腕時計を見るとすでに二十一時過ぎを指していた。窓の外はすっかり暗くなっていて、向かいのオフィスビルも電気を消しているフロアがいくつか見える。
あの二人も流石にそろそろ終わる頃だろう。というか終わってくれないと俺が帰れない。パソコンをシャットダウンしてバッグに仕舞うとオフィスを出て、上の階のレッスンルームへ向かった。
レッスンルームの前まで来ると、はつらつとした女の子の声が聞こえてきた。
「ありがとうございました!」
ドアを開けて中を覗くと、小柄な女の子が彩恵に深々と頭を下げていた。
二人とも身動きのとりやすいダンスウェアを着ていて、冷房もガンガン効いている。それでも二人とも滝のような汗を流し、肩で息をしていた。
彩恵はタオルで汗を拭きながら、穏やかに笑って返した。
「どういたしまして。私も勉強になったわ。今日はゆっくり休んで」
「はい! 彩恵さんもお疲れ様です!」
元気に答えて女の子は振り返り、俺にも「お疲れ様です!」と笑顔で挨拶して部屋を後にした。
彩恵は上品に手を振り見送った後、キョロキョロと周りを見渡し、他に部屋にいるのが俺だけであることを注意深く確認するとその場に倒れ込んだ。
「やっと終わった……!」
「調子乗って『ええ、もちろん』、なんて言うからだ」
「なんであんなにやる気あるのよ」
彩恵はタオルを枕にし、うつ伏せになるとそのままピクリとも動かなくなった。
さっきまでいた子は一ヶ月前にデビューした、うちの新人アイドルだ。
聞けば彩恵の大ファンだそうで、たまたま事務所の廊下で彩恵とすれ違い、目を輝かせて話しかけてきたらしい。
サインや握手をおどおどと欲しがる可愛い後輩に彩恵も気分を良くし、「これから自主練するんですけど……わ、私にダンスを教えてくれませんか?」という願い出に二つ返事でOKしてしまった。
結果、想像以上の熱量で練習に取り組む後輩に、ボーカルレッスン終わりの彩恵はぶっ通しで七時間近く付き合わされ、この有様。午後は貴重なオフだったのに、もったいない。
「お前も早く帰れよ。明日は新曲のレコーディングだぞ」
「送ってって。駅まで歩きたくない」
「やだ」
「酷い」
「お前の家、俺の家の真反対だろ。俺も今日は早く帰りたい。そもそも俺も午後で帰る予定だった」
「マネージャーが私より先に帰るのおかしいじゃない」
「自主練はプライベートだ。俺まで付き合わせるなよ。やることないし」
「オフィスで先の仕事片付けてたんでしょう? 私のおかげで未来の負担が減った」
「適当に誤魔化しやがって」
「にゅふん」
謎の言語と共にドヤ顔を披露された。さっきまでのかっこいい先輩面はどこへ行ったのか。
「で? 送ってくれるの?」
「頼み方次第」
「ったく、もう。仕方ないわね」
彩恵はのそりと身体を起こすと、なんの前触れもなく俺に抱きついてきた。
「スッキリさせるから送って」
「ちがっ、そんな頼み方してほしかったわけじゃ……」
「じゃあこのまま一人で帰る? 後から後悔しない?」
背中を妙に艶かしい手付きで摩られる。逃がす気のない鋭い目に身動きが取れず、呼吸のタイミングもわからなくなった。
「今、結構汗臭いけど、そういうの嫌いかしら」
首筋を嗅がせるように俺の肩に顎を乗せ、ギュッと強く抱きしめられた。
少し意識するだけで彩恵の匂いが鼻腔に広がる。
何度か嗅いだことのある彩恵独特の甘い香りと、蒸れた汗のツンとした匂い。
だが、どちらもまだ表面しか嗅げていない気がしてもっと深くまで味わいたくなった。
「き、嫌いじゃない」
「だと思った。マネージャー、特殊だもの」
クスッと笑い声を溢すと、彩恵は俺を座らせて、膝の上に跨り、自分のレッスン着を捲りあげた。
彩恵と一夜を過ごしたあの日から早いもので一ヶ月が経っている。あれからというもの、彩恵は隙を見つけてはこうして俺に行為を持ちかけてくる。
毎回拒否しているものの、最終的にはあの時撮られた写真を脅し道具に使われて、誘いに乗る以外の選択を取れずにいて、今回もゆっくりと彩恵の胸に顔を埋める羽目になった。
大きなクッションに包まれて安心感から自然と彩恵の背中に腕を回していた。
スポーツブラも汗ばんでいて、湿気を感じた。目一杯息を吸うと複雑な香りが広がる。
「んっ、ふ……くすぐったい」
少し恥ずかしそうに彩恵が笑った。
ブラを捲り上げると汗の滲んだ乳房が露わになって、正気を失わせる。知能指数が著しく下がった俺は本能に身を任せて齧り付いた。
「赤ちゃんみたい。どんな味?」
「しょっぱい汗の味」
「うわあ、口に出されるとキモい」
ドン引きされながら優しく頭を撫でられる。
何度舌で転がしてもプルンと立ち上がる蕾に、俺の股間も持ち上がってきて自分でベルトを緩めた。
いつの間にか乗り気になっていることに恥ずかしくなりながら、もうなんでもいいやと開き直って下半身を曝け出す。
弓形にそそり立つ竿が彩恵の目を釘付けにした。
「やっぱり大きくなってる時は凶悪な見た目してるわ。こんなのお腹に入れるなんて信じられない」
そんなことを言いながら、彼女は俺の股の間に入って躊躇なく口に咥えた。
「ぢゅっ、ぷっ……んくっ……ぢゅるるっ!」
「お、音出しすぎ」
「ちょっと下品だったかしら。もう少し優しくする?」
「……任せる」
「そう。じゃあ、可愛い顔意識で……れちゅるるっ、ちゅるるるるっ。んっ、ちゅー…………♡」
宣言通り彩恵は上目遣いで舌を小さく出し、子供がアイスを味見するようなノリで舐め始めた。動作は小さいが、先端の弱いところを細かく刺激されて膝が反応してしまう。
「れるっ、ん、ちゅむ……なんか段々分かってきたかも」
「何が」
「ここ、カリ首って言うんだっけ? マネージャーの弱点でしょ」
「男は全員弱い」
「そうなんだ。なら色々試させて」
探究心が湧いたのか、くびれを執拗に攻め立てられる。
何度もキスされ、ほじくられ、みっともない声が出そうになる口を咄嗟に手で押さえた。
「ふふふっ。大当たり。汚れ溜まりやすいし、匂いもキツイからあんまり舐めたくないんだけど、そんな反応されたらイジメたくなるわ」
「性格わる……っ」
「褒め言葉ね」
悪魔の微笑みにときめきそうになって咄嗟に目を隣に逸らすと、部屋の大きな鏡が目に入った。
彩恵が男のモノを口にしている姿もそうだが、自分が彩恵に無理やり咥えさせているような絵にも見えて、その光景に高揚する感覚を覚えた。
すると彩恵も俺の視線から鏡に気づいて「……なるほど」と、ひとこと呟く。
「俯瞰して見えるのがえろいんだ」
「な、なんも言ってないです」
すかさず否定したが彩恵の耳には届かず、彼女は体勢を少し変え、自分の顔や胸がよく見えるようにした。
さらにはアンダーウェアも脱ぎ出して、ショーツにまで手をかける。
「散々あなたの見たし、私のもちょっとは見せなきゃ」
謎のフェア精神の下、彩恵はショーツを脱いで自分の下半身を露出した。
つるんとした割れ目。
一切くすんでいない瑞々しい花弁。
身体の最深部まで整った彩恵に畏怖さえ感じた。
生々しくグロテスクな女性の秘部に、身体がのぼせ上がってビキビキと肥大化する。
「めっちゃ射精したがってる。子孫残したくてたまらないって顔になってるわ。今、楽にさせるからね」
彩恵は再び口を開けると根元まで一気に咥え込んだ。
さっきまでの可愛い顔を捨てて、喉全体で俺の息子を吸い込む。
「じゅるるるっ! ん、ばっ、ぐっ、ぢゅるるる、お、くっ……じゅっぶ、ぢゅうううぅ…………♡」
「あ、彩恵えぐいって!」
容赦なく喰らう彩恵の頭にしがみついて、腰が抜けないよう踏ん張るが、部屋に響く音と鏡に映る淫らな姿に射精感が一気に高まる。
ポタポタと唾液を溢しながら頭を上下に動かす彩恵の下品な顔に、失望と興奮が混ざって彩恵の髪を強く握ってしまった。
一瞬痛そうに眉を歪める彩恵の顔すら愛おしく思えて、離す気になれず、その瞬間が来るのをただ待った。
そして。
「いっ……!」
「ううっ⁉︎ …………ん、んうっ♡ んぐっ、おうっ……ごくんっ。ぷはあ……量、凄い♡ 放尿されたかと思った」
笑いながら上体を起こし、彩恵は水をがぶ飲みして腹の中へと流し込む。
俺が握ったせいで髪はボサボサだった。
「悪い。髪、引っ張ってた」
「気にしてなくていい。そんな簡単に禿げるわけでもないし。それより」
彩恵はようやくブラを元に戻して胸を隠し、手櫛で自分の髪を整えた。
「早く帰りましょう。あと帰りにアイス屋寄ってって」
普通の女の子のトーンで言われ、さっきまでの雰囲気が全てどこかへ流された。
いつの間にか彼女にとってはこれが日常になっているらしい。俺はまだついて行けていない。