野上武志先生の漫画「はるかリセット」211話「見たことあります?」で主人公天野はるかが妄想で登場させた屋台の女将と常連客の任侠な人での二次創作になります。
任侠の人は勝手ながらセイと名付けました。
割烹着と着物ってイイネ
大正時代に作られたレンガ造りの高架橋の下で小さな屋台が立つ。おでんを商うこの屋台では割烹着の女将が切り盛りしている。
「女将、やってるかい!?」
弾んだ声で暖簾を潜り屋台に現れたのは常連客の一人だ。
「あら、ご機嫌ですね」
女将は常連客の機微によく気づく。
「ああ気分が良い」
頬に傷があるこの常連客はセイと言い任侠の住人である。だから理由をあえて言わない。
「それは良かったですね」
女将は少し素っ気なく言う。
彼女はこの常連客セイがどんな手柄を立てたのか、人様に言えない事であろうと分かる。
だから世辞でも「おめでとう」とは言わない。
かと言って棘のある冷たい態度は取らない。
セイは自分が任侠道の人間である事を隠す事は無かった。
隣同士となったお客さんは驚いてしまうが、女将にとってそれは珍しい事では無い。様々な客を相手にしているのだから。
むしろ隠しもせず、大袈裟に飾らないカワの素直さに女将は好感を持っていた。だから頬に傷があるセイも快く迎えている。
そうした女将の心はこの任侠の住人は知っている。
堂々と頬の傷を晒し黒のスーツに金のネックレスを身に纏い極道然とした姿で来店しても拒む事は無い。かと言って女将は調子の良い事を言う性格では無い。
そこが良い。
付き合いで行くお水の店は誰もが世辞と色よい言葉を浴びせる。最近ではその世辞が嫌になって来ていた。反社である威圧と大金を払う太客であるから笑顔で心地良い言葉をかけるのだ。その関係性が嫌になっていた。
この屋台にはそれがない。
女将は多少は気遣うが、あえて客を喜ばせはしない。
客が求める酒やおでんを渡すのみだ。
話相手となった時は静かに受け止めてくれる。それが良い。
「これ出汁割にしてくんな」
女将は「あいよー」と応えて日本酒が半分となったコップへおでん鍋から掬った出汁をお玉で注ぎ七味を一振りする。
セイはこれが好きだった。
「うまい!」と声を弾ませ、気分が良くなりおでんを追加で注文する。
女将にとってはいつものこの流れが心地よかった。
「おかみ、まだやっているかい?」
梅が咲き春の到来が近いと感じられる日の夜だった。
頬に傷のある常連客セイがやって来た。
女将はすぐに様子が違うと分かる。
どこかしんみりとした雰囲気であった。
セイは日本酒を一気に飲み干し、次いで2本目の日本酒を出汁割にするとこれも一気に飲み干した。
こんな荒れた飲み方はしない人だけどと女将はさすがに心配になる。
「何かありましたか?」
女将は思わず尋ねる。
幸いにして他に客は居ない。少しは愚痴を言えるであろうと。
「今夜で最後になる・・・」
セイは呟くように答えた。
「あら」と女将はより様子が違うと思った。
「仕事でな。いつもよりも大変な仕事をする事になった。仕事の出来次第じゃここへ来れるのが最後になる」
重く、言葉を選んで話すセイ
女将は察した。
「寂しくなりますね・・・」
これは偽りない女将の心だった。
「そうだな・・・」
セイも同じく思えた。
もはやこの屋台が日常になっていたのだから。
静かになる。電車が通り過ぎても近くをバイクが走り過ぎても静かに感じた。
「今ので終電ですね。今夜は閉めますよ」
女将は常連客へ告げる。
あれからセイは大根やコンニャク・玉子・厚揚げのおでんを食べ、日本酒を出汁割を含めて3杯飲んでいた。
閉店だと聞くやセイは立ち上がる。あれだけ飲んでもふらついてはいない。
「女将、俺は女将が欲しいんだ」
おもむろに言った。
「あら、まあ」と女将はいなす。
こんな一方的な好意またはセクハラはまともに取り合わない。
今までこんな事は何度となくあった。
「今だけで良いんだ。今だけ」
セイは女将の顔を目を見て願い求める。
冗談やからかいではない。本気で自分を求めていると女将は分かる。
「行き遅れの年増ですよ」
あえて女将は断りを入れる。
女将は男と言う生態を知っている。ただ肉欲で愛を語るものだと。
「女将だから良いんだよ。歳は関係ない」
「嬉しい」
女将は向けられる愛情を受け止めた。
「何処か落ち着いた所で」と女将は二人になれる場所を変えようとしたが、セイは「すまない。ここで」と言った。
少し困るなと女将は思ったが、終電は無く通る人も車もほとんど無い深夜だ。
「お店を閉めるから少し待ってて」と言い応じた。
女将はおでん鍋に蓋をし電灯を消し椅子を屋台の中に納めいつでも屋台を動かせるように片付ける。その様子をセイは眺めていた。
妻を持つとこうなのかと酒に浸る頭でふと思う。
しかし手に入らないのだ。
「では、ここで」
女将は高架橋下にある細い通路に誘う。
かつては歩行者用の通路で通路の先にある歩行者用の橋に通じていたが、その橋が老朽化で解体され行き止まりとなった通路を今は誰も歩かない。
通路に照明が無いのも好都合であった。灯りは近くの街灯や建物から僅かしか届かない。
そんな場所は深夜で逢瀬をするには最適な場所だった。
かつての橋側の出口は柵が設けられ出入りは出来ない、入口は女将が屋台で塞いでいる。完全ではないが密室になった通路
通路の中ほどへ進むやセイが女将を背後から抱き締める。
「ずっとこうしたかった。俺のモノにしたかった」
セイは女将の耳元で囁く。
「どうしてモノにしなかったんです?」
女将は意地悪を言う。
「女将を極道にしたくなかったからさ」
「そう・・・」
女将は少し声のトーンが下がる。何かを思い出したように。
ふと無防備になった女将の顔をセイは引き寄せ口づけする。
唇を重ねながらセイは女将の身体を割烹着と着物越しに撫で、着物の掛衿から右手を差し入れ豊かな胸を揉み左手は女将の股へと忍び入る。
「んっ・・・んっ・・・」
女将はセイの口を塞がれながらも喘ぐ。
胸を揉まれ、秘所を弄られ唇も奪われ口内にセイの舌が暴れている。
身体を奪われる感覚、久しぶりの感覚に女将は酔い始めた。
「・・・強引なんですから・・・」
セイが唇を離すと女将は潤んだ目で言った。
暗い中でも街灯の薄明かりが女将の目元を中心に照らす。
いつもの涼やかな顔が潤んで火照った様子の女将にセイは昂る。
「すまない、強引にする」
セイは女将の着物を捲り上げ、尻を露出させるやセイは自分のズボンを下ろしいきり立つ肉棒を剥き出しにした。
心得ている女将はレンガ造りの通路の壁に手をつき、尻を突き出した。
「んっ!・・・くっ・・・あ・・・」
セイは女将の尻を掴み己を突き入れた。
薄暗い離れた街灯からの光が僅かに届くだけの空間
暗さに慣れて来たセイの目には女将の白い尻が際立って見えた。
「あっあっ・・・んっ・・・んっ・・・」
女将は務めて声を抑える。自分の声で誰かを引き寄せない為に。
「女将・・・」
セイは女将を背後から覆い被さり抱き締め腰は女将を責め立てる。
暗い通路で身体を重ねる二人は影に隠れながら睦み合う。
誰にも見られてはならぬ、見せたくはない。ただ限られたこの逢瀬を遂げたいのだ。
「あっ・・・あっ・・・」
女将はセイに背後から胸を揉まれ、後ろから叩き込まれセイに包まれていた。
セイは女将を猛るままに女将を背後から貫く。
割烹着と着物に包まれた女将の背中に身体を重ねつつ、顔を埋める。手に感じる女将の乳房の柔らかさ、顔で女将の温もりと匂いを感じる。
ずっとこのままでいたい。
渇望を潤しながらセイは限界を迎えようとしていた。
「うっ・・・くっ!」
「あっ!・・・あん!あっ!」
セイは腰を強く打ち突け精を女将の中に放った。
「はあ・・・はあ・・・」
セイは放ちながら女将を抱き締める。
「ありがとうな女将」
女将から身体を離しセイは礼を言う。
「もう行くんですか?」
女将はゆっくりと立ち上がりながら言う。
セイはすぐに答えない。名残惜しいのだ。
「少し時間があるなら、もう一度」
女将が求めるとセイは挑む。
「あっ!あん!・・・あっ」
セイは女将を正面から抱き締めながら突き上げる。女将はもはや声を抑える遠慮を無くしていた。
女将を通路の壁に押しつけるように突きセイは露出させたままの乳房を吸い、頭を埋めもした。
「女将・・・」
「あああ!あん!」
女将は絶頂を迎えながらセイを受け止める。
「付き合わせてすまない」
乱れた着衣を直しながらセイは言う。
「いいんですよ」
いつもの女将に戻っていた。
「ありがとう」
セイは女将と屋台を見収めるとまだ夜明けにならぬ街に消えた。
「さようなら」
女将はセイの姿が見えなくなるとそう呟いた。
5年以上が過ぎた。
セイは女将と逢瀬を過ごした後で敵対する武田組の組長を襲撃してすぐに警察に自首した。
警察はセイが属する小笠原組の組長または若頭による指示ではないかとしつこく追及した。セイは自分の独断だと何度も答える。
セイは起訴され裁判を受ける。
判決は10年の懲役となったが、刑務所での態度と反省の姿勢から5年の刑期を過ぎた時に仮釈放となった。
刑務所での務めを終えたセイを出迎えたのは兄貴分の安藤若頭であった。
「すまんな。しっかりやってくれたのに・・・」
安藤は出所祝いで連れて来た焼肉屋でセイに謝る。
「いいえ、俺がしくじったせいです」とセイは謝り返す。
セイの襲撃で武田組の組長は重体にはなったが亡くならず激しい報復を招く事になった。この報復で小笠原組は壊滅的な打撃を受け武田組に吸収されてしまった。
小笠原組は消滅してしまった。
セイはそれを刑務所で知り落胆した。
「ワシと一緒にやろうや。武田の下だがワシの組がある」
かつての小笠原組の組員で安藤組が武田組の傘下団体として立ち上げられていた。その組長が安藤である。
「今のワシに出来るのはこれだけなんじゃ」
安藤は重ねて説得する。武田組の組長襲撃を命じたのは安藤だった。
セイへ安藤は襲撃を成功させ刑務所の務めを終えたならば小笠原組の幹部にすると約束したが叶えられなくなっている。だからせめて自分の組の組員にと誘っているのだ。
「すんません、武田の下では・・・」
セイは断る。
武田組との因縁を長年抱えるセイには受け入れられるものでは無かった。
「ええか、極道で長くやって今更娑婆でやって行けると思うか?」
安藤は言葉こそキツイが気を遣っている。
「すいません」
セイは深く頭を下げ馳走してくれた礼を述べてから去る。
「気が変わったら連絡をくれよ」
安藤はセイの背中へ呼びかけるがセイは振り向く事は無かった。
セイの足は古びた鉄道高架橋に向いた。
レンガ造りの橋の下にあの屋台は5年を過ぎても健在だった。
しかし、別の店なのでは?
女将はいないのでは?
セイは確かめるのを躊躇う。
夜になり、終電が過ぎ屋台に客が居ないのを見計らい屋台の暖簾をくぐる。
そこに居た。女将が。
「あら・・・」
女将は驚きを見せたがすぐに安堵したように柔らかな顔となる。
「久しぶり」とセイが遠慮がちに言うと女将は「おかえりなさい」と答えた。
「何コレ?」
マリコは原稿用紙を掲げて天野はるかに問う。
「いや~おでんを作っている時に浮かんだ妄想を形にしたくて」
はるかは気まずそうに答える。
「必要な原稿とは違うわよね」
マリコの追及は続く。
原稿の締め切りが近い日に全く関係の無い原稿が出て来た事を追及する。
はるかは原稿用紙に手書きで書くので、データ化して出版社に送るのがマリコの仕事だ。はるかが仕事とは関係の無い原稿を書いてしまってはマリコの仕事が進まない。
「趣味で書くのは締切ある原稿を終わってからね」
マリコがそう諭すとはるかは「ごめんごめん」と平謝りをする。
(でも、いつかこれを完全な形にしたいな)
はるかは未練を感じながら本来書くべき原稿に取り掛かるのであった。