外界の喧騒から完全に切り離された、麻帆良学園地下の異空間。ネギが構築したダイオラマ魔法球の内部は、彼の趣味と計算が反映された、最高級ホテルのスイートルームを模した空間となっていた。
ふかふかの絨毯、間接照明の柔らかな光、そして最高級の調度品。しかし、今のこの部屋はただの豪華な一室ではない。ネギが意図的に「ある目的」のために環境を最適化させた、特殊な空間であった。
室温は、人間が最も無防備にリラックスし、微かな肌寒さと同時に人肌の温もりを求めやすくなる24.5度に厳密に設定されている。空間を満たすのは、微かな「1/fゆらぎ」を持つヒーリングミュージックと、白檀やラベンダーを絶妙に調合した、副交感神経を優位にするための特製の香である。
これらは魔法ではない。人間の深層心理に直接語りかけるための、極めて医学的・心理学的な「催眠術」の導入環境であった。
その部屋の極上の革張りソファに、二人の少女が座らされていた。
出席番号3番、朝倉和美と、出席番号12番、古菲である。
二人は、先ほど大浴場からスライムによって攫われた時のまま、一糸纏わぬ全裸であった。ネギはあえて彼女たちに衣服を与えず、代わりに肌触りの良いシルクのブランケットを一枚だけ手渡している。布一枚で身体を隠すという行為は、彼女たちに「守られている」という錯覚を与えると同時に、圧倒的な「無防備さ」を無意識下に刻み込むための計算だった。
「さて。まずは急な出来事で驚かせてしまったこと、教師として謝罪します。ですが、あなたたちには知っておいていただかなければならない『真実』があるんです」
ネギは完璧な紳士の笑みを浮かべ、二人と対面する一人掛けのソファに腰を下ろした。彼の声は低く、落ち着いており、部屋の音響効果も相まって、二人の耳の奥底に心地よく響くように調整されている。
「真実……って、あの変な化物たちのことアルか?」
「そうです。古菲さん。この世界には、あなたのような一般人が知らない『魔法』という力が確かに存在している。そして……その力は、時にあなたの大切な人たちを理不尽に傷つける」
ネギの言葉に、古菲が息を呑む。彼女は武道家として己の肉体と気を鍛え上げてきたが、先ほどのステージでの戦いや、風呂場から音もなく攫われた事実は、彼女の常識を完全に破壊していた。
「朝倉さんも、以前少し触れたとはいえ、事の重大さをまだ完全に理解してはいませんね。……先日の京都への修学旅行、覚えていますか?」
「っ……! あ、ああ……」
朝倉はブランケットをきつく握りしめた。彼女は以前、特ダネを狙ってネギの秘密を探ろうとした結果、返り討ちに遭い、性的な躾を施されて協力者(パパラッチ)に堕とされた過去がある。ネギの恐ろしさは知っているが、同時にクラスメイトを思う正義感や友達想いな一面も強く持ち合わせているため、警戒心と好奇心が入り混じった複雑な表情を浮かべていた。
「あの京都で、実は近衛木乃香さんが、強大な魔法使いの勢力に命を狙われていたんです。もし僕や、彼女を守る従者がいなければ、木乃香さんは間違いなく殺されていたでしょう」
「なっ……! 木乃香が!?」
「そんなこと、全然知らなかったアルヨ!」
二人の瞳に、明確な動揺が走る。
そこへ、ヘルマンに着せられた奇妙なドレス姿のままの神楽坂明日菜が、静かに一歩前に出た。
「ネギの言う通りよ。和美、クー音。京都の時は、本当に危なかったの」
明日菜の言葉には、確かな自信と、経験者としての重みがあっ
た。
「でもね、私はネギと『契約』したから……魔法使いの従者としての力をもらったから、親友の木乃香を守り抜くことができたのよ。ネギは、私たちを本当の意味で守るために、こうして秘密を打ち明けてくれてるの」
明日菜はネギを見つめ、熱を帯びた瞳で語る。彼女の心はすでにネギに支配され、催眠と調教によって完全に作り変えられているのだが、端から見れば「愛する人と共に戦う、気高き戦士」そのものであった。
(素晴らしいアシストだ、明日菜。……さあ、ここからが本番だ。人間の心は簡単には屈服しない。だからこそ、理屈と環境で、自ら扉を開けさせるんだ)
ネギは静かに立ち上がり、二人にゆっくりと近づいた。
部屋の照明がわずかに落とされ、ネギの低い声が、催眠術の誘導のようにより深く、規則的なリズムを刻み始める。
「古菲さん。あなたは武道家だ。誰よりも『強くなりたい』『戦いたい』という純粋な欲求を持っているはずだ。人間の力の限界を感じたことはありませんか? 魔法という理不尽な暴力の前で、何もできずに大切な友人を失う……そんな無力感を、あなたは許せるのか?」
ネギの言葉が、古菲の武術家としての本能を鋭く突き刺す。
「アタシは……! アタシは、もっと強くなりたいアルヨ……! みんなを守れるくらい、絶対的な力が欲しいアル……!」
古菲の瞳孔がわずかに開き、呼吸が荒くなる。環境とネギの言葉による心理的アプローチが、彼女の中にある「強さへの渇望」を極限まで増幅させていく。
「朝倉さん。あなたは真実を追うジャーナリストであり、何より友達想いの優しい心の持ち主だ。大切なクラスメイトたちが、見えない脅威に晒されている。それを知っていながら、ただ指をくわえて見ているつもりですか? 僕と共に世界の秘密を解き明かし、その力でみんなを守りたくはないですか?」
「私は……! 私は、みんなが傷つくのなんて嫌だ……! それに、この学園の裏に隠された秘密、絶対に暴いてみせる……!」
朝倉のジャーナリストとしての探求心と、友を守りたいという正義感が、ネギの誘導によって暴走を始める。
二人の心は、今やネギの掌の上で完全に開かれていた。理性が「警戒すべき」と鳴らす警鐘は、部屋の香りと音響、そして「友を守るため」という大義名分によって完全に押し潰されていた。
(よし。心の準備は整った。ここからは……魔法の時間だ)
ネギは、その端正な顔に隠した邪悪な笑みを深め、写輪眼を静かに起動させた。
ここから先、彼女たちに受け入れさせるのは「魔法使いの従者になる」という真っ当な契約ではない。自身の精液を代償とする、異常で変態的なアーティファクトの仕様や、ネギとの激しい性行為を日常として受け入れさせるための、強固な洗脳である。
それは、心理的な催眠術の範疇を完全に超えるものだ。
「……よく決心してくれました。では、契約のための『仕上げ』を行いましょう」
ネギは両手を広げ、極めて高度な『催眠魔法』の術式を無詠唱で展開した。
物理的な音や光の誘導ではなく、純粋な魔力による精神への直接干渉。ネギから放たれた目に見えない魔力の波が、全裸で座る二人の少女の脳髄へと直接流れ込む。
『――解き放て。お前たちの中にある、性的な羞恥心を。僕に抱かれること、僕の精液を注ぎ込まれることは、何よりも尊く、力に満ちた絶対の真理である――』
催眠魔法が、二人の脳内にある「セックスへのブレーキ」や「常識的な倫理観」を、強引に、かつ完全に破壊し、上書きしていく。
ビクンッ、と二人の身体が大きく跳ねた。
古菲の口からは甘い吐息が漏れ、朝倉の瞳からは知性の光が抜け落ち、代わりにネギへの盲目的な熱情が宿り始める。
「あぁっ……なんだか、身体が、すっごく熱いアルヨ……ネギ先生の、力が……欲しいアル……!」
「ネギ……私、あなたのこと、もっと知りたい……あなたと繋がって、みんなを守る力が欲しい……っ」
二人は、自らの意思でシルクのブランケットを床に滑り落とした。隠すものが何一つなくなったFカップの豊満な胸と、未成熟ながらも美しい曲線を描く肢体が、間接照明の下で艶かしく光を反射する。
完全に「準備」が完了した二人を見て、部屋の隅でタバコを吹かしていたオコジョ――カモミール・アルベールが、ゆっくりと歩み出てきた。
「へへっ、お待ちかねの儀式の時間でさァ。兄貴の言葉に偽りはねえ。嬢ちゃんたち、これから極上の世界に連れてってやるぜ」
え。嬢ちゃんたち、これから極上の世界に連れてってやるぜ」
カモは、その愛らしいオコジョの姿からは想像もつかないほど厳かな、まるで高位の神官のような身振り手振りを演じながら、魔法のチョークを取り出した。
「さあ、偉大なる魔法使いと、その守護者たる従者を結ぶ、神聖なる誓いの陣を!」
カモが床にスラスラと円陣を描き、複雑なルーン文字を刻み込んでいく。完成した魔法陣が、眩い光を放ち始めた。
「さあ、二人とも。ここへ」
ネギが手を差し伸べると、古菲と朝倉は吸い寄せられるように立ち上がり、全裸のまま魔法陣の中央へと足を踏み入れた。
「契約の方法は、ご存知ですね? 互いの魂を交わすための、口づけです」
ネギはまず、古菲の鍛え上げられたしなやかな腰を抱き寄せた。
古菲は頬を真っ赤に染めながらも、催眠魔法によって外されたブレーキの赴くまま、背伸びをして自らネギの唇に己の唇を重ねた。
「んっ……ちゅ……」
十秒間。濃厚な魔力が二人の間を行き交い、古菲の身体がまばゆい光に包まれる。光が収まった瞬間、宙から一枚のカードが舞い降りた。
背景には中華風の演武場と龍。そして、極限までスリットが深く、胸元が大きく開いたチャイナドレス風の道着――『淫龍の闘衣』を身に纏い、股間から白濁液を滴らせて勇ましく構える古菲の姿が描かれている。
「これが、アタシの……契約の証アルか……!」
続いて、ネギは朝倉へと向き直る。
朝倉はすでに潤んだ瞳でネギを見上げ、待ちきれないとばかりに彼の首に腕を回した。
「ネギ……私にも、早く……!」
「ええ、和美。あなたにも、最高のスクープを与えましょう」
唇が合わさる。舌と舌が絡み合い、互いの唾液を交換するほどの深い口づけ。
十秒後、同様に光が弾け、朝倉の手にも一枚のカードが握られていた。
背景には無数の監視モニターと暗室。トレンチコートをはだけて全裸を晒し、片手で自らの秘部を慰めながら恍惚と笑う和美の姿が描かれている。
仮契約(パクティオー)は、完璧に成立した。
(くくっ……ちょろいものだ。これでまた二人、僕の欲望を満たすための極上の玩具が手に入った)
ネギは内心で、邪悪で歪んだ優越感に浸りながら笑い声を上げた。
「さて、二人とも。契約は完了しましたが……あなたたちのアーティファクトを起動し、その真の力を引き出すためには、絶対に欠かせない『儀式』があるんです」
「儀式……? それは、どんなことをするアルか?」
「なんだってやるわ。みんなを守るためだもの……!」
催眠魔法によって羞恥心を取り払われ、従順な牝と化した二人の全裸の少女を見下ろし、ネギはネクタイをゆっくりと緩めながら、残酷なほど甘い声で囁いた。
「それはね……これから、たっぷりと時間をかけて、僕の身体を使って教えてあげますよ。朝まで、一睡もさせずにね」
ダイオラマ魔法球の密室に、抗うことのできない快楽の夜が幕を開けようとしていた。