ねてくれてる。
ずっと俯いていたから気がつかなかったけど、隣でラウが不安で悲しそうな顔をしてる!!
「違うの。したくないわけじゃなくて、ラウの結婚衣装はとっても素敵だと思うわ。すごく見たい!ただ、隣が私だと結婚式に招待された親戚の子みたいかなって思って」
面倒な事言った、と自分でも思うわ。
このメンバーに言っても無駄なのに。
だって身内って色眼鏡で私を見てるのだもの。
「親戚の子…?」
ラウは額に手を当てて困惑してる。
「親戚の子ってどういう意味?」
「ラウラ、お姉さまは結婚相手として見えないのじゃないかって心配してるのよ」
「そんなわけないよね? めちゃくちゃかわいくなるよ? 今だってかわいいんだから、かわいい格好したらさらに可愛くなるに決まってる! わあああ! たのしみ♡♡♡」
ほらね。
でもラウが喜ぶならいいかな。やっても。
「変なこと言ってごめんね。やりましょう、結婚式。私が成人してからってことよね?」
「いいのですか、お姉さま」
「ええ。ラウがやりたいなら叶えるわ。私だってやりたくない訳じゃないし」
そうよ。ラウに追いついて並び立つ。努力すると決めたのだから、お粥ばかり食べてる場合じゃない。寝て食べて稽古して健康にならなくちゃ。
いつまでも過去に侵食されてやるものか。
「それでどんな結婚式したいの?」
改めて聞けば、ラウの瞳が喜びでキラキラした。
「希望はフェリに可愛い格好させたい!あとはみ〜んなにわたしの嫁だって見せびらかせたい!! 人間よりは精霊にだけど。どこがいいかな?」
みんな、う〜ん、て考え込んじゃってる。
私も思いつかない。精霊に? 先日のグラハスの森でのこと気にしてるのね。
私は見えないし聞こえないからわからなかったけど、酷いこと言われたのかしら?
私の思考を断ち切る一声がリーから発せられた。
「精霊に、というならシル大陸まで出向けば精霊王のお膝元で挙式もできるかもしれませんが、許可が必要ですね。それよりも手軽にとなれば、スグリムスの森は如何ですか? テラニード東部で王都からもそれほど離れておりません。何よりジーン様が過去精霊守りにしたクリナーシュがいて、近隣周辺ではもっとも精霊の加護が厚い場所です」
「スグリムスって、森入ってすぐのところに祭壇造ってあって王位継承の儀式するところでしょう」
「そうです。ステンドグラスも綺麗ですし挙式にぴったりかと。厳かな雰囲気で…」
「いえ、王家の施設でしょう、という話をしているのだけど」
「王家よりも上位のフェリ様が使うことに何か問題が?」
こういうところ通じないのよね。ここにマグがいてくれたら…!
この件は後回しがいいわね。
「場所についての話はまた日を改めましょう。ラウはどんなドレスがいいの? 希望はある?」
うーん、と考え込むラウ。
「いくつか目にはしたけど、遠目だったし全体的な印象だけで、詳しくは分からないのよね」
そうよね。ラウは森の奥の水の精霊守り。
風精と違ってふらふら移動できないものね。
「それなら、仕立て屋に行ってみましょう。ロンダルディアの王都よりもテラニードの王都の方が老舗が多いと思うわ」
テラニード王国の方が精霊術士が多いから、刺繍するにしても作業が早いのよね。
ロンダルディア王国は精霊術士の数が少ないから軍事利用ばかりで商用利用は行ってなかったはず。
うん!と表情を輝かせるラウの向こうに、リーが難しい顔をしてる。
「いまから仕立てて9ヶ月ですか…。流石に難しいかと。まずはお二方からのヒアリング、デザイン画の作成、生地の選定、装飾品の購入と縫い付けなど、到底足りるものではございません。2年は掛かるかと」
「2年〜!?」
ラウがびっくりしてる。私もよ。王侯貴族じゃないんだから。
「ですので、フェリ様は急がずゆっくり養生なさってください。準備はこちらで万事進めますので」
ティーウの隣に座ったリーは楚々と紅茶を口にした。
本当にリーはこういうところがずば抜けてる。
私が親戚の子みたいだって気にしてるのを汲み取ってくれたのでしょう。
2年あれば少しは理想の自分に近づける、と思う。きっと私がまだもう少しと思ったら、準備が間に合わないと言って3年、4年と延ばすのでしょう。
「ありがとう、リー。ラウもそれでいい?」
ラウも何某か感じ取ったのか、問題ないわ、と言ってくれた。
「2年後だって、3年後だって、ずっとフェリといるもの。本当にずっとね」
出会ってまだ1年と少し。
私だってずっといたいから眷属にした。
何千年という時を過ごす。
あなたと。