「……胸、触っちゃダメだったか?」
「や、そうじゃないけど! 制服がシワになったら困るから先に脱いでおきたいなって、帰りも着て帰る訳だし――ってそんな顔しなくても、脱いだらちゃんと触らせてあげるからさ」
言われて、晴樹は自分が眉をハの字に、情けない顔をしていたことに気付く。
「あはっ、ハルってば泣きそうな顔してさぁ……そんなに私のおっぱい触りたかったんだ?」
対照的に、小春はニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「……いや、別に」
「そんなこと言ってー、ハルってば素直じゃないんだからさー?」
鼻歌を歌い出しそうなくらい上機嫌な小春を見ていると、なんだか負けた気分になる。
「というわけで制服脱ぐからちょっとむこう向いててね」
「ああ……」
晴樹は言われた通り目を背けようとして――考え直し、再び小春の方を見た。
「いや、ハズいから向こう見てて欲しいんだけど!?」
「うん、そうだろうなって」
「じゃあなんで見て――って、つまり、さっきの反撃のつもり?」
流石小春、話が早い。
立ち上がってシャツのボタンに手をかけた小春との間に、静かな火花が散る。
「げへへ、さあどうするこはるり」
「なにその悪役みたいな笑い方!? というか、もしこのまま見続けるって言うなら、ハルが脱ぐとき私もガン見するからね!」
「っ!? それは……」
晴樹の脳内へ、小春にまじまじと観察されながら脱ぐシーンが思い浮かぶ。
……確かにちょっと、いや、だいぶ恥ずかしいかもしれない。上はまだいいとして、特に下とか。
脳内の小春が、下着を脱いだ瞬間「ふっ」と失笑をこぼす。
「……悪かった、こはるり」
晴樹はあっさりと白旗をあげて、小春に背を向けた。
「ん、分かったならよし――というか、ハルもついでに脱いじゃったら? どうせ後で脱ぐことになるんだしさ」
「それもそうか」
特に拒否する理由もなく、晴樹も立ち上がって小春と背中合わせに制服を脱ぎ始める。
見えないせいで、背後から聞こえる衣擦れの音がいやに大きく響くような気がした。
(……今振り返ったら、脱ぎかけのこはるりが……)
本当のところ、小春が脱いでいるのを見たかったというのは、ただの意趣返しというだけではない。
晴樹は着エロが好きだった。
もちろん胸や股間は見えた方がいい。けれどその上で、完全な裸体よりも脱ぎかけのシャツを羽織っていたり、制服のスカートだけ履いていたり、片脚に丸まったパンツが引っかかっていて欲しい。靴下は言うまでもない。
女の子の大事な部分が見えているという非日常と、いつもの服を着ているという日常の狭間。そこにエロスを見出すのが古泉晴樹という漢の信仰だった。
故に晴樹は「いっそこっそり振り向いてしまうか?」 と服を脱ぐ手が止まるほど葛藤して――
「――なあ、こはるり」
「んー? どうかした?」
「その…………なんというか、制服のリボンと靴下は残してほしいんだけど」
結局、自分の欲望のために小春との約束を破ることは選択肢に入らなかった。
代わりに選んだのは直球勝負。
ぴしり、と背中越しでも小春が固まったのが分かる。
「…………もしかしなくてもハルって、ちょっと……いや、だいぶ変態?」
「ごめんなさい、聞かなかったことにしてください」
普段より一段低い小春の声に、晴樹は迷わず棄教を選んだ。
(くぅ……っ、やっぱり欲望剥き出し過ぎたか……!!)
折角なら初めてを理想のシチュでやりたいというロマンを否定したくはない。……が、明らかに初めてでお願いすることでもなかった。
(恥ずかしいだろうから靴下ぐらいは履いてていいよ、にするべきだったか? いやそっちの方が逆に変態臭いわ!)
せめてこういうのは二回目以降に――
(――けど、小春とは付き合ってるわけじゃないんだよな)
あくまで今日こんなことになっているのは、小春がセックスをしてみたいと言っているからに過ぎない。
それだって夢みたいな話だけど、夢は泡のようにあっさりと消えてしまうもので。
今日、この一回が終わればそれで終わり。
(そうなれば小春との関係は――いや、これ以上考えても憂鬱にしかならないだろ)
晴樹は脱いだ服と共に、先の不安を乱雑に放り投げた。
「こっちは脱ぎ終わったけど、こはるりはどうだ?」
「……うん、私も脱ぎ終わった」
それを合図に、お互いタイミングを合わせたように振り返る。
「――っ!」
生まれたままの姿の小春に、晴樹は息を呑んだ。
正確には、裸にグレーの靴下と、二年生の証であるピンクのリボンをつけただけの姿に。
「ど、どう……かな……?」
耳まで赤くして、上目遣いに訊いてくるくる小春。
恥ずかしさを誤魔化すように足先をもぞもぞさせているのに、ちゃんと見えるようにだろう、手を背中で組んで隠さないようにしているのがいじらしい。
小春の覚悟に応えるためにも、晴樹は改めて彼女の裸体を注視する。
靴下を履いたままの、艶美な曲線を描く脚。
その付け根の三角地帯にうっすらと生える、髪と同じ灰色の短い毛。
中性的でほっそりした腰と、やわらかそうなお腹。
先端を淡く色づかせる、おわん型に張り出した乳房。
そして首元に頼りなく吊り下げられたピンクのリボン。
「うわうわうわ……これ、どこ見られてるのか分かってすっごいハズいんですけど……つ!?」
「そんなに分かるもんか?」
「……脚から上に向かって順番に見ていったでしょ」
大正解。
女の子は視線に敏感だと聞いて以来、学校では小春の体を見ないようにしていて良かったと、晴樹は内心安堵した。
けれど小春にとって、その僅かな間は耐えがたい長さだったらしい。
「それで……その、感想とかないと、すっごい不安なんですけど……」
「あー……そうだな、すっごくエロい。想像してたのよりも数倍は」
瞬間、小春が両手を体に巻き付けた。
「そこは綺麗だね! とかじゃん普通! エロいとか直接的な言葉じゃなくてさぁ!!」
「っ、しょうがないだろ、第一印象それだったんだから!」
実際、小春の体は晴樹の妄想より遥かに魅力的だった。
身動ぎするたびふるふると震える双丘は柔らかそうだし、予想より薄い毛並みの秘所はむっちりとしていて美味しそうで。
もう前までの妄想では抜けないぐらいにエロくて、可愛くて――
「――その、綺麗だとも思うぞ。肌とか白くてすべすべしてそうだし、スタイルだってすらっとしてるし」
「……ふんだ、催促してから言われたって嬉しくないんですけどー?」
小春はそう言いながらも口元をもにょりと動かし、体に巻き付けた手を再び後ろに回してくれた。
自然と胸を前に突き出す形になり、桜色に色付いた先端がふるりと揺れる。
これだけでも十二分に眼福だ。なのに。
「それと……つけてくれたんだな、リボンと靴下」
「あー……うん、まあ。私からして欲しいってお願いしてる訳だからこれくらいはね……最悪これだけなら汚れても外せばいいし」
とはいえ恥ずかしくはあるのか、小春は落ち着かなげにネクタイを弄りまわす。
「でも、これだけでそんな違うものなの?」
「違うッ!」
聞き捨てならない一言に、晴樹はガッと小春の肩を掴んだ。
「リボンや靴下っていう服の一部が残ってるからこそ、裸なんだっていうのが強調されるんだよ。大事な所を隠すには全然足りない、それでもせめての抵抗みたいにして残ってる頼りなさがエロいっていうか。しかもそれが普段こはるりが実際に学校でつけてるものってなると、生々しい日常感まで生まれてだな。その対比で小春が裸でいるっていう非日常感がさらにエロく感じるっていうか……! あと、こうやってつけてたリボンとかをまた学校につけて行ってくれるんだなって思うと――もごっ!?」
「わー! わーわーわー!! ストップ! 聞きたくない! これ以上聞いたらなんか私もダメな影響受ける気がする!!」
顔を真っ赤にした小春が口を押えてくる。それこそ、口の中に手を突っ込むぐらいの勢いで。
「うぅ……まさかハルがここまで変態だとは思わなかったんですけど……」
コイツ救いようがないな、みたいなジト目で見られると流石の晴樹も冷静さと後悔が湧いてくる。
「……さすがにキモかったか?」
「うん……いや! キモいまではいかないけど……正直、これから先がちょっと不安にはなるかな……」
「……悪い」
「いや、謝られることではないんだけど……それに、ハル的には興奮してくれてるんでしょ?」
上目遣いに小春が首をかしげると、それに合わせてリボンが揺れる。
晴樹の肉竿もそれに合わせて首を振った。
「まあ、それは……はい」
「ん、ならいいよ――というわけで改めて、脱いだから触る?」
「お、おう……」
晴樹は先駆けそうな衝動を抑えながら、小春をベッドの上へと転がした。
影ごと覆いかぶさって、両手を手ごろなサイズの双丘へと伸ばす。
「……んっ」
聞きなれない鼻にかかった高い声が聞こえるのと、手の平に柔らかな感触が広がるのは同時だった。
(すげ……なんだこれ、滅茶苦茶柔らか……っ)
今まで使っていた低反発クッションなど、これと比べれば岩のようなものだ。
指を押し込んだ分だけどこまでも呑み込まれそうな柔らかさが、つきたての餅のようにしっとりと吸い付いてくる。
初めて体験する女の子の胸の柔らかさに、晴樹はたちまち魅了された。
手全体で乳房を味わうべく、指先まで神経を張りつめてむにむにと揉む。
力を籠めれば欲望を受け止めてくれるみたいに優しく変形し、緩めれば離れることを惜しむかのように指先へまとわりついてくる。
献身的といってもいい感触に、自然と晴樹の鼻息が荒くなる。
「ハルってば……獣みたいな目して、必死過ぎ……っ♡」
「当り前だろ、こんなおっぱい目の前にして冷静でいられるかよ」
「ふーん、私のおっぱいなんかでもそんなに興奮するんだ?」
小春の口調は揶揄うようでいて、隠しきれない自信のなさが言葉に滲んでいた。
「”なんか”って、なんでそんな卑下してるんだよ」
「いやー、花梨先輩や千冬ちゃんと比べちゃうとね、あはは……」
そういえば花梨さんは随分と大物をお持ちだった。千冬さんは一見するとそんな感じではなかったけれど……脱いだらすごいタイプなのだろう。
図らずして軽音部の巨砲事情を知ってしまったハルの脳内に、思わずふたりの脱いだ姿が浮かび上がり――
「――痛っ!?」
ぐにっ、と両頬を引っ張られる。
目の前に意識を戻すと、頬を膨らませた小春がジト目で睨んできていた。
「……あのさ、確かに私も緊張して余計なこと言ったのは悪かったよ? 悪かったけど……流石に目の前で他の女の子のおっぱい考えられるのはかなりショックなんですけど!!」
「あいでででで!!」
既に限界まで引っ張られていた頬が、引き千切られそうな力加減で横に伸ばされる。
これは結構本気で怒っている奴だ。
「ひゅはん、わひゅかった……!」
ただ、よく見れば純粋に怒っているというよりも、目の端にほんのり雫が浮かんでいて。
晴樹はようやく開放された頬をさすりながら、小春に改めて謝る。
「ほんと悪かった。流石にデリカシーがなかったよな」
「そうだよ! しかも普段は私のおっぱい見たりしてきたことないくせに」
それは鋼の意志でもって見ないように努めてきた結果なのだが……小春は完全に勘違いしているようで、唇を尖らせてそっぽを向いた。
「いいもんいいもん、どうせ私はちっぱいですよー……」
小春はいじけて胸を隠す。
誤解なきよう言っておくと、小春も決して小さいわけではない。象の前では中型犬が小さく見えるだけで。
「――でも、俺は小春のおっぱい好きだぞ」
「いいですよー、そんなお世辞言われたってうれしくありませーん」
小春は完全にいじけモードで、言葉だけでは聞いて貰えそうにない。
ならば、と胸を隠していた小春の手をどかして、再び乳房を両手におさめる。
幸いにして、小春も本気で触らせないつもりではないらしく、素直に手をどけてくれた。
手の平全体にしっとりとした柔らかさが充満する。
「ほら、こうやるとちょうど俺の手の中にぴったり収まるサイズで、相性ばっちりって感じだし」
「……別に私のおっぱいはハルのためにあるんじゃないし」
今度はぎゅむっ、と付け根から乳肉全体を掴んで揉む。
「ひぅッ……♡」
「こうすると小春のおっぱいを余すことなく味わえてるんだって感じがするし」
皮下脂肪がたぷたぷたわんで、その奥にある乳腺の弾力がうっすらと伝わってくる。
そして何より、ずっと揉みたかった小春のおっぱいである、という事実が晴樹を興奮させた。
今まで我慢して、妄想では足りなかった分を取り戻すように、熱のこもった手つきで衝動をぶつける。
熱烈なアプローチに、最初は間断的に吐息を吐き出すだけだった小春の口から、艶めいた鼻声が上がり始めた。
「……んくッ、ふッ……♡ んッ……わ、分かったから……っ♡ ハル、おっぱい揉みすぎ……♡」
「っ、悪い……痛かったか?」
説得のためとかこつけて、夢中になって揉みしだいていた手を止める。
「あっ……や、その……痛いとは言ってないじゃんか……」
「なら、続けてもいいか?」
「……うん」
切なそうに瞳を揺らす小春から許可を得て、晴樹は改めて彼女の胸を堪能する。
今度は欲望を剥き出しにぶつけるのではなく、小春を感じさせるつもりで指先に意識を集中させた。
羽でくすぐるみたいにソフトタッチで撫でまわしたり、一転して指先を深く沈めてみたり、肋骨との付け根をなぞったり――そして充血して色付いた先端を軽く摘んだ時だった。
「ひぁんッ……♡」
今まで悲鳴をせき止めていた小春の唇が決壊し、今までより一際大きく、甲高い甘声が飛び出した。
マシュマロを摘むぐらいの力加減とは反比例するような反応の良さ。
「……もしかして、乳首弱いのか?」
「え、や、そんなことないし! 突然触られたからびっくりしたってだけで――んひゅッ♡」
今度は両乳首同時に摘むと、声の甘さが増した。
「やっぱ弱いんじゃん」
弱点を見つけたらやることは一つだ。
「ぁふっ!? や……っ♡ ひんッ♡ そんな……いきなり乳首ばっかりぃ……っ♡」
摘んだ乳首をひねったり、こりこりと指先で弄んだり、乳肉の中に圧し潰してみたり――その度に可愛い悲鳴が上がる。
何だか小春を自分の思い通りにしているみたいで楽しい。
支配欲というか独占欲が満たされる感じとでもいうのか。
興奮に駆られるまま、少し乱暴にぎゅっと乳首を引っ張る。
綺麗なおわん型のおっぱいが三角形に変形する。
「んんうぅッ♡ ヤダっ……そんな、乱暴にしたら……っ、いい加減、怒るよ……っ♡」
小春が睨みつけてくるが、目尻は甘くほどけていて、尖らせようとしている口元も緩んでいる。
「……ふーん、痛い、とは言わないんだ」
「っ、それは……」
表情だけではない。新雪のようだった小春の肌は、今や白桃のようにうっすら色付いている。
体温もあがって汗ばみ、肌は生クリームでコーティングされてるみたいにしっとりとしていて、気持ちいい。
「ふーん、こはるりって、おっぱい乱暴にされて気持ちよくなっちゃう女の子なんだ」
「そんな言い方……んひゃぁッ♡」
どこか嬉しそうな小春の声に、晴樹は乳首弄りを再開する。
柔らかな乳房が触って気持ちいいとしたら、グミみたいな弾力の奥にこりっとした固さを感じる乳首は、触って楽しいと言ったところか。
しかも自分が触って楽しいというだけでなく、小春を気持ちよくしていることに、男としての自信と悦びが満ちていく。
(それにしても……)
乳房と比較してあまりにも乳首の感度がよすぎるような。
「――もしかして、こはるりって普段から自分で乳首触ってたり?」
「~~っ!?」
小春の全身が赤くなった炭のように熱を帯び、びくっと肩が震える。それはどんな言葉よりも明白な自供だった。
「ふーん、そっかー……俺のこと変態っていってたけどこはるりもえっちじゃん」
「っ、オナニーぐらい、高校生なら普通だし」
「それはそうかもしれないけど、それにしてはあまりに感度がよすぎるし、めっちゃ触ってるんじゃないのか?」
「そんなこと! ……ないし」
勢いよく否定しようとして自信なさげな言葉尻になっているあたり、自覚がある程度には触っているということで。
(ヤバいな……こんな可愛いのに、その上エロいとか……)
晴樹が緩みそうになってる口元を必死に横一文字へと噛みしめていると、小春が不安そうな声を上げた。
「そ、その……! やっぱりハル的には……女の子は清楚な方がいい……感じ?」
最初少しからかおうかと思った晴樹だったが、小春から向けられる視線は、捨てられるんじゃないかと怯える子犬のそれで。
「……確かにそういうヤツもいるかもしれないけど、俺はえっちな女の子、好きだぞ」
「ホントに?」
本音を伝えると、露骨に小春の顔が明るくなる。
「まあその、俺自身も結構エロい自覚があるし、えっちな方が相性いいかなって。付き合ってから、求める頻度が違うせいで別れるなんてこともあるらしいし」
「うわ、えっちだけど意外と真面目で具体的な理由だ……彼女いたことないくせに」
「うっせ……こはるりだって彼氏いたことないくせに」
まあ、そのおかげでこうして小春の胸を堪能できてるのだから、ありがたいことではあるけど。
「じゃあさ、もしも、もしもだけど……ハル的には毎日オナっちゃう女の子もアり……?」
……こはるり、おまえ毎日オナってるのか?
そりゃこれだけ敏感なのも納得である。
まあ、それが悪いかといえば――
「――全然あり。というかむしろ大歓迎」
「そっ、かぁ……」
恥ずかしくも、安堵と嬉しさの混じったような小春の顔に、裸を見た時以上に心臓が高鳴る。
「……なら、ハルにお願いがあるんだけど」
「なんだよ」
「おっぱい、口でして欲しいなって」