姫椿桃のボテ腹受難 望まぬ結婚に孕んだ彼女の逃亡劇 作:高牧園
姫椿桃の婚姻譚 望まぬ結婚に孕んだ令嬢は臨月腹で逃げ出した
姫椿桃は、単身で商人家――桂木家へ向かった。
(結婚なんて……と思ったけど、仕方ないわよね……)
名前の通り桃色の髪を揺らす桃は、憂鬱そうに屋敷を見上げる。
――幕府の意向で『鬼灯』を解散させられ、無理やり実家に戻された桃は、帰ってきたその日に桂木家と結婚するよう言い渡された。とてもそんな気持ちにはなれないと拒んだ桃だが、貴族の責務とまで言われてしまえば反論はできない。渋々ながら結婚を受け入れた桃は、今日から桂木の元で過ごすのだ。
(どんな人なのかしら?)
婚姻の儀はなく、桂木とはまだ会ったこともない。
一抹の不安を覚えながら、桃は桂木家に足を踏み入れた。
●
――桃の不安は的中した。
玄関先に現れた桂木は、これといって特徴のない中肉中背の男だった。反物の仕立ては上等だが寸尺は身の丈よりもやや長く、見た目に気を使う方ではないのだろう。長めの髪が両目にかかり、桃がいくら目を合わせようとしても視線は合わなかった。
「……こっちだ」
桂木は桃の挨拶に返事もせず、彼女の腕を取ると庭へ出る。
「ちょ、ちょっと……! 一体、何を……!?」
戸惑いの声を上げる桃に一切の反応を示さない桂木が向かった先は蔵。
蔵の戸を開けると、そこには牢が設えられていた。
「……これは……!?」
蔵に入って一歩も進めば、金属柵に行く手を阻まれる。
ただでさえ狭い蔵の中、牢は冷え冷えとしていかにも不吉な見た目だ――無人の牢に警戒心を募らせる桃の腕を掴んだまま、桂木は懐から牢の鍵を取り出した。
手慣れた様子で牢屋の錠を解いた桂木は、開いた戸めがけて桃を突き飛ばす。
「くっ!?」
突然のことに受け身も取れず、桃は冷たい床に倒れ込む。
薄暗い蔵――あるいは牢は湿った空気で満たされている。足元から這い上がる冷気にゾクリと背筋を凍らせた瞬間、桂木が桃に飛びついた。
「きゃっ!? なっ、何を――」
「黙れっ!」
ようやく口を開いた桂木は、桃の緋袴のスリットに手を突っ込んで下半身をまさぐりだす。
夫になったとはいえ、まだ心は通い合っていないのだ。こんな粗末な場所で、急に迫られても受け入れる気にはなれない――必死で抵抗しようとする桃だが、桂木は盛大な舌打ちをすると、桃の身体を押さえつけて。
「大人しくしやがれ。もう結婚したんだ、お前は俺のモノだ!」
「っ……そんな……!」
乱暴な物言いに絶句する桃の衣服を無理やりはだけさせ、桂木は何の準備もせずに桃の秘所に肉棒を突き立てた。
「うう……ッ!?」
出会ってから一刻にも満たないというのに結合させられて、桃は顔をしかめて呻きを上げる。
家同士が決めた婚姻だ。たとえ想い合うことは出来ずとも、もっと互いを知ってからの交わるものではないのか――混乱する間も、桂木は強引に桃の隘路を割り開く。
「待っ――こんな、ことっ……!」
必死に制止しようとする桃だが、桂木は気遣いのない腰振りを繰り返すのみ。
前後運動を繰り出しながら、桂木は桃の白衣の合わせに手を入れて生乳を揉み始める。
「ううっ……く、ぁあっ……!!」
手に余るほどの爆乳を弄ばれながら、自分勝手なピストンを受ける屈辱は相当強い。
悔しそうに唇を噛む桃が不本意がっていることは分かるはずなのに、桂木は終始自分の快楽のためだけに腰を振り――そして、当然のように膣奥に精子を吐き出す。
「あ……っ、あぁっ……!」
「ふぅ……」
満足そうに溜息を漏らす桂木は、己の欲望を全て桃に注ぎ込むとすぐにサオを抜き取る。
「こんな、ことっ……許されないわ……!」
初夜にしてはあまりにも酷い行為に、桃は乱れた衣服をかき抱いて桂木を睨みつける。
しかし、そんな桃に一瞥すらくれず、桂木は牢を出る。
「え……」
外から牢に鍵がかけられ、桂木は蔵を出て行く。
新妻となった桃はたった一人牢に残されて、冷え切った夫婦生活が始まった――。
●
桂木家における桃の扱いは酷いものだった。
一日中牢で過ごす羽目になった桃は、手足を枷に繋がれた。ただでさえ狭い牢を自由に動くことも出来ず、食事や着替えすら下人の手を借りる始末。桂木に何か言い含められているらしい下人は桃がいくら話しかけても返事すらせず、用を済ませたらそそくさと蔵を後にする。
桃を訪れるのは寡黙な下人と、下衆な本性をむき出しに襲いかかる桂木のみ。
「どれ、今日も使うとするか」
「やめ――」
夜ごとに姿を見せる桂木は、当然のように桃を犯す。
それは夫婦生活というよりは凌辱だ。桂木が桃の様子を伺うことはない。いくら桃が拒もうとしても桂木は聞き入れようとはせず、容赦なく雄幹を突き立てる。
「っいや!! こんなの――っくう……!!」
「ふん、勝手に抵抗しろ」
桂木を押しのけようと枷に繋がれた両腕をもがかせる桃を強引に組み敷き、桂木は桃を遠慮なくえぐり抜く。
(こんな行為で……もし、妊娠なんてしたら……!!)
当然のように避妊をしない桂木の精子は、幾度となく桃の膣内を汚す。
「ぁ……っ、うく、うう……ッ!」
望まぬ精を注がれる悔しさに唇を噛みしめる桃。子宮へ流れ込む雄汁に、桃は行為のあとは無念の涙を浮かべることすらあった。
――容赦ない中出しの日々を続けるうち、ついに桃は桂木の子を身籠ってしまう。
(あんな奴の子どもだなんて……)
牢に閉じ込められたまま、お腹は日に日に大きくなる。
「雌にふさわしい身体になったな。どれ、お産ができる膣かどうか確かめるとしよう」
「っやめて……! 赤ちゃんに何かあったら――」
夕刻、姿を見せた桂木は当然のように桃の膣肉を貫く。
大きくなった腹をさする桂木だが、抜き差しは身重の身体も赤子のことも考えていないだろう荒々しさ。腰振りに合わせて揺れる腹が危なっかしく、不安のせいか張ったお腹がズキズキ痛む。
「あ……っ、あぁっ……」
そうしていつものように膣内射精を済ませ、桂木は挨拶もなしに牢を出て行く。
蔵が開く一瞬だけ、桃は外を覗き見ることが出来た。桃が桂木家に嫁いでから季節はいくらか巡ったらしい――しかし、季節を乗せた風は蔵までは届かず、桃はいつまでもジメジメした牢に繋がれたままだ。
「う……く、うう……!?」
暗澹たる気持ちで俯くうちに、お腹の痛みはどんどん増す。
「っああ……!?」
秘所から桂木のモノではない液体が滴る。
透明なソレは、桃のお腹で赤子を守っていた羊水の一部。ついに破水に至ったと気付いた桃は、押し迫る陣痛に獣のような声を上げてしまう。
「あぐ……ッぅう!! ぅああッ……!!」
たった一人、誰の手も借りない孤独なお産は、夜を徹して行われた。
――明朝、桂木は朝の猛りを持て余して蔵へ向かう。
「……ほう」
牢の中、仰臥する桃の腹はすっかり凹み、豊かな乳房の谷間に埋もれるようにして赤子が眠っていた。
見れば、母子はまだ臍の緒で繋がっている。疲弊しきった桃の様子から見ても、出産が済んだのはつい先刻のことだろう。
「ようやく産んだか。産湯に浸けてやらねばな」
「ぁ……」
徹夜での出産に疲れ果てた桃の胸の上から、まだ名もない赤子が取り上げられる。
親子の証である臍の緒は無遠慮にちぎられて、赤子は桂木が呼んだ下人に預けられる。赤子を受け取った下人が立ち去るのも待たずに桂木は牢に押し入って、出産まもない桃の膣肉に男根を押し込んだ。
「休んでいる暇はないぞ。次の子を孕んで貰おうか」
「っいや……もういやっ、やめて……!!」
桃の隘路がえぐられ、桂木は浅ましい欲望を放たんと腰振りの速度を上げる。
「……ッ!! あ……あぁあッ……」
出産のダメージが残る身体を無理やり開かされて、桃には抵抗する気力も残っていない。
(このまま……ずっと、こうやって……?)
深い絶望とともに、桃の意識は黒く染まる――。
2
それから一年が経っても、桃の窮状は変わらない。
「は……あぁ、ぅ……」
「また腹が大きくなったな。産んだらまた種付けを始めないとな」
連日の中出しによって、桃は再び桂木の子を身籠っていた。
いつ産まれてもおかしくない腹の子、そして牢の傍らで寝る第一子のことを気にもせずに桂木は桃を犯し続ける。腹が大きく揺れても桃はさしたる感慨もなく、うつろな瞳で桂木を眺めるだけだ。
拒絶は数え切れないほど繰り返した。
しかし桂木は聞く耳を持たない。昼夜を問わず桂木の欲望に付き合わされる日々は桃の心身をすり減らし、もはや抵抗の気力すら湧かなかった。
(もう……一生、変わらない……)
無力感に苛まれる桃は、呆然と思うことしか出来ない。
(死ぬまで、ここでこの人の子どもを産み続けるんだわ……)
抗いようのない己が命運を突きつけられた気分で、桃は今宵も桂木の精を胎に受ける。
「っおお……!」
桂木が射精の快感に打ち震えていると、蔵の戸が控えめに叩かれた。
「……誰だ?」
交合を邪魔されたと思ったらしい桂木が不機嫌に問うと、おずおずと下人が顔を出す。
「だ……旦那様、大庄屋の御方が……」
「こんな夜更けにか」
言いながらも、桂木は仕方ないとばかりに溜息をつく。
首長である大庄屋が訪れたとあれば、商人家の桂木はもてなすのが筋。夜遅くの来訪であっても無碍には出来ず、桂木は桃の陰裂から竿を抜くと、身支度をしながら蔵を出て行く。
「して、何用か?」
「それが――……」
下人と何やら話しながら蔵を去る桂木の意識は、大庄屋に向けられている。
そのせいだろう、桂木は牢に鍵をかけることを忘れていた――開いた錠がぶら下がる牢、そして月明かりを薄く忍ばせる蔵の戸を呆然と眺めた桃は、弾かれたように立ち上がる。
(今なら逃げられる……!!)
一年以上も、逃げる隙すらなかったのだ。これを逃せば、もう二度と脱走の好機は訪れない。
そう分かって、桃は慎重に牢の戸を押す。音もなく開いた牢からそろりと半身を出し、桃は、改めて牢を振り返る。
見れば見るほど粗末な牢、桃の私物はほとんどない。
妊婦になってから与えられたいくばくかの毛布のほかには、赤子が眠る寝台があるのみで――。
(……私の、赤ちゃん……)
子の寝顔を見ていると、逃げ出そうとした足が止まる。
望まぬ行為によって産まれたとはいえ、この子は桃の子どもなのだ。赤子を牢に寝かせ、母である桃が犯される傍らに捨て置けるような桂木の元に我が子を置いていけるわけがない。
(この子も、一緒に……!)
桃は牢に戻ると赤子を抱き上げ、蔵の戸を開け放つ。
――月の美しい夜だった。
辺りを煌々と照らす月明かりの下、涼やかな夜風が桃の頬をそっと撫でる……長らく遠ざけられていた何気ない景色に心打たれる桃だが、感慨に耽る余裕は今はない。
(行かないと――)
蔵へ連れて行かれた日の道筋は覚えていた。
桂木家の門を出て、桃はあてもなく道を進む。
「はっ……ぁ、う……」
とにかく少しでも逃げなければいけないのに、桃の歩みは遅々として進まない。
なにせ、外に出るのは一年以上ぶりなのだ。牢に繋がれっぱなしで体力は衰え、連日の凌辱に疲れは積み重なって桃を苛む。加えて腕には赤子を抱き腹にも命を宿した状況では無理を押して走り回るわけにもいかず、桃はヨタヨタと不安定な足取りになるほかない。
「――追っ手を出せ!」
「……!!」
背後から桂木の声が響き渡り、桃はゾッと背中を粟立たせる。
(逃げたこと、知られてる……!!)
遠くの方で男衆の騒ぎ声が響く。逃げ出した桃を捕らえるために、下人たちが一斉にあちこちへ散ったのだろう。
捕まれば、あの日々に逆戻り。
桃はいてもたってもいられず、近くに広がる森へと逃げ込んだ。
「はっ……! は、っ……!!」
森を抜けた先に何があるのかも分からないまま、桃は無我夢中で足を動かす。
下生えが足に触れるたび痛い。もしかしたら草で肌が切れているのかもしれないが、確認する時間も惜しい。木々が深い森の奥までやっとの思いで行き着く桃だが、背後から聞こえる足音は徐々に迫っている。
「もっと奥か?」
「赤子を攫った妊婦なら、そう遠くへは――」
何やら話しながら草木をかき分ける男たちの物音からするに、彼らの進行速度は桃のはるか上。
(追いつかれる!)
ただ逃げるだけでは追いつかれ、冷たい牢に引き戻されるのみ。
桃は素早く周囲に視線を巡らせて、草むらを見つけるとそこに身を屈めた。
(お願い……!)
草むらの中、必死に息を殺す桃のそばに、追っ手の男たちが通りがかる。
「ここにはいないか……」
「もう少し探してみるか?」
手に明かりを携えた男たちの死角にいるとはいえ、完全ではない。
彼らが何かの気まぐれで草むらに踏み込めば、その時は完全に桃は終わりだ――恐怖と緊張に震えながら、桃は抱きしめた赤子の寝顔を見つめ、気持ちを落ち着けようと必死だ。
「――!!」
しかし、しゃがみこんだのが悪かったか桃は急激な腹の痛みに襲われる。
同時に、膣から水が流れ出る――破水したのだと理解する桃の目の前で、溢れ出た羊水は草に打ち付けられ、ぴちゃぴちゃと小さな音を立てる。
「うん? 何か聞こえたか?」
「虫か何かだろう。……だが、一応見てみるか」
(だめっ!! 来ないで……!!)
追っ手の足音が近づく――尋常でない腹痛に桃は傍らの木の枝を咥えて、砕かんばかりに噛みしめる。
「……っ!! ……!!」
第二子はすぐにでも外に出ようとしていた。胎の奥で赤子が動き、みずから子宮口を飛び出すのが分かる――桃は慌てて膣に手をやって、赤子を産まないように必死でせき止める。
「うーん、やっぱりいないなあ」
追っ手は草むらを隔てたすぐそこまで来ている。
(来ないで……!! 早く行って……!!)
あと少しでも進めば、あるいは明かりを気まぐれに揺らしさえすれば、桃の姿は暴かれてしまう。幸運を祈るほかない桃は子宮まで縮み上がって、赤子は子宮の収縮に合わせて産道を下る。膣を押さえる桃の手に赤子の頭が触れる中、桃は子がそれ以上降りてこないよう懸命に押さえつける。
「おい、そろそろ先に行こうぜ」
「ああ、そうだな」
追っ手はそう言いながら、森の更に奥へと進む……彼らの足音が遠のくやいなや、桃は膣から手を離していきみだす。
「ひ、っひ……!! ふっ……!」
産まれかけの半端な状態では、身動きも取れない。
今度は逆に早く産もうと急いでいきむ桃は、森の奥へ向かった男たちが戻ってくるより早く出産を終えねばいけないのだ。
「っひ――、ううっ……!!」
森の中、地面に尻をつけてあらん限りにいきむ桃。
第二子は比較的易しく産道を通り、膣から頭を覗かせるが、だからといって産婦が楽を出来るわけではない。早く第二子を産みたいと気持ちが急く中、桃は全力を尽くしていきみ、母体の望みに応えるように胎児は小さな身体を膣外へ滑り出す。
「ぅぐうっ……!!」
バキンと、桃の口元で木の枝が砕け散る。
同時に産まれた赤子が、か細い産声を上げた――同時にどこかで犬の遠吠えが響いて、産声は夜風に紛れる。
「っは……ぁあ、っは……」
砕けた枝を吐き捨てて、桃は自分の頬を張る。
緊張の中でお産を済ませたのだ、意識は今にも吹き飛びそう。
しかし、この場で気絶すれば、森の奥へ向かった追っ手が戻る時に見つかってしまう。二人の我が子もろともあの牢に連れ戻されてしまえば、桃は今度こそあそこから逃れられないだろう。
(立ち止まるわけにはいかないわ)
紅袴の裾を裂いて、産まれたばかりの我が子のためのおくるみに代える。
後産は済んだ。臍の緒をちぎって結ぶと、桃は先ほど以上に覚束ない足取りで森を進みだす。
(行かないと――)
宛はない。
この先どうなるかは、まったく予想も出来ない。
(――でも)
胸に抱く子どもたちが幸せに暮らせるようにしなければいけない。
母としての覚悟を胸に、桃は暁の迫る空の下を歩みだすのだった。