Abbey Lover 転生ショタ淫魔のオーバーロード 作:ショタが成長するのはいやおじさん
カルサナス都市国家連合は近年、未曽有の好景気に沸いていた。
金が集まれば人も集まる。
そして、ここにも一人、一獲千金を夢見る少女がいた。
「お嬢ちゃん。ゴーレムをぶっ壊すなら剣よりも槍よりもハンマーがいいぞ。それかメイスかツルハシだ。あいつらは全身金石の塊だからな」
店主の
「なあに。お嬢ちゃんくらいガタイが大きけりゃ、適当に振り回してるだけでも大打撃って寸法さ」
勧められるままに長柄の大金鎚を買い求めた。村での仕事で杭を打つのに木槌なら使った経験があったからだ。
冒険者組合なる役場めいたところで知り合った、同じく駆け出しの同業者と誘い合わせたメイライは、善は急げとその日の内に意気揚々と廃寺院地下の迷宮に繰り出して、そして、散々にやられて逃げ帰った。
「当たらなきゃ意味はないんだーよ」
鈍重な見た目に反して、意外と俊敏な動きをするゴーレムに対して、ド素人の大振りな攻撃は一切通じなかった。「ゴーレムに避けられる奴ははじめて見た」と同行した冒険者たちからも呆れられてしまった。どころか闇雲に振り回すものだから、仲間に当たりそうになって、二度と組むものかと怒鳴りつけられる始末だった。
メイライが買った大鎚は、並みの人間種ならば大の男が二人掛かりでようやく抱えられるような大物であり、それを軽々と振り回せる半巨人の少女は、内心で自分は凄いんじゃないかと浮かれていたのだが、そんな自信は一回の戦いで粉々に砕け散った。
とてもではないが、仕事上がりの酒盛りに顔を出す気にはなれず、メイライが大きな体を縮こめながらトボトボと歩いていると。
「お姉さん、落ち込んでるね、どうしたの、話聞こうか?」
ヤリ目ドシタンハナシキコ科ショタモドキのエントリーである。
事の起こりは構成国の一つオークネイス市の領内で、希少金属であるミスリルとオリハルコンの流通量が不自然に急増したことにある。
不審に思った都市政府が出所を調査をすると、ある一組の急に羽振りが良くなった冒険者チームに行き当った。
小知恵を働かせて、最初のうちは連合を構成する十二国を順繰りに巡って小出しにしていたようだが、慢心からか徐々にその警戒も弛緩して、オークネイス単独で大量に売り捌くようになったことで露見した。
と言っても別に窃盗や盗掘などの犯罪行為を行っていた訳ではない。自分たちが発見した『
オークネイス市から徒歩で半日も行かない荒野に廃寺院が建っている。それ自体は昔から知られている旧跡であるが、その地下に空間が広がっているのを、件の冒険者たちは発見した。
狩猟途中の雨宿り中、好奇心を友とする小人の斥候が、手持無沙汰のままに廃屋内を探検する内に見つけた仕掛けを起動させて、地下への入り口を開いた。
当初は
本来は警備の任に就いていた思われる、
朽ちた守護像を尻目に、冒険者たちは示し合わせて口を噤み、持てるだけ持ち出した分を街で換金して、また持ち出しては換金してを密やかに繰り返した。
なお。念のために言い添えるならば、冒険で得た財宝は持ち帰った物の所有に帰す不文律を鑑みても、彼らの行為は適法である。
「とは言え。魔神の軍勢が残した軍事施設か軍需物資を保管した倉庫と思われる物を見つけておきながら、自分たちの欲得のために国にも組合にも報告せずに隠匿したのは倫理的に如何なものか」
都市から幾らも離れていない場所に、悪魔の軍の拠点が何十年も知られずに存在したと知ったオークネイス首脳陣は肝を冷やした。
自然、語調も厳しくなる。
半世紀前に争乱を起こした魔神の一翼が使っていた紋章がゴーレムに刻まれていた。そして、そのことには冒険者たちも気づいてはいた。知った上で、財宝をすべて運び出すまでは黙っていることを選択したのだった。
冒険者たちは、聴取からほどなく逃げるように国外へと拠点を移した。
さて。以上のことはあくまでも発端である。
本当に事態が動いたのはその後だ。
オークネイス市の依頼を受けて、別のより高位の冒険者チームが調査に乗り出した結果、地下施設は更に下へと続いており、まさに迷宮と呼ぶに相応しい姿をしていることが明らかになった。
地下一層では朽ちていたゴーレムたちも、二層以降では健在であり、迷宮を巡邏する大小のゴーレムたちが調査チームの行く手を阻んだ。
「ゴーレムという物は、使用する素材によって性能が変わることは周知の事実ですが、その物質的な硬度の他に、内包可能な魔力の容量も影響していると考えられています」
調査にも携わった魔法詠唱者は語る。
白金は鉄より遥かに柔らかい金属だが、プラチナゴーレムはアイアンゴーレムよりも遥かに堅牢である。
「しかるに。この迷宮のゴーレムは実に画期的です。コアに魔法金属を用いることで、通常のクレイゴーレムやアイアンゴーレムを超える性能を実現している」
本物のミスリルゴーレムやオリハルコンゴーレム、理論上は製作可能と目される神域のアダマンタイトゴーレムには遠く及ばないとしても、完品を一体拵える金属で十体、二十体と用意できると考えると、その戦力比は逆転する。
どうして過去の争乱で戦場に出てこなかったのかは不明だが、もしも持ち出されていれば、オークネイスは滅びていたかもしれない。
「もっとも。世間からすれば、そんなことはどうでも良くて、その興味関心はもっぱら倒したゴーレムから手に入る希少金属にのみ向かっているようですが」
核として使われている魔法金属の中には、少量ながらアダマンタイトさえ含まれていた。
言うならば、ミスリルにオリハルコン、アダマンタイトがすべて同時に、それも鉱石ではなく
「おまけに、迷宮の各所に設置された不可思議な魔法陣から、倒されたゴーレムが順次補充されているという報告まである」
いつかは打ち止めになるのではないかと懸念する声もあるが、数年が経過した今でも、ゴーレムの再配備が終わる気配はなかった。
尽きざる鉱床の噂は都市を越えて連合国全土を駆け巡り、冒険者たちがオークネイスに殺到した。
淫魔に目を付けられたメイライもその口である。
加熱する『ゴールドラッシュ』に関して、中には「あまりにも都合が良すぎる。欲に駆られた者を誘き寄せる悪魔の罠ではないか」と警告を発する者もいたが、熱に浮かされた者たちが真剣に取り合うことはなかった。
黒幕が居たとして、では誘き寄せて何を企んでいるのかを説明することができなかったのもあるだろう。
「慧眼。悪魔の罠なのはその通り。でも。人を呼び込むことが目的って言うのはハズレかな」
罠を張った当の悪魔がほくそ笑む。
ウクルの企図するところは、アダマンタイトの陳腐化である。
王侯の宝剣や英傑が振るう伝説的な業物と言う現状の位置づけから、一般兵の装備や日用の工具の材料レベルまで引き下げる。
既にミスリルとオリハルコンにはその兆候が見え出している。
「もちろん。この迷宮産のアダマンタイトだけで既知世界の需要を全部賄おうなんて無謀なことは考えていないよ。とてもじゃないけど、ボクの
ゴーレムの創造は配下の悪魔に任せているが、コアとなる魔法金属の創造はウクルの手作業である。
夢を
「病める金属を治療して健やかなる状態に戻す」
鉛を黄金に進める錬金術の金属変成の要諦だ。
金属が病むって何だよって話だが、実際に『治療』を通して卑金属が貴金属に昇華されるのだから、この理屈を援用しない手はない。
無機物も夢を見る。そして夢を祝福し、精神を静めることで、肉体の回復へと繋げる技がある。その併せ技となる。
もっと上の金属も供給可能だが、今はまだ肝心の職人が育っていない。
才能の限界以前に、上位の素材を扱う為の条件が満たされていない状態だ。
「たぶん。世界のどこか、時代のいつかには、ンフィーレア亜種な『あらゆる素材を扱える』生産職垂涎のタレント持ちとかいるんじゃないかって思うんだけど、そんな実際にいるかも分からない特異点を、漫然と待ってるわけにもいかない」
千年前にはいましたとか、一万年後にはいますよとか言われても困るのだ。
それくらいなら、できる範囲で育成した方が建設的だ。
「鍛冶にしろ冶金にしろ生産系の職業レベルはグレードの高い素材を扱った方がレベルの上がりが早いからね」
高レベルのエネミーほど経験値が多いのと一緒だ。現環境で最も経験値効率が高いアダマンタイトに触れる機会を増やすことで職人を育成する。
そして、アダマンタイトを完全に使いこなせる水準に達した職人ならば、それより上の金属も加工できるはずだ。
なんてことを考えていたのだが。
「……いるところにはいるものだなあ」
ウクルの目の前を、鍛冶師になるべくして生まれてきたような女が、肩を落として歩いていた。
八尺様どころか十尺様くらいある巨女を、一目見てチンコにティンときた淫魔が、堕とす前の軽い事前調査のつもりで、情報探査の魔法一式を掛けたことで、彼女が有するタレントが明らかになった。
「『あらゆる金属を加工できる』か」
少し範囲が狭いが、それでも大概、頭のおかしいぶっ壊れタレントである。理屈の上では生産職のレベルが1未満で七色鉱だって扱えることになる。
それは極論だが、ウクルが用意できる限りで等級の高い金属を手にすれば、急速にレベルが上がって行くのではないだろうか。
「まさかまさかだよね。ドワーフ王国や闇小人の集落、各国の職人街を巡っても見つからなかったタレントの持ち主が、駆け出し冒険者の中から見つかるだなんて」
でも、考えてみれば当然の話か。もしドワーフに生まれてそんなタレントを持っていたら、鍛冶の神の申し子として崇敬を集めるのは必定である。噂になっていない時点で、鍛冶とは無関係の所をこそ探すべきだった。
「欲しい。欲しいな」
体目当ての声掛けだったが、今となっては才能こそが欲しい。もちろん。体も欲しいので、セックスはする。その上で、ワンナイトラブで終わらせず、永久に自分の物になってもらう。
強欲な淫魔の王は、無断で彼女の進路を決めてしまった。