非業夫人 売り飛ばされた母親は拷問ショーで肛門喪失・牝去勢・四肢切断で人生終了 作:高牧園
D4:牝去勢
肛門を自ら破壊したショックに気絶した理沙が次に目覚めたのは、ステージの上だった。
「っ……まだ……?」
今日のショーはまだ終わらないのか、と混乱しかけるが、客席の様子が昨日とは少しだけ違う。
「……丸一日経ったのね……」
しばし周囲を見回して、理沙はそう理解した。
三日目の、肛門に焼けた棒を突っ込む拷問ショーの後で一日近く気絶し、四日目のショーが始まる今まで目を覚まさなかった――ということだろう。
二十時間近く眠っていたはずだが、身体の消耗は計り知れない。出血もできない肛門はジクジク痛み、失われたクリトリスの跡地と共鳴しあう。初日に受けた焼きごての痛みは少しはマシになったが、トータルで見れば痛みは強くなる一方だ。
「今日は……何、を……」
呟く声は掠れていた。
三日連続で喉を潰すほど叫んだのだから無理もない。涙を流し続けたせいで瞼は腫れぼったいが、意識がないうちに着替えさせられて髪やメイクを整えられている。服を着てステージの真ん中に仰向けに倒れていた理沙は痛みを堪えながら身を起こし、モニターに目を向ける。
【去勢せよ】
命令はそれだけ。
もう一枚のモニターも、琴香のいる室内を映す定点に変わりはない。去勢、との言葉に理沙は憂い混じりに目を細め、それから台へと近付いていく。
台の見た目は昨日までとほぼ同じだが、今日は鉄パイプを収める筒状ではない。銀の覆いを外して台の上面を覗き込めば、そこには二つの道具が置かれていた。
「――っひ……!!」
思わず息を呑んだのは、一つの道具に見覚えがあったから。
太い針だった。二日前に使ったピアッシング用ニードルに似た凶器に取り乱しかける理沙だが、よく見れば一昨日のニードルとは違うらしい。
(前より……酷い)
乳首とクリトリスを穿ったニードルより針は太く、しかも両端が鋭く尖っている。
さらに、針の中ほどには仕掛けが施されている。針をそっと持ち上げて両端から力を加えると針はわずかに縮み、力を抜けば元の長さに戻る。わずかな伸縮性があるのはどのような意図かと首を傾げながら、理沙はもう一つの道具にも目を向ける。
「これは……?」
一見しても、正体はよく分からない。
ぱっと見はハンドベルにも見えたが、肝心の鐘部分は完全に閉じていて、持ち手を揺らしてみても何の音もしない。持ち手が回転することに気付いて回してみると、壺型の先端がゆっくりと開いた。
「……」
広がる姿に、なぜかクリオネの捕食シーンを思い出す。
先端は、薄い金属板を四枚張り合わせたものらしい。覗き込むと傘の骨組みのようなものが見えるが、軸の先は尖って痛そう。さらによく見れば、広がった四枚金属の先端も針のように鋭くて、どこかへ突き刺すものなのだと分かる。
「こんなもの……」
『苦悩の梨』と呼ばれる拷問器具の名前を知らなくても、禍々しさだけは感じ取れた。
(これを使って、去勢――)
道具は二つ、命令は一つ。
去勢をと求められても、そもそも理沙は女性で、男性機能は持っていない。去勢するような生殖機能など――とまで考えてから、理沙はハッとして下腹部に手を当てる。
●
(……まさか)
嫌な予感は確信に変わる。
本当ならオスの動物に使う「去勢」って言葉だけど……赤ちゃんを作る機能を捨てることを意味するのなら。
私にも、その場所は、ある。
「――」
タイミングを見計らったように、後ろで音がした。
「な、なに……!?」
振り向けば、ステージの幕から黒服の男の人が何人か現れる。
彼らが押す台車には、椅子――分娩台が乗っている。ステージの真ん中で男の人たちは止まると、分娩台をその場に下ろし、またたく間に立ち去ってしまう。
「……」
ここに座って、しなければいけないの?
分娩台に座れば、客席に向き合うことになる。大きく足を開かせる機能もある分娩台で、私は膣と子宮まで見られてしまうってこと?
(そんなこと――)
お医者さんに診てもらうならともかく、そんな恥ずかしいところ、大勢の人に見せるものじゃないのに!
それに、今の私の下半身は本当に酷いことになっている。下腹部に焼き印があって、クリトリスは付け根から無くなって、お尻の穴は……ぐちゃぐちゃに壊されて。診察台に乗って足を開いたら、そんな恥ずかしい場所が何もかも丸出しになってしまうのに。
(――琴香には、させられない)
縋れるものはそれだけ。
初めて事務所につれて来られた時、私が何も言わなければ、琴香も同じ目に遭っていたはず。昨日までとほとんど同じようにベッドにうずくまる琴香のちいさな姿を見れば、痛みすらかき消す勇気が湧いてくる。
(大丈夫。……私は、どうなっても大丈夫)
自分にそう言い聞かせながら、ストッキングとパンツを同時に下ろす。
脱いだものは畳んで置いて分娩台へ。ニットワンピのお尻部分の布を持ち上げてから座ると、お尻の皮膚に分娩台の冷たさがダイレクトに伝わってくる。
「っ――うう……」
座っただけで、お尻の穴――があった場所が猛烈に痛い。
昨日のショーが終わってすぐに気絶して、目覚めた時にはもうステージ上にいたから、お尻の穴がどうなっちゃったのかは見ていない。
……ううん、時間に余裕があったとしても、こんなに痛いお尻がどうなっちゃっているかなんて見る勇気はないかも。出産した時の会陰切開よりずっとひどい痛みで、中も外もズタズタにされているのが感じられる。
このショーが終わって、自由になったら真っ先に病院に行きたいけど、お尻の穴はもう一生使えないかもしれない。
本当に、琴香がこんなことにならなくて、良かった。
(琴香)
画面の中の琴香を見つめる。
昨日までとまったく変わらない様子でうずくまる琴香。荒い映像で表情までは見えないけど、琴香は何が起きたのか心配になっているはず……会えたらずっと一緒にいて、寂しい気持ちをなくしてあげないと。
――そのためには、何をしてでも、生きて帰らないと。
「……」
分娩台にしっかり座り直すと、椅子が動き始めた。
背もたれに寄りかかった背中がゆっくり倒れて、反対に脚は少し持ち上がる。
ふくらはぎまで押さえるシートがゆっくり開く。初めて婦人科に行った時も驚いたけど、自分の意志とは無関係に脚を開かせてくるこの椅子は少し恥ずかしい。特に今は、客席にいるたくさんの人達の前なのだし。
「、あ――」
音もなくM字開脚にさせられて、私の恥ずかしい場所は丸見え。
客席の人たちの顔は見えないけど、視線だけは強く感じられた。私の膣を見ている人、クリトリスがあった場所を見ている人、壊れちゃったお尻の穴を見ている人――たくさんの人に見られる恥ずかしさがつらくて、手の中にある二つの道具をぎゅっと握りしめる。
――ニードルと、ハンドベルみたいな変な道具。
この二つを使って去勢――生殖機能を失う、ってこと。
(……もう、赤ちゃんは……)
椅子はもう動きを止めていて、あとは私が始めるだけ。
そうなると、自分がこれからすることの重みがのしかかってしまう。
――なんとなく、子どもは二人か三人くらいは欲しいって思っていた。
生活のこともあって思うようにはいかなくて、結局琴香を産んで終わりにはなっていた。年齢的にまだ出産はできるけど、今のところ予定はない。琴香がいるだけで毎日が宝物みたいにキラキラするから、別に二人目がいなくても構わない――とは、思っていた、けど。
(こんな形で――だなんて……)
赤ちゃんを迎える可能性を、自分の手で潰すのは、あまりにも重くて。
手が震えたまま、なかなか動き出せない。
今から私は、自分の子宮が、二度と使い物にならなくなることをする。新しい命を授かる可能性を完全に失うのは、こんなにも怖い。
(――でも、琴香はいるもの)
こんな目に遭う前に、琴香と出会えて本当に良かった。
赤ちゃんを産んで育てる幸せが、私の人生にあって――本当に、良かった。
「……ぅ、……っく……!」
理由も分からない涙をボロボロこぼしながら、縦に持ったニードルを膣に近付ける。
持ち方としては、昨日の熱い鉄パイプと同じ。でも今日のニードルは冷たいし細いから、入れただけで膣がどうにかなることはない。
「……あ……」
怖くてたまらなくて、これから私を痛めつける拷問道具をぎゅっと握りしめる。
膣にニードルの先が触れる。……大丈夫、触れただけなら、切れたりしないから。
(力……抜かない、と……)
分娩台で足を広げているせいで、なんだかお産を思い出す。
状況はあの時の真逆。私は今から子宮に恐ろしいものを入れて、赤ちゃんのための機能を、ひとつ残らず壊さなきゃいけないんだから。
「うっ……!」
自分を壊すために、必死で呼吸を整えるなんて馬鹿みたい。
お産の時も、助産師さんから何度も「息を止めないで」って注意されたのを思い出す。あの時教わったことを、今度は去勢のために使っているなんて……嫌になる。
「ん……ぅう……!」
膣の中は乾いていて、ニードルに引っかかりそうになる。
少し濡らしたほうがいい……? と思ったけど、もうクリトリスもなくて、すぐに膣を濡らすのは難しそう。
乳首にもピアスが開けられているし、私が自分の身体を気持ち良くする方法なんてどこにも残されていないみたい。気持ち良くなるどころじゃない数日ですっかり頭から抜けていたけど、私はもう、本当にこれまでとは違う身体に変えられているのね。
「く――痛っ、……っふ……!」
慎重にやっていても、膣の奥になるにつれて、道はどんどん狭くなっていく。
手は震え続けているせいでニードルの先端はぶれる。コントロールが難しい針先が動くたびにニードルが揺れて、自分で自分の膣をチクチク刺してしまう。
「ぅ……っぎ、ぃ゛……!」
痛みにクラクラしながら、お産の前に見せてもらった子宮の模型を思い出す。
ニードルで卵子を作る卵巣を刺すなら、ニードルは子宮の中にまで入れなきゃいけない。……膣よりずっと痛いはずだけど、やらなきゃいけない。
「ンぐ――う、う゛……!?」
少しずつ進むニードルの先が、グニッと硬いものに当たった。
……自分で触るのは初めてだけど、これが子宮の入口……?
「ふ……ぅ゛うっ……!」
ニードルを掴んだ指を伸ばして、そっとその場所を触ってみる。
生温かくて、ここが臓器だってことを改めて思い知る。不気味な感触の膣の奥をあちこち触ると、ちょっとだけ円みを帯びて膨らんだ、他の場所より硬めのものがある。
さらにその場所を慎重になぞってみれば、微妙な凹みがある……たぶん、これが子宮の入口のはず。
「ぅくっ……」
改めてニードルを持ち直して、さっき確認した子宮の入口に狙いをつける。
お医者さんは簡単に子宮を開いて中の様子を診るけど、私はプロじゃないし、何より妊娠していない今は子宮の入口は閉じちゃっている。このままやっても開くのか心配になりながらニードルの先を向かわせると、鋭い痛みがお腹の奥に走った。
「く――ぁ゛あっ……!!」
痛い。
痛いけど……大丈夫、狙いは当たってる。
お医者さんが子宮を診る時みたいな器具もローションもないから痛いだけ。ニードルの先で肉を刺したのよりは痛みのレベルは低いから、眉間に皺は寄るけど我慢はできる。
「ぅぐ……う、う、う゛っ……!!」
ゆっくりと、ニードルを奥へ差し込んでいく。
ニードルをつまむ親指と人差し指の先も子宮の中へ。指二本で自分の子宮を広げるのはものすごい違和感があって吐き気もするくらいだけど、とにかく進めなければ始まらない。
「く、ふ――ぅ……!!」
ニードルと手が、子宮の中に入った。
ここまででも随分疲れたのに、まだやらなきゃいけないことはある……私は深呼吸をしてから息を止めて、ひと思いにニードルを九十度回転させた。
「っぎ!!」
これまでとは違う鋭い痛み。
それも当たり前のこと。私の子宮の中でニードルは横になって、両端の針が子宮の壁に突き刺さっている――痛い、痛い、目の前が真っ赤になる!
「ぎ――ぃぎ、ぎ……!!」
めりめり、めきめき、体の奥から音が止まらない。
ニードルは私の子宮の左右に突き刺さって、でも止まらなくて、どんどん深く刺さっていく――我慢できない痛みに手が震えて、これまでみたいに気絶しそう。
(早く、しない、と――!)
手に持っている不気味な拷問器具を、閉じたまま膣に突っ込む。
「ぅぎッ!!」
膣に突っ込んだ拷問器具の痛みと、子宮に刺さるニードルの痛み、どちらに叫んだのかも自分では分からない。
目の前を赤黒くチカチカさせながら、必死で道具を膣の奥、開いた子宮の中に。ガチンッと鈍い音が子宮内で響いたのが分かる。
「ぁ゛――」
ニードルの振動。刺さった傷痕が深くなる。痛い。痛い。
「ぎゃ゛、」
手がぐるぐる動いて、拷問の道具が開いて、ニードルをよけながら奥に進む。
手が、止まらない、これを最後まで広げなきゃいけないって、なぜだかそう思って。
「――ぎ!!」
メキメキメキメキ――って音がして、子宮が内側から広げられていく。
お腹の奥で傘を広げた拷問器具。先端の尖った場所が、私の子宮の一番奥に刺さってる。
「ぎゃぎ――っひ、ィ゛……!!」
足が勝手にガタガタ震え始めた。
昨日の鉄パイプの熱さとは全然違う痛み。身体が内側も外側も動いちゃうから、拷問器具を掴んだ手が滑ってうまく持てない。
「は……ぎぁ゛ッ!! ぁぎあ゛あぁ゛ッ!!」
去勢なんだから。
中身は、引っこ抜かなきゃ――いけな、くて――。
「ッ――琴香ぁ゛ッ!!」
大事な人の名前を叫んで正気を取り戻す。
痛みはどんどん心と頭を侵食する。もうすぐ意識が切れる――その前に、去勢を、去勢をやり遂げないと、琴香が!!
「ぁ゛あぁ゛あぁあ゛あ゛あ゛ッ!!」
こんなに壊れた身体、喉が潰れたって構わないと叫びながら、腕を思い切り引いて。
――ぷち、ぷちって。
子宮の中で、左右にふたつ、何かがちぎれる音がした。
●
「ぎぁ゛あぁ゛あ゛あ゛あ――ッ!!」
ニードルを挿入した時の慎重さとは打って変わって、子宮は一息に引きずり出された。
子宮内でめいっぱい広げられた苦悩の梨の針先は理沙の子宮内壁に杭打った。ニードルとも絶妙に噛み合った苦悩の梨を外側に向けて引いたせいで、子宮はほとんど完全な形で観客たちの前に姿を見せた。
「ぁぎぅ゛ッ!! ぅぎ――ぎッ!!」
ヌラヌラと妖しく濡れ光る子宮は赤橙色。
苦悩の梨を咥えて大口を開けた子宮口が客席を睥睨する。あまりの痛苦に理沙の腕には力が入りっぱなしで、子宮脱を起こした後も腕は突っ張り、抜き取った子宮を掲げるような格好にまでなってしまう。
「きぃ゛い゛ィ――!!」
叫ぶ理沙の、空っぽになった子宮奥から鮮血がドッと流れ出る。
ニードルが突き刺さった卵巣は胎内に取り残されている。卵管の一部も胎内にあるはずだが、作られる卵子の行き先も、受精卵のための揺籃もすでに失われた後。
「――はッ……ぎ!! ぃぎ――ぃ゛あぁ゛……ッ……!!」
悲鳴は徐々に泣き声へ変わる。
女の機能を完全に奪われた悲しみに、理沙は泣きじゃくることしか出来なかった。