Abbey Lover 転生ショタ淫魔のオーバーロード 作:ショタが成長するのはいやおじさん
「まただ」
ある夜、商家の後家の寝室に忍び込んだウクルが遭遇したのは、先客によって精気を吸い尽くされて
淫魔の気を惹いた、ふくよかで婀娜っぽい昼間の姿は見る影もなく、ニ十歳も三十歳も急激に老いたように瘦せ衰えている。
「ボクの狩り場を荒らす奴がいる」
帝都アーウィンタールは大都市である。
三十万と号する人口が支える繁栄は、その裏側に闇を孕んでいる。犯罪組織や邪教のカルトだけではない。その更に下には人に紛れる怪物たちが潜んでいる。
即ち吸血鬼に人狼、魔女、そして淫魔である。
何年も暮らしていれば、他の魔性たちとの縁もできる。
例えば、使い魔にしてやると大上段から呪縛の魔法を掛けてきた所を返り討ちにして、そのまま押し倒して強姦した妖艶な魔女とかだ。
今ではちゃっかり愛人の枠に収まったその魔女が、強大な悪魔の影を後ろ盾に、魔女たちを糾合して
そこからの報告で明らかになったのだが、いつの間にか、とてつもない化け物がいると、化け物たちの間で怯えられる存在になっているらしかった。
ウクルが先住者たちを尊重し、怪物たちは自分たち以上の怪物であるウクルを畏れたことで、互いの縄張りを犯さない相互不干渉の取り決めが暗黙裡に築かれていた。
「だって言うのに。どこのどいつだ。ボクの縄張りで派手に狩りをしてくれちゃってさ」
ウクルは不快げに吐き捨てた。血を吸った痕はないことから、吸血鬼ではなく、同じ淫魔の仕業と思われた。だから余計に腹が立つ。
誰かが自分に喧嘩を売っている。
「――と言うことがあったんだ」
閨での睦言で今日あったことをマザーに報告するのがウクルの日課だった。
「はあ。だれそれと寝た、だれそれを抱いたと聞かされる方の身にもおなりなさい」
淫魔的にはどこそこの料理屋でご飯を食べたよと変わらない話なのだとは承知だが、それにしても保護者としては頭の痛い話である。
「あっはっは。ごめーん。あいたっ」
目の前で揺れるおっぱいに気を取られて、太平楽に気のない謝罪をしつつ手を伸ばすと、ぺしっと手の甲を叩かれる。
他人の食べ残しを漁る趣味はないので、生命力を賦活する淫魔の種族スキルだけ使って帰って来た。精気を奪えるなら与えることもできるのだ。
不完全燃焼の不機嫌は、マザーに甘えて、慰めてもらうことで解消した。
「ですが。昏睡ですか。しばらく前から、わたくしたちの神殿に、原因不明の昏睡者が治療を求めて運び込まれる事が起きています」
「へえ。それって」
「同じでしょうね」
ウクルがこれまで遭遇した被害者たちは、その場で都度回復させてやっているので、彼が行き当らなかった者たちだろう。別の神殿や薬師に運び込まれた患者や、そのまま捨て置かれた者を考えると、考えていた以上に多そうだった。
「我が教区とその周辺でだけ起きているようですよ」
「あっからさまー」
明らかに意図された物だ。
「相手が昏睡するまで精気を吸い上げるなんて、どんな不器用な腹ペコ淫魔が出てきたんだって不思議だったけど、この範囲内に凶悪な淫魔が居ますよって人間たちに知らせてる? だとしたら、ボクも舐められたものだなあ」
怒りで陰茎がいきり立つ。
「思い知らせてやらないと、ね」
草の根を分けても探し出してやるとそう決めた。
「わたくしとしては、あまり危険なことはして欲しくないのですが」
強大で邪悪な悪魔なのは承知の上で、それでも案じてくれるマザーの言葉に、ウクルは嬉しくなった。
「ま。それはそれとして。マザー。これ鎮めてもらえる?」
「はあ……まったく」
調子の良いおねだりに、マザー・ヒジーリアは呆れた風にわざとらしく溜息をこぼしたが、結局は応えてしまうのだった。
ふてぶてしくも、寝台に大の字で寝っ転がって、ぶっといチンポを遠慮なく天に向けている小僧の股座に、ヒジーリアは潜り込むと、聖女の乳房が、屹立する幼魔の肉棒を優しく挟み込んだ。
そのまま「くちゅくちゅ」と下品に音を立てて唾液を溜めると、見せつけるようにして「んべっ」と亀頭に垂らした。乳房を両方から捏ねまわして刺激を加え、鈴口に舌を這わせる。
パイズリフェラも慣れた物だ。
愛息で愛人で旦那様で、そして信奉する神であるウクルの性感を知り尽くした彼女の乳交奉仕は、人の世の娼婦どころか生半な女淫魔ですら裸足で逃げ出すほどの練度に至っている。
「ああ。いいよ。それ好き♡ 出すよ! 飲んで……♡ 飲め……♡」
性感を高めるのを目的とした前戯ではなく、最初から抜く為に行われる絶技を供されて、ウクルは我慢もそこそこに、憤りの念が変じた精液を、聖女の口内で暴発させる。
修道女は躊躇いもなく、喉の奥まで淫魔のペニスを咥え込むと、鉄砲水のような射精を苦もなく飲み干してしまう。
「よーし。気分もスッキリしたし、明日から、本腰を入れて、探すぞー!」
なんなら普段は好きにさせている魔女団に、偶には役立ってもらっても構わない。
そしてエナジードレインでソイツも
そんな風に考えていたのだが、意外にも、その機会はすぐに訪れた。
なぜか、向こうからのこのこと神殿までやって来たのである。
「やあ! 初めまして我が子よ」
「……それは『ノォー!』とでも言って欲しいのかな?」
「うん?」
「いや。こっちの話」
そのインキュバスは、自分こそお前の父親であると名乗った。
二十代前半の甘いマスクをした貴公子風の男である。
背が高く、肩幅は広く、手足はしなやかであった。流行りの服を着て、腰に細剣を佩いている。
襟足の長い銀色の髪と赤い瞳の切れ長の目。輪郭の整った顔の形は面長で、血色の良い薔薇色の頬をして、一筆でしゅっと描いたような眉に、品よく鼻筋が通っている。少し大きめの口がともすれば冷淡に寄りそうな印象を和らげていた。
生半な役者では相手にもならない。
たしかに十代前半の娘が熱を上げるのも不思議ではない。
もっとも。インキュバスというのは美貌美声で女を誘惑する柔弱の美男子か、暴力で女を組み伏せる荒々しい巨漢に二極化しているので、特に珍しくもない。
紅顔とは言え幼児の見た目をしたウクルこそ変わり者なんである。
「我が名はベツヘレム。淫魔の王にして諸魔を統べる大王である」
父を名乗る不審者は、尊大かつ気取った態度で、さらに胡乱なことを口走る。
「はあ。王様ですか。それで、本日は何の御用で来訪を?」
「おっと。お呼びでない感じかな。いや、なに。聖女ヒジーリアを堕とした噂のインキュバスに興味があってね」
「噂ですか」
「いかにも。人間たちには判るまいが、淫魔の目で見れば、同胞の精気を日夜浴びているのは一目瞭然だったとも。ならば自然、誰が堕としたのかという話。それで、調べてみたら、なんとも奇遇じゃないか。まさか私が昔、産ませた子だとは!」
はっはっはっとわざとらしく笑う男の声が不快に感ぜられて、ウクルは眉根に皺を寄せる。
芝居がかった態度が鼻につく。
「奇遇ですね。ボクも探していた狩り場を荒らす無作法者が、自分の父親面してやって来るとは思いませんでした」
「困ったな。とんだ喧嘩腰じゃないか」
「先に喧嘩を売って来たのはそちらでしょう」
言葉は途切れ、両者は睨み合う。
それとして、マザーの堕落が淫魔の間で噂になっているとは知らなかった。井戸端会議に興じる淫魔たちを幻視して、怒り顔を保ちたい状況で、ちょっとだけ面白くなってしまい困った。
「何のことかな」
わざとらしく、困惑した振りをする自称魔王に、ウクルも苛立ちを抑えがたく、そっちがその気ならと、相手の企みを言上げて糾弾する。
「これみよがしに、神殿の周りで事件を起こして、人間たちに淫魔の暗躍を示唆する。自分の手を汚すことなく、邪魔者を始末させようと企んだのでしょう?」
「はえ?」
「あれ?」
「んんん?」
「違うんですか」
「あー。そ、そうだとも! よく見破ったね!」
噛み合わない会話の後で、ハリボテの格好を付ける男の姿に、ウクルは自分が勘違いしていたことを悟った。
困惑した態で嘲って来ていたのではなく、本気で何も分かっていなかったのだと。ことによると、本気でただ大喰らいなだけのポンコツ淫魔の可能性が出てきた。
「……それなら。堂々と乗り込んできたのが不思議だったんですが、そちらは、どんな企みがあるんですか?」
「それは……あれだよ、あれ! やはり、騎士たる者、正々堂々と正面からと思い直したと言うかだね」
しどろもどろになって言い訳する様子に、確信する。「こいつ考えなしのバカだ」と。
あと、王なのか騎士なのかはっきりしろ。
白けた視線を向ける息子に、むかついたのか、ベツヘレムはムッとした表情になる。その後、努めて真面目腐った顔を作ると、気取った口調でこんなことを宣った。
「父として命じます。我が眷属よ。聖女ヒジーリアをこの父に捧げるのです」
「あっ?」
「聞こえなかったかい。この神殿とそこに暮らす女たちを献上しろと言っているんだよ小僧。簡単な話さ。子は親に従うものだ。そうだろう?」
「ばっかじゃないの?」
「……面と向かって罵倒されるとは思わなかったな」
取り付く島もないウクルの態度に、父を自称する不審者は鼻白んだ様子を見せる。
「いや。だって。さっきからずっと馬鹿なんだもん。馬鹿じゃなかったら阿呆だよ」
「うぬぅ。はっはは。考え直す気はないかい?」
「ない」
「愚かな。少しはやるらしいと聞くから、甘い顔をしていたらつけあがりやがって」
「こっちの台詞だよ」
「このっ口の減らないクソガキが!」
紳士の仮面が外れた淫魔は、盛大に舌打ちすると口早に呪文を唱えた。
それに呼応して、輝く銀の槍が男の頭上に顕現する。
「美しい」
ベツヘレムは自分の魔法を仰ぎ見て、うっとりと独語する。
その光景にウクルは目を見張った。
「ふふ。我が大魔法に驚いて言葉も出ない様子だね。聖女ヒジーリアは第四位階魔法の使い手と聞くが、私のコレはそれすら超越した第五の位階にある!」
得意気に長広舌を発する淫魔の姿を目の当たりにして、ウクルは目を伏せてふるふると身震いする。
「震えているね。怖いかい。怖いだろう。なあに。何も恥じることはないさ。君も魔に属する者ならば、この魔法の恐ろしさは肌で感じるはず。なにせ破魔の力を秘めた銀属性の魔法なのだからね!」
勘違いである。
確かに《
悪魔がそれを使うのかという驚きもある。
だが、ウクルの戦慄きの原因は羞恥によるものだ。
「このイキってる感じ。めちゃくちゃ既視感がある。認めたくないけど、血の繋がりを感じる」
思い出すのは、フールーダに分からされる前の自分の黒歴史の姿だ。
師が切り拓いた第七位階魔法を見た今では、第五位階魔法など児戯にしか見えない。
「その身で受けよ! 我が騎士槍の威力を……!」
「はあ。うざっ」
ウクルは溜息を零すと、指を振り振り、片言隻句、呪文を唱えた。
途端に破魔の槍は投擲される前に消え失せた。
「……あれ? へぶぅぉっ!」
一面に疑問符が浮かんだ顔面ど真ん中を、俊足で近づいたウクルの拳が打ち抜いた。
ベツヘレムの体は二度三度と地面を跳ね回りながら、盛大に吹き飛ばされ、神殿の門柱にぶち当たってようやく止まった。
「《
スキルによる強化と弱体魔法を彼我に掛けた上で、倒れている所へ二種類の鑑定魔法を仕掛ける。
生きてはいるようだが、意識が混濁しているのか、自称・淫魔の王様は「うーあー」と呻くばかりで、抵抗する様子はなかった。
バフ、デバフは念のためだったが、やはりと言うべきか、情報に対する何の防御もされていなかったので、鑑定魔法は素通しで入った。
前者は対象の保有する種族レベルが、後者は対象の保有する職業レベルが判るウクルのオリジナル魔法である。
結果、種族は《
「おお。すごい。合計47レベルもあるんだ。あながち根拠のない尊大さでもないんだな」
小説『オーバーロード』の知識があると、他愛もない雑魚と錯誤しそうになるが、英雄的な戦士の一党が死を賭してようやく抗いうる怪物である。
一般の淫魔など歯牙にも掛けない超越者だと言えよう。言うなれば、淫魔という種族の内の逸脱者だ。
「淫魔の
ただし、その内の1レベルは《
ウクルが自作した鑑定の魔法は、位階を抑えた分、性能も抑えめとなっている。
詳細はwikiに頼るのを前提としており、それぞれ種と職の名前と系統とレベルが判るだけなので、この世界産の固有種・固有職の性質は名前から推測するほかない。
職業の方は、wikiにも記載されている物なので、こちらは知れた。《
「なっ何をした!」
そうこうする内に、自失から脱した淫魔の騎士が、血相を変えて問い質す。
「害はないよ。鑑定の魔法でアンタの強さを見てるだけだから」
「ちがう! その前!」
「走って殴った?」
「もっとだ!」
「ああ。《
何の強化も乗っていない素の魔法なんて、当たっても痛くもかゆくもなかったと思うが、服が破れるのは嫌だったので、打ち消しておいた。
「魔法を相殺。できるのか。そんなことが」
「そりゃできるよ」
平然と言うウクルの顔を淫魔の騎士は呆然と見上げる。
やがて理解が至ったのか、ひぃっと悲鳴を発すると、恐怖に顔を歪めながら、這うように逃げ出した。