香ばしい小麦と、蒸らしたコーヒー豆の香り。
外からは小鳥の囀りが聞こえてきて、清々しい朝を感じさせる。街を走る車やバイクの騒がしいエンジン音ですら、充実感を上げるためのBGMに思える。
これ以上ないほど気持ちのいい土曜の朝。
テレビのニュースを流し見しながら、トーストを齧ると、隣に座るピンク髪が牛乳を飲み干したコップを、わざとらしく音を立ててテーブルに置いた。
「あの……」
呼びかけられて右隣に顔を向けると、眉間に皺を寄せ、破裂寸前のフラストレーションを無理やり押さえ込んだ表情の灯が俺を見ていた。
「何?」
「いつまで待たせるんすか? もしかしてそういうプレイ?」
「……なんの話?」
「だーかーらー! もうルールができてから一か月っすよ⁉︎ あれからお隣さんに微塵も触れてないんすけど!」
穏やかな朝を吹き飛ばす勢いで、灯はソファの上に立ち上がり、俺を見下ろした。
ルールを制定してから一か月。俺は誰ともスキンシップを取っていない。灯も彩恵も以外にもルールをきちんと守っていて、時々期待した目を向けてくることはあっても、以前のように襲ってきたりはしなかった。
そんなわけで平穏かつ健康的な生活を送っているわけだが、なんのアクションも起こさない俺に灯の不満がとうとう爆発した。
「俺がその気になるまで我慢しろ」
「いくらなんでも一か月は長くない? 枯れた?」
「まだ枯れてないわ。失礼だな」
「だってそうじゃなきゃおかしいっす。まともな一般成人男性が一か月も我慢できるなんて……。そういう欲が出ても我慢してるんですか? それとも、そもそもムラムラもしない?」
「後者の方」
「それやっぱり枯れてる……」
「これまでが異常だったんだよ。その反動が来てるだけ。……そうだよな?」
「心配になってるじゃないっすか」
言われると怖くなる。確かにひと月、何もないというのは逆に心配だ。
「ともかく。今の俺はそういう気分じゃない。お前も学業が最優先なんだから、余計なこと考えるなよ」
「……ちぇっ」
隠しもせず大きな舌打ちを放って、灯はソファに腰を下ろしテレビに目を戻した。彼女はリモコンを操作して録画一覧を開き、勝手に録画していた深夜アニメを見始める。
完全に俺の部屋でのくつろぎ方を身につけた灯に、もう何の文句も言う気が起きず、俺も内容をよく知らないアニメを眺めた。と、そこでふと思い出す。
「お前、いつ俺にコスプレ見せるんだよ」
「見せるなんて約束してないもん。てか、それ言うなら衣装買う約束どこ行ったんですか?」
「まだ諦めてなかったのか」
もうとっくに忘れていると思ってたのに。
「あれから結構時間経ってるから、買って欲しいの増えたんですけど」
「さすがに一着までだぞ」
「お? ということはホントのほんとに買ってくれる?」
「なんだかんだ仕事が板についてきたしな。常識的な値段なら買うよ」
「うっそ、マジで⁉︎」
灯は慌てふためきながら自分のスマホを取り出し、タタタッと高速で操作し始めた。
「い、一着かあ。ムズイ。ちょームズイ。やっぱりあの鎧かなあ。でもお隣さんに見せなきゃなんでしょ? ちょっとメイクが……もうちょい子供っぽい感じの……あーでも私の身長だとなあ……うう……」
そんなに悩ましいのか頭を抱え始める。
「あの、これ先にお金だけ貰って、何のコスプレかは見せるまでお楽しみとかにしちゃダメっすか?」
「何の衣装買うのかは気になるんだけど」
「いや、最初にコレやりますって伝えちゃうとハードル上がっちゃうかなって。お隣さんがそのキャラ気になってアニメ見始めたりした後に、私の粗末なコスプレ見て幻滅するみたいなことは極力避けたいし」
「普通に可愛いんだから、よっぽど奇抜なものじゃなけりゃ大丈夫だって」
「大人はみんなそう言うんだ。可愛いから好きなの着たらいいよ、って。んで、いざ好きな服着たら『うっわ、きっつ……』って冷ややかな目を向けてくる……」
遠い目でぶつぶつと呟く灯。思い空気に気圧されて「わ、わかった。わかったから!」と彼女の要求を呑んだ。
「どんなコスプレかは聞かないから、買ったらちゃんと見せてくれよ」
「よし! 決まりっすね。やるからには気合い入れてやるんで、待っててください」
ふんす、と気合に満ちた顔を俺に見せ、流れるアニメもそっちの気で灯はプランを組み始める。
趣味なだけあって、真剣に向き合う横顔は生き生きとしていた。
◆
それからちょうど一週間後。
灯が当然のように俺と朝食をとったあと、「衣装届いたんで後で見せますね」と言い残して出て行った。
そして十一時。
『鍵空いてるんで部屋来てください』とメッセージが届き、早速彼女の部屋の前まで訪れた。
よくよく考えてみると、一人暮らしの女の子の部屋に成人男性がおいそれと入っていいものなのだろうか。許可はもらっているとはいえ、世間体を考えると良くないが……。
「……今更か」
良識的な線引きはとうの昔に踏み越えている。
念のため周りに見られていないことだけ確認して、ドアノブに手をかけ、ゆっくりと彼女の部屋に入った。
俺の部屋と全く同じ間取り。しかし、住む人間が違えばまるで別の物件かと思うほど雰囲気が違う。
片付いてはいるが、棚やソファの上には、クマやアニメキャラの可愛らしいぬいぐるみがいくつも並べられていて、賑やかな印象を受ける。
窓のカーテンも水玉模様のガーリッシュなデザイン。想像よりずっと女の子らしい部屋に、気持ちが落ち着かない。
そんなリビングに、灯の姿はなかった。
「あかりー?」
名前を呼ぶと、ガチャリと寝室につながるドアが少しだけ開き、その隙間から灯が目元だけ覗かせた。
「……ちゃす」
「着替えはできたか?」
「まあ……はい」
弱々しい返事から彼女の心中をなんとなく読む。
「……自信ないのか」
「ないこともないんすけど……普段見せないんで、いざお隣さんに見せるとなると緊張して……笑ったりしない?」
「わからん」
「ええ……」
「でも、良いと思ったからそのコスプレにしたんだろ?」
「……はい」
「じゃあ大丈夫じゃない?」
灯は俺の言葉を反芻するように目を瞑ると、小さく手を出して俺を招いた。
「明るいところは恥ずかしいんで……」
灯はそれだけ言って寝室の奥へと消えていく。
中途半端に開いたドアが、妙に存在感を放っていた。一度入ったら部屋から出られない、なんてことになるのだろうか。
なぜか俺まで緊張してきて、金属製のドアノブをじっと見つめてしまった。静かにドアの前まで歩み寄り、軽く息を整える。
「……入るぞ」
ひんやりとしたドアノブを握って、俺は寝室へ足を踏み入れた。
「えっとですね……その……。まずこれは去年爆死したアニメのヒロインの格好なんですけど、見ての通りファンタジー作品でして、教会に仕えるシスターなんです。で、当然現実にはこんなシスターいないんすけど、深夜アニメということもあってかなり濃い味付けがされているわけで……なのでこれは決してそういう目的のものでもないし、何かやましい考えがあってチョイスしたわけではないということを理解していただきたく……」
べらべらと言い訳のようなセリフが聞こえる。間近で喋る灯の声は確かに俺に届いているはずだが、俺は内容をまともに理解できなかった。
カーテンを閉め切った暗い寝室に、少女の輪郭がぼんやりと浮かび上がっている。俺はそのシルエットを上から下までじっくりと眺めた。
ピンクの髪の頭にはベールが乗せられていて、背中の真ん中あたりまで黒い布が垂れ下がり、それだけで宗教的な雰囲気がグッと増している。
身体を覆っているのは膝下まで伸びた長い黒のワンピースだが、非常にタイトに作られていて、ボディラインがはっきりわかるデザインになっていた。触れたことはあるものの、直視したことのない灯の胸が窮屈そうにワンピースに押し込められていて、彼女が"女"であることを意識させられる。
更に視線を下に落とすと、骨盤の下あたりからはサイドに大胆な切り込みが入っていて、太ももが露出していた。
健康的な肌色を晒しているだけでも刺激的だが、ご丁寧に白のニーソックスまで履いていて、履き口からあふれた太ももがフェティシズムを感じさせる。
そして何より。
俺が最も心掴まれたのは。
「……あ、あの、何か言ってくれないと気まずくてですね……」
耳を赤らめながら、目を泳がせ、俺の反応を窺う灯の表情だった。
恥ずかしさを紛らわせるためか、キャラクターの仕草を真似ているのか胸の前で手を組み、肩を小さくする彼女に、冒涜とも呼べる欲求が湧きあがる。
すぐにでも着火しそうなその心を、なんとか抑え込みながら、そっと彼女の頬に手を当てた。
「ひゃいっ……⁉︎」
「似合ってる」
「そ、そうっすか。なら、よかった……」
胸を撫で下ろしつつ、なんだか物足りなさそうな彼女に更に手を伸ばす。
「きゃっ⁉︎」
灯をギュッと抱きしめて、ワンピース越しにお尻に触れた。
「んっ……やらし……♡」
ゆっくり撫で回すと、灯は顔を赤くしたまま俺の胸に額をつけ大人しく俺の腕の中におさまった。
小ぶりに見えても、しっかりハリのある臀部。黒い衣服に包まれ、撫で心地のいい身体を遠慮なく堪能する。
「やっぱり期待して寝室呼んだのか」
「うっ……そういう気持ちがなかったわけじゃないっすけど……こ、これってルール違反っすかね」
「今日一日、俺に付き合ってくれたらチャラにする」
言いながら、俺はサイドの切り込みからワンピースの中に手を入れ、ショーツ越しに彼女のお尻を弄った。チラリと見えたショーツはニーソックスに合わせてか真っ白で、余計に汚したくなる。
密着した下腹部の膨らみに灯は気づいて、彼女もそっと俺のズボンの中を弄り出した。
互いをくすぐり合い、この先に起こることを期待しながら高めていく。
俺もショーツの中へと手を忍び込ませ、素肌のお尻の、秘孔へと指を伸ばす。
「っう、あ……やぁ……」
ツプッと、中指を第一関節まで入れると、灯が顔を俯かせながらプルプルと震えた。
「お隣さん、お尻の穴好きすぎ……」
「シスターなら前の穴はダメかと思って」
「ただのアナル好きでしょ……。ひうっ⁉︎ だ、だめ……抜き抜きしないで……あ……うぅ♡」
指を浅く抜き差しするたび、灯が鳴き声を上げる。普段の生意気な言動とは正反対の彼女に、加虐心は止まることを知らない。
力んで肩のすくむ灯に、我慢の限界だった。
「きゃっ……!」
俺はベッドに灯をうつ伏せにして押し倒し、ワンピースの裾を乱暴に捲り上げた。
ショーツに包まれたプルンとしたお尻を、バチンッと勢いよく叩く。
「あ゙あっ⁉︎」
灯が痛みに喘ぐ。
「腰上げて」
「ふぁ、ふぁい…………うぅ……」
顔を枕に押し付けながら、灯は腰を上げる。
ショーツのクロッチ部分をずらすと、ついに灯の菊門が露わになった。
「……っ!」
外気に触れ、言葉にならない悲鳴が溢れた。ピクリと動いたその穴に、俺は竿を当てがう。
「……灯、ごめん。今日止まらないかも」
ダラダラと流れる先走りを塗りたくりながら、最後に灯に告げると、灯はか細く言った。
「あとでいっぱい抱っこしてほしい……」
「わかった」
ささやかなお願いに了承し、俺は腰を突き出した。
「あ……ぐっ! はあっ……入ってきた……♡」
一度、先端が飲み込まれると後はするすると奥まで入っていく。
固く閉められていたはずの門は、あっさりと俺の大きさに合わせて拡がり、竿を完全にその中に納めてしまう。
初めてとは思えないほどのフィット感。自然と腰を動かしていた。
「あっ、あふっ……んぅ……いや…………あっ♡」
腰を前後に揺らす俺に合わせて、灯がくぐもった声を漏らす。日常では聞けない艶のある灯の声に、息子は中で跳ね回った。
「ん、はっ…………ああ♡ お隣さんの、来てる……♡ ホントにアナルセックスしてる……」
歓喜と戸惑いの混じった声音で灯は呻く。
咥え込む彼女の門のアウトラインを、そっと親指でなぞるとくすぐっそうに膝を震わせた。
「いや……! そんなとこ優しく触らないで……」
「綺麗なんだから気にしなくていい」
「異常性癖者ぁ……うっ、あ……♡ お腹、きっつい……♡」
恥辱を晒すシスターにまだまだ欲求は止まらない。
スローペースから徐々に速度を上げて、自分好みに開発していく悦びに酔いしれる。
ベッドが軋み、腰と腰のぶつかる音がはっきりと立ち始め、男女の臨場感が本格的に高まってきた。
「うっ、うっ、はっ……ああっ! 初めてがお尻とかっ……酷い……うう……」
「やめる?」
「やめない、れすっ♡ 生意気シスターのケツ穴……いっぱい見てほしい……っ♡」
灯もノってきて、自分でお尻を持ち、俺に接続部が見えやすいように拡げた。
喘ぐ声に合わせて締まる彼女の秘門。中の感触以前に、目の前に広がる景色が俺を込み上げさせた。
「んぅ、あ、ああ♡ 出してっ……、全部…………あ゙、ぐっ♡♡」
極限まで溜め込んだ精力を一気に解放する。
灯の中に何度も注がれて、灯もビクビクと震えながら受け止めた。
乱れた呼吸を整えながら引き抜くと、トプッと擬音でも付けれそうなほど、注いだ液が溢れてくる。
汚れたショーツを灯は躊躇いがちに脱ぎ、恥ずかしそうに目を逸らしながら。
「……まだ、足りないっすよね?」
◆
「はっ、あ゙っ、ああ……こ、これであってる?」
「ああ、上手い。可愛い」
「あ、ふう……くっ! 恥ずい……」
ソファの上で寝そべる俺に、灯は自ら跨って何度も腰を下ろす。顔を真っ赤に染めながら、カエルのような体勢で、跳ね続ける。
カーテンを閉めているとはいえ、寝室より明るく解放的な空間でのプレイに、俺も興奮が止まらなかった。
健気に俺を気持ちよくさせてくれる灯に、俺はスマホを取り出して、その姿を収めた。
足をガニ股に開いているせいで、毛の生えた股間部もはっきりと記録される。
「んうっ、う…………お、おまんこ撮りすぎ……っんぅ♡ 綺麗に剃ってなくて……っ、ごめんなざいっ♡」
「気にしなくていい。そっちの方が好きだし」
「あ゙っ♡ んぐっ…………お、お゙っほ♡ おっ、ぐっ♡」
下から突き上げると、灯は低い声で喘いだ。可愛げのない声がなぜか癖になる。もっと聞きたくて、スマホを放り捨て、彼女の腰を掴んで強く打ち下ろさせた。
「んお゙っ⁉︎ う、ぐぅ……っ、や、やだっ! バカになるぅ……♡」
「もっと声聞きたい」
「お゙っ、あんっ、うぅ……、い、いくっ……♡ お尻でいっちゃうからあ……♡ ん゙う……お、おっ♡ イクっ! いくいくイく……っ! あ゙あ゙っ♡♡」
◆
「んぢゅぷっ……! ぢゅるるるっ、んぐっ、ぶっ……!」
風呂場に激しいリップ音。
灯は一糸纏わぬ姿に水を滴らせながら、俺の腰にしがみついていた。
「んむぅあ……れろれろれろれろ…………ぢゅぅ♡」
タイルの上で膝を揃えて正座し、丹念に舌で掃除するその姿に、思わず喉が鳴る。
初めて見た灯の裸体。
確かに膨らんだ胸にはピンと勃つ、薄桃色の果実が成っている。
彩恵のように完成はされていないが、まだ成長の余地を感じさせる肉体に爆発寸前だった。
「そろそろ……」
「んん゙っ、ちゅるるる……んぱっ! いつでもいっすよ……んじゅるるぅ……ぢゅぷっ、んぐっ、あ♡ お好きなところに……全部……ちゅるるるるるっ! ……んあっ⁉︎ ああ……♡」
好きなところにと言われ、灯の口から引き抜き、そのあどけない顔と柔らかな身体に吐き出した。
背徳的な快感に脳を焼かれながら、逃げもせず俺を正面から受け止めた灯と目を合わすと、彼女は困ったように笑った。
「マーキング。もっと……ください♡」
その笑顔に、今日何度目か、彼女に心を射抜かれた。
◆
そして、いつの間にか夜になった。
半日灯と絡み続けて、さすがに精力も尽き、カップ麺をダラダラ食べて今日が終わろうとしていた。
思えば俺達は昼飯も食っていない。我ながらどうしてここまで夢中になったのか、不思議だ。
「ひさびさにお隣さんとイチャイチャできたと思ったら、こんなハードなことされるとは」
灯が麺を啜りながらくたびれた表情で、俺を睨む。
「もしかしたら一か月間ずっと我慢してたのかもな。今日のは刺激が強すぎた」
「せっかく買ったのにいっぱい汚されちゃった。後半、コスプレ関係なしに全裸だったし」
「わ、悪い」
「いっすよ、別に。洗えるし」
そう言いつつ、灯はプイッと冷たくそっぽを向く。
負担をかけすぎた自覚はある。申し訳なさが一気に押し寄せてきて「すいませんでした」と謝った。
すると灯はふっ、と頬を緩ませる。
「悪いと思ってるなら、この後一緒にゲームしましょ」
「そんなんでいいのか」
「ちゃんと私のこと膝に乗せて、ギュッてしながら操作してください。約束っすもん」
少女らしい笑顔と、ラーメンの汁を飲み干す姿に若々しさを感じる。
……果たしてゲームだけで済むのか、自分でも懐疑的だった。