外は土砂降りだった。
今日は水曜日。一日丸ごとオフで、朝からダラダラと過ごしていたら午後からいきなり降り始めた。
忙しなく窓を叩く雨音。もうすぐ夕暮れ時だというのに空は使い古した雑巾色で、黄昏とは無縁の景色だった。
夕食は外で食べようかと思っていたのに、これでは車を運転する気も起きない。
八つ当たりのようなため息と共に、ソファに寝そべる。趣味らしい趣味を持っていない俺は、サスペンスドラマの再放送を眺めて時間を浪費する以外に、休日の過ごし方を知らなかった。もっと有意義な過ごし方はないのか、自分でも呆れてしまう。
ピコン――。
不意にスマホが鳴って手に取ると、担当アイドルからメッセージが届いていた。
『あなたの部屋、駅の近くって言ってたわよね? 住所教えて』
向こうも今日は一日オフのはず。買い物に行くなり、甘いもので食べるなりしてゆっくり過ごしているのだろうと思っていたのだが……このメッセージは一体どういう意図なのか。
少し悩んでとりあえず探りを入れてみる。
『なんで?』
『早く教えろ』
怖い。顔が見えないから余計に。
これ以上理由を問い詰めても教えてくれる気がせず、素直に住所を教えると、それきりメッセージが途絶えた。
十五分ほどすると、インターホンが鳴った。ドアを開けると、両手にショッパーをぶら下げた彩恵がびしょ濡れの状態で突っ立ていた。
「風呂貸して」
◆
キッチンでホットミルクを作って待っていると、脱衣所のドアが開いた。
「意外と立派な部屋住んでるじゃない。もっと質素な暮らししてると思ってた」
彩恵は俺のTシャツと短パンを履いた姿で出てきて、早速マグカップを手に取り、ミルクを口にした。
ホッと息を吐く彩恵に「あの……」と声をかける。
「何?」
「何?じゃなくて。なんで部屋に来たんだ」
「だから買い物してたら急に雨が降ってきて、たまたま近くにあなたが住んでること思い出したから、雨宿りさせてもらうことにしたって言ったじゃない」
「あのなあ。いくらマネージャーとはいえ軽々と男の部屋に上がるなよ。週刊誌に撮られたらどうするんだ」
「ちゃんと周りを警戒しながら来たから大丈夫。それに今更スキャンダルに怯えるのもおかしくない?」
確かに、散々あんなことをしておいて今更ではある。
「でも気を付けろよ。今の時代どこで誰が聞いてるかわからない」
「はいはい」
適当に返事をすると彩恵はマグカップを片手に部屋を歩き回った。品定めするようにインテリアや内装を見て、本棚や収納棚も勝手に開けて中を覗く。
「空き巣か」
「男性の部屋に入ったの初めてだから興味あるのよ。エロ本とかないの?」
「ない」
「スマホで見るタイプか」
「勝手に結論出すな」
見られて困るようなものもなく、そのまま放っておくと、彼女が収納棚の中から小さな箱を取り出した。
黒い革製のそのケースに俺はあっ、と声を上げかけて咄嗟に飲み込んだ。勘がいいのかたまたまなのか、彩恵はケースに興味を持ったようで容赦なく開く。
中には指輪やネックレス、イヤーカフなんかのシルバーアクセサリーが入っていた。
「あんまり見たことないけど、こういうの着けるのね」
「……一時期ハマって集めてたけど、最近はほとんど着けてない。そろそろ処分する」
平然と嘘をつくと、彩恵はふーん、と唸った。
「女の子にフラれて思い出の物まとめて捨てたけど、プレゼントされた物はどうしても捨てきれなかったー、とかだったりして」
「…………」
「え、図星?」
「違うもん。売りに行くタイミングなかっただけだもん」
「未練タラタラじゃない」
あっさりと看破されて呆れた目を向けられる。俺はいたたまれず「さっさとしまえよ」と言ったが、彩恵は俺を無視してケースの中身をじっと見つめた。
そして指輪をひとつ取って自分の指に当てがうと、中指がジャストサイズだったようで、何度も拳を握って感触を確かめた。
四ミリほどの細さのシルバーリングはランダムカットが施されていて、女性が着けても違和感なく、なんなら元々彩恵の物だったんじゃないかと思わされるほど馴染んでいた。マットな質感もよく似合っている。
「ピッタリ。貰うわね、これ」
「そんな曰く付きなもん貰ってどうするんだ」
「この指輪を見るたび色々思い出して苦い顔をするあなたが見てみたい」
「性悪女が」
口をついて出た言葉に、彩恵はニヤリと笑うだけだった。
彩恵はリビングのソファに腰掛け、自宅のようにくつろぎ始め、俺も半人分ほど間を空けて隣に座った。
「どこ行ってたんだ?」
「アウトレット。服見に行ってたんだけど、せっかく買ったのも濡れちゃった。ちょっと濡れたぐらいでダメになるような物でもないから良いけど」
彩恵はソファの前のローテーブルからショッパーを手に取ると、中から服を取り出して状態を確認した。
部屋着にも使えそうなラフなTシャツ。
クールな着こなしが映えそうな紺のジャケット。
フワフワモコモコのパジャマ。随分、買い物を楽しんだらしい。
取り出しては広げて、畳んでを繰り返す彩恵を何の気なしに眺めていると、ふと気がついた。
「……彩恵さん」
「んー?」
「下着は?」
「買ってないわ」
「そうじゃなくて。今、下着着けてる?」
「着けてない。洗濯中」
俺の方を向きながらケロッと答える彩恵の胸が、プルンと微かに揺れて、ツンと張った二つの突起に目が吸い寄せられた。
「浮いてるって……」
「何が?」
「ちく……バストトップ」
「散々生で見たでしょ。何を今更狼狽えてるのよ」
「そうだけど、なんか生で見るより恥ずかしい気がしてる」
直接見えないからこそのふしだらさ。
しかも着られているのが自分の服というのが、余計に邪心を掻き立てられる。今後俺はこの服をどういう気持ちで着たらいいのだろう。
「よくわからないけど、そんなにドキドキするんだ。これ」
キョトンとした顔で襟元を軽く伸ばすと、彩恵は匂いを嗅いだ。
「あなたの匂いがする」
挑発するような笑みとセリフ。期待したような表情が色っぽさよりも先に、あどけない印象を感じさせた。おそらく……いや、十中八九、あえてそんな演技を見せているのだろうが、どうしようもなく彩恵という存在に弱い俺は、悔しさを噛みしめながらも手のひらで踊らされにいった。
激しい雨音が遠のく。
彩恵に意識の全てを向けると、彼女をそっとソファに押し倒して、Tシャツの上から胸に触れた。
手を跳ね返すような弾力と布一枚隔てた体温が妙に落ち着く。親に抱き着いているような安心感だった。だが、そんな穏やかな感想がすぐに薄れるほど、浮いた胸の突起が火を点けた。
乳房を揉みしだきながらクリクリと指で転がすと、それだけで身体が熱くなる。
「ん、ふ……っふふ」
夢中になっている俺の首に手を回しながら彩恵はもっとして、と目で訴えた。
その目に答えるように突起をグイっと抓ると、「ひぅ……っ」珍しく彩恵の腰が浮いて可愛らしい声が上がった。普段の余裕ある態度とのギャップで加虐心が湧く。
乳輪のあたりをフェザータッチで撫でまわし、彩恵の期待が大きくなったところで指で弾いた。
「うぐっ……♡ あ、あんまり弄られると、くすんじゃう」
「そっちもそっちで見たい」
「処女設定なのにやたら黒ずんでるAV女優みたいになる……」
なぜそんなに造詣が深いのかは置いといて、ジョークで誤魔化そうとするぐらいには感じているようだった。
Tシャツをおもむろに捲って、上半身を曝け出させた。呼吸がやや乱れている彩恵に合わせて、実った果実が上下に揺れる。
ズボンとパンツを脱ぎ捨て彩恵の上に跨ると、既に唾液を垂らしている息子を胸に擦り付けた。
「舐めて」
そう命じると彩恵は胸で竿を挟み込みながら小さく舌を出す。
「いつもより顔怖いわ。……ちゅるっ、ん、ぷっ……ちゅう……」
胸をリズム良く揺さぶってシゴきながらペロペロと舐め回す。ツンとくる匂いに顔をしかませる彩恵に押し付ける勢いで腰を前に突き出し、更に匂いを嗅がせた。
彩恵は俺の変態嗜好に呆れた目をしつつ、そのまま胸と舌を動かし続ける。手慣れた様子でお世話を続ける彩恵に物足りなさを感じて、俺はテーブルに手を伸ばし、自分のスマホを取った。
「……まさかと思うけど、撮る気?」
「グラビアの練習」
「終わってる」
スマホのカメラレンズを向けられ、彩恵の耳に赤みが差した。さしもの彩恵も自分の淫らな姿を記録に残されるのは恥ずかしいようだ。
それでも差し向けられた俺の息子に舌を這わせ、遠慮しがちに奉仕を続行した。
胸を曝け出し、薄い唇と艶やかな舌で男性器を扱う彩恵の姿がスマホに録画されていく。生で見るより画面越しの方が淫靡に見えた。
「じゅるるっ、ん、んくっ……ぢゅぷ……ちゅ、あ……」
「舌、もっと伸ばして口開けて」
「……んあぁむっ。ぢゅるるるるっ! ん、う……んお…………っむちゅうぅ♡」
要望通りにお淑やかさを捨てて喰らいつく。徐々に込み上げてくるものを我慢しながら、彩恵の唾液と俺の先走りで濡れた乳首を不意に抓って引っ張った。
「あ゙うっ! ちょ、ちょっと。舐めれないから今ストップ……」
「今日、乳首弱いな」
「あなたがしょっちゅう触るせいで感度上がってきてる」
「こっちも?」
「い゙っ、あ……♡」
もう片方も引っ張ると、またも身体を震わせた。今まで見たことない彩恵の反応に楽しくなってきて、そのまま片手で乳首を弄り続けると、仕返しと言わんばかりに彩恵はギアを上げた。
「んう、ぢゅっ、ぢゅ、んぐっ、んぱっ……うぅ♡」
時々、快がった表情を見せつつ、強烈なバキュームをお見舞いされた。
俺も持っているスマホを落としかけたが、なんとか彩恵の顔にフォーカスしながら責めた。
お互い相手の弱いところを執拗にイジメ抜き、プルプルと身体を震わせながら、粘り続ける。
「じゅぷ、おっ、ぐ……ぢゅるるるるっ! そ、そろそろイく? あっ♡」
「あ、ああ。顔……」
「んっ。お好きにどうぞ……れろれろれろれろぉ…………い゙、うっ……♡」
限界まで溜め込んだ熱を一気に吐き出した。
彩恵の顔から胸にかけて、白い濁りが飛び散る。天気もあってか湿度の高い香りが立ち込めて、俺も彩恵も一気に冷静になった。
「はあ、はあ……。せっかくシャワー浴びたのに」
「悪い。口より顔にかけたい気分だった」
「服まで汚れたじゃない」
「俺のだから気にしなくて良い」
「……気にするわよ」
彩恵がしおらしい表情を見せた。録画を停止させながら「何が?」と聞くと、彩恵はそっぽを向きながら小さな声を発した。
「ズボン。汚しちゃったかも」
モゾモゾと両膝を合わせる彩恵。どうやら胸を触られているだけで軽く達したみたいだった。
気まずそうに目を逸らす彼女が途端に愛おしくなって、思い出したかのように窓の外を見る。
「雨、まだ止まないっぽい」
「……洗濯もまだ終わってない」
誰かに言い訳するかのように言い合って、お互い服を全部脱ぎ捨てた。
◆
「んっ、んっ、むっ、んぐっ、じゅるっ、はあ……ぢゅるるっ、んむっ、じゅううぅ……、んぐっ、ぉぐっ♡」
寝室に激しいバキューム音が響く。部屋の壁は薄くはないが、それでも隣に聞こえたらどうしようかと思うほど、容赦のない音がこだましている。
一糸纏わぬ姿でベッドに移動すると、俺たちは猫のようにじゃれあった。互いを抱きしめ合いながらゴロゴロと転がって、噛みつき、撫でて、くすぐり合い、何かの拍子に繊細な部分が擦れると、そのまま相手の膝やお腹を使って果てる。少し休憩したらまたくすぐり合って……なんて子供と大人の遊びを行ったり来たり。
彩恵が来てから二時間経っているが、俺も彩恵もまだまだ遊び足りない気分だった。
寝室のカーテンを閉めているせいで外の景色は見えない。雨音からして、おそらく天気は徐々に晴れてきている。
そろそろ休日が終わると思うと名残惜しい。そんな風に思ったのは彼女も同じらしく、情熱的なリップサービスをくれた。
頬を凹まし、頭を振る彩恵の前髪を軽くかき上げると、彼女はようやく気付いた。
「んじゅるるるるるっ……ぱっ! ……また撮ってたの?」
「咥える前に撮るって言った。聞こえてなかったみたいだけど」
彩恵は髪を手櫛で整えながら、不満顔でスマホのレンズを睨んだ。
「気付いてたなら止めてよ。今の顔、可愛くなかったでしょ」
「そっちの方がエロくていい」
「わっかんないわ」
諦めたようにため息を吐き、もう一度咥えようと口を開けた彩恵を手で制した。
「後ろ向いて」
「……何する気?」
「想像に任せる」
彩恵は上目遣いで固まったまま少し考えて、渋々といった様子でくるりと身体の向きを変え、うつ伏せで寝転んだ。
こちら側に向いたお尻を勢いよく叩くと、「ん゙うっ♡」と痛みに喘ぐ声が響く。
「尻、突き出して」
「最悪……」
そう言いつつ、彩恵はシーツに顔を埋めたままお尻を持ち上げ、俺に突き出した。
大きなお尻を接写しながら、空いた手で撫で回す。グッと片側の肉を外へ押し広げると、彩恵の菊門がはっきりと録画された。
顔を背けた彩恵の耳が、真っ赤に染まっている。おそらく身体のパーツで一番見られたくない場所だろう。
興味本位で人差し指の先端を咥えさせると、彩恵の足先がピクリと反応した。
「ッ……ああ、もうなんでこんなので興奮するのよ!」
「お前がこんなとこまで綺麗なのが悪い」
「そうじゃなくて私の方! なんか今すっごい濡れてる気がする……!」
言われて割れ目を見れば、テラテラと艶めいていた。意外にもこんな癖があったらしい。
新しい扉が開かれるような感覚がした。
「自分で広げて」
「……はい」
彩恵は俺の命令に従順に従って、自分の両手で尻を広げ、穴を見せつけた。
品も、知性も、矜持も捨てた格好に息子がはち切れそうで我慢の限界だった。
ヒクつく菊門に竿を当てがう。一応、相手の反応を窺ったが、何の反応もなく、肯定と受け取ってそのまま押し進めた。
「い、うっ……んんぅ……♡」
キュッと小さく絞められていた門が俺のサイズに合わせて徐々に広がり、飲み込むように受け入れた。あいにく今までそんな嗜好は持っていなかったため、見たことどころか想像したこともない光景を目の当たりにした。
拍子抜けするほど簡単に奥まで入り切り、元から俺専用の鞘だったんじゃないかとさえ思うほどピタリと噛み合った。
フワフワとした感触が竿全体を襲いかかる。未知の快感に、気づいた時には腰を動かして勝手に出し入れしていた。
「あっ、ふ……ん……んっ…………ああ……♡」
「締め付け凄いな。才能ありすぎないか」
「……ん……はっ…………どこぞのマニアックマネージャーに似たのかも、ね……あ゙っ♡ 中で大きくしないで……っ」
門を広くし、根元まで咥えた景色に股間の昂まりは止まることを知らず、容赦なく彩恵を抉っていた。
彩恵も悲鳴と歓喜を混ぜたような鳴き声を溢しながら、自ら腰を動かして俺にぶつけてくる。
「はあ……はあ……♡ いいかも、これ……んぅ♡」
ピストンするのに夢中で手に持ったスマホの存在を忘れていた。慌てて彩恵との接続部にレンズを向け、行為を鮮明に記録していく。
長い銀髪を振り乱し、背中に汗をかきながら後ろの穴で男性器を搾り上げる。処女アイドルのハメ撮りとしてこれ以上に鮮烈なものもない。
「あ、あう……くっ……ふー♡ ……マネージャーっ♡」
快がる彩恵のシーツを握る手に目が吸い寄せられた。右手の人差し指に銀の輪が光っていて、別れた彼女の顔がチラついた。
「その子に重ねて……中まで、犯して♡」
俺の顔なんて見えていないはずなのに見透かされてしまって、急激にボルテージが跳ね上がる。本来の用途と違う使われ方をする秘部の中で、全てを解放したくてしょうがない。
パンパンッ、と大人のビデオでしか聞いたことのない腰と臀部のぶつかり合う音が速度を上げ続け、もどかしさを極限まで味わった後。
「あやめっ!」
「い、いう……い、くっ…………〜〜〜〜ッ♡ あ…………うう……♡♡」
彩恵の中に注ぎ込んだ。
彩恵も身体をブルリと震わせ、金切り声にも似た嬌声と共に絶頂に達した。
長い余韻に浸りながらゆっくりと彼女から引き抜くと、「んうっ……♡」拡がった門から白い液が溢れ、彩恵が荒い呼吸を繰り返した。
「はあ……はあ……ふー……♡」
「い、痛くなかったか?」
「…………今更紳士ぶらないで。ノリノリでケツ穴犯してたくせに」
「そうだけど……」
はっきり言われると罪状を突きつけられた気分になる。
彩恵はのそりと起き上がり、俺に正面からしなだれかかってきた。
「はしゃぎすぎたかも。すっごい疲れた」
「せっかくの休みだったのにな」
「ホントよ。もっとゆっくりしていたかったのに」
そう言う彩恵の口元は小さく笑っている。
「でもまあ、悪くないけどね。こういう日」
遠回しな誘い文句に苦笑しつつ、俺はもう一度彩恵と交わった。