『おねショタアーカイブ』以外のシリーズものは初めてなので、不慣れな所もあるかもしれませんが、楽しんでくださると嬉しいです。作品の感想やご意見は、末尾のアンケート、コメント欄でお待ちしています。
こちらの作品はpixivでも掲載しています。
《 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27137089 》
「……というわけだ、キリノ。すまないが、明日やる予定の行方不明の男子児童の捜索に当たってほしい。私はアビドス自治区の生徒の件で明日は行けそうにない。関係者には既に伝えてある。気をつけてくれ」
「ほ、本官がですか?承知いたしました!お任せください!」
昨今、いや、昔からこのキヴォトスでは犯罪が絶えません。その現状を改善するためにも、本官は今日も仕事を頑張る所存です。
ただ、今回の捜索は一筋縄ではいかない事情があります。
行方不明の児童の名は相田コウタ君。ミレニアム学園初等部に通う4年生で、学校での成績は平均より少し下。汗ばむ時期にも関わらず長袖を着る拘りを持ち、一昨年のプール学習では見学。普段は無口で、友達もおらず、対人関係にも難があるらしいです。問題は彼の母親。彼女は、初等部に上がる前までに虐待の疑惑があるとのことで児童相談所の御用になった経歴があります。近所のママ友を支配して、自分の悪評を抑える、そんな彼女を前にして、担任の先生も家庭の問題を解決しようにも解決がままならないらしいそうです。そんなわけで、学校の先生や教育機関の関係者は皆、どうしたものかと頭を抱えていたところでコウタ君が行方不明になったわけです。腹立だしいことに、この母親は行方不明になった息子のことを心配せず、最後の最後までコウタ君を罵ってカンナ局長に鉄拳を喰らわされたとのことです。普段から冷静なカンナ局長をここまで怒らせる彼女の下で育ったコウタ君は一体、どこに行ってしまったのでしょうか……。本官は心配でなりません。今回の捜索は期限が過ぎてしまってはいますが、市民からの声もあって異例の長期間に渡るものとなっています……。
それにしても、今日は非番の休みを削っての任務です……。受講している総合教養の課題もまだまだ多いというのに、これでは提出どころか下書きもままなりません。い、いや!こんなことを言い訳にしてはいけません!局長から任された以上、何が何でも完遂してみせます!
と、綺麗事を考えていても、お腹の音は不謹慎なまでに鳴り響いてしまいます。空腹なあまり、少しばかり頭痛がします。多分、仕事をしていて水分補給を忘れたのでしょうか?
とりあえず、作ってきたお弁当を温めて、ウォーターサーバーのお水を取って、休憩しましょう。時間は12時23分。今日のお昼の休憩時間はまだまだありますね。さぁ、いただきま。
「ヤッホー、キリノ。友達から聞いたよ~~。局長からお仕事を頼まれたんでしょ?今日はえらく気合が入っているねぇ」
この聞きなれた声。フブキですね。彼女は本官の同級生で、安全局の同期です。相変わらずフブキは片手にスマホを持ち、両耳にワイヤレスイヤホンをつけています。まぁ、本官は彼女のこんな様子をいつも見慣れていますからね。そんなに驚きません。
「な、何ですかフブキ?あなたも局長を見習ってしっかり仕事をしてください!」
「えぇ……。だるぅ……。私がわざわざ頑張らなくても他人がやってくれるでしょ?それに、自分の身の丈に合わないことなんてするモンじゃないよ。キリノも下手なことをして痛い目に遭わないようにね、ア。あのお店、新作ドーナッツが出るんだ。明後日、休みだし行こうかな。一番乗りしたいなぁ~」
「は、話を逸らさないでください!こういうときこそ誰かが動かないと。コウタ君が危ない目に遭っているかもしれません!」
恥ずかしいことに本官の声は部屋に虚しく響きます。
「全く……。そういうところだよ、キリノ。明日、私は近所のサッカー大会の交通誘導の仕事があるから行けないし。ま、よろしくねぇ……、グゥ……」
「フブキ!まちなさ、……って、寝てしまいましたか、ハァ……」
フブキの机には「仕事リスト」のメモが貼ってあります。そこを見ると、全ての項目に線が引かれていて、今日やるべき仕事は終わらせているみたいです。普段はああしてだらけきったフブキは、やるべきときにはしっかりしています。その癖、本官は肝心なときに限って醜態ばかり晒してしまいます。何と恥ずかしい限りです……。
ですが、そんな甘えを言っていられません。本官は、社会に誇れる警官になってみせます!そのための第一歩、市民の安全は本官が守り抜きます!
次の日、本官は局長の代わりにコウタ君の捜索に当たりました。参加している人の中には公安局の人もいれば、噂に名高いSRT学園の人たち、さらにはミレニアム自治区の人たちまで……。本官は肩身が狭くなってしまいます……。
「おや、存じ上げないお顔ですね。緊張されてらっしゃいますか?」
「ヒャ、ヒャヒッ!」
自分でも恥ずかしい声が出てしまいました。後ろを振り向くと、そこには制服姿の人がいました。この制服、ミレニアムサイエンススクールの生徒さんでしょうか。眼鏡の奥に覗く優し気な眼差しがどうも印象に残ります。
「怖がらせて申し訳ありません。私はC&Cの室笠アカネです。本日の捜索にご協力いたします」
「ほ、本官はヴァルキューレ警察学校、生活安全局所属の中務キリノですッ!カンナ局長の代理で参りましたッ」
目の前にいるアカネと名乗った人は笑顔を一切崩しません。
「フフフ……。仰らずとも、存じてますよ。その様子、余程緊張しなさっているようですね。私たちもいますから、必ずや見つけ出しましょう」
「そ、そうですね……。本官も微力ながらお力になります!」
……とはいうものの、本官は心配なことがあります。近年、ドキュメンタリー番組でもよく言われるようになった「生の72時間」を、この件は軽く過ぎているからです。コウタ君が果たして無事であるかどうか、本官は心配でなりません。ですが、依頼を何でもこなすC&Cの方がいらっしゃるのなら、怖いことはない、はず、ですよね……?
結局、探しても探しても見つかりませんでした……。本官はというと、側溝に脚が嵌まるわ、車線分離標が脛に当たるわ、近隣のスケバンと衝突するわ、迷惑ばかりかけていました。カンナ局長にもフブキにも顔向けなんてとてもできません……。去り際にかけられたアカネさんの慰めも、傷口に塩を塗るような行為でしかありません。
結局、何をやっても本官は誇れるような警察官になるなんて難しいのでしょうか……。
昨日、フブキが言っていたように、本官にこの仕事は高望みだったのでしょうか……。
帰り道の街灯が本官を照らしていることさえ煩わしく思われます……。
遠くで大きな声が聴こえてきます。そういえば、ここの4丁目は他の自治区に行く人のための列車がよく通ることもあって利用者が多いんですよね。駅員さんが羨ましいです。決められた仕事に沿って毎日を過ごせばそれなりに褒められる世界、今の本官にはどうしようもなく羨ましく思われます。意図せずしてため息が口から出ます。
そのとき、本官は変な心持ちで、おかしなことをしました。普段なら通る大通りの道ではなく、住んでいるマンションに早く着く近道を通ろうと考えたのです。自分でもおかしいと思いました。ですが、大した理由もなく、ただ、「何となくそうしたい」と思って、その道を通りました。
そのルートは途中、大きな工場跡の横を通ります。そこはかつて、銃のオーダーメイドをしていた場所らしいのですが、カイザーコーポレーションの躍進で惜しまれつつも閉鎖してしまったそうです。ただ、管理する人はおらず、夜になっても昼になっても無人であることが当たり前になっています。
……そこを横切ろうとしたとき、何か、大きな異変に気づきました。
何かの異変、というには大きなものでした。本来、そこにあってはいけないはずの音がするのです。本官はドラム缶の陰に隠れました。もしかしたら、このキヴォトスをひっくり返すような大規模な犯罪の打ち合わせが今、行われているかもしれません。本官は今日、コウタ君の捜索にしくじった身です。それだけに、胸の中では見えない輩に対する憎悪が一層強まってきました。
拳銃はいつでも撃てる状態で、護身用の煙幕弾も閃光弾も準備万端です。
……と思うと、音はどうやら、何人かの声だと気づきました。しかも、何かの明かりで照らされています。ただ、ここからは遠くて何があるのか分かりません。
「……イイねぇ、流石……君。私のヒーリング……なんて、頑張ってるね。イヒッ、……あそ……きい……のトコ、行こっか?」
「う、う……た」
「安心して……。……ちも切な……ぜーーーーんぶ、……て、あ、げ、る♡」
「おぉぉお!いいで……。……んだマ……公みたいですッ」
「いいなぁ、……ろにも……なぁ」
声の主は何人かいて、それも女の子が多くいて、……ん?
男の子の声がした気がします。まさか、あそこにいるのは、あの行方不明のコウタ君ではないのでしょうか……。いや、流石にそこまでは都合がよすぎます。あれだけ思い通りにいかなかったからといって、そんな三文小説では実現されそうな身勝手な妄想を考えるなんて道理にもありません。実にみっともないです。
ここは冷静に。カンナ局長のように、泰然自若とした態度を取らなくてはいけません。
装備も万全です。いざ、突撃を。
「アンタ、どうしてここにいるの?まさか、私たちに感づいたのかしら?」
項に冷たい金属の感触が。そ、それよりも気配を消していた、後ろの人物は何者なのでしょうか?声からすると女性であることに変わりはありませんが、余程の手練れに違いありません。
「あ、あなたは何者ですか……。全体、ここで、な、何をしているのです?」
しくじりました。正体不明の相手に動揺している様を見せてしまいました。これでは白旗を振るよりもみっともない行為です。諦めようとしたそのとき。
「はぁ……。ただの通りすがりの人のようね。でも、ここで見たことを誰にも話さないわよね?それを約束するなら見逃すけど、そうでないならこの銃の試し撃ちの的になってもらうわよ?昨日、修理から戻ってきたばかりだし」
返事に迷っていられる暇はありません。
「い、言いません……。その代わり、本官を案内してください」
「「本官」、ねぇ……。……まぁいいわ。アンタ、随分と大胆なのね。こんな私たちと巡り会うなんて、僥倖と呼ぶべきか、不運と呼ぶべきか……」
足元を見ると、後ろにいる女性は月夜に照らされています。背丈や格好よりも、頭からの尖った耳、細長く生えた猫のような尻尾が目を引きます。確か、この格好をしている人物というと、どこかで見たことがあるような……。
「それじゃ、私がプロフェッサーのところへ案内してあげる。アンタは黙ってついてきなさい」
彼女は本官の前に立ちはだかりました。
闇夜に吸い込まれそうな黒髪。
何者も見逃さなそうな瞳。
夏の暑さを知らなそうな軽装の服。
「あ、あなたは、まさか……」
彼女は、桐生キキョウと名乗りました。
「そんなこと、今はどうでもいいでしょ。呆れる……」
キキョウさんの後をついていくと、光源と思われる場所につきました。その光源はスライド式の扉の奥にあるみたいです。少し湿った夜風に扉は生き物のように揺れています。
「改めて言うけど、ここで起きてることは決して誰にも話さないこと。話したらアンタの将来はなくなると思ってなさい」
無愛想そうに、冷徹そうにそう言ったキキョウさんは少し強めに扉を叩きました。扉の奥では先程までは所々でしか聴こえなかった声がよりはっきり聴こえます。
「上手かったよぉ、シンノスケ君。「お姉ちゃん大好き~~♡」って甘えてくれてすっごく嬉しいな♡」
「もぉ~~、最高ですゥ!頑張ってくれたお礼に耳舐め、してあげます♡」
「じゃ、私はおっぱいを舐めて~~。美味しい飴を舐めるように、ね♡」
「お、皆、そうする?それじゃあ、私はおっぱい枕、しちゃおっかな~~。ほーらッ」
「アッ、ら、らめぇ、あついよぉ……」
「イヒヒッ、美しいよぉ、皆。シンノスケ君をもっと喜ばせようね……」
身体中の毛という毛が逆立ちました。今日の昼間中、ずっと探していたコウタ君がこの扉の向こうにいるかもしれないからです。それも、何人かの女の人に輪姦されているみたいなのです。市民を守る警官として、いや、本官は一人の社会を生きる人間としてこのおぞましい犯罪を見逃すわけにはいきません。
「ば、バカ!勝手に扉を開けるんじゃ」
もう、我慢の限界です。キキョウさんの静止を振り切り、本官は扉を蹴破って拳銃を構えました。警官たるもの、仕事でないときにも警戒を怠ることはしません。社会に徒なす悪は許しません!
「そ、そこまでです!ヴァルキューレ警察学校、生活安全課の中務キリノですッ!全員、今の行為をやめなさい!」
本官が構えた銃は、中央に置かれたランプに重なっていました。その先には、聴こえてきた声にあるように、何人かの少女、陰気そうな少女、そして、彼女たちに囲まれている男の子が。残念なことに、その男の子はコウタ君ではありませんでした。
「おやおや、招かれざるお客さん、かな?初めまして」
小柄な少女がこちらに近づきます。拳銃を構える本官を前にして、怖がる素振りすら見せません。いや、片目を顔立ちにこの声、どこかで聴いたような、気がします。
「どうしちゃったの?もしかして、私たちに興味、ある?」
「ありません!あなたたち、子どもに何てことをしているのか、分かっていますか⁈」
言い訳など聴くつもりはありません。意識しなくても、お腹から声が出てしまいます。相手が何者なのか確かめることよりも、あの場にいる男の子を何としてでも助け出すことが最優先です。捜索で助けられなかったコウタ君を思い返すと、せめて、目の前にいる少年を助けてあげなくてはいけません。
「あ、彼に用があるんだね。イヒッ、心配しないで。ここでお姉さんたちと会いたいって望んだのは……」
――君からだよね、シンノスケ君♡
言葉の意味が呑み込めませんでした。このときだけは周囲の音が嫌に大きく聴こえました。自分の中で作り上げた、揺るぎない覚悟が台無しにされたような、水の泡にされたような、そんな気分です。
「ハァ……、勝手に動くなんて信じられない。アンタ、自分の正義が絶対だと思っているでしょ。そういう融通の利かない考えをしてるから、今のように醜態を晒すのよ。みっともない……」
後ろからキキョウさんの声。それで我に返りました。彼女たちは恐らく、本官をだますために姑息な言い訳をしてこの場を切り抜けようとしているに違いありません。それに、当のシンノスケ君からは何も聴いていないのです。きっと、この悪しき少女たちによって彼は慰み物か何かにされているのでしょう。安心してください。本官が、今からあなたを救います!
「そ、そんなことを言っても本官は信じませんよ!そこの3人!シンノスケ君から離れなさい!」
本官が声を掛けたとき、コウタ君はすぐに気づきました。
「ヤダ、ヤダヤダヤダ!僕はまだ、皆の所には戻れないよ。だって、だって、変なもやもやを何とかしないと、め、迷惑、かけちゃうから……」
男の子の声が部屋で跳ね返ってきます。
小柄な少女の言動を見るに、この子は「シンノスケ」という名前のようです。
いや、この時間になっても家に帰らずに少女たちの慰み物にされている彼という存在が信じられませんでした。ですが、当の本人がそう言っていても、本官は連れ戻す責務があります。そうしようとした矢先、ランプの灯りに照らされた彼の身体を見て、戦慄しました。
――身体中に痛々しく残る青あざ、ミミズ腫れ、黄色になった打ち身。
時間がかからずとも、察せました。コウタ君と同じように、家に帰ろうにも何かしらの問題があるようです。
「言わせてもらうけど、彼、子どもの不良集団の一員だったのよ。アンタがここで無理矢理連れて帰ったとして、その後はどうするの?「正しい」生活を強いるつもり?それとも局に送って烙印を押すつもり?どっちを取ってもろくな最期をたどりそうにないわね」
キキョウさんは左手を本官の肩にのせました。爪が腕に軽く食い込みます。
――自分のエゴを押しつけるなんて、大概にしなさいよ。
耳元で囁かれてすぐ、身体から力が抜け、気づくと、尻餅をついていました。想像が及ばない世界に今、本官は突っ込んでしまったみたいです……。何をどうすればいいのか、本官は分からなくなってしまいました。
お化けのような少女が目の前に来て、本官と視線を合わせました。片目が隠れた、陰気な顔立ちからは想像できないような、優しく、どこか落ち着いた声で語りかけてきます。
「まぁ、私たちのこと、男の子を犯す悪い人と思うなら構わないよ。でもね、私たちは社会から爪弾きされる子たちを助けているのは事実だよ。あの子たちに読み書き計算を教えたり、遊び相手になったり、相談に耳を傾けたりと、それなりに力になってあげてるんだ。そんな子たちでも、仲間外れになってしまう子がどうしても出てしまうみたいでね。現に、そこのシンノスケ君も、周りの子たちと仲良くなれなくて苦しんでいたから、私たちが助けてあげたの。ほら、アイリちゃんやモミジちゃん、メグちゃんと仲良くなってからはすっかり元気になってるよ」
……本官は警官として、市民を守る正義を信じていました。ですが、カンナ局長が日頃から悩んでいるように、警官としての立場では救える人もそうでない人がどうしても出てしまいます。本官がこんなことを語る立場にはいませんが、いつかは向き合わないといけなくなる問題です。彼女たちは行っていることがれっきとした犯罪ですが、結果として彼を元気にさせています。
「そ、その、本官は決して、彼を苦しませるつもりも嫌がることをするつもりもありません。ですから、お願いします。彼を解放してください」
少女は片目の目尻が見える程の笑みを見せ、嬉しそうに言いました。
「いいよ、その代わり、折角だからシンノスケ君とエッチしてみる?ここで君がしちゃったことは誰にも言わないから。シンノスケ君の相手をしてあげたら、住んでるところまで連れてってあげてね、イヒッ」
身体中が傷だらけの男の子は、静かに頷きました。
そして、少女は、自ら名前を名乗りました。
「あ、私は板垣カノエ。ここにいる皆からは「プロフェッサー」と呼ばれてるの。よろしくね、キリノちゃん」
「……はい……」
ランプの光は、まだまだ尽きる気配はありません。
数時間前の自分に「ストリートチルドレンの男の子に処女を捨てる」なんて教えても、納得はしないはずです。ですが、よりにもよってそれが現実となってしまったのです。まさに、目の前には痛ましい傷跡の男の子がいて、言葉を交わさずともどんなことがあったのか察せてしまいます。矯正局のプログラムで一定の学力、社会性、道徳心を身につけさせたとしても、この状態の彼には辛いものになるのかもしれません。それでも、優しさも、愛も、生きたいという意志も、どんな形でも手を差し伸べたい思いで満ちていました。
「おぉ、これはこれは……。キリノちゃんはそこそこスタイルがいいみたいだねぇ。男の子が抱きしめるにも丁度いいなぁ、イヒッ」
本官のことを察してか、カノエさんは4人に指示を出して、邪魔にならない場所に移りました。シンノスケ君は困惑します。
「ワ、ワァ……。どうしよう、怖い……」
「こ、怖がらないでくださいッ。本官は、け、決して、乱暴はしませんから」
思い出しましょうか、えっと、確か……。いつでしたか……。
小学生の頃、流行りの刑事ドラマを見ようと夜更かしして、チャンネルを変えていた日です。同じ時間に放送された映画だったでしょうか、そのワンシーンで、その……、大人の男女同士が裸になる場面を見てしまいました。そのとき、でしょうか。胸の奥がジュクジュク熱くなり、全身が沸きあがるような高揚感に襲われた気がします。
――多分、「性の目覚め」といったものでしょうか。
とにかく、今ではぼんやりとしか覚えていないそれを思い出そうとしながら、本官は彼のことを抱きしめました。一人エッチをしたときの臭いや唾液の臭いが肌から臭ってきます。
――憎い。
……え?どうしてこんな思いを……?信じられません。本来、本官がこれからしようとすることは「悪」なのです。身寄りのない子どもが犯されるのを止められなかったばかりか、自分がその立場に立ってしまうことなど、本末転倒です。
「……?」
シンノスケ君の小さな声で、我に返りました。一体、本官は何をしているのでしょうか。夢からは程遠い行為をしている自分が許せません。「市民の安全を守る警官になる」と伝えた先生の顔が浮かんできて、大変申し訳なくなってしまいます。
ふと、今、局長が対応しているアビドス自治区の生徒の件を思い出してしまいます。いっそ、あの事件で先生の息子を抱いた少女のようになってしまいたいものです。
――周りの子たちと仲良くなれなくて苦しんでいたから、私たちが助けてあげたの。
プロフェッサー、カノエさんの言葉が頭の中で響きました。ここは誰にもバレない場所にあって、加えて、目撃している人物も同じことを既にしていて、相手の少年もそれを望んでいるのです。
……アハハ、ハハハ、ハハハハハハ、簡単なことじゃないですか。
「市民を守る」ことは、「救われない子たちを救う」ことで、あくまでセックスはその手段でしかないのですね。先程まで迷っていた自分が馬鹿らしくなりました。
後頭部に手を回し、本官はシンノスケ君と深く、深く、互いの口を合わせました。
「ハァァ、素敵だねぇ。モミジちゃん、これが「尊い」ってヤツ?」
「仰る通りです!女神と身体を重ねる幼きショタ。たまりませんねぇ……」
「キリノちゃんったら、もう、じれったいわね。キキョウさん、私、入ります!」
「バカ!あの手つき……、彼女、「初めて」そうだから手出しはやめなさいよ」
カノエさんに従う他のメンバーと思われる人たちは、本官のセックスにあーだーこーだと言っています。こんなときに限って、印象に残りやすい声色のカノエさんはただ静かに本官たちを見ているのは、何だか、不思議な気分でした。
「そ、その、本官のネクタイ、外してみますか?」
「ボタン?どこのことを言ってるの?」
彼は「ネクタイ」を知らないみたいです。本官は彼の手を取り、ネクタイの結び目へ導きました。シンノスケ君は赤ら顔です。結び目に指を引っかけさせ、下へ下ろし、もう片方の手で飛び出たネクタイの輪っかをつかませる、これだけで本官の身体は緊張ではちきれそうな気分でした。どうしても耐えられそうにありません。
ネクタイがほどけた後、乱暴にシャツを脱ぎ、スカートも靴も靴下も装備も乱暴に捨てました。床に落ちる度に、部屋に虚しく音が響きます。今はそんなことを気にする余裕はありません。今は目の前の少年に、肉体の全てをぶつけるだけです。
気づくと、本官は既に裸になっていました。普段なら更衣室でも同期に見られるのが恥ずかしいというのに、このときに限っては恥ずかしさよりも快さが勝っているようです。
「あ、そ、その、シンノスケ君。来てください。本官が、全身全霊を以て……手解きします」
「もう私たちで童貞捨ててるよ、その子」
カノエさんの声がしました。
それにしても、他人に見られながらすることになるとは思いもしませんでした。小学生だったとき、男子がよく下ネタを言っては女の先生に注意されていたのをよく見ていたのを思い出します。それに引いた自分がもっとおぞましいことをしているので、もう、本官は彼らを非難する資格なんてありません。
先程までは本官が中心となりながら、様々なエッチをしてきました。
小ぶりなおっぱいを彼の顔に押しつけて揉ませること。
背中から抱き着いて、治るようにと祈って傷口を舐めること。
小さいながらも拳銃よりも硬い陰部を愛撫してあげたこと。
彼の頭をつかんで自分の秘部を口淫させたこと。
……そうして、互いの身体の隅という隅を堪能しました。同じ人間でありながら異性である、男の子の身体は不思議なものです。女の身体と違って、細身で、儚げで、それでいてそそり立つ陰部があるのです。まるで、平凡な市街地に唐突に起きる大きな爆発の煙のようで、不釣り合いでありながら忘れられないような姿をしています。
シンノスケ君はというと、度重なるセックスでみっちりと教えてもらったからか、手つきや吸い方、舌の回し方が酷く上手でした。普段から一緒に住ませて、ムラムラしたときのオナペットにしたいなぁ、……って、何を考えているのですか、本官は!
「ねーねー、シンノスケ君!そのお姉ちゃんとする前に忘れ物!」
空気を裂くように大柄な少女が近づいてきました。頭には角が生えていて、スカートからは尻尾が見えています。……この少女、ま、まさか……。
「え、あ、あなたは、温泉開発部の下倉メグさん、ですか……?」
「私のコト、知ってるの~?うれし~な~。私、やっぱり有名人になってるみたいだね、ハハハ」
そう言って、メグさんは左手を差し出して、とあるものを見せました。
「もー、シンノスケ君。エッチするときはゴムさんつけよって約束したでしょ。あ、折角だし、キリノちゃんがつけてみなよ。何でつけなきゃいけないかわかんないけど、まぁ、いっか!つけてつけて!」
こ、これは、コンドーム……。青少年の事件での押収物で何度も見たことがあるので見間違えるはずはありません。密封された袋に小さな丸が目立っています。最早、後にはひけないことを悟りました。そして、パズルの最後のピースが埋まる気分になりました。
「かぶせますよ、シンノスケ君。痛かったら言ってくださいね」
「大丈夫大丈夫。さっき使ったのと同じサイズだからフィットするって♡」
メグさんの言葉の通り、シンノスケ君の陰部に丁度よく合いました。それにしても、本来はメグさんのようなテロリストを取り締まるはずの本官が、そのテロリスト本人に助けられるとは、何とも皮肉なことです。コンドームに覆われた彼の陰部は、とても生々しいものでした。光沢を放つコンドームの中で、暴発しそうな陰部はほんのりと暗みを帯びています。スケバンのアジトにあったディルドとは比べ物にならない位、それはおぞましくも美しいのでした。
「い、行きますよ。本官も初めてですからね、不慣れかもしれませんが、どうか、許してくださ、イッ」
ついに、ついに、合体しました。人工物であるゴムで秘部の奥を貫かれると、痛みと快感で全身が震えそうになります。お腹が押されて、とても息ができそうにありません。それでも、シンノスケ君のは小さくも硬いこともあって奥へと入ってきます。
「アァッ、フゥゥゥ……。ヒャ、入っちゃ、入りまひたね、気持ち、いい、です、か、アゥッ」
「うん、好き。キリノお姉ちゃん」
本官の心の撃鉄はもう、誰にも止められません。1回1回、自分の身体の快感を得るように、堕ちた自分を慰めるように、そして、シンノスケ君が「生きたい」と心から思えるように、本官は秘部の奥に彼の陰部を叩きつけました。多分、これが何もつけずにやる「生中出し」はもっと気持ちいいに違いありません。
どれだけ腰を振ったのでしょうか。シンノスケ君が本官を強く抱きしめたと思うと、秘部の奥で何かが膨らんだような気がします。シンノスケ君は力が抜けたように、本官に身体を任せてただ、静かに倒れました。
「どうやら、射精できたみたいだね。「お掃除」が十分にできてない場合、S着でさせてるんだ。さてと……、おぉ!これはこれはぁ!見て、キリノちゃん。屋台の水風船みたいだねぇ、イヒヒッ」
慣れた手つきでシンノスケ君のコンドームを取り出したカノエさんは、本官にそれを見せました。保健体育の教科書で、男の人の精液と女の人の卵子が合わさって子どもができると学んだのを思い出します。ただ、処女を捨てた今となっては、この精液なら命の1つや2つはできてしまっても無理はないと確信します。
その後、本官は4人が準備したボディーソープで2人揃って身体を洗い、髪を乾かし、衣服を着せ合いました。ふと、とある疑問が生まれました。
「あの、カノエさん、あ、いや、プロフェッサー。シンノスケ君の銃はどこにありますか?」
このキヴォトスでは誰もが護身のために銃を持っています。そのシンノスケ君も例外ではないだろう、と思ったからです。
「安心してよ。ここに、あるよ。ほら」
カノエさんは銃を持ってきました。形状はリボルバーに近く、それも手入れがされていません。シリンダーの動きも悪く、正しい扱い方をせずに使ってきたようです。大方、スケバンたちから奪ってきたのでしょう。
「……この形、本官が使っているものと似ています。射撃は下手ですが、日々の手入れは怠らせてはいませんので、微力ですが力になれるかもしれません」
「え?何か悪いの?僕の銃は」
「は、ハイ……。これから正しい使い方をすれば、きっとこの銃もよくなりますよ」
奥にいた4人も本官たちの近くに集まってきました。
「いいですねぇ、いいですねぇ……。銃の使い方を教えるなんて、今度の同人誌のネタになりそうですぅ……」
「このポカポカする気持ち、これも「尊い」、かなぁ?」
「えぇ!仰る通りですッ!」
そこからしばらく、本官はリボルバーの正しい使い方をシンノスケ君に教えました。
本官はシンノスケ君が住まいとしている場所へ帰れるように、付き添いをすることにしました。カノエさんからもらった地図の写真をスマホに入れたので、多分、迷子になることはない、はずです。
「今日は楽しかったよ、キリノちゃん。あ、紹介してなかったね。他の子たちのこと」
「アンタたち、せめて紹介位はしなさいよ」
「ハ、ハイ!私はレッドウィンター学園1年の秋泉モミジです!」
「トリニティ総合学園1年の栗村アイリでーす!よろし」
「はいはいはい!私は、って、あ、もう言ってたか、アハハ。じゃ、改めて、私はゲヘナ学園3年の下倉メグ!よろしくね~~」
ほ、本官と同じ年代の人が2人も⁈あまりにも手慣れていて、年上かと思ってしまいます……。あ、もちろん、そこにいる人たち、そして、カノエさんともモモトークのアカウントをフォローしました。さっきまでの自分では考えられないことです。
去り際、カノエさんは本官に耳打ちしてきました。
「警官を目指すのなら、情報網は必要でしょ?生活安全局とかなら、子どもと「仲良く」なることも必要だからね、ま、ご参考ま、で、に、イヒッ♡」
……改めて、本官はとんでもないことをしでかしたな、と思いました。
それから翌日、本官は休日ということもあって、総合教養の宿題に取り組んでいました。特に数学や生物基礎、化学基礎なんて、何を言っているのか全く分かりません。挫折しそうになったそのとき、スマホのブザー音が鳴りました。
画面には、何と、カノエさんからのボイスメッセージが来ています。
「おはよう、キリノちゃん。昨日はお疲れ様。キリノちゃんの処女喪失セックス、すごく良かったよ~~。見てる私たちもあんなにドキドキしたのは久しぶりだったなぁ。あ、では本題。昨日参加した、私たちのサークル、加入してみない?体調のことも都合のこともしっかりと考慮するから、楽しいエッチをやってみようよ。DMにメンバーだけのアカウントを贈っておくから、興味があったら是非是非~~、そ、れ、じゃ☆」
カノエさんの声がよいあまり、さっきまで暗記していた知識が吹き飛びました。その代わり、夢のような、昨日のセックスが頭に浮かんできます。シンノスケ君の温もり、懸命さ、必死さ……。
――また味わいたい。
気づくと、DMに送られたアカウントをフォローしていました。どうやら、私は彼女たちと同じ存在になってしまったようです。寝て忘れてしまいたいのに、夏の昼間はまだまだ暮れそうにありません。
『おねショタアーカイブ』と同じ世界線の作品ですので、そちらもお読みになると嬉しいです。