地下室での情事の後、ネギは服を整え、未だ頬を赤らめ荒い息をつくエヴァンジェリンを抱きかかえ、再び『ダイオラマ魔法球』のゲートをくぐった。
中に入ると、破壊されたままの絡繰茶々丸とチャチャゼロが、恨めしげな視線を向けてくる。
ネギはエヴァを地面に降ろすと、冷徹に命じた。
「マスター。彼女たちに『ネギに関する一切の情報を、外部へ漏らさない』よう、貴女の手で縛りをかけてください」
「……ッ、く……」
エヴァは唇を噛み締め、屈辱に震えながらも、その命令に逆らえない。
彼女は震える指先で空中に術式を描き、自身の従者たちへ強制契約を上書きした。
「……命令だ。茶々丸、チャチャゼロ。こいつのことは……誰にも言うな」
「マスター……!? なんで……」
茶々丸の瞳が、信じられないものを見るように揺れる。
チャチャゼロは殺意を剥き出しにして叫んだ。
「ふざけんな! ご主人を脅してんのかテメェ! ぶっ殺してやる!」
罵倒が飛ぶ中、ネギは表情を崩さず、二人の前に膝をついた。
「騙していたことは謝りません。最初からそのつもりでしたから」
ネギの声には一点の曇りもない。悪びれる様子など微塵もない。
だが、彼は破壊された茶々丸の義手と、チャチャゼロの破損したボディに手を添えた。
「ただ……貴女たちを傷つけたことは、真摯に謝罪します。手荒な真似をして、すみませんでした。茶々丸さん、チャチャゼロ」
「はぁ!? 今さら何言ってやがる!」
「……理解不能です。謝るくらいなら、なぜ……」
茶々丸が悲痛な声で問う。
「あなたの目的は、何なのですか?」
ネギは顔を上げ、真っ直ぐに答えた。
「死にたくないのと、可愛い子を手に入れたいだけです」
あまりにシンプルで、身勝手な欲望。
人形たちは言葉を失う。
ネギは横に立つエヴァの腰を引き寄せ、その小さな体を抱きしめた。
「今回、エヴァンジェリンという世界一可愛い女の子を手に入れて、僕は非常に嬉しいんですよ」
「……ッ! 貴様……みんなの前で……」
「いいじゃないですか、僕の可愛いマスター」
ネギはエヴァの顎を持ち上げ、見せつけるように唇を塞いだ。
「ん……ッ!?」
チャチャゼロたちの目の前で、濃厚なキスを見せつける。
エヴァは顔を真っ赤にして、涙目でネギの胸を叩くが、その抵抗は弱々しく、決して拒絶することはできない。
舌を絡め合わせ、唾液を交換する淫らな音が響く。
「っぷ……はぁ……」
唇が離れると、エヴァは力なくネギの腕にもたれかかった。
「……見ただろ、ポンコツ。ご主人はもう、コイツの支配下だ」
チャチャゼロが憎々しげに、しかし絶望混じりに吐き捨てる。茶々丸も、項垂れるしかなかった。
「さて、ここに入ってしまった以上、出るには魔法球の時間で24時間経たなければなりませんね」
外の時間ではわずか1時間だが、中では丸一日だ。
ネギはこの時間を無駄にするつもりはなかった。
「修行をします」
ネギはエヴァから離れ、少し離れた広場で魔力を練り始めた。
先ほどのエヴァとの戦闘。そこで肌で感じた『魔法の真髄』。
圧倒的な技術、省略、並列処理。
『写輪眼』で見た残像を頼りに、ネギはその感覚を再現しようと試みる。
(あの感覚……ただ魔力を垂れ流すんじゃない。編み込むんだ)
その傍らで、エヴァは茶々丸とチャチャゼロの修復作業を始めていた。
魔力でパーツを接合しながら、エヴァは横目でネギの様子を観察する。
(……本気だな)
ネギの目には、慢心はない。
自分という最強の師匠を倒し、支配下に置いたにも関わらず、彼はまだ何かに怯え、焦っている。
その必死さは、単なる強欲だけではない。もっと根本的な、生存本能からの渇望だ。
(ボコボコにされた私を見て、恐怖したか。……それ以上に、私を超える『何か』が来ると確信している目だ)
ネギは知っている。この世界の先にある、絶望的なラスボスの存在を。
だからこそ、止まれない。
ネギの魔力制御が乱れ、術式が霧散する。
「くそッ……あと少しか……?」
それを見ていたエヴァは、つい口を開いてしまった。
「……バカ者。魔力の角が立っている。もっと丸く、流れるように練れ」
「え?」
「そこだ。その結び目が雑だから、出力が落ちるんだ。……貸してみろ」
エヴァは修復の手を止め、ネギの元へ歩み寄ると、手取り足取り指導を始めてしまった。
数時間前まで殺し合い、支配された相手に、だ。
「ここはこう! 全く、何度言えば分かるんだ!」
「ありがとうございます、マスター! 流石です!」
(……はぁ。私は何をやってるんだか)
エヴァは自己嫌悪に陥るが、教えずにはいられない。
600年生きても、根っからの「師匠気質」は治らないらしい。
(相変わらず、こういうところはチョロい……チョロすぎるロリ吸血鬼ですね)
ネギは内心でニヤつきながら、その指導を貪欲に吸収していった。
そして、24時間が経とうとする頃。
修行と修復が一段落した。
「ふぅ……いい汗かきましたね」
ネギは爽やかな笑顔で汗を拭うと、修理を終えた茶々丸とチャチャゼロ、そしてエヴァを見た。
「では、仕上げの修行といきましょうか」
「……仕上げ?」
「ええ。エヴァへの愛の注入です」
ネギは有無を言わさずエヴァを抱き上げると、別荘の寝室へと連れ込んだ。
「ちょ、待て! 茶々丸たちの前だぞ!?」
「関係ありません。さっそく中出しして、可愛がってあげますよ」
ベッドに放り投げられるエヴァ。
ネギは野獣のように覆いかぶさる。
「やめ……んんッ! あぁッ!」
それから、朝が来るまで──魔法球の時間での数時間──ネギはエヴァから一度も性器を抜かなかった。
射精しても、萎えさせず、そのまま硬さを維持して再び突く。
魔力をフル活用した、無限のピストン。
「ひ、あ、あぁぁぁッ! バカ弟子! ケダモノぉぉッ!」
「ええ、ケダモノですよ。貴女のご主人様です!」
「抜いて! もう、お腹いっぱい……んあぁぁッ! イクッ! またイッちゃうぅぅ!!」
寝室のドア越しに、エヴァの悲鳴とも喘ぎともつかない声が響き続ける。
リビングに残された茶々丸とチャチャゼロは、気まずそうに顔を見合わせた。
「……ご主人、すげぇ声出してやがる」
「……はい」
「『バカ弟子』とか『殺す』とか言ってる割に……なんか、声が弾んでねぇか?」
チャチャゼロの指摘通りだった。
エヴァの声には、屈辱の中にも、隠しきれない甘い悦びの響きが混じっていた。
600年の孤独を埋めるように、体と体を繋げ続ける行為。
支配されているはずなのに、どこか許してしまっているような……。
「……マスターは、案外、満更でもないのかもしれません」
茶々丸がポツリと漏らしたその言葉は、誰にも否定されず、ただエヴァの絶頂の叫びにかき消されていった。