乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと 作:馬門戒明/輪島ライ
その後は2人で砂浜に腰掛けて軽食と飲み物を味わって、もう一度だけ海水に入って遊んでから私は坊ちゃまと砂浜を後にした。
更衣室で水着から外出着に着替え、私と坊ちゃまは海岸線に建てられた旅館に入って宿泊手続きをした。
この沿岸の都市でも亜人や半亜人の宿泊を敬遠する旅館はあるけれど坊ちゃまが事前に調べてくれたこの旅館は経営陣に亜人がいることもあって私のような半亜人も積極的に受け入れていて、旅館の通路には亜人同士の連れ合いの姿さえも見かけた。
「それではごゆっくりおくつろぎくださいませ。ご夫婦ですか?」
「いえ、私は……」
「夫婦のようなものです。ね、ホルスタイン?」
受付で宿泊手続きを対応してくれた恰幅のいい中年女性の職員は外見上同い年ぐらいに見える私と坊ちゃまを見て何気なく尋ねて、坊ちゃまが44歳の私の夫と思われるのを避けようとした私に坊ちゃまは私の肩に右腕を回して笑顔でそう言った。
今この旅館に日頃の知り合いなどいるはずがないということに私は今更気づいて、今日だけは遠慮せずに坊ちゃまの恋人として振る舞おうと心に決めた。
夕食まではまだ時間があるのでそれまで部屋でゆっくり休むことにして、私と坊ちゃまはそれぞれの荷物が入った合成樹脂で作られた車輪付きの収納箱を客室の隅に置いた。
一旦部屋着に着替えようかと考えた私だけど、客室の中央にある低い机の上には茜色と紺色の羽織物のような衣類が畳まれて置かれていた。
「坊ちゃま、この衣類は何でしょうか?」
「ああ、それはこの近くの孤島で暮らす人々の伝統衣装だよ。上下まとめて1枚の布で作られてて、腰の部分を紐で留めて着るんだって。僕も今日はこれを使おうかな」
「それは興味深いですね。私もそうします」
「僕も詳しくはないけどホルスタインこれの着方分かるかい? あっ、図解が置いてあるね。まず僕が着てみるよ」
衣類の横には辺境に暮らす亜人でも理解できるよう図を示しつつ平易な言葉で記された伝統衣装の着用法の説明書が置いてあって、坊ちゃまはそれを見ながら紺色の伝統衣装を身に着けた。
坊ちゃまが伝統衣装を着用する姿を近くで見た上で、私も一旦
説明書には裸の上から着てもよいと書かれていたけれど、流石に心もとないので私は下着の上から伝統衣装を着ることにした。
この客室に姿見はないので自分で自分の姿を見ることはできないけれど、腰元で衣装を固定する紐はしっかりと結びつけることができた。
「坊ちゃま、いかがでしょうか?」
「ホルスタイン、その衣装すっごく似合ってるよ。普段のメイド服もかわいいけどホルスタインは何でも着こなせるんだね。明日お土産に一着買いに行こうか」
「ありがとうございます。では坊ちゃまとお揃いで一着ずつ買いたいです……」
身体の輪郭を隠す茜色の布の中で豊満な胸元だけが目立っている伝統衣装姿の私を見て坊ちゃまは頬を緩ませていて、ただ珍しい服を着ただけで最愛の人にここまで褒めてもらえる私はこれ以上なく恵まれていると思った。
しばらく2人でとりとめもない話をすると、私は柔らかい緑色の繊維の板が敷き詰められた客室の床に坊ちゃまと並んで寝転んだ。
お互い伝統衣装を着たままで無言で見つめ合っていると、坊ちゃまは私の背中に腕を回して私に軽い口づけをした。
いつものように舌を絡めることはせずに、坊ちゃまと優しい口づけを何度も交わす。
2人だけの静かな世界で、私と坊ちゃまはお互いをいたわりつつ愛し合っていた。
それから間もなくして孤島の伝統衣装を着た旅館の女性職員2名が部屋の扉を3回叩いて、彼女らは私たちの客室に夕食を持ってきてくれた。
やはり孤島の伝統食であるといういくつもの小さな皿に盛られた海鮮や野菜を主体とした豪華料理が低い木製の机の上に所狭しと並べられ、私と坊ちゃまは机を挟んで緑色の繊維の床に座ると2人で美味しい料理に舌鼓を打った。
伝統料理の中には私が普段から入手できる食材で再現できそうなものもいくつかあって、料理を口にしながら味付けの再現法について考える私に坊ちゃまはホルスタインは根っからのメイドさんなんだね、と冗談めかして言った。
私たちが食事を終えたのを見計らったかのように先ほどの女性職員たちは再び客室を訪れて、食器を全て片付けてくれた。
旅館の上階にちょっとした遊戯施設がありますよという女性職員の言葉を聞いた私と坊ちゃまは客室を出て、階段を上ると通路の一角から何かが叩かれるような音が聞こえた。
いくつもの長方形の台を挟んで宿泊客たちが持ち手の付いた板を振るっていて、どうやら小さな白い球を打ち返し合っているようだと私は気づいた。
「ホルスタイン、あれは沿岸の都市で流行してるちょっとした球技なんだよ。上級学校でも同好会があって、実は僕も基本的な規則は知ってるんだ」
「そうなのですか? 私にもできるでしょうか」
「子供でも女性でも安全に楽しめる球技だし、ホルスタインは人よりも運動ができるからきっと大丈夫だよ。一緒にやってみない?」
「はい、ぜひお願いします」
坊ちゃまはそう言うと私の手を引いて広い部屋の隅にある空席の台まで歩き、私に持ち手付きの板を手渡した。
まずは白球の打ち方から練習しようと坊ちゃまは私の両腕を背中から持って教えてくれて、ある程度練習すると私も小さな白い球を台の上の狙った場所に打ち込めるようになっていた。
それから私は坊ちゃまと長方形の台を挟んで白球を打ち合い、坊ちゃまが手加減してくれたこともあって初めて遊ぶ球技を心から楽しめた。
この球技ではあまり腕力は使わないけれど激しく動き回りながら白球を板で叩き返す必要があって、しばらく遊ぶと私も坊ちゃまも息を切らしていた。
「坊ちゃま、そろそろ休憩いたしましょうか。私も汗をかいてしまいました」
「そうだね。僕もホルスタインの魅力的な姿はあんまり他の男性に見られたくないし……」
坊ちゃまは示唆的なことを言って私に目配せをして、私は彼が言いたいことをすぐに理解した。
2人で手持ち付きの板と白球を長方形の台の下に置かれた
そして……
「ホルスタイン、かけ湯が済んだらここにおいでよ。身体は後で中のお風呂でちゃんと洗えばいいよ」
「そうですね、では失礼して……」
この旅館の1階にある客室の庭は誰からも見られないよう高い塀で囲まれている。
それは庭に広々とした露天風呂が造られているからで、坊ちゃまは割高な宿泊費を支払って今日この客室を選んでいたのだった。
海沿いにあるこの旅館の塩分の混じった温泉の湯に私は両脚を浸からせ、そして肩から上だけを出して全身をお湯に沈めた。
温泉には布を浸けないのが作法なので私も坊ちゃまも生まれたままの姿でお湯に浸かっていて、私も坊ちゃまも少し恥ずかしさを感じてお互いの姿を正面から見られずにいた。
しかし、坊ちゃまは意を決した表情をすると私にこっちにおいでと言って、私はその言葉を受けてお湯の中で坊ちゃまの開いた両脚の前に腰を下ろした。
坊ちゃまは私の脇腹に両側から手を回し、そして私の身体を両腕でぎゅっと抱きしめた。
屹立した雄々しい竿が私の臀部に押し当てられ、私は胸がきゅっと縮こまるような緊張を覚えた。
「ホルスタイン……」
「……」
「触ってもいい?」
私の耳元に口を近づけて尋ねた坊ちゃまに、私は無言で頷いた。
坊ちゃまの両手が私の大きな乳房に伸び、手を添えるようにして両乳をつかんだ。
お湯の中では容易に持ち上がる重量のある私の乳房を坊ちゃまはたぷたぷと持ち上げ、そして先端にある
「っ……」
「ホルスタイン、好きだよ……」
「あ、あ……坊ちゃま、そこは……」
坊ちゃまはお湯の中で私の豊かな乳房を思いのままに揉みしだいては乳頭を刺激し、そして私の耳元で囁きながら私の首筋に舌を這わせた。
首筋の性感帯が敏感な私に対して坊ちゃまはいつもこのやり方で私の身体を
「ホルスタイン、お湯の中で挿れてみてもいい?」
「それは、ぜひ……。ですが、旅館に迷惑になりませんか?」
「この旅館は宿泊ごとにお湯を入れ替えるらしいんだ。だから大丈夫だよ」
「そうなのですね。では、お願いいたします……」
優しい愛撫で私の秘所からは既に愛液が流れ始めていて、粘性を持った液体はお湯の中に溶け込んでいた。
坊ちゃまの男性の象徴からも粘液が溢れては私の臀部を伝っていて、私はこの温かいお湯の中で坊ちゃまの体液を早く受け入れたいと思った。
私はお湯の中で少し腰を引いた坊ちゃまの
そして坊ちゃまの両脚の間に再び座り込みながら、雄々しいそれを膣内へと少しずつ受け入れていく。
「……っ、坊ちゃま、全部入りました」
「ありがとうホルスタイン。あったかいよ……。じゃあ、任せるね……」
「承知いたしました……」
体勢の関係で腰を動かせない坊ちゃまが少しでも快感を味わえるよう、私はお湯の中で自ら腰を持ち上げては落としていく。
水中の浮力で身体は容易に持ち上がり、坊ちゃまの怒張が出入りする度に膣内には温かいお湯が一緒に流れ込んでくる。
そして坊ちゃまは私を悦ばせようと両手で豊かな乳房を弄んだり、時には脇腹をくすぐってくれたりする。
「ホルスタイン、幸せだよ……」
「私もです。……坊ちゃまと、お湯の中で一つに……」
「ホルスタインとずっとつながってたいよ。……あ、あ……」
温泉の中で結合している背徳感と自ら腰を動かせない状態での刺激が重なり、坊ちゃまは早くも絶頂に達しそうになっていた。
そんな坊ちゃまの熱いものを通じて伝わってくる快感を少しでも長く味わいたくて、私ははやる気持ちを抑えてゆっくりと腰を上下させ続けた。
「……ホルスタイン、中に出すよ。僕の精液を全部受け止めて……」
「ええ、ええ……坊ちゃまの愛情の塊を、一つも無駄になどいたしません……」
「あ……ああっ……柔らかい……ホルスタインっ……」
坊ちゃまは股間に熱を集めながら両手で私の乳房を激しく揉みながら揺らし、そして体液を一斉に放出した。
少しでも精液を無駄にしたくないと腰を落とした私の膣内に坊ちゃまはどくどくと精液を放ち、坊ちゃまの男根は8回ほど痙攣してようやくその勢いを止めた。
もう何も考えられなかった。
私は坊ちゃまのことが好きだ。
目の前にいる
「んんっ……」
「……坊ちゃま、愛しています……」
私は腰を上げて坊ちゃまに振り向くと、坊ちゃまの頭を両手でつかんでこれまでになく激しい口づけをした。
自分から舌を挿し込み、坊ちゃまと粘膜を介して唾液を交わし合う。
お互いの口内を
それからは温泉を出て部屋に戻り、私と坊ちゃまは裸のまま客室の白い布団の上で激しく愛し合った。
普段は正常位を好む坊ちゃまは今この時だけは獣のような眼光で私の身体を求め、私は布団の上で這いつくばったまま坊ちゃまの猛々しい竿を秘所に打ち付けられ続けた。
「ホルスタイン、ホルスタインっ……」
「あっ、ああっ……坊ちゃまっ……」
「孕んでっ! 僕の子供を産んでっ!!」
「……」
「僕は何回でも君を愛するから。この世界で結ばれなくたって、生まれ変わって君と出会うから……」
「坊ちゃま……」
私は泣いていた。
顔は見えなかったけれど、坊ちゃまもきっと泣いていた。
坊ちゃまは私の大きな臀部を両手でつかんで腰を打ち付ける。
これまで既に何十回も、いや何百回も私は坊ちゃまの精液を膣内に受け入れ続けてきた。
それが実を結ぶことが永遠にないとしても、坊ちゃまの体液は私の心の奥に永遠に記憶として残り続ける。
今この時も、今この時だけは、私は坊ちゃまと幸せな未来を思い描くことができる。
「ごめんねホルスタイン、僕は君を幸せにできない。なのにいつもこんなことを……」
「何をおっしゃいますか……私はもう幸せです。この世のどんな亜人よりも、この世のどんな雌よりも……」
「ホルスタインは優しいね。君と僕がこんな形で出会わなかったら……」
「私にとって坊ちゃまは唯一無二の存在です。坊ちゃまのためなら、私はいつでも生命を投げ出します」
「っ……ありがとう。僕もホルスタインのこと、何度生まれ変わったって忘れないから……」
見ないようにしてきた。
私も坊ちゃまも将来のことに向き合わないままお互いを求めて快楽を味わい続けてきた。
私たちが将来に向き合った先には、悲しみしか待っていないから。
坊ちゃまは腰を痙攣させ、再び私の膣内に精液を注ぎ込んだ。
先ほど温泉で激しく射精した後とは思えないほど大量の白濁液が、温かな粘膜を流れ込んでいく。
男根を引き抜かれた私はもはや腰が立たなくなってしまって、そのまま白い布団の上に仰向けに倒れ込んだ。
坊ちゃまはそんな私に全身で覆い被さり、豊満な乳房の先端にある乳頭を優しく舐めては
私は坊ちゃまの金色の髪を撫でながら、両乳から伝わってくる優しい快感に身を委ねた。
お互いの身体が十分満足した所で、坊ちゃまは自宅から持ってきていたものを私の目の前に差し出した。
裸のままの私は息を呑むと小さな箱に入ったそれを開け、そしてそこから現れたものに目を輝かせた。
「坊ちゃま、これは……」
「そうだよ、結婚指輪だよ。……ホルスタイン、今日ここで、僕の妻になってください」
「……お気持ちは受け取りますが、坊ちゃまは貴族で私は半亜人の従者です。当主様はきっとお許しになりません」
「ホルスタインはそう言うと思ってたし、おじい様も許してくれないだろう。だけど、誰からも認められなくたって僕は君をお嫁さんにする」
「……」
この時がいつか来てほしいと思っていた。それが現実的に不可能な願いであったとしても。
坊ちゃまは全て分かっている。私にこれを渡すことがどういう意味を持つのかも。
「大丈夫だよ、正式に結婚していなくたってホルスタインの将来はずっと保障するから。そのことはちゃんとおじい様にも……」
「その話は、今はなさらないでください。……坊ちゃま、本当によろしいのですか?」
「僕の恋人は、僕が身体を重ねる相手はこれまでもこれからもホルスタイン一人だよ。婚姻関係なんかよりもずっと根源的な絆で、僕はホルスタインとつながってるんだ」
「坊ちゃま……」
私は嬉しさのあまりそのまま坊ちゃまに抱きつき、彼の身体をぎゅっと抱きしめたまま白い布団に倒れ込んだ。
坊ちゃまも私の身体を両腕で抱きしめてくれて、激しい運動の疲れもあってそれからは2人で眠り込んでしまった。
翌朝自然と目覚めた私は坊ちゃまを起こして一緒に室内のお風呂に入り、部屋の前に置かれていた洗いたての伝統衣装に再び身を包んだ。
そして旅館の大広間にある食事処で簡素だが栄養素の整った朝食を口にしながら、私は坊ちゃまと向かい合っていた。
「この汁物は美味しいですね。魚の出汁がよく効いています」
「そうだね、塩分は薄そうなのに味がよく分かるよ。……っ、ごほっ、がはっ……」
「坊ちゃま……」
坊ちゃまは汁物を飲んでから焼き魚を金属の箸で口に運び、咀嚼して飲み込もうとしていた。
しかし坊ちゃまは突然むせ返り、私は慌てて近寄ろうとしたけれど坊ちゃまはそれを右手で制止した。
「大丈夫、大丈夫だよホルスタイン。ちゃんと一人で食べられるから……」
「そうですか。……ごゆっくりお食べになってください」
坊ちゃまが食事中にむせ返ることは最近になって増えてきて、特に起床後すぐはその症状が強かった。
無言で慎重に料理を食べていく坊ちゃまを見ながら、私は止まない胸騒ぎを抑えることができなかった。
この幸せな日々は、いつか必ず終わりを迎える。
それが何年後かは分からないけれど、そう遠くない未来であることは確かだ。
その時、私は坊ちゃまに正面から向き合うことができるだろうか。