※この作品はR-18です。

欲望のネギ   作:おっさん

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第28話:吸血鬼への反逆 ~真なる支配者~

ダイオラマ魔法球。

時間の流れが外界とは異なるこの空間で、ネギは今日も汗を流していた。

目的は明確だ。

目の前にいる最強の師匠・エヴァンジェリンを力ずくでモノにするため。

築き上げたハーレムを守るため。

そして何より、原作の最後で待ち受けるラスボス(始まりの魔法使い)に肉体を乗っ取られ、殺されないためだ。

 

(……だが、足りない)

ネギは黒い雷を纏いながら、思考を巡らせる。

『闇の魔法(マギア・エレベア)』は確かに強い。チート級の性能だ。

だが、この魔法は師匠であるエヴァはもちろん、紅き翼のラカンも知っている。おそらく他のメンバーも知っているだろう。

手の内がバレている切り札など、切り札とは呼べない。

 

(もう一つ……何か隠し玉が欲しい)

だが、思いつかない。

ネギは所詮、神から与えられた魔力と『写輪眼』というチートツールを持っているだけの凡人だ。本物のネギ・スプリングフィールドのような、魔法を組み替えて新しい術式を編み出すような天才的頭脳はない。

 

(くそっ! こちとらチート持ちの転生者であって、努力の天才じゃねえんだよ!!)

心の中で悪態をつくネギ。

しかし、時は待ってくれない。事態は急変する。

ダイオラマ魔法球は精神と時の部屋のようなものだが、エヴァの方針で「成長期の子供(特に女子)には悪影響がある」として、毎日全員が揃うわけではない。

今日、この別荘に集まっていたのは、神楽坂明日菜、綾瀬夕映、宮崎のどかの三人だけだった。

休憩中、紅茶を飲みながらエヴァが何の気なしに言った。

 

「そういえば、明日菜は既にしていたが、そこの二人……夕映とのどかは、まだ仮契約(パクティオー)しておらんのか?」

「……え?」

 

ネギの心臓が跳ねた。

 

(ついに来てしまった……!)

エヴァは続ける。

 

「ネギの魔力供給があれば、一般人の二人でも身を守れるようになる。それに、ネギにとっても戦力増強になるだろう?」

 

正論だ。しかし、ネギにとってはこのタイミングでの提案は致命的だった。

仮契約を結べば、アーティファクトとパクティオーカードが出現する。

ネギの歪んだ欲望が反映された、あの『卑猥極まりない』アイテムたちが。

 

(どー考えても、この後はエヴァとバトルだよな……)

ネギは冷や汗を隠し、やんわりと拒否を試みる。

 

「いえ、安易に仮契約なんて良くないですよ。彼女たちはまだ一般人ですし……」

「あら、私は賛成よ!」

 

声を上げたのは明日菜だった。

 

「私もしてるわよ! 二人も仮契約しようよ! ネギを助けられるし、すっごく気持ちいい……あ、いや、力が湧いてくるわよ!」

 

すでにネギに脳髄まで開発されている明日菜は、仲間が増えることにノリノリだ。

さらに、夕映が眼鏡を光らせた。

 

「興味があります。ネギ先生の力になれるなら、ぜひ」

「わ、私も……ネギ先生のお役に立ちたいです」

 

のどかも頬を染めて同意する。

外堀は埋まった。

ここで拒否し続ければ、逆に怪しまれる。

ネギは覚悟を決めた。

 

「……分かりました。ただ、契約の儀式は少し……恥ずかしいので。夕映さん、のどかさん。向こうの部屋でやりましょう」

 

数十分後。

ネギたち三人が戻ってきた。

夕映とのどかの頬は上気し、足元がおぼつかない。瞳には、どこか夢見心地な色が浮かんでいる。

もちろん、契約のキスだけでなく、ネギによる簡易的な催眠と、言葉巧みな誘導(洗脳)を済ませてきたからだ。

 

「終わったか」

 

エヴァが退屈そうに尋ねる。

 

「で、どんなアーティファクトが出た?」

「はい、これです」

 

夕映とのどかが、震える手でパクティオーカードを差し出した。

エヴァがそれを覗き込む。

瞬間、彼女の思考が停止した。

夕映のカードには、胸もアソコも露わになった図書館司書が、あられもない姿でポーズを取っている絵。

のどかのカードには、自慰に耽りながら日記を書く、白目を剥いた少女の絵。

 

「…………は?」

 

エヴァの口から、乾いた音が漏れる。

その硬直こそが、ネギが待っていた唯一の勝機。

 

「解放(エーミッタム)!!」

 

ネギが叫ぶ。

 

「千の雷(ミッレ・フルグラ)!」

 

バチチチチッ!!

ネギの全身から膨大な雷撃が噴き出す。

 

「術式固定(スタグネット)!」

「掌握(コンプレクシオー)!」

 

躊躇いなど微塵もない。

ネギは黒い雷の悪魔と化し、雷速の踏み込みでエヴァとの距離をゼロにした。

 

「なっ──!?」

 

エヴァが反応するより速く。

ネギの纏った雷撃の拳が、エヴァの小さな体に深々と突き刺さった。

ドォォォォォォンッ!!

 

「がはっ……!?」

 

吹き飛ぶエヴァ。別荘の壁を突き破り、遥か彼方へ弾き飛ばされる。

 

「マスター!?」

「ご主人!?」

 

控えにいた絡繰茶々丸と、人形のチャチャゼロが反応しようとする。

だが、遅い。

 

「二人とも、悪いな」

ネギは冷徹に言い放ち、すでに彼女たちの背後に回っていた。

『闇の魔法』で強化された手刀が閃く。

ガシャァァァンッ!!

バキィッ!!

 

「機能……停止……」

「テメェ……!」

 

茶々丸の四肢が切断され、チャチャゼロの手足も無惨に破壊される。

戦闘用ロボットと強力な人形でさえ、不意打ちと出力差の前には無力だった。

そこへ、瓦礫の中から土煙を上げてエヴァが戻ってくる。

その表情は、これまでネギに見せたことのない、本物の「怪物の怒り」に染まっていた。

 

「……やってくれたな、ボーヤ」

 

強烈な殺気が空間を支配する。

 

「いや、貴様……いったい何者だ? 本物の『ネギ・スプリングフィールド』ではないな?」

 

ついに核心を突かれた。

だが、ネギは邪悪な笑みを崩さない。

 

「何言ってるんですか。僕はマスターの可愛い弟子、ネギですよ」

「巫山戯るなッ!!」

 

エヴァが絶叫する。

 

「あの二人のアーティファクトは何だ! あの卑猥なカードは! 貴様の欲望そのものではないか! ……まさか、明日菜もか!?」

 

エヴァの視線が明日菜に向く。

明日菜は、キョトンとした顔で立っていた。

 

「え? 何でエヴァちゃん怒ってるのよ?」

「明日菜、貴様……!」

「ネギは私たちのためにやってくれてるのよ? それに、あのカードの格好、ネギが喜んでくれるならいいじゃない」

「な……っ」

 

明日菜の言葉に、エヴァは戦慄した。

洗脳。依存。思考の改変。

すでに手遅れなほど、彼女たちはネギの手の内にある。

 

「殺してやるぞ、バカ弟子……!」

 

エヴァの周囲に、世界を凍らせるほどの冷気が渦巻く。

だが、ネギは余裕の態度で肩をすくめた。

 

「やめた方がいいですよ、マスター」

「何だと?」

「学園に封印された貴女は、この魔法球の中でも全力は出せない。全盛期の何分の一ですか? 対して僕は、貴女の十倍の魔力を持ち、『闇の魔法』を習得し、さらに……」

 

ネギは背後の明日菜、夕映、のどかを手で示す。

 

「彼女たちがいます。僕を殺すなら、彼女たちごと消し飛ばしますか?」

「き、さま……ッ!」

 

人質。そして戦力差。

学園の結界による弱体化に加え、不意打ちでのダメージ。

さらに、愛すべき弟子だと思っていたネギの正体が、得体の知れない化物だったという精神的ショック。

この状況で、ここまで先手を打たれた段階で。

かつての最強、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに、勝ち目はなかった。

 

「さあ、マスター。授業(レッスン)の内容を変更しましょうか」

 

ネギは黒い雷を纏ったまま、ゆっくりと、しかし確実に支配者としての歩みを進めた。

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