※この作品はR-18です。

欲望のネギ   作:おっさん

11 / 106
第10話:契約の罠と、京都への道標

翌日の放課後。

ネギは神楽坂明日菜と共に、学園都市の広場を歩いていた。

前方から、日傘を差したゴスロリ少女と、その背後に控えるメイドロボットが歩いてくるのが見えた。

エヴァンジェリンと茶々丸だ。

 

「あ、エヴァちゃん!」

 

明日菜が気安く手を振る。

ネギは足を止め、スッと姿勢を正すと、深々と頭を下げた。

 

「……というわけで、エヴァンジェリンさん。僕の『師匠』になってくれて、ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」

「はぁ?」

 

 

エヴァが鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。

「ボーヤ、貴様どういうことだ? 頭でも打ったか?」

「え? だって、昨日の契約書に書いてありましたよね?」

 

ネギはキョトンとした顔で、懐から昨日の羊皮紙を取り出し、広げて見せた。

 

「貸せっ!」

 

エヴァがひったくるように奪い取り、文面に目を走らせる。

昨日は暗がりだった上、血の提供という餌に釣られてよく確認していなかったのだ。

そこには、美しい筆記体でこう記されていた。

甲(エヴァンジェリン)は、乙(ネギ)のクラスの授業に出席し、卒業すること。

乙は、甲の卒業時に『登校地獄』の呪いを解くための血液を提供すること。

甲は、乙の『魔法の師匠』となり、その技術を教授すること。

甲と乙は、修行に使用する『ダイオラマ魔法球』内での出来事、及び知った事実について、互いの同意なしに第三者(学園長含む)へ漏洩しないこと。

 

「な、なんだこれはーっ!?」

 

エヴァが契約書を地面に叩きつけそうな勢いで怒鳴った。

 

「貴様、どういうつもりだ! 私が貴様の師匠だと? ふざけるな!」

「ふざけてなんていません!」

 

ネギは表情を一変させた。

無邪気な笑顔を消し、切羽詰まった、今にも泣き出しそうな子供の顔を作る。

 

「エヴァンジェリンさんの魔法は凄いです! あんな魔法、見たことありません! ぜひ教えてください!」

「だ、だがな……」

「僕は……早く、お父さんに追いつきたいんです!」

 

ネギは瞳を潤ませ、悲痛な声で訴える。

 

「みんな、僕にお父さん……『千の呪文の男(サウザンド・マスター)』の代わりになることを期待してます。でも、僕には力が足りないんです! このままじゃ、みんなを守れない……お父さんの背中が遠すぎるんです!」

「…………」

「お願いです、助けてください! あなたの力が必要なんです!」

 

迫真の演技。

まあ、強くなりたいのも、父親(ナギ)の名声が重荷なのも設定上は事実だ。

それを最大限に利用し、エヴァの情に訴えかける。

 

「ねぇ、エヴァちゃん。いいじゃない、教えてあげなよ」

 

明日菜がネギの肩を抱きながら口添えする。

 

「そうですよ、マスター。ネギ先生には才能があります」

 

茶々丸も淡々と、しかし確かな援護射撃を行う。

エヴァは腕を組み、渋い顔で唸った。

彼女は口は悪いが、意外と面倒見が良い。それに、かつて愛した男の息子が、涙ながらに教えを乞うてきているのだ。

無碍にはできない。

 

「……フン。百歩譲って師匠の件はいいとしよう。だが、この『ダイオラマ魔法球』内での守秘義務というのは何だ?」

 

エヴァが鋭い視線を向ける。

『ダイオラマ魔法球』とは、内部の時間の流れを自在に変えられる修行用の亜空間発生装置だ。

エヴァの別荘の地下にあることは、原作知識で知っている。

 

「師匠には、誰にも知られたくない『とっておきの魔法』とかあると思うんです」

 

ネギは真顔で嘘をついた。

 

「それを僕に教えてくれる際、学園長たちに見られたら困るじゃないですか。だから、あの中での出来事は絶対に口外しませんという、僕なりの誠意の誓いです!」

 

(……というのは建前だ)

ネギは内心で舌を出す。

真の目的は、学園長・近衛近右衛門の監視が届かない「完全な密室」を手に入れること。

あの中でなら、コピーした魔法の練習も、明日菜への過激な調教も、誰にも邪魔されずに行える。

実際、契約はネギへの口止めでは無く、相互の口止めだ。

そのための法的根拠(アリバイ)を、契約書で作ったのだ。

 

「……ちっ。どの道、すでに契約(サイン)されてしまっているからな。破棄すれば反動が来る」

 

エヴァは忌々しそうに頭をかいた。

 

「期間は、卒業までということか?」

「はい! 卒業したら、約束通り血を差し上げて契約解除です!」

「……わかった。引き受けてやる」

「ありがとうございます、師匠!」

 

ネギが満面の笑みで飛びつこうとすると、エヴァはハリセンで制した。

 

「気安く呼ぶな! 呼ぶなら『マスター』と呼べ!」

「はい、マスター!」

「やったわね、ネギ!」

 

明日菜と茶々丸が拍手をする。

こうして、ネギは作中最強クラスの魔法の師匠と、誰にも覗かれない秘密の楽園(修行場)を手に入れた。

 

「ところで、マスター」

 

帰り道。

ネギは何食わぬ顔で尋ねた。

 

「マスターが、僕のお父さんのことが好きだったって噂で聞いたのですが……本当ですか?」

「ぶっ!!」

 

エヴァが盛大に吹き出した。

顔が瞬時に真っ赤に染まる。

 

「き、ききき、貴様ぁぁぁっ! だ、誰から聞いた!? 誰がそんなデタラメを!」

「えっと……確か、タカミチさんだったかな?」

 

もちろん原作知識だが、適当な名前を出して誤魔化す。

 

「あの眼鏡男か……殺す! 次に会ったら八つ裂きにしてやる!」

 

エヴァが周囲の街路樹を氷漬けにしそうな勢いで激怒する。

図星らしい。

 

「ちなみにマスターは、父さんがどこにいるか知ってますか?」

「……何を言っている。ナギは10年前に死んだだろう」

 

エヴァの怒りがスッと引いた。

彼女の中では、ナギ・スプリングフィールドは過去の英雄であり、故人なのだ。

 

「違うんです。僕は6年前に……父さんに会ったんです」

「なんだと?」

「父さんは生きています。僕は、それを確かめるためにも強くなりたいんです」

 

ネギは遠くを見つめる目をした。

これも半分は演技だが、エヴァの意識を「契約の罠」から「ナギの生存」へと逸らすための重要な話題転換だ。

エヴァはしばらく黙り込み、やがてポツリと言った。

 

「……京都に行ってみろ」

「京都?」

「ああ。昔、ナギが日本に滞在していた時、拠点にしていた場所がある。関東魔法協会ではなく、関西呪術協会の管轄だ」

「関西……」

 

そこで、横で聞いていた明日菜がポンと手を打った。

 

「あ! ちょうど良いじゃない!」

「何がですか、明日菜さん?」

「修学旅行よ! 来月の修学旅行の行き先、京都に決まったのよ!」

「なるほど……それは好都合ですね」

 

ネギは眼鏡の奥で光を宿した。

京都。

関西呪術協会。

そして、木乃香の実家。

新たな美少女たちと、強力な魔法、そしてエロいハプニングの予感がする。

最高の師匠(カモ)も手に入れた今、次の舞台へ進む準備は万端だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。